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Step4 胡蝶蘭男子と同居することになりました
ヒメコバンソウ①
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昨夜のパーティーのことは、社内ではあまり話題になっていないようだ―――と思っていたのは大きな間違いだった。
無事だったのは最初の一日だけ。
次の日になると、『タカナシグループ御曹司の秘め恋』なんて話題が、週刊誌にスクープされて大変な騒ぎになってしまった。
って、ホテルから出てきた姿が写真に撮られている!
幸い私は背中を向けていて、顔が見えないようになっていた。しかも普段はしないお化粧バッチリだし。
綺麗な恰好もしているし。
おかげで私だと言うことはバレていないみたいなんだけれど……
経営企画室では、流石に大声でこの話題をする人はいない。
でも、室長が席を外していると、小声で囁き合う声がする。
「この女性だれかしら?」
「いいなぁ。玉の輿」
「御曹司のお見合いパーティーがパアになって、社長の機嫌が悪いらしい」
等など……
幸い、写真の女性が私ということはバレていない。
ほっと胸を撫でおろした。
ところが帰ろうとしたら、またまた高梨室長に捕まってしまったの。
エレベーターホールからいつもの会議室へ連行される。
「ねえ、花乃ちゃん、危険な目に合っていない?」
「別に、何も変わったことはありませんよ」
「そうか……なら良かった。でも、今夜は家に帰らない方がいいかも。多分週刊誌の記者が君のアパートの前で待っていると思う」
「え、えええ!」
思わず声を上げそうになった私の口を、室長が慌てて塞ぐ。
「声が大きい。すまない。君にここまで迷惑がかかることになるとは思ってもみなかったんだ。おやじを甘く見ていたよ」
「どういうことですか?」
「この騒動は、おやじがわざと記者を使っているとしか思えない。普段なら金でもみ消すのに今回はそうしなかった。多分記者と結託して君にプレッシャーをかけるつもりだ」
「そんなことしなくたって、偽装だったって言えば、社長もわかってくださいますよ。室長もこの際だから思い切って本音を話せばいいと思います」
ずいぶんと私も大胆になっちゃったなと思いつつも、ついつい腹立ち紛れに本音を言ってしまった。
高梨室長、逃げてないで、お父様と向き合えばいいのに。
その言葉に、室長も憮然とした表情になる。
「そんなことはとっくにやっているよ。今までだって、散々本音をぶつけてきたさ。それでもこんな顛末さ。でも、おやじが火に油を注ぐような真似をするとは、流石に俺も思っていなかったんだ。すまない。今日はこのまま堀井さんに乗せてもらって、俺のマンションへ身を隠すといい」
「そんな……その方がかえって誤解を大きくするじゃないですか」
「じゃあ、記者が待ち構えているアパートに一人で帰る?」
「……」
それはもっと嫌だ。でも……
「室長のマンションよりは、どこかのホテルに泊まった方が安全だと思いますが」
「いや、それだと君を守れない」
「ええ! ホテルにも記者が付いてくるかもしれないってことですか?」
なんだかとんでもないことになっちゃったなと愕然とする。
「身内の恥をさらすようで、申し訳ないんだが……今回のことは多分、君への警告のためだけに仕組まれたヤラセだと思う」
「え?」
「だから、君に付きまとうのはきっと本物の記者じゃ無くて、記者に扮した興信所の探偵だと思う」
「そんな……」
自分の知らない世界へ足を踏み出してしまったと後悔しても、もう遅かった。
無事だったのは最初の一日だけ。
次の日になると、『タカナシグループ御曹司の秘め恋』なんて話題が、週刊誌にスクープされて大変な騒ぎになってしまった。
って、ホテルから出てきた姿が写真に撮られている!
幸い私は背中を向けていて、顔が見えないようになっていた。しかも普段はしないお化粧バッチリだし。
綺麗な恰好もしているし。
おかげで私だと言うことはバレていないみたいなんだけれど……
経営企画室では、流石に大声でこの話題をする人はいない。
でも、室長が席を外していると、小声で囁き合う声がする。
「この女性だれかしら?」
「いいなぁ。玉の輿」
「御曹司のお見合いパーティーがパアになって、社長の機嫌が悪いらしい」
等など……
幸い、写真の女性が私ということはバレていない。
ほっと胸を撫でおろした。
ところが帰ろうとしたら、またまた高梨室長に捕まってしまったの。
エレベーターホールからいつもの会議室へ連行される。
「ねえ、花乃ちゃん、危険な目に合っていない?」
「別に、何も変わったことはありませんよ」
「そうか……なら良かった。でも、今夜は家に帰らない方がいいかも。多分週刊誌の記者が君のアパートの前で待っていると思う」
「え、えええ!」
思わず声を上げそうになった私の口を、室長が慌てて塞ぐ。
「声が大きい。すまない。君にここまで迷惑がかかることになるとは思ってもみなかったんだ。おやじを甘く見ていたよ」
「どういうことですか?」
「この騒動は、おやじがわざと記者を使っているとしか思えない。普段なら金でもみ消すのに今回はそうしなかった。多分記者と結託して君にプレッシャーをかけるつもりだ」
「そんなことしなくたって、偽装だったって言えば、社長もわかってくださいますよ。室長もこの際だから思い切って本音を話せばいいと思います」
ずいぶんと私も大胆になっちゃったなと思いつつも、ついつい腹立ち紛れに本音を言ってしまった。
高梨室長、逃げてないで、お父様と向き合えばいいのに。
その言葉に、室長も憮然とした表情になる。
「そんなことはとっくにやっているよ。今までだって、散々本音をぶつけてきたさ。それでもこんな顛末さ。でも、おやじが火に油を注ぐような真似をするとは、流石に俺も思っていなかったんだ。すまない。今日はこのまま堀井さんに乗せてもらって、俺のマンションへ身を隠すといい」
「そんな……その方がかえって誤解を大きくするじゃないですか」
「じゃあ、記者が待ち構えているアパートに一人で帰る?」
「……」
それはもっと嫌だ。でも……
「室長のマンションよりは、どこかのホテルに泊まった方が安全だと思いますが」
「いや、それだと君を守れない」
「ええ! ホテルにも記者が付いてくるかもしれないってことですか?」
なんだかとんでもないことになっちゃったなと愕然とする。
「身内の恥をさらすようで、申し訳ないんだが……今回のことは多分、君への警告のためだけに仕組まれたヤラセだと思う」
「え?」
「だから、君に付きまとうのはきっと本物の記者じゃ無くて、記者に扮した興信所の探偵だと思う」
「そんな……」
自分の知らない世界へ足を踏み出してしまったと後悔しても、もう遅かった。
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