骨騎士と姫

sbadow

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巨人の勇者

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処刑人のいた村の跡を抜け再び歩き出した
その間目にしたものは、壊れた家、焼けた建物、オークの群れ。
盗賊。
そんなものばかりだった。
「スケ、ここなんもないね。」

「昔はたくさん人がいたんだ、毎日お祭りみたいに賑やかで、こんな場所とは無縁なところだったよ。」

俺の記憶した、この場所はこんなにも死の匂いが色濃くついた荒野なんかじゃなかった。
時間というのは恐ろしいものだな。
つくづくそう感じてしまうのだ。

「ティナ、そこの岩陰で休もう」

歩いていた先に岩肌の下にできたくぼみを見つけた。
このなら少しゆっくりできるだろう。


慣れた手つきで俺は火をおこす。

簡易的な折りたたみの台を薪にのせその上に鍋を置き、スープの缶を流し込む。
「今日はコーンスープだね。」

「あぁ」

空腹とは無縁になったこの体と違い、ティナの腹は減る。
こんなスープの缶一つで済ませてしまうのは気が引けたが、山岳地帯に着くまで、村は一つとしてないのだ。
我慢してもらうほかはなかった。


パチパチと音を立てる火を眺めながら、ティナと他愛のない話をした。
昔の街並み、剣の研ぎ方。
スープがふつふつと言い出すと、コップを取り出しそっちに注ぎ直す。
コップにそそいだスープをティナに渡す。
「あちち。」
ふーふーと息ふきかけながらティナはスープを飲み始めた。

「ティナのお母さんはどんな人だったんだ?」

「えっとね、優しくて魔法が上手だったのそれといつも故郷の雪の国の話をしてた、でもその話をするときはなんか寂しそうだった。」

雪の国、魔王の城がある場所、そこが故郷となると、逃げ出してきたのだろうか。
ティナは人間だ、その親である母もおそらく人間だろう。
なのになぜ、故郷があそこなのか俺は頭の中をグルグルと巡るこの疑問を着けば解決すると、決め手終わらした。
不毛だと思ったからだ。

「スケは騎士団にいたんでしょ?ルーカスの他に誰がいたの?」

「俺、ルーカス、そしてあと5人はいたな、でも思い出せないんだ名前が。」

ルーカスのときもそうだった、騎士団の頃の記憶が曖昧だ。

ルーカスの時のようにまた、出会うことがあれば思い出すこともできるのだろうか。


「ねぇスケはお姫様のことが好きだったの?」

「ん、あぁそうだな、好きだったよ」

だった、と言った、いや言えたのは自分の中で整理がついたのではなく、おこがましさ、好きなんて言える立場にないという気持ちが少しはあったのかもしれない。

「ふーん、そうなんだ。」

なぜかティナは少し不機嫌そうだった。

「どうした?やっぱり飯が足りないか?」
まだ子供なのだ当然か、と思い質問はすると

「違うもん!!」

そういうと毛布に丸まって寝てしまった。







子供の気持ちってのは分からないもんだ。




そんなことを思いながら岩肌にもたれかかった。

岩肌にかすかな振動が伝わってくる。



これは、この裏に川があるのか?


水も余裕があるわけではなかった。


「ティナ、この裏に川がある、少し水をついでくるから何かあったら叫ぶんだぞ。いいな?」
薪の火を消しながらそう言った
「...うん。」
返事をしたのを確認し岩肌の裏に回っていく。
荒野の地帯は岩肌に囲まれた土地だ、壁沿いに進んできたお陰で思わぬ幸運があったものだ。


裏に回ると小さな洞窟があった
洞窟があるならこっちにすればよったな。
そんなことを思いながら奥へ進んでいく。

月明かりを頼りに奥に進む、

ピチャ。

足が水に触れる、川というより湧き水という表現が正しいのだろう。
小さな池ほどにたまったの湧き水が出ていた。

水筒にまんたんまでいれ。
ティナのところに戻った。


戻ると、毛布にくるまったティナの横に青色の大男が座っていた。
剣を抜き全速力で向かうところで

「スケ!違うのこの人いい人なの」


そう呼び止められた。


「これは失礼した、私はブルーオーガのギラという。こんな見た目では驚かれるのも無理ない。」

ギラと名乗る大男が振り返った。
鉄の兜で頭はを覆われてるのにたいして、片方の腕がと膝から下がムキ出しのよろいを着ていた、何より見える肌は真っ青だった。

「いえこちらこそ失礼した。」

手を差し出したところで、かおにマスクをかぶっていなかったのを思い出した。

ギラは俺の手を掴むとこう言った。

「まぁ、珍しい者に会うこともあるもんだ、あんたスケルトンか?」

「あぁ、そうだそんなに驚かないんだな。」

「何、わたしは目が見えないんだ、大昔の戦いで光を失ってしまった」

そうか、それで俺の顔を見ても何にも言わなかったのか。

「スケはわたしの騎士なの!」

ティナがそういうと、ギラはそうか!それは凄いと、豪快に笑い出した。

「昔に騎士といえば、こんなことなあってな。」

ギラはそういうと話し始めた。



ブルーオーガは加護を受けた湧き水から生まれる。
最初のブルーオーガは水を汚す愚かな者達に罰を与えるために女神がこの地に出した者だ。
それからそれを護ってきた
はるか向こうの雪国雪解け水、そこから私の先の者たちは生まれたのだ。
我々はもともと侵略者だった、遠い雪の国を魔王に追われ、この街を襲わんと、何度も街に攻撃を繰り返した。

そうして、沢山人を殺した者に与えられる称号が勇者だった。

先の者達が街を荒らす中で、私はこの地の湧き水から誕生した。

先の者達は私に人の狩かたを教えた。
どうして人を狩るのか?
そう一度質問したことがあった。
そうすると、こう返されたのだ。弱いからだ、弱い者に生きる道はない弱い者達に変わり私達がこの地を頂くのだと。

そう言いながら血に濡れた身体を湧き水で洗い流した。

水を汚していた。

そんなことをしながら勇者になっただよを自慢げに話す姿には吐き気すら催したのだ。
そんなある日、彼らはわたしの生まれた水で、血のついた手を洗おうとした。

なぜここを使う?

そう聞くとこう言った、他はもう汚くて使い物にならないのだと。


気がつけば私は剣を同士に向かって振り上げていた。





全てが終わった時立っていたブルーオーガは私だけだった。

この世に存在するブルーオーガも私だけとなった。


ブルーオーガが殺し合いをしていればそれは人間の目を引いた。





しかも、侵略者がいなくなったのだ。
私は人間に賞賛された。
そしてこう言われた


貴方は私たちを救ってくださった。
是非とも巨人の騎士様の名前を授けたい。






私はこう答えた、ブルーオーガでは栄誉を得たものをこう呼ぶのだ

勇者だと。


人々は私を祭り上げた、巨人の勇者様だのなんのと。






同じように手を血で染め、同胞殺しまで行ったら私にはふさわしい、辱しめの勲章だった。







人々は私を褒めるために勇者という






その度に私は自責の念にかられ続けた。
正しかったのか?
本当に?、







汚れなんて見えなければこんな事にはならなかったはずだ。







そう思い私は自身の目を潰した。






目の前ない体でこの地を彷徨った。






しかし確かに聞こえた音があった。







湧き水の音だ。





いつか誕生するかもしれない次のブルーオーガに私のように、先の者達のようにさせない為に。
私は今もこうして音を頼りに湧き水を回っているのだ。






「ははは、どうだこれが私の罰と償いだ」

口ではそういうが、どことなくそう喋るギラは寂しげだった。


「屍の山の先の名声なんてちっぽけでくだらないものなのさ。」

「あんたはどうして騎士を名乗る?」

ギラは私にそう語りかけてきた。

「生前も今も、俺の剣は使える姫を守る為に捧げます、俺が生きてる限り姫を守る限り、俺は騎士を名乗り続けます、騎士と呼んでくれる人がいる限り。」

「そうか、じゃあ次のブルーオーガ達には巨人の騎士になれるように教育しなくてはな。」

「次じゃなくても、ギラは水を守る騎士じゃない?」


きょとんとした顔でティナがそう言う。

「そうだな、でも私はまだ巨人の勇者でいいんだ、ありがとう騎士と呼んでくれて、それでは私は行くとするよ久々に誰かと話せてよかった。」



ヨッコラセと言いながらギラは立ち上がると、荒野の中へと消えて言った。








「巨人の騎士か、次のブルーオーガ達とは仲良く暮らせるといいな。」

「そうだね、」


そんなやりとりをしながら岩の窪みに二人で寄り添った。


「巨人の騎士ってかっこいいけど、スケの場合、骨騎士ってなんか弱そうだねっ!」

クスクスと笑いながらティナがつぶやく。

「でも姫に遣える騎士は骨騎士だけだぞー」
言い返せず、そんなことを言いながらティナの髪の毛をワサワサする。
骨騎士、別にかっこいいじゃないか。

「でもティナは骨騎士の強さを一番理解してるから!!」

親指を立てながら俺の方を向いて言ってくる。

「もう寝ろ、明日も早いぞ、おやすみお姫様」

「むー、おやすみ、スケ」


スケルトンにも照れると言う感情はあるのだ。



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