読了しました。
　一言でいうと、青春の苦さが詰まった物語であったなと。
　大人になった後は気づけたとしても、未成熟な感情の中では気づけなかったり、上手く言葉にできないことがあるんですよね。（自分もそういう経験があるのでよく分かります）
　主人公と、葉瑠と、城阪のちょっと歪な関係性を通して、そういった苦さがよく表現されていました。後悔先に立たず、とか、気持ちを素直に伝えることの大切さとか、そんなメッセージ性を作品の中から感じ取りました。
　
　この物語が、主人公の中で美しい思い出に昇華する日は来ないのかもしれない。けれど、この苦い思い出があったからこそ、次に出会った女性に対しては、もっと素直に心を開けるのかもしれないですね。
　回想シーンの使い方の上手さと、張り巡らせた伏線がしっかり繋がっていく構成の巧みさも目を引きました。

最終話まで読みました。
鈍感というのは、何も行動しないというのは、気付いているのに気付かない振りをするというのは、愚かで怠慢で罪なことなのかもしれませんね。
学生時代の心の機微、素直になれない時期、だけど彼女の手を取っていたなら、未来は全く違うものになっていたのでしょうね。
知らないままでいた方が幸せだったのだろうか。
真実を知って死ぬことさえできないことが、海の向こう側に連れていって貰えないことが、罰なのかもしれませんね。
切なく、胸が締め付けられるような、どうすることもできない無力感、脱力感____空虚な気持ちだけが読了後も続いている。そんな感じの物語でしたね。