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Episode2 プロデュース第一弾

馬子にも衣裳なんて言わせない (一華side)⑩

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 試着室の前で所在なげに佇む水島に、店員が気を配って話しかけているのが聞こえる。一華は大急ぎで一着目のシャツワンピースを着ると、静かにカーテンを開けた。

「お……」
 真正面から捉えてきた水島の目が楽しそうに煌めいた。
「綺麗な水色で夏らしくて爽やかですね。モデルさんみたいです」
「そんな……嬉しいです」
 あまりにも真剣に見つめられて、吸い込まれそうな感覚になる。

「クルって、回転してみてもらえますか?」
「え?」
「後ろも見たいなと」
「ああ、わかりました」
 一華は慌ててひらりと裾を揺らしてから振り返った。

「これで、いいですか?」
「おお。優雅ですね。凄く似合っています」
「ありがとうございます」
 一気に気恥ずかしさが沸き上がってきて、一華は頬を赤らめた。

 男性の視線にどう映るのか。いつも綿密に計算して振る舞っていた一華にとって、予想外の感情。
 水島に見つめられた途端、冷静さが淡雪のように解けてしまった。
 代わりにマグマのように駆け巡る血流。

 思ってもみなかった自分の反応に驚いた。

 やだ。私ったら、何を舞い上がっているの?
 男性に見つめられるなんて、慣れていることなのに……

「もう一つも着てみますね」
 隠れるように試着室に入って、もう一つのツーピースに着替えた。

「おお、今度はパンツスタイル。新鮮でいいですね」
 
 すうっと背筋を伸ばして軽く腕を組んだ水島の立ち姿を美しいと思った。
 
 自分で仕掛けたはずなのに。
 こんなはずじゃなかったのに。
 
 熱が冷めない―――

 そっか。初めてだからだ。
 こんなに綺麗な曇りの無い瞳に見つめられたのは。


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