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お礼の言葉(ティアナside)

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 次の日も、その次の日も。
 私はエクレール様のところへ通った。
 でも、最初の日のようには扉を開けてくれなかった。

 この間は、ちょっと強引過ぎたかしら……
 警戒されちゃったみたい。

 でも、エクレール様のお役にたちたい気持ちがいっぱいで、止めることはできないの。
 ううん、違うわね。
 お役に立つじゃなくて、恩返しだわ。

 塔の上に閉じ込められていた私を救いだしてくれた方だもの。
 感謝してもし足りないわ。

 でも、どうやったら心を開いていただけるのかしら。
 信頼していただけるにはどうしたらいい?

 頑なな彼にせめてもと、魔力を込めたお花を一輪。執務室に残してくるようにした。
 本当は今も癒しが欲しいはず。きっとお辛いだろうから。


 その日も、エクレール様は扉を開けてくださらなかった。
 本当はお顔を見て、ちゃんとお礼を言いたかったのだけれど、それは当分叶いそうにないわね。

 私はふうっとため息を吐いてから、扉に手を添える。
 扉越しでもわかるの。エクレール様がこちらに気持ちを向けてくださっていることが。

 私を応援するかのように、どこからともなくまたフィーがやってきて、ピピッと鳴いた。

「フィー、来てくれたのね。あなたもエクレール様が心配なのね」

 手の中へ滑り込んできたフィーが、賢い瞳を向けて頷く。

 背中を押されるように、エクレール様へ語り掛けた。

「エクレール様、お忙しいところ申し訳ございません。実は、エクレール様にお伝えしたいことがありまして」

 カサリと身じろぐ音が伝わってくる。その後、静かに近づいてくる足音。
 扉の向こう側で立ち尽くす気配。

 鋭敏になった聴覚が、エクレール様の姿を伝えてくれる。

 私は意を決して、一番伝えたかった言葉を口にした。

「ありがとうございました」
「……」
「私を塔の上から救いだしてくださって。暗くて怖い塔の上での七年は、私にとって本当に辛いものでした。エクレール様が救いだしてくださらなかったら、私はあの塔で一生を終えたことと思います。私に、明るい光をくださってありがとうございます。楽しいという気持ちを、美しいと思う心を、人々の温もりを思い出させてくださって、ありがとうございます」
「……」
「だから、これからも私をエクレール様のお傍に置いていただけないでしょうか」
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