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Episode4 プロデュース第三弾

石垣島ダイビング旅行 ⑯

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 身支度を整えた一華に、龍輝が声をかける。

「一華さん、今日は寝よう。疲れたでしょ」
「でも……」

 言い掛けた一華の手を取ってベッドに引っ張り込むと、後ろからぎゅっと抱きしめた。
 うなじに顔を埋める龍輝に、ピクリと緊張する一華。

「一華さん、俺たちの夜はまだまだいっぱいあるから。今日はゆっくり休もう。おやすみ」
 包まれるような温かさに、一華もまたウトウトとし始める。
「うん、そうする。お休み。龍輝さん」

 そのまま、二人はアッと言う間に眠り込んでしまった―――


 石垣島に来て、初めてゆっくりと起きた朝。

 ふっと明るい光を感じて、一華はそうっと目を開けた。

 目の前には揺れるカーテン。爽やかな風が吹き抜けてゆく。
 寝返りを打って龍輝の温もりを探す。

 部屋の中に気配を探せなくて心細くなる。

「あ、起きた?」
 髭をそりながら出てきた龍輝を見て、なぜかセクシーだと思ってしまった。

 そう言えば、龍輝さんの髭って意識したこと無かったなと思う。
 
 毎朝綺麗に剃っていたからなのね。

 チャームポイントの笑い皺が隠れてしまうけれど、髭の龍輝も渋くてカッコいいかも。などと妄想する。
 くすっと笑った一華を不思議そうに眺めながら、龍輝がまた洗面所へと消えていった。
  
「今日は少し観光しようか?」
「ドライブ?」
「そう」
「楽しみ」

 朝食後、早速石垣島一周のドライブに出かけた。

 ホテルを出て、西周りにスタート。
 まずは石垣島鍾乳洞を見学。自然が作り出した造詣が美しい。森のように林立するつらら石や石柱は神秘的だ。
 滴る水音を楽しむ水琴窟や、トトロの名前のついた可愛らしい鍾乳石もある。三、四十分で回れてヒンヤリと涼しい。

 次にインスタ映えする美しい川平湾で記念写真を撮る。グラスボートに乗ることもできるけれど、昨日まで散々海を見てきたので今日はパス。
 近くのパッションフルーツジュース専門店へ行って、テイクアウトと共にジュースのボトルを買った。
 甘酸っぱいジュースは一華のお気に入りの味になった。

 その後は巨大シーサーが立ち並ぶ『シーサー農園』で写真撮影。ユニークでカラフルなシーサーと八重山の自然のコントラストが美しい写真が撮れた。
 次に遊歩道の整備された『米原ヤエヤマヤシの群落』へ。入り口から十分ほどで、ジュラシックパークのような空間に迷い込める。マイナスイオンをいっぱい吸収。

 平久保埼灯台からの絶景を堪能した直後、雲行きが怪しくなってきた。
 
「雨降るね」
「石垣島に来て初めて。でも、この後はシーサーの色付け体験だから大丈夫だわ。タイミングまでバッチリ」
 
 一華の言葉に龍輝がまた胸を張る。

 予約していたのはブルーの扉の可愛らしいお店。
 
 色々な表情をした素焼きのシーサーを選んで自由に色を塗っていく。

 龍輝は思った通り指先が器用だった。細かなところも丁寧に塗り分けて、トロピカルなシーサーの出来上がり。
 一華も細かな模様を入れて、エキゾチックなシーサーの出来上がり。

 それぞれの雰囲気は全然違うのに、並べると絶妙に調和がとれている。

「並べて飾りたいな」
「そうしよう。一華さんの部屋に」

 その後は雨の中、そのままホテルへと帰ってきた。

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