ハーレム相撲部～女4人に男1人。おまけにかわいい守護霊も憑いてきて、一体何がどうしてこうなった？～

第4章：人の痛み

17話

「問題は、そこか。安全に過ごしてもらうには、真由美とその妹さんだけでもどこかで外泊させたほうがいいんじゃないのか？」
「名案だわ。じゃあ、まずは私の家に泊まるように誘ってみる。それかホテルに泊まってもらおうか……それもだめなら、せめて少しでも安全なように、父親に対抗できる方法を考えるのがいいかも」
　話し合いの結果が、まず真由美と由香利には避難を勧める事でまとまった。
「なぁ、亜里沙とか言ったな。お前、これからどうするんだ？」
　裕也は家族で会話をしているところに割り込んだ。
「どうするってその……娘からは離婚を勧められました……」
「そこで即、離婚するって言いきれないところがお前のダメなところだな」
　亜里沙の返答に苛立ちながら裕也はこき下ろす。明日香も呆れている様子だ。
「どうする？　真由美ちゃん……なんなら、離婚して、別居先の環境が整うまで、ウチで過ごさないかしら？　妹と一緒に」
　そう明日香に言われると、真由美は少し考えてから首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。これ以上ご迷惑をおかけするわけにもいきませんしさすがに父も懲りたでしょうし」
「そう……」
　真由美の楽観的な答えに、明日香は不安になる。自分の父親の異常性を舐めすぎてやいないかと。
「じゃあ、せめて安全対策のお話をしたいから、明日神社に来てくれる？」
「……わかりました。万が一ってこともあるかもしれません……しね」
　明日香に言われ、真由美はまだ続きがあるかもしれないことを視野に入れた。父親が反省しておらず、まだ悪あがきをしてくることも見据え、ポケットに入れっぱなしのスタンガンに手を添え、すがるようにぎゅっと握る。
　妹がこれで終わるのかどうか不安に思っていたが、その通りだ。まだ終わっていない、母親が離婚するまで終わりだなんて考えない方がいいのだ。そのため、離婚に向けての話し合いはもう弁護士を通じて行ったほうがいいことや、出来ればホテルか実家に逃げることなどを推奨したが、母親はどうにも優柔不断で、顔が曇っている。
　ふと素華の様子を見に行くと、素華は風呂場で唸っている父親が、嘔吐で呼吸困難になっていないか、うんざりしながら見張っているようであった。
「こんな汚いおっさんの事を観察してるの苦痛なんだけれど……ってか、もうこんな時間。早く帰らなきゃ」
　裕也の気配を感じた素華はそう愚痴を漏らす。
「俺は親がいないからいいけれど、素華は大丈夫？　あとは俺が見張っておくよ」
「ありがと。私も、親は今日は遅くなるから大丈夫。ただ、夜道には気を付けないとね。私もスタンガンでも買おうかしら？」
　素華は苦笑し、帰るための準備を始めた。