色んなストーカー

なゆか

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リサイクル

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最近自分の物が無くなり、何日かで戻ってくる
不思議な事が起こっている。

最初は、無くなってもすぐに見つかるからと
気に留めていなかったが
無くなる物の量が増えた事により、
違和感を感じるようになっていた。

そして、今日はスマホが無くなった。

木口「はぁ~」

自分の不注意なのかなんなのか、
大体このパターンだと3日すれば出てくるが
3日もスマホが無いのは、かなり不便。

しかし、スマホは案外早くに戻って来た。

仁木「ごめんなさいッ…これ」

俺の前で顔を俯けながら、
スマホを差し出してきたのは、
同じクラスの喋った事のない仁木って奴。

木口「ん…さんきゅ」

仁木「…ぅう」

木口「何唸ってんだよ」

スマホを受け取ってお礼を言ったが、
何故か顔を上げない仁木に、
俺は疑問に思いつつも、
その日は下校する事にした。

木口「まぁいいか…スマホ戻ってきたし」



次の日

登校するなり、
俺の机が無くなっている事に気がついた。

木口「…どーいう事?」

クラスメートに聞くが、
朝来たら既に俺の机は無かったらしい

流石に机を無くすなんて事ないなと、
誰かに嫌がらせされてんじゃ?と言われ、
まじかよと、ふと視界に仁木が入った。

仁木「…ッ⁈」

仁木と目が合うなり、
意味深な態度を取り、教室から去って行った。

木口「あいつなんか知ってんのか」

俺は仁木を追い掛けた。

廊下を走る仁木は、あまりにも遅く
俺はすぐに追いついた。

木口「仁木」

仁木「ひィッ」

引き止めるなり、仁木は俺に身構える。

木口「俺の机の場所知ってんのか?」

仁木「ごめんなさい…僕の家に」

僕の家?

木口「なんでお前の家に俺の机があんだよ」

仁木「ぅう」

昨日のように唸り出す仁木。

木口「何なんだよお前
意味わかんねぇんだけど」

仁木「ぅう」

木口「唸ってても、わかんねぇだろッ」

俺は仁木の胸ぐらを掴むと
その拍子で仁木の胸ポケットから
スマホが落ちた。

木口「あ?」

落ちたスマホに見覚えがある。

木口「これ俺の…」

いや、でも昨日仁木からスマホは受け取ったはず
現に今、俺のポケットに俺のスマホは入って…

そう言えば昨日の夜、
自分のスマホに違和感を感じていたんだ。

使って3年目の俺のスマホ
中々ガタがきていて
画面に傷がチラホラあったのに、
しかし、仁木から戻ってきた時傷が無くなっていた。

そこまで深刻に違和感に気付かなかったのは
中のデータに変化が無かった為である。

バッ

仁木はすぐにスマホを拾うと走り去って行った。

木口「なんなんだよ…」

その日は机を借りて来て授業を受けたが
仁木に避けられ話を聞く事は出来ないまま
下校した。

木口「…」

俺は自分のスマホを見る。

木口「俺のだよな…」

そう自然に呟いた俺は自分の言葉に
違和感を覚えた。

俺は走って家に帰るとバックから
今まで無くなったことのある物を出した。

消しゴム、シャーペン、教科書、ジャージ
ストラップ、筆箱、ノート、タオル…

木口「俺の物である証拠…は」

筆記用具は他と大差ない為、
他の物に目がいく。

ノートを開くと自分の字で書かれている。

ジャージを見ると自分の名前が印字されている。

教科書を見ると自分の名前が書いて…

木口「そういや…落書き」

授業中、暇で教科書に落書きした事を思い出した。

パラパラ

木口「どこに書いたっけ…」

教科書を一通り捲るが見つからない落書き。

木口「確かに…書いたんだよな」

確かに落書きをしたはずの教科書に
落書きが無かった。

木口「…え」

変に不安になってきた。

木口「…俺の物…だよな…」

それから俺は一心不乱に自分の物が
本当に自分の物なのか確認する。

木口「…俺の…考え過ぎだよな…疲れてんだよッ…
教科書の落書きだって消したんだ…
スマホの傷だって気のせいだったんだ」

不意に俺はスマホを弄りだした。

画像フォルダを開き、中のデータを確認した。

学校の友達とふざけ合ってる写メ
先月の文化祭の写メ
ペットの猫の写メ
面白画像
エロ画像

様々な俺の記憶に残る画像達

木口「やっぱり俺のスマホだよな」

フォルダを何度もスライドさせて
自分の違和感が勘違いだと思おうとしたが
やはり違和感。

木口「元カノとの写メがねぇ」

どんなにフォルダを観ても
元カノとの写メだけが消えていた。

木口「…消すはずがない」

それだけは確証があった。

俺は元カノと、よりを戻そうとしていたから
俺が元カノとの写メを消すはずがない。

木口「やっぱり…俺のスマホじゃない」



次の日

登校し、仁木を見つけるなり
机を叩いた。

バンッ

木口「俺のスマホ返せよ」

仁木「ひィッ」

周りのクラスメート達は、
何事だとザワザワし出した。

木口「おいッ」

仁木「き…昨日…返した」

木口「これ俺のじゃねぇだろ」

仁木「でっでも…」

木口「お前のスマホ出せよ」

仁木「ひィ」

オドオドする仁木からスマホを奪い取ると
中身を確認した。

木口「…やっぱり」

仁木「ごめんなさいッ…」

木口「なんなんだよお前」

仁木のスマホの中身を見ると…
やっぱり、仁木のではなく
俺のスマホだった。

ガンッ

俺はすり替えられたスマホを
仁木に投げ付けた。

木口「お前何がしたいんだよッ」

ガタッ

胸ぐらを掴むと、唸り出す仁木。

仁木「ぅう」

木口「気持ちわりーんだよッ」

「木口!何してるんだッ」

後ろから担任に捕まれ、
俺は仁木から引き剥がされた。

木口「放せッ…コイツが」

「木口、事情聞くから
とりあえず外出ろ」

木口「チッ…」

俺はそう言われ担任と廊下に出た。

ガラガラ

「ここじゃアレだから保健室行くぞ」

木口「…」



「で、何があったんだ?」

木口「信じねぇかもだけど、
アイツが俺のスマホをすり替えた」

「は?ちょっと待て…詳しく」

担任に、最近自分のモノがよく無くなる事、
でもすぐに見つかる事や、机、スマホの事を話した。

「…つまり、仁木がお前の物を盗んで
新品で返してるって事か?」

木口「はい」

担任は呆気にとられ、首を傾げた。

木口「…俺の勘違いだと思ってるんだろうけど、
本当なんだ」

「うーん…何とも言えんな
とりあえず、仁木にも話を聞いてみるから」

その場は俺は早退する事になり、
そのまま下校した。

その日の夜、家に電話が掛かってきた。

「学校からよ」

母にそう言われ、電話に出ると担任だった。

「木口か?えっとな…
仁木にも話し聞いてみたんだ。
それで、落ち着いて聞けな」

木口「はい」

「木口が最近物を無くして、
すぐに見つかるって言ってたのは、
木口の推測通り
仁木が木口の物を同じ物と
すり替えて戻してた」

木口「…やっぱり」

「新品にすり替えてるのは、
消しゴムから教科書まで全てだそうだ。
しかもな…木口は最近って言ってたが、
仁木がそれをやり出したのは
3年前からだそうだ」

木口「…さ…3年前?」

まじかよ…最近じゃない?

「すり替えてる理由までは聞けなかったんだが、
ちょっと只事じゃないかもしれない。
明日俺挟んで3人で話そうと思うんだが
いけるか?」

木口「わかった」

俺は、電話を切ると
自室に向かい部屋の物の全てを棄てた。

木口「気持ちわりぃ…」



次の日

「木口…気持ちは分からんでもないが、
手は出すなよ」

木口「…」

担任は応接室のドアを開けると、
そこには俯いている仁木がいた。

「とりあえず、そこに座れ」

ガタッ

俺は仁木の前に座る。

「仁木、木口に言う事あるんだろ」

仁木「ぅう」

唸り出す仁木に俺は我慢した。

「とりあえず木口には、
仁木のやった事は話してあるが
理由は自分の口から言え」

仁木「ぅう」

「唸ってても分かんないぞ」

仁木「ぅう」

唸り続け言葉を発さない仁木。

木口「…まさかとは思うけど、
恋愛感情とか俺に向けてたりすんの?」

物のすり替え、元カノの写メの消去で
気持ち悪いが、そういう事なのかと思った。

木口「お前さ、俺の物すり替えて何してんの?」

自分で詮索してしまったが、
考えれば考えるほど、気持ち悪い。

木口「まじで気持ち悪いなお前」

仁木「ぅう」

木口「そうやって唸ってんのも、
まじ気持ち悪い」

仁木「…ぅう」

木口「唸ってねぇで、何とか言えよ」

「まぁまぁ…落ち着け」

木口「つか、コイツが唸りっぱなしだと
この話し合い?終わらねぇだろ」

グイッ

俺は仁木の胸ぐらを掴む。

木口「おいッ」

仁木「ひィッ…」

「抑えろって木口」

担任に止められ乱暴に仁木を突き飛ばすと、
簡単にひっくり返り倒れこんだ。

仁木「ぅう」

木口「気持ちわりぃんだよお前
何なんだよッ」

仁木「ぅう…僕は」

やっと仁木は話し出した。

仁木「僕は…木口が好きなんだ…」

ユラユラとこちらに来る仁木。

仁木「僕は…木口の存在全てが好きなんだ…」

明らかにおかしい仁木に俺は何も言えない。

木口「…」

仁木「木口の物が欲しい…木口の全部が欲しい」

「まぁまぁ…仁木…」

ユラユラと俺に近付いてくる
仁木の前に入る担任。

仁木「木口…」

「うあ”ッ」

突然、担任は声を上げ
ゆっくりと倒れ込んだ。

木口「は?」

突然、何だよと倒れた担任の先に
ナイフを握っている仁木がいる。

ポタポタと床に血が滴り落ち、
俺は呆然とそれを見続けた。

仁木「木口…僕が
木口の物で何してるか見せてあげるから」

そんな頭のおかしい仁木は、
蹲る担任にナイフを突きつける。

仁木「木口の制服全部ちょうだい」

俺がそれを拒否したら、
担任を刺すと言ってるようで
俺は逆らう事はできない。

俺は黙って制服を脱いだ。

パサッパサッ

沈黙の中、俺の制服の落ちる音だけがする。

仁木「パンツも」

木口「…ッ」

パサッ

俺は着ていたものを全て脱ぐと仁木は、
不気味に笑いながら、
自分の制服を脱ぎだした。

この瞬間に逃げれば逃げ出せるだろうが、
担任を見捨てられない。

俺は黙って仁木を見ていると
俺が脱いだ制服を着出した。

仁木「まだ木口の温もりが残ってる」

気持ち悪い

仁木は着替え終えると、
自分を自分で抱き締めた。

仁木「木口に抱き締められてるみたい」

仁木はナイフを捨てて、
スキップしながら、保健室から出て行った。

木口「なんなんだよ…アイツ…
おい大丈夫かよッ」

俺はすぐに担任に駆け寄り傷口を押さえ、
救急車を呼んだ。

結局、この日は担任は話すのが困難らしく
俺は警察に事情説明した。

「その仁木って生徒なんだが、
すでに行方不明になってて」

木口「行方不明…」

行方不明って事は捕まっていない仁木。

いつまた俺の前に現れるか分からない状態で
そんな恐怖に怯えながら
俺は毎日を過ごしていく。

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