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Episode3 プロデュース第二弾
胃袋を掴んで目指せシックスパック! (一華side)⑨
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洗い物を終えてほっと一息。
「ねえ、龍輝さん。ソファでちょっと待っていていただけませんか。とっておきを用意するので」
「お、サプライズですね。了解!」
瞳を輝かせた龍輝、今度は大人しくソファへ腰を下ろした。
この後は、大人の時間の演出よ!
まあ、今日直ぐに、どうこうって話じゃ無くて……成り行きでそうなったら別にいいんだけれど……でも、ムードづくりくらいはねぇ。
色々言い訳しながら、一華はグラスワインの準備をする。
少しくらいは飲んでもいいよね。後、ちょっとだけ甘い物も。
手作りナッツ入りブラウニーはカカオ多めのビターな仕上がり。昨夜作って冷やしてあるので、しっとりと濃厚な味わいが深くなっている。
小さく切り分けて、マスカルポーネチーズを添えて、ミントの葉を飾る。
酸味の少ない赤ワインを合わせたら完璧よ。
部屋のライトを間接照明に切り替えようと覗いてみれば、ソファのクッションに頭を突っ込んでいる龍輝の姿。
あ、あれ?
慌てて近づいてみると、すやすやと眠っている。
え! 嘘!
あまりにも無防備な姿に面食らいつつも、チャンスとばかりにそうっと床に座って寝顔を覗いてみた。
クッションに顔半分埋もれさせながら、気持ち良さそうに寝息をたてている。
長い睫毛、筋の通った鼻。いつもはきゅっと引き締まっている口元が軽く緩んでいて、ピンクの唇が艶やかだ。
額に無造作にかかる髪、白い耳朶に繋がる骨ばった顎のラインが引き締まっていて美しい。
一つ一つに視線を移しながら、一華は心臓の音がどんどん大きくなるのを感じていた。
忙しいところ、必死で時間を作ってくれたのね。それなのに、ジムで体を動かして、皿洗いまで張り切ってやってくれて。
一華の家に来ても緊張していないように見えていた龍輝。実はとても気を張っていたのかもしれないと思った。
お疲れ様……
心の中で呟きながら、そんな龍輝の寝顔に触れたくて仕方ない。
体の芯から込み上げてくる衝動に抗いながらも、一華の顔は龍輝に近づいていく。
龍輝の唇……どんな味がするかしら……
その時、ぱちりと龍輝の目が開いた。慌てたように起き上がる勢いに押されて、一華も飛びのいた。
「あ! すみません。寝ちゃってた」
「あ、その、あの、お疲れだなと思って」
「ごめん。ソファに座ったらマシュマロに包まれたような感じになって、睡魔に勝てなかった」
パチパチと瞬きして体を起こした龍輝。飛びのいた格好のまま固まっている一華に、バツの悪そうな笑顔を向けた。
「初訪問で寝ちゃうって、どんだけ図太いヤツだと思われましたよね」
「いえ、お疲れだったんだなと思って。それなのに、ジムで更に疲れさせちゃったかなって」
一華の言葉に龍輝の瞳が深い色を湛え始めた。
「君は優しいね」
ふわりと漂う大人の落ち着き、色香。
一華さんでは無くて、『君』。
いつもの龍輝と違う雰囲気に、完全に一華は飲まれていた。
「ねえ、龍輝さん。ソファでちょっと待っていていただけませんか。とっておきを用意するので」
「お、サプライズですね。了解!」
瞳を輝かせた龍輝、今度は大人しくソファへ腰を下ろした。
この後は、大人の時間の演出よ!
まあ、今日直ぐに、どうこうって話じゃ無くて……成り行きでそうなったら別にいいんだけれど……でも、ムードづくりくらいはねぇ。
色々言い訳しながら、一華はグラスワインの準備をする。
少しくらいは飲んでもいいよね。後、ちょっとだけ甘い物も。
手作りナッツ入りブラウニーはカカオ多めのビターな仕上がり。昨夜作って冷やしてあるので、しっとりと濃厚な味わいが深くなっている。
小さく切り分けて、マスカルポーネチーズを添えて、ミントの葉を飾る。
酸味の少ない赤ワインを合わせたら完璧よ。
部屋のライトを間接照明に切り替えようと覗いてみれば、ソファのクッションに頭を突っ込んでいる龍輝の姿。
あ、あれ?
慌てて近づいてみると、すやすやと眠っている。
え! 嘘!
あまりにも無防備な姿に面食らいつつも、チャンスとばかりにそうっと床に座って寝顔を覗いてみた。
クッションに顔半分埋もれさせながら、気持ち良さそうに寝息をたてている。
長い睫毛、筋の通った鼻。いつもはきゅっと引き締まっている口元が軽く緩んでいて、ピンクの唇が艶やかだ。
額に無造作にかかる髪、白い耳朶に繋がる骨ばった顎のラインが引き締まっていて美しい。
一つ一つに視線を移しながら、一華は心臓の音がどんどん大きくなるのを感じていた。
忙しいところ、必死で時間を作ってくれたのね。それなのに、ジムで体を動かして、皿洗いまで張り切ってやってくれて。
一華の家に来ても緊張していないように見えていた龍輝。実はとても気を張っていたのかもしれないと思った。
お疲れ様……
心の中で呟きながら、そんな龍輝の寝顔に触れたくて仕方ない。
体の芯から込み上げてくる衝動に抗いながらも、一華の顔は龍輝に近づいていく。
龍輝の唇……どんな味がするかしら……
その時、ぱちりと龍輝の目が開いた。慌てたように起き上がる勢いに押されて、一華も飛びのいた。
「あ! すみません。寝ちゃってた」
「あ、その、あの、お疲れだなと思って」
「ごめん。ソファに座ったらマシュマロに包まれたような感じになって、睡魔に勝てなかった」
パチパチと瞬きして体を起こした龍輝。飛びのいた格好のまま固まっている一華に、バツの悪そうな笑顔を向けた。
「初訪問で寝ちゃうって、どんだけ図太いヤツだと思われましたよね」
「いえ、お疲れだったんだなと思って。それなのに、ジムで更に疲れさせちゃったかなって」
一華の言葉に龍輝の瞳が深い色を湛え始めた。
「君は優しいね」
ふわりと漂う大人の落ち着き、色香。
一華さんでは無くて、『君』。
いつもの龍輝と違う雰囲気に、完全に一華は飲まれていた。
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