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ヒロイン視点〜門番からして違いました〜

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 最近、ローズからの風当たりが強くなった男爵令嬢・・のリリィ・バーロットです。

 たぶん、ロータスから策を聞いたのだろう。ローズの態度がキツくなった。でも、妹から聞いていたゲームでのローズのキャラはこんな感じだった気がする。

 それにキツいと言っても、私の知識不足による高位貴族への無礼を諌めるもので、非は私にある。ただ、その時の言葉と態度が辛辣になった程度。
 あとはロータスの指示通り、私が勝手にローズの近くで転けたり、物をひっくり返している。さすがに噴水に落ちた時は寒くて風邪を引きかけたけど。

 そんな私を見た後のローズの顔。

 口では、鈍臭いとか、無様とか言い捨てて去っているけど、目はすごく悲しそうで。泣きそうなのを必死に堪えているようで。正直、見ているこちらのほうが辛い。

 でも、周囲はそんなローズの様子に気がつかない。そういう場面では、ローズが扇子で顔を半分隠しているせいかもしれないけど。
 ただ本来のローズは、こんなことができる性格ではないのだろう。それを私のために無理をして……


 そう考えると私は動かずにいられなかった。


 学園が休みの日。私はこっそりとローズの屋敷へ出向いた。

 貴族の屋敷が並ぶ住宅街。敷地が広すぎて奥にある屋敷が見えないけど。その通りを質素なワンピース姿で私は歩いた。
 始めは周囲の豪華さに気後れしたが、考えてみれば、今の私の姿は休日の使用人に見えなくもない。

「どこかの屋敷のメイドが私服で歩いている感じかも」

 そう思えば堂々と歩ける。私はひたすら歩き、ローズの屋敷を目指した。
 が、すぐに問題にぶち当たる。使用人に見える、ということは、公爵令嬢のローズの友人には見えない、ということ。それでは、ローズに会う前に門前払いとなる。

 私はローズの屋敷に到着してから気がついた。

「あぁ、どうしよう……」

 呆然と立ち尽くす私。その姿を不審に思ったのか門番が声をかけてきた。

「お嬢さん、どうし…………あぁ、ローズお嬢様のご友人の方ではございませんか。本日はいかがなされました?」
「え? 私のことを覚えていらっしゃるのですか?」
「門番として、一度見た人の顔を覚えているのは当然のことです」

 さすが公爵家。門番から違う。

「案内の者が参りますので、こちらでお待ちください」
「ありがとうございます」

 私は言われるまま門の影に移動した。そこに一台の豪華な馬車が現れる。王家の紋章を光らせた馬車は止まることなく屋敷の門を通り抜けた。
 馬車の窓には不機嫌そうなキラキラ金髪王子の横顔。
 私は反射的に門の影へ身を潜めた。

「ど、どうしよう……」

 まさかの人物の登場に固まる。そこへ逃げ道を塞ぐように執事長がやってきた。
 隠れていた私を見つけ、恭しく一礼する。

「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
「あ、いえ、あの……やはり日を改めて……」
「ロータス様がお待ちです」
「え? あ、あの私はローズ様にお話が……」

 執事長が申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

「申し訳ございません。ローズ様は本日来客がありまして。それと、ロータス様がお話をされたい、とのことです」
「……わかりました」

 約束もなく突然来た私も悪い。ここは言われる通りにしよう。
 私は案内されるまま屋敷へ移動した。

 サロンではなく応接室に通された私は豪華なソファーに腰掛ける。ふわりとした弾力。我が家の固いソファーと段違い。

 そのまま待っていると癇癪のような怒鳴り声が聞こえた。

「私の邪魔をするな、と言っているんだ!」

 特徴的なハスキーボイス。その後に食器が割れる音と、バタバタ人々が集まる足音。
 気になった私はそっと応接室から抜け出し、廊下を歩いた。騒音の元はすぐに判明。

 不自然に開いたドアの先。ガラス張りのサロン。その中心で、偉そうに足を組んで紅茶を飲むキラキラ金髪王子。足元には飛び散った紅茶と割れたカップ。
 そこに存在感を消したメイドたちが片付けをしている。

 あれ? 床にローズの髪留めが落ち……あ、キラキラ金髪王子が拾って、そのままポケットに入れた。
 なぜローズの髪留めをポケットに? ここはローズの屋敷。拾ってテーブルに置いておけばいいのに。それとも、私の見間違い?

 ガタッ。

 もう少し近くで見ようとしてドアの音をたててしまった。

「誰だ!?」

 ヒステリックな叫び声。キラキラ金髪王子の不機嫌な怒りに満ちた顔。その顔がなぜか前世の妹と重なり、私は腰が抜けて動けなくなった。

 妹ではない、と理解しているが、体が動かない。幸いなことにキラキラ金髪王子の位置から私は見えないらしい。首を傾げたあと、確認するため、こちらに歩いてきた。

 このままでは見つかる!?

 なんとか隠れようとしていると、背後に大きな影がやってきた。




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