32 / 66
神 立 (三)
しおりを挟む
白い冠のような雪を戴く山々が連なり、深い渓谷の狭間にある洞窟の中で暖をとった。通り口は狭かったのだけれど、這うようにして潜っていくと、広く温かい空洞に出た。剥き出しの岩肌には、さらに奥へ続いている穴が、さながら蜂の巣のようにぽっかりと浮かんでいるように見えた。
外は猛吹雪なのに、内は別世界が拡がっていた。
もともと古き時代の神立の人たちは、こんな洞窟で暮らしていたらしい。獣の肉を割き、脂を砕き溶かしたものを樽に溜め、こよりをさし火を灯している。そのような明かりのとり方は初めてみた。
洞窟から洞窟へとつながる小さな孔から、絶えず新鮮な風の流れがあって、息苦しくもなく、ほどよい冷気と水鍋の湯気が混ざり、こういう場所なら、長く暮らすことができそうだと、驚くことばかりだった。
小太郎が負った傷は深そうであった。
休賀斎の老公が手当をしていたが、効を奏したのは、秀華姫の侍女が洞窟の入り口付近に群生していた草の葉を煎じて飲ませたり、細かく刻んだ煮汁を傷口に塗ったおかげだと、しきりに老公は感嘆していた。おそらく母国ではそのようにして戦で傷を負った人たちを治してしたのかもしれない。
秀華姫の具合もあまりよくないらしく、その侍女はかいがいしく姫にもなにか煎じたものを飲ませ、熱をもったからだを丁寧に拭いていた。その隣で笹も手伝い、彦左といえばときおり二人の少女に筆談でこそこそと話してした。もっとも互いのことばが通じるはずもなく、お遊びごとのようにもみえた。ときに秀華姫は侍女と互いの掌を擦りあっていた。
皇女の妹の優華姫とは能登ではぐれたままであるらしい。ことばを解せないこの国で、しかも得体の知れない連中に追われながらの秀華姫の逃避行と比べれば、新城を出てからのわたしは旅をしているようなものだと思えてきた。気楽な旅ではないにしても、この異国の姫らのそれとは異質のものであったろう。
ふしぎとわたしの妹のようにも思えてきた。
ちなみに、わたしには妹はいないが、二歳の弟がいる。異母弟である。
わたしの母の侍女の一人が、かれの母親であった。父は、よりによって、なぜ、わざわざ母の侍女に手をつけたのだろうか。
母は、以前は、今川家の血を受け継いでいる自分を誇りに思い、その一点を生きる源泉としていたけれど、岡崎にきてからは、没落した名門の血に負い目を感じて、つねに控えめにじっと蔭で耐えていた。そんな母の挙動が変り出したのは、やはり、二年前のわたしの異母弟の誕生からであったような気がする。その頃から、母はしばしば癇癪をおこすようになった。わたしはといえば兄信康への想いを強めていた頃で、母と接することをなぜか避けるようになって、ほとんど顔を合わせない日が続いていた。
かりに、このような洞窟のなかで、父や兄や母とともに静かに暮らしていたならば、もっと異なった世界が訪れていたにちがいない。それにしても、なぜ、父は、母の侍女に手をつけたのか。他で隠れて側妾を持つことも容易にできたはずなのに、どうして、あてつけるように母の侍女に……。
手をつける、という云い様は、女人のわたしには、どうしても好きにはなれない。
抱く、挿れる、といった直截な云いようのほうが、よっぽど、ましだとおもう。まぐわいのこと、房事は、それなりに、意味のあるものなのだろう。
長らく夫の信昌どのと肌を合わせていないわたしには、からだの奥の疼きのありようが、それなりに理解できるようになっていた。ときに、性の欲望は、人を人たらしめる目に見えない糊のような働きをする。
つまりは子を孕むということは、欲望の残滓のようなものかもしれないけれど、別の見方をすれば、家と家の絆を太くする種子でもあるのだろう。もとより、血の絆は、この時代にはそれほどの意味は持たないのだろうけれど、次代へと受け継ぐなにかを託しているようにも思えてきてならないのだ。
世の人々は、おのが宿命というものを、どのように受けとめ、どんな苦悩に身悶えしてきたのだろうか。
ふいにわたしは立ち上がり、洞窟の奥で、秀華姫と侍女のふたりの間に座った。汚れがこびりついているのか、顔に色はなかった。背丈はわたしとほとんど変わらない。寒さをこらえているのか、見知らぬ人に囲まれておびえているのか、わからない。
大海を渡って、異国に渡り、さらに流浪の旅を続けなければならないとは、あまりにも哀しいことだ。できれば、新城へ連れていき、静かに暮らす途をさがしてあげたいともおもった。
「それは、なるまいぞ、なるまいぞよ」
わたしの思念を察してか、すかさず休賀斎の老公がやんわりと釘を刺した。
「……このように申しては不服であろうが、厄介ごとを招くことは断じて避けねばならぬ」
すると彦左が鋭い目付きになって、老公を睨んだ。
「なれば、ご老公は、秀華さまらを見殺しにせよと仰せかっ」
いつになく激しい彦左の語調に驚いたわたしは、なんとかせねばと考えてはいたものの一向に口の端をついて出ることばが見つからなかった。
気まずい空気を振り払おうとしかけたとき、兵太郎が武将を連れて洞窟のなかに入ってきた。かの元の黙阿弥どのであった。
「堺の天満屋が焼き払われたそうだ!順慶どの密偵が報せてくれた」
その言葉に、佐助と弥右衛門が息を呑み、おそらく洞窟には天満屋ゆかりの雇われ牢人たちもいたのだろう、座は一気に緊張した。
「それで、屋敷の者らの消息はいかに?」
弥右衛門が訊ねると、
「安堵いたすがよい!」
と、すかさず兵太郎が応じた。
「……事前に危機を察したようで、番頭が采配をふるって、てんでに落ちのびさせたそうな。商家の番頭にしておくには惜しい人物とみたぞ」
あっ、嘉兵衛のことだ、と察して、佐助のほうをみて互いに肯きあった。
わたしの前に兵太郎が胡座をくみ、その隣に筒井順慶さまが座った。
老公はわたしの隣、離れて弥右衛門と佐助が車座になっている。
ぽつねんとして彦左は座から離れていた。わたしを避けているのではなく、おそらく兵太郎のことが嫌いなのだろう。
熊蔵もまた、なにやら居心地が悪そうにそわそわとしている。
わたしを岡崎へ伴っていきたいだろうに熊蔵は、それが成らぬことを薄々察して葛藤しているふうにもみえた。熊蔵はおそらく、兄信康が遣わした密偵にちがいない。なんの根拠もないのだけれど、わたしにはそのように思えてならなかった。
「どうした、彦左衛門、もそっと近くにきて座れ。そんなふうにしていると、おれのことを避けているようにみゆるぞ。不甲斐ないやつめが!」
故意に挑発しているのか兵太郎が哄笑すると、案の定、彦左はすくっと立って、老公の隣に割り込んだ。
「ふん、まるで、呉越同舟のようなものずらよ」
意外と彦左は物識りのようである。しばし互いに目と目をみつめ、視線を交えないように沈黙していたが、静寂を破って兵太郎が喋りだした。
「……のう、彦左衛門よ、彦左よ……おまえはおれが信長を嫌っているとおもっているようだが、そうではないぞ!ま、まあ、腰を折らずに聴くがいい。好きか、嫌いか、と問われれば、好きなほうだ。いや、信長の偉大さは、おれなりによく判っているつもりだ。織田家中に人材が傑出しているのをなんとみるか。羽柴、明智、滝川……など数え上げればきりがない。もとより柴田勝家、丹羽五郎左衛門などの宿老らもいるにはいるが、新参者にそれらと同等の職位を与え、それぞれの能力を如何なく発揮させておるわ。まさに、従来の仕組みを打ち壊す、これがまさに信長流よ。格好の例が褒賞の仕組みだ。彦左衛門、ひとつおまえに聴くが、戦での一番手柄はなんだ?」
「大将首!」と、彦左が叫んだ。
「そう、それよ、敵の大将に一番槍をつけたもの、首をとった者が褒賞される、それが従前の仕組みよ。信長という奴は、その仕組みを変えたのだ。桶狭間のおり、大将の今川義元公の首をとった者よりも、どこで陣を張っているのか、それを報せた者、その陣までの道筋を整えた者をこそ、最大の功労者と位置づけた。まさにおれらのような海賊、山賊のやり方でもあるな、だからこそ、信長は、偉大なのだ。そうして、すこぶる怖ろしい……」
これほどよく喋る御仁とはおもっていなかっただけに、唖然としながらも一語一句を噛み締めるように聴いていた。
ではなにゆえ、兵太郎は信長様にお味方しないのだろうか。
わたしよりも先に彦左がおなじことを口にした。するとれいの破顔哄笑しながら兵太郎は答えた。
「……ふん、信長めは、あまりにも性急にすぎる。信長流の変革は必要なのだ。だがの、それは手におえる変革でないと意味はない。……どうやら、信長はな、おのれのいのちが尽きることを恐れているようだな、瞳の黒いうちになにもかもやり遂げようと躍起になっているのだ。おそらくは、……息子どもは凡人、そこで、おのれが死んだのちの大騒乱をおそれ、いまのうち、いまのうちに……と、事を急いでいるようにおれには映る。だからこそ、好敵手の存在が重要なのだ。並々ならぬ好敵手がおれば、変革の速さを時代に合わせたものに調整することもできようからな。もっとも、信長はこのおれのことなど歯牙歯牙にもかけてはおらんだろうがな、はっははっ」
洞窟のなかに兵太郎の哄笑が響き渡った。彦左をみると、眉間に皺を寄せてなにやら考え込んでいるようにみえた。
「彦左衛門よ、それぞれの立場で、葛藤することを、迷いつつも考え続けることを、決して恐れてはならぬぞよ。これが、おれからのはなむけぞ!」
兵太郎が投げかけたことばは、彦左の深奥に届いたかどうかわからない。
兵太郎が立ち上がって座をはずすと、いきなり順慶さまが話かけてきた。
「亀姫に、お願いごとがございましてな」
佐助によれば、三十路を過ぎたばかりということだったけれど、童顔にみえる貌のなかに陰鬱のかげが浮かんでいた。
みんな必死で、もがいているのだ。
そうおもうと急にからだが軽くなった。順慶さまが鉄砲足軽を手元に招き、菅笠をとらせると、頬を消し炭で汚した女人があらわれた。このような変装は、誰もが考え付くことなのであろうか。わたしも佐助にこういう姿にさせられそうになったことを思い出した。
「……名は、巣鴨、筒井家の身内の者。どうぞ、三河なりとてお連れくだされよ。いやなに、人質とおもっていただいて結構」
「人質?ならば、お連れいたしかねます。けれど、私の友ということであれば、仲良く過ごすこともできましょうほどに」
わたしが答えると、順慶さまが巣鴨と互いの顔を見合わせて、
「よしなに、お願い申す」
と会釈をした。
巣鴨はわたしの年齢と大差ないと踏んだ。彼女に話しかけると、その簡潔な返答ぶりに驚かされた。この者は筒井衆の密偵かもしれないけれど、それでもいいとおもった。
奥のあたりが騒がしくなった。
行ってみると、またもや彦左と兵太郎が言い争っている声がこだましていた。どうやら、秀華姫とその侍女をどこに落ち延びさせるのかで対立していたらしい。
中国の毛利や、九州の島津、四国の長宗我部家が皇女を取り込むことを彦左は懸念しているのだ。翁狐にも気づかれない寺の名を告げた兵太郎が、さらに云い添えた。
「……大陸に渡ったことのある留学僧もいる、よき医者もいる、近くに温泉もあるぞ。すべて手配した。信長には渡さぬが、反信長の輩にも決して好きなようにはさせぬわ。信じがたくば、落ち着くまで、彦左よ、おまえが付き従うがいい。だが、侍女はだめだ。かえって足手まといになろう」
返辞に窮している彦左をみて、
「では侍女のかたは、私が預かります」
と、わたしはおもわず口に出していた。
巣鴨という新たな友が増えることになったのだから、もう一人増えてもいい。
「あかし、と名づけましょう。生きる証の、あ、か、し」
本当に友になれればいいとわたしはおもった。あと一つ、彦左に糺糾しておきたいことがあった。
「……彦左の蔭で茶屋衆が動いていたそうですが、茶屋四郎次郎どのの狙いがわかりませぬ。そのことを弥右衛門にたずねても、空惚けて答えてくれませぬ」
弥右衛門の耳に入るように大声で云うと、意外なことを弥右衛門は吐露してくれた。
「船に乗せるまでは、まさか亀姫様とは存知なかったのでござるよ。この彦左の奴もなかなか口を割らなかったもので、おなごは、詞葉様だとばかり思い込んでおりましてな」
弥右衛門が頭を掻きながら弁解した。
「私を詞葉と間違えたと?では、どうして私を松永弾正様の城へ連れていったのですか」
それが大きな謎だった。
「それは……身共の発案だ」と、横から口を出したのは、意外にも休賀斎の老公であった。
「亀どのが城から消えてから、笹どのを連れてあとを追った……もっとも誰がどのように動いていたかは判らなかったが、これでも街道筋には、剣の弟子らも大勢いてな。いろいろと助力を請うたのじゃよ。服部半蔵どのの配下にも、ずいぶんと助けてもろうた。堺の天満屋に居ると知ったとき、織田どのの別働隊が動いていることを察知したのじゃ。おそらくはすでに天満屋を襲撃するつもりでおったのじゃろうの。そこで、ひとまず亀どのを、考えうるかぎり安全なところへ移そうと思い立ったのが、松永弾正の城だった……」
……そこであの翁狐の城の見取り図が手に入ると茶屋四郎次郎どのをくどいたということである。
翁狐の城がもっとも安全、という発想は、いったいどこからくるのだろう。
「……早晩、松永弾正は織田どのに再び公然と謀叛しよう。けれど、それが判っていても織田どのも総力戦で打ち勝つまでは、決して、手出しはしまい。しかも、弾正は、味方を集めようと躍起になっておるゆえ、たとえ素性が知れても、むやみに殺しはしまい……安全というのはそのこと。虎穴に入らずんば、なんとやら……という次第」
「とすれば、私も彦左も、みなの衆にいいように利用されていたということですか」
「御意」
老公はにやりと笑うと、ペロリと舌を出した。なかなかに憎めないご老人だ。
「……弥右衛門は、秀華姫のことを四郎次郎どのにお報せするのですか?」
わたしがたずねると、しばしの沈黙のあと、弥右衛門は、
「いいや」と、首を横に振った。
「……秀華姫は、この神立の里で、何者かに襲撃されて、落命なされた……それでよろしいのではございますまいか」
その弥右衛門の言葉に、休賀斎の老公が
「よきかな、佳きかな!」
と応じた。
「ただし条件がございます」
意外にも弥右衛門はふてぶてしい顔つきつきになって、胸を張った。
「……拙者と佐助、それにこの場にはおりませぬが、かの天満屋番頭の嘉兵衛や雇っていた船夫、牢人ども、そっくりそのまま亀姫様の家来にしていただきとうござる」
弥右衛門がいった。
その申し出には驚かされたけれど、秀華姫の生存を秘密にしてくれるというのならば、それにこしたことはないとおもった。
それから、翁狐松永弾正が自ら語っていた謀略の内容を披露した。大賀弥四郎の件も、すべては翁狐の撒いた陰謀の種のひとつにしかすぎないことを語り終えると、さすがの老公も、それに兵太郎までもが唸って口を閉じた。
わたしは横たわっている小太郎ににじり寄った。
額に汗がにじんでいる。
汗をぬぐっていたあかしに代わり、拭いた。
瞳は開いていないけれど、荒い鼓動が伝わってきた。小太郎はいままでどういう暮らしをしてきたのか、いつか再会したおりにそのことを聴いてみたいとおもった。もとより、わたしの夫、信昌どのとの関わりも聴かなければならないだろう。
まだあきらかにはされていない秘密が目の前によこたわっているように感じられてならなかった。
彦左は秀華姫の傍らで、なにやらせっせと筆談をしていた。もうわたしのことなど眼中にないようで、しきりに話しかけている。
わたしは熊蔵の傍らに近づき、
「岡崎にはいずれ必ず立ち寄りますゆえ、三郎兄さまのこと、お頼みいたします」
と、囁くように伝えた。
「それに、これからは新城には、密かに潜入などしなくても、堂々と、表門からお入りなさい。私の供奉人頭のクマ、とでも胸を張って名乗られませ」
「ま、まことでございまするか」
「ええ、熊蔵は私の弟のようなもの。どうか、三郎兄さまのこと、くれぐれも……」
わたしが云うと、熊蔵は一瞬怪訝そうに小首を傾げたけれど、見る間に喜色をあらわにして、跪いた。
そのとき、ふいに笹がわたしの腹に手をやった。
「亀様、どうやら、ご懐妊なされたのでございますな」
わが事のように嬉しそうに笹は笑った。
「おお、忘れていたぞ!」
突然、兵太郎が立ち上がった。
「ささっ、ご一同、盃をとられよ。年が明けたぞ!とりあえずは、いまこのときの無事をこそ、寿ごうぞ!」
こんな洞窟のなかで、新しい年を迎えようとは想像だにできなかった。
天正五年丁丑の年、わたしは、十八になった。
外は猛吹雪なのに、内は別世界が拡がっていた。
もともと古き時代の神立の人たちは、こんな洞窟で暮らしていたらしい。獣の肉を割き、脂を砕き溶かしたものを樽に溜め、こよりをさし火を灯している。そのような明かりのとり方は初めてみた。
洞窟から洞窟へとつながる小さな孔から、絶えず新鮮な風の流れがあって、息苦しくもなく、ほどよい冷気と水鍋の湯気が混ざり、こういう場所なら、長く暮らすことができそうだと、驚くことばかりだった。
小太郎が負った傷は深そうであった。
休賀斎の老公が手当をしていたが、効を奏したのは、秀華姫の侍女が洞窟の入り口付近に群生していた草の葉を煎じて飲ませたり、細かく刻んだ煮汁を傷口に塗ったおかげだと、しきりに老公は感嘆していた。おそらく母国ではそのようにして戦で傷を負った人たちを治してしたのかもしれない。
秀華姫の具合もあまりよくないらしく、その侍女はかいがいしく姫にもなにか煎じたものを飲ませ、熱をもったからだを丁寧に拭いていた。その隣で笹も手伝い、彦左といえばときおり二人の少女に筆談でこそこそと話してした。もっとも互いのことばが通じるはずもなく、お遊びごとのようにもみえた。ときに秀華姫は侍女と互いの掌を擦りあっていた。
皇女の妹の優華姫とは能登ではぐれたままであるらしい。ことばを解せないこの国で、しかも得体の知れない連中に追われながらの秀華姫の逃避行と比べれば、新城を出てからのわたしは旅をしているようなものだと思えてきた。気楽な旅ではないにしても、この異国の姫らのそれとは異質のものであったろう。
ふしぎとわたしの妹のようにも思えてきた。
ちなみに、わたしには妹はいないが、二歳の弟がいる。異母弟である。
わたしの母の侍女の一人が、かれの母親であった。父は、よりによって、なぜ、わざわざ母の侍女に手をつけたのだろうか。
母は、以前は、今川家の血を受け継いでいる自分を誇りに思い、その一点を生きる源泉としていたけれど、岡崎にきてからは、没落した名門の血に負い目を感じて、つねに控えめにじっと蔭で耐えていた。そんな母の挙動が変り出したのは、やはり、二年前のわたしの異母弟の誕生からであったような気がする。その頃から、母はしばしば癇癪をおこすようになった。わたしはといえば兄信康への想いを強めていた頃で、母と接することをなぜか避けるようになって、ほとんど顔を合わせない日が続いていた。
かりに、このような洞窟のなかで、父や兄や母とともに静かに暮らしていたならば、もっと異なった世界が訪れていたにちがいない。それにしても、なぜ、父は、母の侍女に手をつけたのか。他で隠れて側妾を持つことも容易にできたはずなのに、どうして、あてつけるように母の侍女に……。
手をつける、という云い様は、女人のわたしには、どうしても好きにはなれない。
抱く、挿れる、といった直截な云いようのほうが、よっぽど、ましだとおもう。まぐわいのこと、房事は、それなりに、意味のあるものなのだろう。
長らく夫の信昌どのと肌を合わせていないわたしには、からだの奥の疼きのありようが、それなりに理解できるようになっていた。ときに、性の欲望は、人を人たらしめる目に見えない糊のような働きをする。
つまりは子を孕むということは、欲望の残滓のようなものかもしれないけれど、別の見方をすれば、家と家の絆を太くする種子でもあるのだろう。もとより、血の絆は、この時代にはそれほどの意味は持たないのだろうけれど、次代へと受け継ぐなにかを託しているようにも思えてきてならないのだ。
世の人々は、おのが宿命というものを、どのように受けとめ、どんな苦悩に身悶えしてきたのだろうか。
ふいにわたしは立ち上がり、洞窟の奥で、秀華姫と侍女のふたりの間に座った。汚れがこびりついているのか、顔に色はなかった。背丈はわたしとほとんど変わらない。寒さをこらえているのか、見知らぬ人に囲まれておびえているのか、わからない。
大海を渡って、異国に渡り、さらに流浪の旅を続けなければならないとは、あまりにも哀しいことだ。できれば、新城へ連れていき、静かに暮らす途をさがしてあげたいともおもった。
「それは、なるまいぞ、なるまいぞよ」
わたしの思念を察してか、すかさず休賀斎の老公がやんわりと釘を刺した。
「……このように申しては不服であろうが、厄介ごとを招くことは断じて避けねばならぬ」
すると彦左が鋭い目付きになって、老公を睨んだ。
「なれば、ご老公は、秀華さまらを見殺しにせよと仰せかっ」
いつになく激しい彦左の語調に驚いたわたしは、なんとかせねばと考えてはいたものの一向に口の端をついて出ることばが見つからなかった。
気まずい空気を振り払おうとしかけたとき、兵太郎が武将を連れて洞窟のなかに入ってきた。かの元の黙阿弥どのであった。
「堺の天満屋が焼き払われたそうだ!順慶どの密偵が報せてくれた」
その言葉に、佐助と弥右衛門が息を呑み、おそらく洞窟には天満屋ゆかりの雇われ牢人たちもいたのだろう、座は一気に緊張した。
「それで、屋敷の者らの消息はいかに?」
弥右衛門が訊ねると、
「安堵いたすがよい!」
と、すかさず兵太郎が応じた。
「……事前に危機を察したようで、番頭が采配をふるって、てんでに落ちのびさせたそうな。商家の番頭にしておくには惜しい人物とみたぞ」
あっ、嘉兵衛のことだ、と察して、佐助のほうをみて互いに肯きあった。
わたしの前に兵太郎が胡座をくみ、その隣に筒井順慶さまが座った。
老公はわたしの隣、離れて弥右衛門と佐助が車座になっている。
ぽつねんとして彦左は座から離れていた。わたしを避けているのではなく、おそらく兵太郎のことが嫌いなのだろう。
熊蔵もまた、なにやら居心地が悪そうにそわそわとしている。
わたしを岡崎へ伴っていきたいだろうに熊蔵は、それが成らぬことを薄々察して葛藤しているふうにもみえた。熊蔵はおそらく、兄信康が遣わした密偵にちがいない。なんの根拠もないのだけれど、わたしにはそのように思えてならなかった。
「どうした、彦左衛門、もそっと近くにきて座れ。そんなふうにしていると、おれのことを避けているようにみゆるぞ。不甲斐ないやつめが!」
故意に挑発しているのか兵太郎が哄笑すると、案の定、彦左はすくっと立って、老公の隣に割り込んだ。
「ふん、まるで、呉越同舟のようなものずらよ」
意外と彦左は物識りのようである。しばし互いに目と目をみつめ、視線を交えないように沈黙していたが、静寂を破って兵太郎が喋りだした。
「……のう、彦左衛門よ、彦左よ……おまえはおれが信長を嫌っているとおもっているようだが、そうではないぞ!ま、まあ、腰を折らずに聴くがいい。好きか、嫌いか、と問われれば、好きなほうだ。いや、信長の偉大さは、おれなりによく判っているつもりだ。織田家中に人材が傑出しているのをなんとみるか。羽柴、明智、滝川……など数え上げればきりがない。もとより柴田勝家、丹羽五郎左衛門などの宿老らもいるにはいるが、新参者にそれらと同等の職位を与え、それぞれの能力を如何なく発揮させておるわ。まさに、従来の仕組みを打ち壊す、これがまさに信長流よ。格好の例が褒賞の仕組みだ。彦左衛門、ひとつおまえに聴くが、戦での一番手柄はなんだ?」
「大将首!」と、彦左が叫んだ。
「そう、それよ、敵の大将に一番槍をつけたもの、首をとった者が褒賞される、それが従前の仕組みよ。信長という奴は、その仕組みを変えたのだ。桶狭間のおり、大将の今川義元公の首をとった者よりも、どこで陣を張っているのか、それを報せた者、その陣までの道筋を整えた者をこそ、最大の功労者と位置づけた。まさにおれらのような海賊、山賊のやり方でもあるな、だからこそ、信長は、偉大なのだ。そうして、すこぶる怖ろしい……」
これほどよく喋る御仁とはおもっていなかっただけに、唖然としながらも一語一句を噛み締めるように聴いていた。
ではなにゆえ、兵太郎は信長様にお味方しないのだろうか。
わたしよりも先に彦左がおなじことを口にした。するとれいの破顔哄笑しながら兵太郎は答えた。
「……ふん、信長めは、あまりにも性急にすぎる。信長流の変革は必要なのだ。だがの、それは手におえる変革でないと意味はない。……どうやら、信長はな、おのれのいのちが尽きることを恐れているようだな、瞳の黒いうちになにもかもやり遂げようと躍起になっているのだ。おそらくは、……息子どもは凡人、そこで、おのれが死んだのちの大騒乱をおそれ、いまのうち、いまのうちに……と、事を急いでいるようにおれには映る。だからこそ、好敵手の存在が重要なのだ。並々ならぬ好敵手がおれば、変革の速さを時代に合わせたものに調整することもできようからな。もっとも、信長はこのおれのことなど歯牙歯牙にもかけてはおらんだろうがな、はっははっ」
洞窟のなかに兵太郎の哄笑が響き渡った。彦左をみると、眉間に皺を寄せてなにやら考え込んでいるようにみえた。
「彦左衛門よ、それぞれの立場で、葛藤することを、迷いつつも考え続けることを、決して恐れてはならぬぞよ。これが、おれからのはなむけぞ!」
兵太郎が投げかけたことばは、彦左の深奥に届いたかどうかわからない。
兵太郎が立ち上がって座をはずすと、いきなり順慶さまが話かけてきた。
「亀姫に、お願いごとがございましてな」
佐助によれば、三十路を過ぎたばかりということだったけれど、童顔にみえる貌のなかに陰鬱のかげが浮かんでいた。
みんな必死で、もがいているのだ。
そうおもうと急にからだが軽くなった。順慶さまが鉄砲足軽を手元に招き、菅笠をとらせると、頬を消し炭で汚した女人があらわれた。このような変装は、誰もが考え付くことなのであろうか。わたしも佐助にこういう姿にさせられそうになったことを思い出した。
「……名は、巣鴨、筒井家の身内の者。どうぞ、三河なりとてお連れくだされよ。いやなに、人質とおもっていただいて結構」
「人質?ならば、お連れいたしかねます。けれど、私の友ということであれば、仲良く過ごすこともできましょうほどに」
わたしが答えると、順慶さまが巣鴨と互いの顔を見合わせて、
「よしなに、お願い申す」
と会釈をした。
巣鴨はわたしの年齢と大差ないと踏んだ。彼女に話しかけると、その簡潔な返答ぶりに驚かされた。この者は筒井衆の密偵かもしれないけれど、それでもいいとおもった。
奥のあたりが騒がしくなった。
行ってみると、またもや彦左と兵太郎が言い争っている声がこだましていた。どうやら、秀華姫とその侍女をどこに落ち延びさせるのかで対立していたらしい。
中国の毛利や、九州の島津、四国の長宗我部家が皇女を取り込むことを彦左は懸念しているのだ。翁狐にも気づかれない寺の名を告げた兵太郎が、さらに云い添えた。
「……大陸に渡ったことのある留学僧もいる、よき医者もいる、近くに温泉もあるぞ。すべて手配した。信長には渡さぬが、反信長の輩にも決して好きなようにはさせぬわ。信じがたくば、落ち着くまで、彦左よ、おまえが付き従うがいい。だが、侍女はだめだ。かえって足手まといになろう」
返辞に窮している彦左をみて、
「では侍女のかたは、私が預かります」
と、わたしはおもわず口に出していた。
巣鴨という新たな友が増えることになったのだから、もう一人増えてもいい。
「あかし、と名づけましょう。生きる証の、あ、か、し」
本当に友になれればいいとわたしはおもった。あと一つ、彦左に糺糾しておきたいことがあった。
「……彦左の蔭で茶屋衆が動いていたそうですが、茶屋四郎次郎どのの狙いがわかりませぬ。そのことを弥右衛門にたずねても、空惚けて答えてくれませぬ」
弥右衛門の耳に入るように大声で云うと、意外なことを弥右衛門は吐露してくれた。
「船に乗せるまでは、まさか亀姫様とは存知なかったのでござるよ。この彦左の奴もなかなか口を割らなかったもので、おなごは、詞葉様だとばかり思い込んでおりましてな」
弥右衛門が頭を掻きながら弁解した。
「私を詞葉と間違えたと?では、どうして私を松永弾正様の城へ連れていったのですか」
それが大きな謎だった。
「それは……身共の発案だ」と、横から口を出したのは、意外にも休賀斎の老公であった。
「亀どのが城から消えてから、笹どのを連れてあとを追った……もっとも誰がどのように動いていたかは判らなかったが、これでも街道筋には、剣の弟子らも大勢いてな。いろいろと助力を請うたのじゃよ。服部半蔵どのの配下にも、ずいぶんと助けてもろうた。堺の天満屋に居ると知ったとき、織田どのの別働隊が動いていることを察知したのじゃ。おそらくはすでに天満屋を襲撃するつもりでおったのじゃろうの。そこで、ひとまず亀どのを、考えうるかぎり安全なところへ移そうと思い立ったのが、松永弾正の城だった……」
……そこであの翁狐の城の見取り図が手に入ると茶屋四郎次郎どのをくどいたということである。
翁狐の城がもっとも安全、という発想は、いったいどこからくるのだろう。
「……早晩、松永弾正は織田どのに再び公然と謀叛しよう。けれど、それが判っていても織田どのも総力戦で打ち勝つまでは、決して、手出しはしまい。しかも、弾正は、味方を集めようと躍起になっておるゆえ、たとえ素性が知れても、むやみに殺しはしまい……安全というのはそのこと。虎穴に入らずんば、なんとやら……という次第」
「とすれば、私も彦左も、みなの衆にいいように利用されていたということですか」
「御意」
老公はにやりと笑うと、ペロリと舌を出した。なかなかに憎めないご老人だ。
「……弥右衛門は、秀華姫のことを四郎次郎どのにお報せするのですか?」
わたしがたずねると、しばしの沈黙のあと、弥右衛門は、
「いいや」と、首を横に振った。
「……秀華姫は、この神立の里で、何者かに襲撃されて、落命なされた……それでよろしいのではございますまいか」
その弥右衛門の言葉に、休賀斎の老公が
「よきかな、佳きかな!」
と応じた。
「ただし条件がございます」
意外にも弥右衛門はふてぶてしい顔つきつきになって、胸を張った。
「……拙者と佐助、それにこの場にはおりませぬが、かの天満屋番頭の嘉兵衛や雇っていた船夫、牢人ども、そっくりそのまま亀姫様の家来にしていただきとうござる」
弥右衛門がいった。
その申し出には驚かされたけれど、秀華姫の生存を秘密にしてくれるというのならば、それにこしたことはないとおもった。
それから、翁狐松永弾正が自ら語っていた謀略の内容を披露した。大賀弥四郎の件も、すべては翁狐の撒いた陰謀の種のひとつにしかすぎないことを語り終えると、さすがの老公も、それに兵太郎までもが唸って口を閉じた。
わたしは横たわっている小太郎ににじり寄った。
額に汗がにじんでいる。
汗をぬぐっていたあかしに代わり、拭いた。
瞳は開いていないけれど、荒い鼓動が伝わってきた。小太郎はいままでどういう暮らしをしてきたのか、いつか再会したおりにそのことを聴いてみたいとおもった。もとより、わたしの夫、信昌どのとの関わりも聴かなければならないだろう。
まだあきらかにはされていない秘密が目の前によこたわっているように感じられてならなかった。
彦左は秀華姫の傍らで、なにやらせっせと筆談をしていた。もうわたしのことなど眼中にないようで、しきりに話しかけている。
わたしは熊蔵の傍らに近づき、
「岡崎にはいずれ必ず立ち寄りますゆえ、三郎兄さまのこと、お頼みいたします」
と、囁くように伝えた。
「それに、これからは新城には、密かに潜入などしなくても、堂々と、表門からお入りなさい。私の供奉人頭のクマ、とでも胸を張って名乗られませ」
「ま、まことでございまするか」
「ええ、熊蔵は私の弟のようなもの。どうか、三郎兄さまのこと、くれぐれも……」
わたしが云うと、熊蔵は一瞬怪訝そうに小首を傾げたけれど、見る間に喜色をあらわにして、跪いた。
そのとき、ふいに笹がわたしの腹に手をやった。
「亀様、どうやら、ご懐妊なされたのでございますな」
わが事のように嬉しそうに笹は笑った。
「おお、忘れていたぞ!」
突然、兵太郎が立ち上がった。
「ささっ、ご一同、盃をとられよ。年が明けたぞ!とりあえずは、いまこのときの無事をこそ、寿ごうぞ!」
こんな洞窟のなかで、新しい年を迎えようとは想像だにできなかった。
天正五年丁丑の年、わたしは、十八になった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大和型戦艦4番艦 帝国から棄てられた船~古(いにしえ)の愛へ~
花田 一劫
歴史・時代
東北大地震が発生した1週間後、小笠原清秀と言う青年と長岡与一郎と言う老人が道路巡回車で仕事のために東北自動車道を走っていた。
この1週間、長岡は震災による津波で行方不明となっている妻(玉)のことを捜していた。この日も疲労困憊の中、老人の身体に異変が生じてきた。徐々に動かなくなる神経機能の中で、老人はあることを思い出していた。
長岡が青年だった頃に出会った九鬼大佐と大和型戦艦4番艦桔梗丸のことを。
~1941年~大和型戦艦4番艦111号(仮称:紀伊)は呉海軍工廠のドックで船を組み立てている作業の途中に、軍本部より工事中止及び船の廃棄の命令がなされたが、青木、長瀬と言う青年将校と岩瀬少佐の働きにより、大和型戦艦4番艦は廃棄を免れ、戦艦ではなく輸送船として生まれる(竣工する)ことになった。
船の名前は桔梗丸(船頭の名前は九鬼大佐)と決まった。
輸送船でありながらその当時最新鋭の武器を持ち、癖があるが最高の技量を持った船員達が集まり桔梗丸は戦地を切り抜け輸送業務をこなしてきた。
その桔梗丸が修理のため横須賀軍港に入港し、その時、長岡与一郎と言う新人が桔梗丸の船員に入ったが、九鬼船頭は遠い遥か遠い昔に長岡に会ったような気がしてならなかった。もしかして前世で会ったのか…。
それから桔梗丸は、兄弟艦の武蔵、信濃、大和の哀しくも壮絶な最後を看取るようになってしまった。
~1945年8月~日本国の降伏後にも関わらずソビエト連邦が非道極まりなく、満洲、朝鮮、北海道へ攻め込んできた。桔梗丸は北海道へ向かい疎開船に乗っている民間人達を助けに行ったが、小笠原丸及び第二号新興丸は既にソ連の潜水艦の攻撃の餌食になり撃沈され、泰東丸も沈没しつつあった。桔梗丸はソ連の潜水艦2隻に対し最新鋭の怒りの主砲を発砲し、見事に撃沈した。
この行為が米国及びソ連国から(ソ連国は日本の民間船3隻を沈没させ民間人1.708名を殺戮した行為は棚に上げて)日本国が非難され国際問題となろうとしていた。桔梗丸は日本国から投降するように強硬な厳命があったが拒否した。しかし、桔梗丸は日本国には弓を引けず無抵抗のまま(一部、ソ連機への反撃あり)、日本国の戦闘機の爆撃を受け、最後は無念の自爆を遂げることになった。
桔梗丸の船員のうち、意識のないまま小島(宮城県江島)に一人生き残された長岡は、「何故、私一人だけが。」と思い悩み、残された理由について、探しの旅に出る。その理由は何なのか…。前世で何があったのか。与一郎と玉の古の愛の行方は…。
ラスト・シャーマン
長緒 鬼無里
歴史・時代
中国でいう三国時代、倭国(日本)は、巫女の占いによって統治されていた。
しかしそれは、巫女の自己犠牲の上に成り立つ危ういものだった。
そのことに疑問を抱いた邪馬台国の皇子月読(つくよみ)は、占いに頼らない統一国家を目指し、西へと旅立つ。
一方、彼の留守中、女大王(ひめのおおきみ)となって国を守ることを決意した姪の壹与(いよ)は、占いに不可欠な霊力を失い絶望感に伏していた。
そんな彼女の前に、一人の聡明な少年が現れた。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
不屈の葵
ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む!
これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。
幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。
本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。
家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。
今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。
家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。
笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。
戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。
愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目!
歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』
ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる