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Step5 胡蝶蘭男子の秘密を知りました
ハナニラ②
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室長の運転、思っていた以上に丁寧で乗り心地が良かったの。
高速をひた走った後は、海と山の美しい景色を堪能しながら進む。
オープンカーの屋根を開けたら、清々しい緑と、仄かな花の香りに包まれる。
「気持ちいいです!」
「そう、良かった」
シャツの胸元ボタンを開いた姿は、リラックスしているのにとてもカッコ良くて、思わずドキドキしてしまう。そんな私の表情を面白そうに盗み見た室長。
「今日のワンピースも可愛い」
「あ、ありがとうございます」
「脱がしづらいのが玉に瑕だけど」
「な、何、想像しているんですか!」
そんな言葉を言うなんて思ってもいなくて、思わず真っ赤になってしまった。
「うそうそ。でもやっぱり、花乃ちゃんはからかいがいがあるね」
「もう、知りません」
「拗ねた顔も可愛い」
「……」
笑いながら運転のスピードを緩めた室長。眺めの良いところで車を停めた。
目の前には、美しいコバルトブルーの海。
眩しそうに目を細めると、そのままシートを少し倒す。
次に私のシートの調整をしようと身を乗り出してくれたんだけれど、そうすると室長の顔が私の胸の辺りにきて―――
ど、どうしよう。ドキドキしちゃう。
胸の鼓動が室長に聞こえてしまいそう。
ううう。ダメダメ。意識しちゃだめ。これはたまたまであってなんでも無くて……
「大丈夫? 顔が固まっているよ。花乃ちゃんは本当に純情だな。でも一緒に居てほっとする」
「へ?」
「俺の周りってさ、玉の輿に乗ろうって女性がうじゃうじゃいるだろ。いつもギラギラとされているっていうか、圧が凄くてね。疲れるんだよね」
「はあ、確かに。でもそれは、室長が素敵だからだと思います。玉の輿より、きっと室長のことが好きだからですよ」
「花乃ちゃんも?」
「え!」
「俺のこと好き?」
思わず本当のことを言い掛けて、慌てて口を引き結ぶ。
室長の好きは、きっともっと軽い話のはず。真面目に答えたらいけない。
「そうですね。カッコいいと思いますよ。でも子供っぽいところもあるし、実は意地悪だし。私が困っているのを見て笑っているような人ですからね。どうかな」
「言うねー。でも、それでこそ雑草女子だ」
「私は確かに雑草系女子ですけれど、正確には『雑草男子推し』女子です」
「相変わらず好きなの?」
「もちろんです」
「そっか」
「はい」
なぜか満足そうな顔の高梨室長。
推し変しない私への信頼ってことでいいのかな。
「人間ってさ、一人の人をずっと好きでなんかいられるのかな?」
「え?」
「俺さ、愛人の子なんだよね」
室長は何気ないことのようにサラリと言った。
でも、その言葉の重大さがずしんと響いてきた。
「だからさ、俺は一人の人をずっと愛しているなんて言葉は信じていないんだよね」
高速をひた走った後は、海と山の美しい景色を堪能しながら進む。
オープンカーの屋根を開けたら、清々しい緑と、仄かな花の香りに包まれる。
「気持ちいいです!」
「そう、良かった」
シャツの胸元ボタンを開いた姿は、リラックスしているのにとてもカッコ良くて、思わずドキドキしてしまう。そんな私の表情を面白そうに盗み見た室長。
「今日のワンピースも可愛い」
「あ、ありがとうございます」
「脱がしづらいのが玉に瑕だけど」
「な、何、想像しているんですか!」
そんな言葉を言うなんて思ってもいなくて、思わず真っ赤になってしまった。
「うそうそ。でもやっぱり、花乃ちゃんはからかいがいがあるね」
「もう、知りません」
「拗ねた顔も可愛い」
「……」
笑いながら運転のスピードを緩めた室長。眺めの良いところで車を停めた。
目の前には、美しいコバルトブルーの海。
眩しそうに目を細めると、そのままシートを少し倒す。
次に私のシートの調整をしようと身を乗り出してくれたんだけれど、そうすると室長の顔が私の胸の辺りにきて―――
ど、どうしよう。ドキドキしちゃう。
胸の鼓動が室長に聞こえてしまいそう。
ううう。ダメダメ。意識しちゃだめ。これはたまたまであってなんでも無くて……
「大丈夫? 顔が固まっているよ。花乃ちゃんは本当に純情だな。でも一緒に居てほっとする」
「へ?」
「俺の周りってさ、玉の輿に乗ろうって女性がうじゃうじゃいるだろ。いつもギラギラとされているっていうか、圧が凄くてね。疲れるんだよね」
「はあ、確かに。でもそれは、室長が素敵だからだと思います。玉の輿より、きっと室長のことが好きだからですよ」
「花乃ちゃんも?」
「え!」
「俺のこと好き?」
思わず本当のことを言い掛けて、慌てて口を引き結ぶ。
室長の好きは、きっともっと軽い話のはず。真面目に答えたらいけない。
「そうですね。カッコいいと思いますよ。でも子供っぽいところもあるし、実は意地悪だし。私が困っているのを見て笑っているような人ですからね。どうかな」
「言うねー。でも、それでこそ雑草女子だ」
「私は確かに雑草系女子ですけれど、正確には『雑草男子推し』女子です」
「相変わらず好きなの?」
「もちろんです」
「そっか」
「はい」
なぜか満足そうな顔の高梨室長。
推し変しない私への信頼ってことでいいのかな。
「人間ってさ、一人の人をずっと好きでなんかいられるのかな?」
「え?」
「俺さ、愛人の子なんだよね」
室長は何気ないことのようにサラリと言った。
でも、その言葉の重大さがずしんと響いてきた。
「だからさ、俺は一人の人をずっと愛しているなんて言葉は信じていないんだよね」
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