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Episode4 プロデュース第三弾
石垣島ダイビング旅行 ⑮
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フワリフワリと往復しながら、心行くまでクリーニングしてもらったマンタ達。
やがてゆったりと泳ぎ去って行った。
思わず息を止めて見ていた一華は、慌てて大きく息を吐いた。
自らの視界に泡の幕ができる。
龍輝がポンと一華の肩を叩いた。水中スケールを取り出して感動を伝えてくる。
『ラッキーだったね』
『いつもよりゆっくりみれたよ』
その時、また龍輝が文字を書きなぐった。
『かめ』
え、かめ!
振り返った一華の目の前に、今度は亀もやって来た。
キャー! 亀も来た!
一華と龍輝を気にする様子も無く、ひゅーっと近づいてくる。
珊瑚の隙間に顔を突っ込んでは海藻をもぐもぐ。
可愛い!
二人でアイコンタクト。
亀と一緒にしばらく泳ぐことができた。
大興奮の一華はボートに戻ってからも、しばらく放心状態で座り込んでいる。
横にやってきた龍輝がビデオをチェックしながらその様子をチラリ、チラリと見ている。
「一華さん、マンタにも亀にも会えるなんて、本当にツイているよ」
「そうだよね。嬉しい。もう、スッゴク可愛かった。ああ、夢が叶ったわ」
素直に喜びを爆発させている一華が可愛くて仕方ない。
撮影した一華の姿を確認して、その出来栄えに龍輝も大満足。
上手く、マンタと一華、亀と一華を同じ画面に映し込むことに成功していた。
これで、一華さんの記念すべき『マンタ&亀との初対面日』が記録に残せたぞ。
三日連続の海での生活は、ひとまず今日で終わり。
たくさんの生き物に出会えて未だ興奮冷めやらずの一華は、いつの間にか帰りの車の中で眠ってしまった。
駐車場に停めて、そうっと一華を覗き込んだ龍輝は、そのまま寝顔をしばらく眺めていた。
ここにも観察したい女性がいる。
まだまだ分からないことばかりだけれど、だからこそいくらでも見つめていたくなる。
でも、他の生き物と違って言葉が通じるから嬉しい。
ずっとがんばっていたからな。疲れたんだろうな。
反対側の扉を開けると、そっと横向きに抱きあげた。
まどろみの中、急にふわっと浮遊感を感じて、一華ははっと目を開けた。
目の前には龍輝のたくましい胸板。
あ、れ? ここはどこ?
見上げた先に龍輝の顎。揺れる体。
私、お姫様だっこされている!
慌てて龍輝の胸を叩く。
「龍輝さん、ありがとう。ごめんね。歩けるから」
「おお、起こしちゃった。ごめん」
龍輝が足を止めた。
駐車場からホテルまでの外灯の下。龍輝の顔は陰になっているが、その瞳が優しいことはわかっている。
「ううん。ごめんね。重いでしょ」
「全然」
「でも……」
「折角筋トレしたから、成果を見せたいと思っていたんだ。どう? 乗り心地は」
「……スッゴクいいです」
胸の中で赤くなって答える。
「嬉しいけれど……とっても嬉しいんだけれど、ホテルの中をこのまま歩くのは、ちょっと恥ずかしくない?」
「そうかなぁ」
残念そうな龍輝。
「俺は別にいいけれど、一華さんが恥ずかしいなら」
そう言って、そっと足を降ろしてくれた。
「ごめんね。ありがとう。でも、お姫様気分を味わえて嬉しかった」
「じゃあ、部屋に入ったらもう一度やろう」
「もう、龍輝さんたら」
一華は本気で辞退したい気分だった。
だって、嬉し過ぎて心臓持たないんだもの!
やがてゆったりと泳ぎ去って行った。
思わず息を止めて見ていた一華は、慌てて大きく息を吐いた。
自らの視界に泡の幕ができる。
龍輝がポンと一華の肩を叩いた。水中スケールを取り出して感動を伝えてくる。
『ラッキーだったね』
『いつもよりゆっくりみれたよ』
その時、また龍輝が文字を書きなぐった。
『かめ』
え、かめ!
振り返った一華の目の前に、今度は亀もやって来た。
キャー! 亀も来た!
一華と龍輝を気にする様子も無く、ひゅーっと近づいてくる。
珊瑚の隙間に顔を突っ込んでは海藻をもぐもぐ。
可愛い!
二人でアイコンタクト。
亀と一緒にしばらく泳ぐことができた。
大興奮の一華はボートに戻ってからも、しばらく放心状態で座り込んでいる。
横にやってきた龍輝がビデオをチェックしながらその様子をチラリ、チラリと見ている。
「一華さん、マンタにも亀にも会えるなんて、本当にツイているよ」
「そうだよね。嬉しい。もう、スッゴク可愛かった。ああ、夢が叶ったわ」
素直に喜びを爆発させている一華が可愛くて仕方ない。
撮影した一華の姿を確認して、その出来栄えに龍輝も大満足。
上手く、マンタと一華、亀と一華を同じ画面に映し込むことに成功していた。
これで、一華さんの記念すべき『マンタ&亀との初対面日』が記録に残せたぞ。
三日連続の海での生活は、ひとまず今日で終わり。
たくさんの生き物に出会えて未だ興奮冷めやらずの一華は、いつの間にか帰りの車の中で眠ってしまった。
駐車場に停めて、そうっと一華を覗き込んだ龍輝は、そのまま寝顔をしばらく眺めていた。
ここにも観察したい女性がいる。
まだまだ分からないことばかりだけれど、だからこそいくらでも見つめていたくなる。
でも、他の生き物と違って言葉が通じるから嬉しい。
ずっとがんばっていたからな。疲れたんだろうな。
反対側の扉を開けると、そっと横向きに抱きあげた。
まどろみの中、急にふわっと浮遊感を感じて、一華ははっと目を開けた。
目の前には龍輝のたくましい胸板。
あ、れ? ここはどこ?
見上げた先に龍輝の顎。揺れる体。
私、お姫様だっこされている!
慌てて龍輝の胸を叩く。
「龍輝さん、ありがとう。ごめんね。歩けるから」
「おお、起こしちゃった。ごめん」
龍輝が足を止めた。
駐車場からホテルまでの外灯の下。龍輝の顔は陰になっているが、その瞳が優しいことはわかっている。
「ううん。ごめんね。重いでしょ」
「全然」
「でも……」
「折角筋トレしたから、成果を見せたいと思っていたんだ。どう? 乗り心地は」
「……スッゴクいいです」
胸の中で赤くなって答える。
「嬉しいけれど……とっても嬉しいんだけれど、ホテルの中をこのまま歩くのは、ちょっと恥ずかしくない?」
「そうかなぁ」
残念そうな龍輝。
「俺は別にいいけれど、一華さんが恥ずかしいなら」
そう言って、そっと足を降ろしてくれた。
「ごめんね。ありがとう。でも、お姫様気分を味わえて嬉しかった」
「じゃあ、部屋に入ったらもう一度やろう」
「もう、龍輝さんたら」
一華は本気で辞退したい気分だった。
だって、嬉し過ぎて心臓持たないんだもの!
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