弟妹と同級生

なゆか

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地獄

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~学校にて

今日は朝礼があり、全校生徒は体育館に
集まっていた。

沢山居る生徒の中で、やはりオーラが違う
塔岸くんと近衛くんは自然と注目の的となる。

塔岸「そいや、北斗くんと杏珠ちゃんの
お姉さんがこの学校の生徒らしい」

近衛「あぁ、あの2人か。
なんか益々仲良くしてんだな」

塔岸「今や家に行く仲で、まじウケるから
最近って、けん玉が流行ってんだってさ、
それでマジギガっていうけん玉のアニメが」

近衛「精神年齢同じだな」

塔岸「いやいや、そんなことねぇって」

近衛「で、その2人の姉は?」

塔岸「この前、初めて会ったよ。
まじであのスーパーで働いてるみたいで
腰低かったな」

近衛「そりゃ、客だしな」

私の話しをし始めた2人に手に汗握る。

塔岸「なんか、前に3年の先輩に【山本】って
女子居るかって聞いたら、居ないって言ってて」

近衛「じゃあ、学年違うんじゃないか?」

塔岸「そうかー、年上感あったんだけどな、
なんつうかお姉さんの貫禄ってやつ?」

近衛「知らない」

私は存在を消す為に息を潜めるが
普段違うグループであまり話したこと無い
後ろの列の子に声を掛けられた。

「山本さんの事?」

山本「…え、いや違うよ」

「そうでしょ!だって山本って苗字
たくさん居そうだけど、他に居なくない?
うち、生徒会役員だから
ざっと全校生徒の名前見たし」

山本「…いや…聞き間違いとか」

「絶対そうでしょ!」

その子の甲高い声に周りの子まで
こちらを見始めた。

こういうのがあるから嫌なんだよな。

一軍は別の世界の人間だから、
三軍の私は関わりを持ちたくもなかった。

ただ、憧れというか目の保養というか
そういうのだけで良かったのに…

「それで、どう言う事?」

圧が凄く、私は正直に話す事にした。

山本「…えと、弟と妹の面倒見てもらってて」

たったそれだけで、
女子達は2人は子供に優しいと沸いた。

女子達が沸いたせいで、私が山本だとバレ、
朝礼終了後に塔岸くんに捕まり
公開処刑が始まった。

塔岸くんの後ろにいる女子は、
山本を献上したぞと言わんばかりにドヤ顔をしていて
腹立つが、私は塔岸くんに日頃のご無礼を詫びた。

塔岸「まさかタメとは思わなかったっすよ。
お姉さん」

山本「まぁ、老け顔なんで」

塔岸「スーパーだと
メガネでマスクだったから、
年上に見えただけですよ」

山本「同い年だから、敬語じゃなくても」

塔岸「いやいや、俺にとっても
お姉さんなんで」

へへっと頬をかいた塔岸くんの様子に
周りを囲う女子達は更に沸いた。

塔岸「俺、一人っ子なんで
姉とか弟妹とか兄弟に憧れてたんですよ。
で、ちょうど俺の親が単身赴任で家帰っても
一人きりで寂しくて…なんか家族増えたみたいで
楽しいんですよね」

塔岸くんは良い人だとは分かるが、
こんな女子に囲まれてる状況で私は
苦笑いしか出来ない。

塔岸「俺的にお姉さん、俺、北斗くん、
杏珠ちゃんって順番で兄弟気分なんすよ。
お姉さんが嫌じゃなかったら、俺を弟扱いして
欲しいなって」

コレ、断ったら晒し首だよなと
承諾するしか生きる道はない。

山本「…塔岸くんがそれで良いなら、
意識はしておくよ…」

意識はするとは言ったが、
このレベルの弟が居るとか天変地異過ぎて
訳が分からない。

「じゃあ、うちも山本さんの事お姉ちゃんって
呼ぼっかな~」

「私もー!」

「私も!」

山名「んじゃあ、教室戻るから」

塔岸「了解、お姉さん」

塔岸くんは女子達に囲まれ、
私はダッシュでその場を去る。



あんな目立ったら、そりゃ女子に囲まれるよなと
教室に戻るなり、クラスの女子に取り囲まれた。

虐めに発展したら嫌だなと、再度説明をし
何故か親戚かなんかだと思われた。

塔岸「お姉さん!」

ニコニコとイケメンにお姉さんと呼ばれる事に
なるとは思いもしなかった。

まぁ、何とかなるか…
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