色んなストーカー

なゆか

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ダッシュ

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私は会社から自分の家にかけて、
不審者に付き纏われている。

よく、後をつけられてる気がして
振り返ると隠れられ、歩きを速くすると
不審者も速度を合わせてくるとかある話だが
この不審者は一味違った。

帰り道、最初は後ろから走ってくる足音が聞こえ、
私の横を通り過ぎる夜走ってる近所の人としか
思っていなかった。

しかし、それが二日連続、三日連続…
週五と続き、おかしいなと残業時間により
帰宅の時間に差異があるのにも関わらず、
狙った時間に横を走り抜けられ、
不審者に目を付けられたと恐怖心を覚えた…

が、そう感じたのは一瞬の事で
不審者が私を抜く時と
立ち止まって振り返った時が
ドヤ顔で腹が立った。

それに加え、警察にその事を相談したが
親身に受け取って貰えず半笑いされ、
何も対処して貰えなかった。

そして、今日もアイツは私の横をドヤ顔で走り抜け
立ち止まり、ドヤ顔で振り返り走り去って行った。

「何なんなの、腹立つな」

こちとら、仕事で疲れて帰って来てんのに、
なんで横を走り抜けられ2回ドヤ顔される
嫌がらせを受けないといけないんだよと
日曜日、私はスニーカーを買った。

そして、月曜日の帰宅時
今日は終電ギリギリまで残業をさせられ
本当疲れ果てながらも、最寄りの駅でパンプスから
スニーカーに履き替え外に出た。

いつもの道、そして後ろから走ってくる足音。

「…来たか」

不審者と並んだら、スタートを切って
高校時代短距離で国体に行った実力を
見せつけてやると意気込んだ。

足音が近付いてくる…よし、並んだ!

不審者はいつも通り抜き際にドヤ顔をし、
私はスタートを切った。

バチッ

「ぎゃッ」

足を踏み出した途端、
太腿がお亡くなりになった。

私の仕事は事務でデスクワークの為、
日頃運動していないのが仇となった。

私は肉離れを起こし、お亡くなりになった
太腿を抑え、痛みでその場にのたうち回った。

不審者「…何してる」

不審者は足を止め、ドヤ顔をする事なく
私の横にしゃがみ込んだ。

不審者「何してる」

「見りゃ分かんでしょ!
肉離れで死にそうなのよ!」

不審者「肉離れで人は死なない」

「そんなの知ってるわ!」

どうしよう、コレじゃ歩けない…
それなら、救急車呼ぶか?
いや、こんな夜遅くに肉離れが理由で
呼んだら迷惑か…

頭の中でぐるぐると思考するが
痛みですぐに思考停止となる。

不審者「運ぶ」

不審者はあろう事が私をお姫様抱っこした。

不審者「家にアイシングのスプレーある」

「は?不審者のくせに何優しさ見せて来てんの」

不審者「貴方が怪我したのは
自分のせいだから」

「そりゃそうだけど…いや、
そうじゃない、降ろさないと声出すから」

不審者「もう出てる」

「叫ぶって意味!
不審者に襲われるって叫んで
警察呼んでもらうから」

不審者「構わない、それなら自分は
成人女性に襲われそうになったって叫ぶ」

「まさか、未成年⁈」

不審者「中3」

まさかの中学生…
未成年に付き纏われてるって
警察に言って、私は平気なのか?

いや、私は被害者で…

でも、彼が本気で私に襲われたなんて
自分の親や警察に言ったら…私はどうなる?

不審者「何」

夜道を追い抜かれるだけで、
ストーカー行為と言えるのか?
だから、警察に半笑いされたのか?

不審者「汗凄い」

「降ろして」

不審者「さっきまでの威勢は?」

「…降ろして」

不審者「俺が未成年だと分かったから?」

未成年ってだけで、こんなにも脅威に感じるなんて…

不審者「なんだ、挑発するまでもなかった」

不審者はドヤ顔ではなく、
ニンマリと笑った。

不審者「もう走らなくて済むようになった」
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