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Episode2 プロデュース第一弾

馬子にも衣裳なんて言わせない (一華side)⑬

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 こちらもリサーチ済みの一華。さり気なく商品を手に取って龍輝に勧めていく。

「もしよかったら、あの……龍輝さんも試着されませんか。洋服は実際に着心地をみないとわからないことばかりなんですよ。ほんの少しのパターンの違いと、自分の体形のマッチングが上手くいかないと、着ていて違和感を感じてしまうんです。そうすると、箪笥の肥やしになってしまうから」

「なるほど。俺はいつもテキトーに買っていました。会社は白衣に着替えてしまうからラフな格好ばかりだし、着て行くところも無いから数枚あれば事足りるし。必要最低限しか持っていないかも。だから今日は何を着たらいいか凄く困りました。でも、これから一華さんと出かけることを考えたら、少し増やしておきたいですね」 

「そんな……よろしかったら、お手伝いさせてくださいませんか?」
「いいんですか! 良かったー。どうにも不慣れで」
 
 クシャリと笑った龍輝。
 喜びが素直にだだ漏れの瞳に、一華の母性がくすぐられる。

 なんか、物凄く頼りにされてるんだけど……でも、こういうの嫌じゃないわ。

 普段だったらバッサバッサと辛口判定しがちな一華だったが、龍輝にはついつい甘々になってしまうようだ。
 
 こんな風にさらりと弱みを見せられても、カッコ悪いとか、頼りがいが無いとか思わないのよね。
 不思議な男性ひとだわ。
 うふふ。でもこれで堂々と洋服を選べるわ。

 心の中でガッツポーズしながら、喜々として洋服を選び始めた。 
 
 と言っても、いきなりモード感バリバリの洋服を着せても抵抗感あるわよね。
 まずは、色味が同じでもデザインの違いで印象が変わることを実感してもらおうかな。

 敢えて、今日の龍輝と同じ色合いで抜け感のあるデザインを選んだ。

 紺ブレの代わりに、紺色のシャツジャケット。
 白い長そでシャツの代わりに、白のタンクトップTシャツ。
 濃紺ジーンズの代わりに、黒のテーパードパンツを。

 試着室に消えた龍輝をワクワクとした気持ちで待つ。

 さあ、お楽しみのファッションショーの始まりよ!

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