10 / 17
ヒロイン視点〜門番からして違いました〜
しおりを挟む
最近、ローズからの風当たりが強くなった男爵令嬢のリリィ・バーロットです。
たぶん、ロータスから策を聞いたのだろう。ローズの態度がキツくなった。でも、妹から聞いていたゲームでのローズのキャラはこんな感じだった気がする。
それにキツいと言っても、私の知識不足による高位貴族への無礼を諌めるもので、非は私にある。ただ、その時の言葉と態度が辛辣になった程度。
あとはロータスの指示通り、私が勝手にローズの近くで転けたり、物をひっくり返している。さすがに噴水に落ちた時は寒くて風邪を引きかけたけど。
そんな私を見た後のローズの顔。
口では、鈍臭いとか、無様とか言い捨てて去っているけど、目はすごく悲しそうで。泣きそうなのを必死に堪えているようで。正直、見ているこちらのほうが辛い。
でも、周囲はそんなローズの様子に気がつかない。そういう場面では、ローズが扇子で顔を半分隠しているせいかもしれないけど。
ただ本来のローズは、こんなことができる性格ではないのだろう。それを私のために無理をして……
そう考えると私は動かずにいられなかった。
学園が休みの日。私はこっそりとローズの屋敷へ出向いた。
貴族の屋敷が並ぶ住宅街。敷地が広すぎて奥にある屋敷が見えないけど。その通りを質素なワンピース姿で私は歩いた。
始めは周囲の豪華さに気後れしたが、考えてみれば、今の私の姿は休日の使用人に見えなくもない。
「どこかの屋敷のメイドが私服で歩いている感じかも」
そう思えば堂々と歩ける。私はひたすら歩き、ローズの屋敷を目指した。
が、すぐに問題にぶち当たる。使用人に見える、ということは、公爵令嬢のローズの友人には見えない、ということ。それでは、ローズに会う前に門前払いとなる。
私はローズの屋敷に到着してから気がついた。
「あぁ、どうしよう……」
呆然と立ち尽くす私。その姿を不審に思ったのか門番が声をかけてきた。
「お嬢さん、どうし…………あぁ、ローズお嬢様のご友人の方ではございませんか。本日はいかがなされました?」
「え? 私のことを覚えていらっしゃるのですか?」
「門番として、一度見た人の顔を覚えているのは当然のことです」
さすが公爵家。門番から違う。
「案内の者が参りますので、こちらでお待ちください」
「ありがとうございます」
私は言われるまま門の影に移動した。そこに一台の豪華な馬車が現れる。王家の紋章を光らせた馬車は止まることなく屋敷の門を通り抜けた。
馬車の窓には不機嫌そうなキラキラ金髪王子の横顔。
私は反射的に門の影へ身を潜めた。
「ど、どうしよう……」
まさかの人物の登場に固まる。そこへ逃げ道を塞ぐように執事長がやってきた。
隠れていた私を見つけ、恭しく一礼する。
「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
「あ、いえ、あの……やはり日を改めて……」
「ロータス様がお待ちです」
「え? あ、あの私はローズ様にお話が……」
執事長が申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
「申し訳ございません。ローズ様は本日来客がありまして。それと、ロータス様がお話をされたい、とのことです」
「……わかりました」
約束もなく突然来た私も悪い。ここは言われる通りにしよう。
私は案内されるまま屋敷へ移動した。
サロンではなく応接室に通された私は豪華なソファーに腰掛ける。ふわりとした弾力。我が家の固いソファーと段違い。
そのまま待っていると癇癪のような怒鳴り声が聞こえた。
「私の邪魔をするな、と言っているんだ!」
特徴的なハスキーボイス。その後に食器が割れる音と、バタバタ人々が集まる足音。
気になった私はそっと応接室から抜け出し、廊下を歩いた。騒音の元はすぐに判明。
不自然に開いたドアの先。ガラス張りのサロン。その中心で、偉そうに足を組んで紅茶を飲むキラキラ金髪王子。足元には飛び散った紅茶と割れたカップ。
そこに存在感を消したメイドたちが片付けをしている。
あれ? 床にローズの髪留めが落ち……あ、キラキラ金髪王子が拾って、そのままポケットに入れた。
なぜローズの髪留めをポケットに? ここはローズの屋敷。拾ってテーブルに置いておけばいいのに。それとも、私の見間違い?
ガタッ。
もう少し近くで見ようとしてドアの音をたててしまった。
「誰だ!?」
ヒステリックな叫び声。キラキラ金髪王子の不機嫌な怒りに満ちた顔。その顔がなぜか前世の妹と重なり、私は腰が抜けて動けなくなった。
妹ではない、と理解しているが、体が動かない。幸いなことにキラキラ金髪王子の位置から私は見えないらしい。首を傾げたあと、確認するため、こちらに歩いてきた。
このままでは見つかる!?
なんとか隠れようとしていると、背後に大きな影がやってきた。
たぶん、ロータスから策を聞いたのだろう。ローズの態度がキツくなった。でも、妹から聞いていたゲームでのローズのキャラはこんな感じだった気がする。
それにキツいと言っても、私の知識不足による高位貴族への無礼を諌めるもので、非は私にある。ただ、その時の言葉と態度が辛辣になった程度。
あとはロータスの指示通り、私が勝手にローズの近くで転けたり、物をひっくり返している。さすがに噴水に落ちた時は寒くて風邪を引きかけたけど。
そんな私を見た後のローズの顔。
口では、鈍臭いとか、無様とか言い捨てて去っているけど、目はすごく悲しそうで。泣きそうなのを必死に堪えているようで。正直、見ているこちらのほうが辛い。
でも、周囲はそんなローズの様子に気がつかない。そういう場面では、ローズが扇子で顔を半分隠しているせいかもしれないけど。
ただ本来のローズは、こんなことができる性格ではないのだろう。それを私のために無理をして……
そう考えると私は動かずにいられなかった。
学園が休みの日。私はこっそりとローズの屋敷へ出向いた。
貴族の屋敷が並ぶ住宅街。敷地が広すぎて奥にある屋敷が見えないけど。その通りを質素なワンピース姿で私は歩いた。
始めは周囲の豪華さに気後れしたが、考えてみれば、今の私の姿は休日の使用人に見えなくもない。
「どこかの屋敷のメイドが私服で歩いている感じかも」
そう思えば堂々と歩ける。私はひたすら歩き、ローズの屋敷を目指した。
が、すぐに問題にぶち当たる。使用人に見える、ということは、公爵令嬢のローズの友人には見えない、ということ。それでは、ローズに会う前に門前払いとなる。
私はローズの屋敷に到着してから気がついた。
「あぁ、どうしよう……」
呆然と立ち尽くす私。その姿を不審に思ったのか門番が声をかけてきた。
「お嬢さん、どうし…………あぁ、ローズお嬢様のご友人の方ではございませんか。本日はいかがなされました?」
「え? 私のことを覚えていらっしゃるのですか?」
「門番として、一度見た人の顔を覚えているのは当然のことです」
さすが公爵家。門番から違う。
「案内の者が参りますので、こちらでお待ちください」
「ありがとうございます」
私は言われるまま門の影に移動した。そこに一台の豪華な馬車が現れる。王家の紋章を光らせた馬車は止まることなく屋敷の門を通り抜けた。
馬車の窓には不機嫌そうなキラキラ金髪王子の横顔。
私は反射的に門の影へ身を潜めた。
「ど、どうしよう……」
まさかの人物の登場に固まる。そこへ逃げ道を塞ぐように執事長がやってきた。
隠れていた私を見つけ、恭しく一礼する。
「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
「あ、いえ、あの……やはり日を改めて……」
「ロータス様がお待ちです」
「え? あ、あの私はローズ様にお話が……」
執事長が申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
「申し訳ございません。ローズ様は本日来客がありまして。それと、ロータス様がお話をされたい、とのことです」
「……わかりました」
約束もなく突然来た私も悪い。ここは言われる通りにしよう。
私は案内されるまま屋敷へ移動した。
サロンではなく応接室に通された私は豪華なソファーに腰掛ける。ふわりとした弾力。我が家の固いソファーと段違い。
そのまま待っていると癇癪のような怒鳴り声が聞こえた。
「私の邪魔をするな、と言っているんだ!」
特徴的なハスキーボイス。その後に食器が割れる音と、バタバタ人々が集まる足音。
気になった私はそっと応接室から抜け出し、廊下を歩いた。騒音の元はすぐに判明。
不自然に開いたドアの先。ガラス張りのサロン。その中心で、偉そうに足を組んで紅茶を飲むキラキラ金髪王子。足元には飛び散った紅茶と割れたカップ。
そこに存在感を消したメイドたちが片付けをしている。
あれ? 床にローズの髪留めが落ち……あ、キラキラ金髪王子が拾って、そのままポケットに入れた。
なぜローズの髪留めをポケットに? ここはローズの屋敷。拾ってテーブルに置いておけばいいのに。それとも、私の見間違い?
ガタッ。
もう少し近くで見ようとしてドアの音をたててしまった。
「誰だ!?」
ヒステリックな叫び声。キラキラ金髪王子の不機嫌な怒りに満ちた顔。その顔がなぜか前世の妹と重なり、私は腰が抜けて動けなくなった。
妹ではない、と理解しているが、体が動かない。幸いなことにキラキラ金髪王子の位置から私は見えないらしい。首を傾げたあと、確認するため、こちらに歩いてきた。
このままでは見つかる!?
なんとか隠れようとしていると、背後に大きな影がやってきた。
2
お気に入りに追加
1,808
あなたにおすすめの小説
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢になる前に、王子と婚約解消するはずが!
餡子
恋愛
恋愛小説の世界に悪役令嬢として転生してしまい、ヒーローである第五王子の婚約者になってしまった。
なんとかして円満に婚約解消するはずが、解消出来ないまま明日から物語が始まってしまいそう!
このままじゃ悪役令嬢まっしぐら!?
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる