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コレクターガール

遥香の長い一日 vol.6

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エレベーターが最上階につき、扉が開いた途端

奥からガラスの割れる音と言い争う声が聞こえて来た。

その場に緊張が走った。


元々遥香はエレベーターから出る予定は無かった…。


しかし、もしかしたら今夜セキュリティー解除される事を知った誰かが

自分達と同様に「宝石王の碧い花」を狙って襲撃して来た可能性もある。


咄嗟にトレモロが判断、急遽予定を変更した。

遥香は秘書と一緒にエレベーターを降り

社長室までついて行く。


秘書が社長室前の二重になっている扉にカードキーを通す。

重厚な扉を開け、奥へ進んだ。

落ち着いたデザインの家具に

革張りのソファー、それ以上に目を惹くのは

目を見張る色とりどりの宝石のコレクション。

高価な物なのだと分かる…。

ガラスケースの中整然と並び、まるで宝石販売店に来たみたいだ。

ジョナサンの座っている大きめのマホガニー製のデスクの下に

無残に砕けたガラスの破片が赤い絨毯の上に散らばっていた。


入室して来た秘書に目配せをしたジョナサンは

徐に椅子から立ち上がり、大袈裟に両手を広げて



「おお、アラン!!   まだそんな事を考えいたのか?

君が社長になるのは君が大学を卒業して

1年間、社員として働いた後だと約束していたはずだろう?」


「そ、それは…。」


「そう 君と約束した。にもかかわらず

大学卒業してから大学院に進み 研究に必要な調査をするためと言って

反対したにもかかわらず 国を飛び出し勝手に海外暮らしを始めた…。


大学卒業後すぐ君はここの社員として登録してあるが

一年が過ぎても帰ってこない。

待ちくたびれたんだ。

先に約束を反故にしようとしたのは君だ。」


「でも、僕はまだ自由でいたかった。」


「アラン!! 君にはこのサウザンビートを背負って行く者として

覚悟を持ってもらわなければならない。

私も、もう歳だ。私が知る全てを君に引き継ぐとしても

時間がかかる。君にはここで社長として働いてもらう。

私は理事として支える。理想のスタイルだろう?


今日から君はこのエメラルド共に

宝石王サウザンビートコーポレーションを束ねる長として

その頂に君臨するんだよ。


悪いが約束は守らせてもらう。

実際、後1時間もすれば多くの関係者達が

君の宝石王になる瞬間を祝福しに来てくださるのだよ。」


「…もう、ダメなのか…。」

「答えなら、yesだ。」

「どうあっても?」

「愚問だと思うが…。」

「…そうか、残念だよ。ジョナサン…。」


 
そう言うとアランはふらりとジョナサンに背を向け、胸ポケットに手を入れ

銃を取り出し時価10億のエメラルド宝石王の碧い花」にむけた。



「僕にはエメラルドも社長の椅子も宝石王の称号もいらないんだ。」


振り返ると「宝石王の碧い花」時価10億のエメラルド


「おい、アラン!! 何をする気だ? ち…血迷ったのか?」


ジョナサンと秘書の数人が慌てて駆け寄ろうとするが


「来るな!! 来たら僕は本気で撃つよ。」

大声でわめき散らすと 止めようとした秘書に銃口を向ける。

一瞬にして社長室の温度は冷たくなった。



「ごめんよ。宝石王ジョナサン

貴方の代で この宝石王の象徴も

跡を着くはずの孫息子も今日神の元へ帰るんだ。」




アランがジョナサンを一瞥し

エメラルドに向けて引き金を引こうとした、その瞬間

トレモロがカメレオンバリアーを亜空間バリアーに切り替え

銃口の前に立ちふさがった。

重い銃声音が鳴り響いたが銃弾は遥香の前で掻き消えた。


その場にいた全員が、腰を抜かしそうになった。



ウサギコスチュームの女の子が突然、アランの銃弾の前に現れ

撃たれたはずなのにピンピンしているのだ。

何が起きたかわからないまま、思考回路フリーズしてしまった。



周りがフリーズしていても、トレモロの手は止まらない

アランの持っていた銃を蹴り飛ばすと

両手をまっすぐ伸ばすと

その場にいたジョナサンとアラン以外の人達一人一人に

手のひらを順番に向ける。



「メティ、済まない 緊急事態だ。

手間をかけるが、社長室にある

監視カメラの映像を大至急細工してくれ。」


「了解しました。マスター…作業完了です。」


メティは一瞬で監視カメラの映像の細工を終わらせたようだ。



遥香の両手を広げ向けられた数人は、虚ろな目になり、その場で立ち尽くした。

ジョナサンは椅子に崩れる様に座り、アランは蹴られた拍子に

床で尻餅をついていた。

周りのスタッフ全員、突然の変わり様に

驚きと恐怖をふくめた目で遥香を見冷た。




「死にたいのか?」


「!?」


突如現れた謎のウサギ少女から質問されたアランは

一瞬顔を歪めた。


「ああ、死にたいね。」


「そうか…。」











いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや…。


その質問にその返しって…。

それツッコミ満載事件でしょう?

今それ聞く?

遥香は盛大に心の中ツッコミを入れた。





現在、遥香の身体の支配は、100%トレモロだった事は、

言うまでもない。




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