ヒロインポジション

なゆか

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教室

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朝のHRまで、まだ時間がある為
他のクラスメイト達はまだ登校してきていない。

菊間「それで、総受けって事だけど
何を根拠に?
あぁ、見た目だけだとは言わせないよ」

多田「総受け転校生は、なんでもう教室に?」

菊間「今、俺が質問してるよね?」

凄い怖い人っぽいなと、他の2人を見るが
その2人も私の事を見ている。

真嶋「おい、余計な事は言うな」

余計な事=痴漢の事だろうが、
口止めしてる態度じゃないなと思う。

菊間「はい、答えて」

多田「見た目…あ…違う、雰囲気です」

菊間「へぇ」

定木「多田さんに人を見極める目は
ないと思いますよ」

菊間「見極める目無いとしても、
総受けだなんて心外だな」

真嶋「ただの戯言だろ」

菊間「戯言だからって、
総受け転校生だなんて言われたく無いね」

総受け転校生は足を組み替えた。

その高慢な感じが
受けなんだよなと思う。

多田「どうしても、総受けなんだもん」

真嶋「だもんじゃねーよ、可愛くねーよブス」

多田「ブスって言った⁈」

真嶋「ブスはブスだろ」

ブスなのは自覚あるが、面と向かって
言われたのは初めてである。

定木「真嶋君、せめてオブラートに包んでください」

真嶋「人の事、総受け総受け言ってる奴に
オブラートは包まねーよ」

菊間「君らも総受けって言われてるの?」

定木「そうですね」

菊間「へぇ、俺達が総受けだとしたら
攻めは誰なの?」

真嶋「気色悪ぃ、質問返すなよ」

菊間「だって、気になるじゃない」

再び3人から熱い視線を向けられ、
私は校庭を指差す。

多田「…強いて言うなら、西屋君」

菊間「西屋?」

定木「サッカー部で多田さんの好きな人です」

サラッと私の秘めたる想いを当てられ、
口から飛沫が出た。

多田「えぇっ⁈好きだなんて一言もっ」

真嶋「今更ウブなフリすんなブス、
あと、唾飛ばすなボケ」

総受けヤンキーに、ブスとかボケって言われても
総受けなのは変わらない。

菊間「へぇ、その多田さんの好きな彼に
俺達3人を総受けにさせる素質があると?」

多田「活発で高身長イケメンで一軍」

菊間「へぇ、会ってみたいな」

定木「HR始まったら、会えますよ」

真嶋「テメーも変な気起こすんじゃねーぞ」

多田「『も』って、私も入ってるの?」

真嶋「黙ってろ」

菊間「まぁ、生憎これはBLじゃないから
そんな展開にはならないけどね」

多田「残念っ」

菊間「俺は恋愛じゃないのが残念だよ」

定木「確かにそうですね、カテゴリが恋愛なら
僕らを助けてくれた時点でラブコメ始まってましたね」

真嶋「はぁ、ヒロインの性格に難あったな」

3人にため息をはかれる。

多田「恋愛⁈私がヒロイン⁈」

まじかよ、急展開!

今まで話したことも無かったクラスメイトを
助けた事により、急接近しちゃうとか⁈

私のルーティンは彼等により、
崩されちゃうの⁈

四角関係⁈

多田「でも、私には西屋君が」

定木「その件はもう終わりましたよ」

ドキドキしていたが、振り返ると
3人とも教室に入っている。

真嶋「そもそも菊間は早く来すぎだろ」

菊間「あぁ、時間を間違えちゃったんで
校内を見て回ろうって」

定木「この学校、校舎複雑なので
初めてだと迷いますよ」

菊間「朝来た時に多田さんに職員室まで
案内してもらったんだ」

定木「だから、知ってたんですね」

菊間「他人に声を掛けて、助けてくれるなんて
優しい子なんだと思ってたんだけどね」

定木「僕も外で恐喝されてたところを
助けて貰ったんですよ。
やり方は滅茶苦茶でしたけど、優しいなって
なりましたね」

真嶋「まぁ、優しいのは否定はしねー」

3人にため息を吐かれ、
私は地団駄を踏む。

多田「なんだそれ!
優しさで留めとけば恋愛発展してたってか!」

真嶋「そーだろ、人を総受け総受け言う
変態野郎じゃなかったら、そうなってたかもな」

多田「さっき、ブスって言ったじゃん!」

真嶋「人を好きになんのに
顔なんて関係ねーよ」

多田「やだ!イケメンのセリフ!」

定木「そうですね、
顔なんて関係なかったんですよ」

多田「過去形やめて!」

菊間「一気に覚めたね」

多田「覚めないでよ!
また眠って!」

菊間「意味分からないよ、
まぁ身から出た錆ってこの事だね」

多田「総受けって、そんな悪い事⁈
いいじゃん、総受け!」

定木「その考えが
ヒロインに至らなかった要因です」

多田「例えば、時間が戻ったとして
総受けだって言わなかったら、イケてると?」

菊間「そんな事より、学校の事教えてよ」

多田「そんな事じゃない!
死活問題!」

こうして、私の青春ラブストーリーは
自身の失言により、始まることはなかった。

多田「カテゴリ縛りのせいだ!」
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