ハーレム相撲部～女4人に男1人。おまけにかわいい守護霊も憑いてきて、一体何がどうしてこうなった？～

第4章：人の痛み

10話:吹っ切れた

　差し出されたそれには、父親からのメッセージとして『早く帰ってこい』『殺すぞ』『躾してやろうか？』『ふざけるなゴミ！』などと、あまり穏やかではない単語が羅列されている。
「ごめん、やっぱり信じるわ。子供をまっとうに愛していればこの文章は書けないし……」
　明日香は苦笑し、真由美に謝った。
「でも、やっぱり一発殴られてもらっていいかしら？　こっちがやり返す大義名分にもなるし、やっぱり決定的証拠があった方がいいでしょ？　それと、防犯ブザー……これを渡しておくから、やばいと思ったらこれを鳴らして。私が駆け付けるから。でも、自分で何とかできそうならスタンガンを使うのよ」
「うん……大丈夫です。殴られるの、慣れてますし」
　真由美は大きく深呼吸をするをと、暗い面持ちで家の鍵を開け、それを明日香に手渡した。明日香はそれをぎゅっと握りしめると、いつ助けを呼ばれてもいいようにと深呼吸して身構えた。
「ただいま」
　息が詰まりそうになりながら真由美は帰宅する。
「真由美。お前、今までどこに行ってたんだ？　答えろ！」
　リビングから出迎えた父親は、真由美の顔を見るなり挨拶代わりに髪の毛を掴み腹を殴る。傷が目立たないよう腹を殴られた真由美は、苦しそうにうめき声をあげると、ぺたんと床にへたり込む。
『うそでしょ……あいつ、いきなり娘を殴ってる。あ、あの子スマホ取り出した……撮影してる』
　古々はその様子を二人のために実況する。その声色から察するに、古々も心情は穏やかではないらしい。
『久々に見るわこんな奴……徹底的にやっちゃいましょ……』
　古々の視線の先には、撮影されているとわかって激昂する父と真由美。一般人には自分の姿が見えないことを言いことに、古々は思う存分真由美のことを実況している。
『あ、あのクソ親父、スマホ拾ってぶん投げた。あーあ、ひび割れちゃって……こりゃもう、手が付けられないわ。スマホ、高いはずなのにどうしてそんなに物を無駄に出来るのかしらね？　後先考えずに暴力衝動だけ満たしたいとか、あれ本当に人間？』
　古々の実況は酷いもので、ボロクソに言われている。
「どうやら本当にろくでもない奴みたいだな……」
　古々の実況を聞きながら裕也はため息をつく。いつ突入すればいいのか、はやる気持ちを押さえつけるのが大変であった。しかし、真由美もスマホを壊されたことで吹っ切れたのだろう、学校のカバンに仕込んでおいたスタンガンを取り出し、父親ののふくらはぎに押し付けた。