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その裏では~ライオネル視点・後編~
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「チッ、なんだあいつは」
『あなたの大切なお相手の社長よ。敵にまわさないようにね』
「なら、懐柔するか」
『それが賢明ね』
ここでライオネルが日本語と英語で会話をしていることに気が付いた。
「……日本語が分かるのか?」
『日本語でアニメを見るために勉強したの』
ブランド物のバックや服にしか興味がなさそうな外見なのに、まさかアニメが趣味とは。
「見た目によらないな」
『そう? 今回の来日だって、秋葉原と池袋乙女ロードへ買い物に行く時間がなければ、あなたのスケジュール調整なんてしなかったわ』
「……そうか」
ライオネルの本能がこれ以上、詮索するなと警鐘を鳴らす。マネージャーの意外な一面は放置して撮影へ。
準備を終えてスタジオへ足を踏み込むと、空気が一変した。緊張と怖れが混じりながらも、羨望と嫉妬の気配も感じる。
(いつものことだな。ここの連中はあまり表情に出さないだけマシか)
気にすることなく周囲を見回していると、なんと雪斗の方からやってきた。
糸で吊るされたように真っすぐに伸びた背。綺麗な姿勢で隙なく歩く姿はパリコレのランウェイを見ているようで。
見惚れていると淡い茶髪が目の前で止まった。
「先程はすみませんでした。本日、一緒に撮影させていただく要 雪斗です。よろしくお願いします」
自己紹介をしながら笑顔で手を出され…………
(なんて、神々しい笑顔だ!? いや、天使か!? ダメだ! 直視できない!)
最初は手を出して握手をしようとしたが、ライオネルは理性を保つために顔を背けて離れた。だらしなく緩んでしまった口元を慌てて手で隠す。
「落ち着け。落ち着け、俺。とにかく、落ち着くんだ」
雪斗に聞こえないようにブツブツと自分に言い聞かせる。
平常心を取り戻すことに必死になりすぎていたため、雪斗が不機嫌になっていることに気づかず。
こうして、すれ違いのまま撮影が始まった……のだが、トラブルが発生。
なんと炭酸水を運んでいた新人が目の前でこけた。炭酸水を撒きながら宙を舞うペットボトル。このままでは、雪斗が炭酸水まみれになる、と頭が判断した時には体が勝手に動いていた。盛大に炭酸水を被り、全身がびしょ濡れに。
(これでは撮影を続けられないが、彼にかからなくて良かった)
安堵とともに、これで撮影が終了するという寂しさを感じていると、予想外のことが起きた。
あの可愛らしい天使が盛大に炭酸水をかけてきたのだ。その悪戯をした子どものような楽しげな表情に釣られ、気分があがる。
(君がその気なら、こちらも全力で応えよう)
こうして予定外の炭酸水のかけあいに。そして、水しぶきに煌めく雪斗にライオネルがますます目を奪われたのは言うまでもない。
そのまま去り際に連絡先を渡すこともに成功。
その後、撮影時間以外はずっとスマホを確認して、呼び出し音が鳴るのをひたすら待った。だが、目的の相手からの呼び出し音はないままで。
『あら、あら。ライオネルがフラれるなんてことがあるのね』
マネージャーであるリサの軽い言葉が重く胸に刺さる。
「……フラれてなどいない」
『でも、連絡がないんでしょ?』
「ぐっ」
リサが豊満な胸を揺らしながら呆れたように肩をすくめた。
『アプローチされるばっかりだったから、たまには待たされる方の身になればいいのよ。それか、よほどアプローチが下手だったのね』
まさかの言葉に深緑の瞳が丸くなる。
「……俺は、アプローチしていたのか?」
その様子に今度はリサの目が丸くなった。
『彼のために日本にまで来たのでしょう? これをアプローチと言わないなら、何て言うの? ストーカー?』
後半の言葉はライオネルの耳に入っていなかった。
なぜ、こんなにも雪斗のことが気になったのか。その理由がようやく分かり、これまでの自分の行動に納得する。
「……そうか。そういうことか」
自覚したライオネルの行動は早かった。
雪斗の社長から電話番号を聞き出し、無理やり夜の予定を空ける。
「絶対に君を手に入れる」
分刻みのスケジュールを破壊され、阿鼻叫喚となったスタッフの叫び声を聞きながら、ライオネルが獰猛に白い歯を覗かせる。
「さて、どう攻めるのがいいかな」
狙いを定めた肉食獣のように深緑の瞳が光を放つ。
「確実に手に入れよう」
こうして、ライオネルによる本気の狩りが始まった。
『あなたの大切なお相手の社長よ。敵にまわさないようにね』
「なら、懐柔するか」
『それが賢明ね』
ここでライオネルが日本語と英語で会話をしていることに気が付いた。
「……日本語が分かるのか?」
『日本語でアニメを見るために勉強したの』
ブランド物のバックや服にしか興味がなさそうな外見なのに、まさかアニメが趣味とは。
「見た目によらないな」
『そう? 今回の来日だって、秋葉原と池袋乙女ロードへ買い物に行く時間がなければ、あなたのスケジュール調整なんてしなかったわ』
「……そうか」
ライオネルの本能がこれ以上、詮索するなと警鐘を鳴らす。マネージャーの意外な一面は放置して撮影へ。
準備を終えてスタジオへ足を踏み込むと、空気が一変した。緊張と怖れが混じりながらも、羨望と嫉妬の気配も感じる。
(いつものことだな。ここの連中はあまり表情に出さないだけマシか)
気にすることなく周囲を見回していると、なんと雪斗の方からやってきた。
糸で吊るされたように真っすぐに伸びた背。綺麗な姿勢で隙なく歩く姿はパリコレのランウェイを見ているようで。
見惚れていると淡い茶髪が目の前で止まった。
「先程はすみませんでした。本日、一緒に撮影させていただく要 雪斗です。よろしくお願いします」
自己紹介をしながら笑顔で手を出され…………
(なんて、神々しい笑顔だ!? いや、天使か!? ダメだ! 直視できない!)
最初は手を出して握手をしようとしたが、ライオネルは理性を保つために顔を背けて離れた。だらしなく緩んでしまった口元を慌てて手で隠す。
「落ち着け。落ち着け、俺。とにかく、落ち着くんだ」
雪斗に聞こえないようにブツブツと自分に言い聞かせる。
平常心を取り戻すことに必死になりすぎていたため、雪斗が不機嫌になっていることに気づかず。
こうして、すれ違いのまま撮影が始まった……のだが、トラブルが発生。
なんと炭酸水を運んでいた新人が目の前でこけた。炭酸水を撒きながら宙を舞うペットボトル。このままでは、雪斗が炭酸水まみれになる、と頭が判断した時には体が勝手に動いていた。盛大に炭酸水を被り、全身がびしょ濡れに。
(これでは撮影を続けられないが、彼にかからなくて良かった)
安堵とともに、これで撮影が終了するという寂しさを感じていると、予想外のことが起きた。
あの可愛らしい天使が盛大に炭酸水をかけてきたのだ。その悪戯をした子どものような楽しげな表情に釣られ、気分があがる。
(君がその気なら、こちらも全力で応えよう)
こうして予定外の炭酸水のかけあいに。そして、水しぶきに煌めく雪斗にライオネルがますます目を奪われたのは言うまでもない。
そのまま去り際に連絡先を渡すこともに成功。
その後、撮影時間以外はずっとスマホを確認して、呼び出し音が鳴るのをひたすら待った。だが、目的の相手からの呼び出し音はないままで。
『あら、あら。ライオネルがフラれるなんてことがあるのね』
マネージャーであるリサの軽い言葉が重く胸に刺さる。
「……フラれてなどいない」
『でも、連絡がないんでしょ?』
「ぐっ」
リサが豊満な胸を揺らしながら呆れたように肩をすくめた。
『アプローチされるばっかりだったから、たまには待たされる方の身になればいいのよ。それか、よほどアプローチが下手だったのね』
まさかの言葉に深緑の瞳が丸くなる。
「……俺は、アプローチしていたのか?」
その様子に今度はリサの目が丸くなった。
『彼のために日本にまで来たのでしょう? これをアプローチと言わないなら、何て言うの? ストーカー?』
後半の言葉はライオネルの耳に入っていなかった。
なぜ、こんなにも雪斗のことが気になったのか。その理由がようやく分かり、これまでの自分の行動に納得する。
「……そうか。そういうことか」
自覚したライオネルの行動は早かった。
雪斗の社長から電話番号を聞き出し、無理やり夜の予定を空ける。
「絶対に君を手に入れる」
分刻みのスケジュールを破壊され、阿鼻叫喚となったスタッフの叫び声を聞きながら、ライオネルが獰猛に白い歯を覗かせる。
「さて、どう攻めるのがいいかな」
狙いを定めた肉食獣のように深緑の瞳が光を放つ。
「確実に手に入れよう」
こうして、ライオネルによる本気の狩りが始まった。
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