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Episode2 プロデュース第一弾

寄り添うための一歩 (一華side)⑥

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「実はとてもシンプルな生き物なんですよね。体も水分がほとんどで、ゼラチン質のプランクトンなんです」
「プランクトンなんですか?」
「一見泳いでいるように見えるんですけれど、これは心臓と同じ働きで、この収縮する動きで体内を循環させているだけなんです。だから基本、漂っている生き物ですね」
「漂っているだけなんですね」

「一華さん、ゼラチンと言ったら?」
「え、えっと……ゼリー。あ、後コラーゲン?」
「おお、その通りです。実はゼラチンはコラーゲンからできているんですよね。分子のレベルが違うんです。つまりコラーゲンに熱をかけて分解した状態がゼラチンと呼ばれています」
「じゃあ、コラーゲンよりゼラチンの方が小さいってこと?」
「そうなりますね」
「ゼラチン食べた方が吸収が良いのかしら?」
「ははは、流石一華さん。美肌を作るのは内側からですからね。そしてサイズが小さいほうが吸収しやすくなるでしょうね」
「面白い。クラゲの話から美肌の話になるなんて」

 無邪気に面白がる一華を、龍輝が目を細めて見つめてきた。

「そう言ってくれると思っていました」
「え?」
「知識は底なし沼のように、追っても追っても追いきれないほど深いです。その上、連想ゲームのように横にも広がっていく。だから面白いし飽きないんですよね。それを一緒に楽しんでもらえるなんて最高です」

 見つめ返した一華の心臓を射るのは、歓喜に全振りした無垢な瞳。

 ああ、またられてしまう……

 刺さった矢を抜くこともできずに、そのまま二人の世界へと入り込んで行った。


 歓声を上げながら後ろを通った子どものお陰で我に返る。

 そうだった。ここは水族館。しかも子ども向け。

 ハッとして二人で同時に水槽に視線を戻した。

 恋人たちの様子には無頓着に、ふわふわと漂うクラゲたち。
 姿を見ていると、一緒に揺蕩うような不思議な感覚になる。
 体の記憶が導き出すのは波の揺らめき、潮の香。
 だが、それよりも深く魂が癒されるのは、遺伝子に刻まれた太古の生命の記憶が呼び起こされるからだろうか。

 一華は自分も浮いてしまいそうな浮遊感を感じて、思わず龍輝の腕に両手でしがみついた。
 気づいた龍輝がふわっと右手を重ねてくる。

「次は光るクラゲに行きましょう」
 まだまだ語り足りない様子の龍輝。喜々として一華を引っ張って行った。

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