骨騎士と姫

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正義の執行官

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滞在期間の残り二日を遊んだり休んだりとティナと過ごした俺は山岳地帯に入った。

ここは道が急で鎧を着て歩いて居た当時はみんなろくに動けなかったのを覚えている。

ーそんなにガチガチに着てるから動けないんすよー

あぁ、確かあいつは動けたっけな。
「スケ、この道疲れるよ。」


「もうギブアップか?」

「っ。まだあるけるもん」

そういうと、また一歩づつと踏み出し俺の下までたどり着き。

「スケ、ギブアップ。」

力尽きた

「うん、まぁよく頑張った」

そういうと、俺はティナを肩に跨れせる
「疲れたー。」

まだまだ、道は始まったばかりだが大丈夫だろうか。





「おい、そこのお前ら止まれ」

大丈夫じゃなかった

その声を聞きティナを下ろして手を両手をあげる

「その場に金をおいてどっかにいきな」

声が聞こえるのに、場所が掴めない。

「姿が消せるのか?それなら自分で取りに来ればいいだろ」
声の距離からして視界に映る範囲には居るはず。


「いいから置いていけ!じゃないとこのガキを。」

ジャリ。

確かにティナの横で足音がした。

「ティナ!伏せろ!」

その声を聞いたティナがしゃがむ。
その場所に剣を振り抜く。

ガツン。

重い感触が手に伝わる。

「お前、本当にただの奴隷か?。」

声の主はゆっくりとその場に姿をあらわす。

ひょろひょろの体に、ボロボロの鎧。フードの様なものの下には鉄の兜をかぶっている
そして、一番目につく体を覆うほどの大きな盾に槍。

「さっきのはなんだ?」

「姿を隠しの魔法。ってなんでお前に教えなきゃいけない!」

盾を構え槍をしっかりと構える。
体型の割に力はかなりあるのだろう、てなきゃ、この場所でこの大きさの盾をもって動けない。

「お前ほどの奴なら冒険者ギルド何かにいけば楽に金を稼げるぞ」

「うるさい!!気安く俺に話しかけるな!」

「まぁ落ち着け、無益な争いは好きじゃないんだ。」

「無視しないから、そんなに悪いひとじゃなさそうだよスケ。」

「ぐ。」

やる気が削がれたかのように、がっくりと頭を落とす。

「お前ら、本当に俺を知らないのか?。」

「すまない。」
「ごめんなさい」

「まぁいい、とにかく付いて来いよ。」
そういうと、男は手招きをしつつ山を登っていく、そしてすぐ先にあった山肌に手を当て呪文を唱えた。
するとさっきまで壁だった場所に扉が現れる。

「すごい!」

純粋な喜びでティナが声をあげる

「なにこれくらい朝飯前よ。」

満更でもなさそうだが、なんかイラっとする

扉を開け中に入ると小さなベッドからと机に一つの椅子がある無骨な部屋があった。
部屋の隅にあった木箱を二つ俺らに差し出すと

「まぁ座ってくれ。」

俺らは木箱に座った


「そろそろ名前くらい教えてくれもいいんじゃないか」

「あぁ、ここらじゃかなり有名なんだがな」

「俺の名前はグナースっていう、巷じゃ指名手配の懸賞金10万の大物だぜ。」

そういうと頭を抱え込んでため息をつき始めた。

「グナースだってスケ知ってた?」

「いやまったく」

「逆になんか傷つくな、おい」

グナースか、ほんとうに聞いたこともないぞ。

「そんな大物がなんでわざわざ小銭稼ぎに俺らを襲った」

「アルビノの小女を連れた奴隷なんて不思議過ぎて声もかけたくなるだろ。」

はっ!とした顔をティナがする。
おれもしたが、表情は二つの要因で読み取れないだろ
そうあえば疲れのあまりティナはフードを外していたのだ。
街の事件いこう、外ではフードを被る約束をしていたのだ。

「おれも気づいていなかったきにするな」

言った本人が情けない。

「うん。」

「それで、声をかけた理由は分かるがなんで金を要求したんだ?」





「あぁ、金が嫌いなんだ」


何か、深いわけがそうだな。

「で、何をやらかしたんだ?」

そう聞く俺にグナースは簡単に告げた。




「殺人、横領、逃亡、誘拐、放火そんなところさ。」

「たいそうな経歴だな。」


「なに、大したことはないさもう誰も覚えてないだろう、未だに残ってるのは俺にかかった懸賞金が目当てのやつがたくさんいるってことだ」

「なんで、お前らをこんなとこにまで連れてきたんだろうなおれは、誰かと話したかったのかな。」

独り言のようにグナースはつぶやく。
フードをまとった鉄兜で表情は見えないがどこか悲しげなオーラを出していた。

その場にあった沈黙をティナがやぶる




「この盾おっきいね!」
そういうティナが盾をツンツンとつついたときだった。

何かが頭の中に入って来る、


「なんだ、いきなり!」

グナースも頭を抑えている。


盾の、記憶か?







山岳地帯は犯罪が横行する大変な危険地帯だった。
そこでおれらは結成された、
執行隊
罪なき者を守り、悪には裁きを
その教えを実行する
山の中で気配を消しパトロールをし犯罪者を見つけてはそこで直接裁く。

姿隠しの擬態の魔法は執行隊へのみ渡される麓の街の市長からの贈り物だった。
初代市長はかつては魔法使いとして名を馳せ。
山岳地帯に入る際に休む場所があればきっと旅人の助けになると街を立てた。



っていうのが栄光ある市長の話、今の市長は受け継がれた姿隠しを悪用しては悪さをする小悪党と化している。




そして執行隊に送られるもう一つのもの、それが俺黒の大盾だ、罪なき人を護る、そんな意味が込められて作られていた。
俺を受け取ったのはひょろひょろのガキだった。
だがこのガキ細い見た目の癖に割と力がある。
山の中を駆け回っては賊をさばいた。



そんなある日のことだった。

「金を置いてどこかにいけ」

執行隊のメンバーが冒険者のパーティを恐喝している現場を見てしまった。
姿隠しを使っているもの同士は姿を認知できる。
俺の持ち主は何かのいたずらをしているんだろう。きっとそうだ。
そんな言い訳を自分にしていた

「どこに隠れてんだ!」

「金を置け、さもなくば。」

その声の次の瞬間、執行隊のメンバーの持つ槍が、冒険者の一人を突き刺した。

「あ、あ。」


「わかった!置いていく。」

「ちくしょう、何処に居るんだ!」

冒険者達が金を置いてその場から去ろうとする。

ブスリ、ブスリ、ブスリ。

耳障りな音が耳に伝わる。
犯罪者を狩るためのはずの俺らが。
罪なき人を殺し。
罪を犯して居る。

執行隊の盾は、罪なき人の返り血で濡れていた。


このガキは山中を駆け回った。
ガキ以外のメンバー全員が姿隠しを悪用していた。
山の中だけでなく街の中でも悪事を働く者もいた。


その次の日だった、ガキは執行隊メンバーの元へ一人づつ向かい。

一人残らず殺した。






「俺は、正しいんだ。悪は制裁が必要なんだ、俺はおれは。正しい。」

自分に言い聞かせるようにガキは涙をポロポロと流す。
自分より体格のいい相手を殺して回った人間とは思えない。


執行隊の死体が見つかったことでガキは追われる身となった。
しかしガキを見つけた人間はみなガキにかかった賞金よりも
その能力を欲しがった。
「監獄には渡さないからおれらに協力してくれよ!」

「金が沢山手に入るんだ、」

「沢山金が取れるぞ!」

「金が、」


どいつもこいつもそう言う
金が、女が、物が。



こんな能力が人を惑わせる。




ガキは村長を刺し殺しその家を燃やした。
姿隠しはこの世でガキだけのものになった。




放火、殺人、逃亡

世紀の大悪人としてガキは追われる身となった。
正義を貫いた筈の者が悪人と呼ばれている。

笑っちゃうくらいおかしいことだ。
「金を置いていけ」
ガキはそれから山を通る人にこう質問するようになった。

その度に相手からは聞き飽きた回答がくる。

突き出したりしないから、その代わりにその能力をつかってだの。
彼らが求めるのはガキの能力

脅して置いて言った金を拾って貯まればその金で奴隷を買い有り金をわたす。
そしてこういうのだ
「金なんかに自分を見失うな、犯罪に手を染めそうになったら奴隷の頃を思いだせ。」
そう言って奴隷の布袋を頭から外してやる。
泣きながら奴隷はお礼を言って何処かに消えていく。



奴隷商から離れまたやまに帰ってきたときだった。

幼いアルビノの少女と奴隷の二人を見つけた。

そして、その奴隷の一撃がおれに当たる。
誰かの攻撃がおれに当たるのはものすごく久しぶりだった。
願いにも満ちたガキの気まぐれだろうか。
その二人を自分の小屋に連れていく。
正しいことをした自分。
自分の能力じゃなくておれ自身を評価して欲しい。
ガキの望みが本当にこの二人なら解決してくれるのかね。

もごもごと話しなくそうなガキをよそに、

ガキより小さなガキがおれに触れる






「なんだ」

「こんなにそばにおれを認めてる奴がいたのか。」

グナースは盾に触れるとそう呟いた。

「俺はむかし奴隷だったんだ。でも執行隊の人に救われた、正義をつらぬく彼らは俺のヒーローだった。」
溜まっていたものを出すようにグナースは続ける
「憧れの人には慣れたけど、一人で全部やってきただから。」

「おれは正しいって誰かに言って欲しかったんだ。」
そういうグナースは盾に頭をくっつけ泣いていた。

しきりにありがとう、ごめんと呟いていた



「ティナちゃんって言ったっけな。ありがとう、」

「うん、よかったね」
そう言いながらティナは泣いていた


人を殺すことは決して許されることではない。
それは正義を重んじる彼が一番わかっていた事だろう。
それでも執行隊、自分を救って来れたものを穢されるのを許せなかったのだろう。


「お礼と言っちゃなんだが今日は泊まっていけよどうせ野宿なんだろう?」

「あぁお邪魔させてもらおう」

「やったー!!!」


まぁ山の野宿なんて危険がいっぱいだしな。
ご好意にあまえよう。





「ティナちゃんはケーキって食べたことあるか?」

「ない!」

少しだけ賑やかな夜になりそうだ
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