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どうも、学内対抗戦です
どうも、予選です
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せっかくだからガチで優勝を目指そうと、フレイたちは別々のリングへ向かった。
それは生徒会メンバーも同じようで、各リングに1人の役員がいた。アゲハのリングにはルイスがいる。
「まずは会長だ! 会長を狙うぞ!」
誰かが言ったのを皮切りに、ほぼ全員がルイスを狙う目になった。ルイスを倒すまでは共闘するつもりのようだ。
数人はそんなルイス狙いたちを狙っている。ルイスに勝つのは諦め、枠に入り込むことを狙っているようだ。こちらのほうが賢い戦略といえる。
「魔王様は…まだ巻き込まれの凡人だと思われてるんですかね?」
ザガンが小声で言って首を傾げた。平静時には黒目黒髪のアゲハは、こちらの世界では珍しい容貌だ。闇の属性貴族でもニコライのような紫の髪と瞳であり、黒を持つ者は滅多にいない。
なのになぜ放置できるのか。
「1年生との認識だからだろう」
サバイバルの撃破数1位という成績を残してはいるが、召喚されてからまだ数ヶ月なためルイスほど意識されていないようだ。
勇者本人ならともかく、巻き込まれについては他クラスや上級生からの認知度も低い。
「あれ、ザクさん?」
予選がもうすぐ始まるというのにまだアゲハの隣にいたザガンに、ルイスが気づいた。
他にも気づいていた者はいるが、当然のようにリング上に居座る村人風の男に話しかける勇気はなかった。
「ルイス! サバイバル以来だなー!」
こんなときでもザガンに気づいてくれたルイス。サバイバルでもザガンのことを忘れないでいてくれたことといい、ザガンは嬉しくて目をうるうるさせた。
「巻き込まれる前に帰れ」
そこへ下される主君からの冷酷な命令。
「そうだね、混戦だし間違えて攻撃しちゃうかも」
ルイスは爽やかに、主君と同じ冷酷な台詞を吐いた。
ザガンとルイスが本気で戦えば、かなりいい勝負になるだろう。しかしそれは本気を出せばの話だ。人化したままのザガンがルイスに勝てるとは思えない。
アゲハの命令はザガンをルイスから引き離す冷酷なものだが、今回に限ってはザガンへの思いやりが含まれていた。
「ういー…。オレっち帰るー…」
その優しさを、いつも! もっと! 違うときに! とは言えず、ザガンは数歩とぼとぼと歩き、ちょっぴり振り返ってから、名残惜しそうに泣きそうな顔をして転移した。安っぽい別れのドラマでも見せられた気分である。
そんなザガンをアゲハは冷めた目で、ルイスは手を振りながら笑って見送った。ふたりともなんの未練もない顔である。
「手加減はしないよ」
ルイスはアゲハに向き直り、握手を求める。
スルーされた他の生徒、特に3年生はアゲハに対抗心を、ルイスに敵対心を燃やした。
「本気を出すほどとは思えないが」
アゲハはルイスの手を握り返す。
「他に対してはね」
ルイスは予選からアゲハの排除を狙っているようだ。
排除…というよりは単に堂々とアゲハの実力を試す機会があって嬉しいのだろうが、本気を出せないアゲハとしては傍迷惑でもある。アゲハには闇魔法のみという縛りがある。
ただし、2人して周囲を煽っているのは同じだ。
「試合、開始ぃぃいい!」
ようやくシラにマイクを返してもらえた司会が高らかに宣言すると同時に、様々な属性の矢やボールがリング中央のルイスとアゲハ目掛けて飛来した。
喧嘩を売りすぎたため、全員がルイスとアゲハ狙いの作戦に切り替えたようだ。
「この程度かな?」
「ぬるいな」
身体強化するまでもなく瞬足ですべての攻撃を掻い潜り躱したルイスとアゲハは、それぞれ隅で眺めていた。
中央にいたアゲハたちを狙った魔法を屈んで躱したため、魔法は解除されることなく対角にいた生徒たちをなぎ倒してゆく。
状況がわからず倒れる生徒たちに、アゲハたちはいないとわかってもあえて魔法を解除しない生徒たち。混戦だから一人でも多く倒したいのは皆同じなのだ。
そうして必然、飛来した魔法を避けられた者だけが生き残った。
「あと4人か…」
「一気に減ったね」
「でも無意味っていう」
振り向きざまにルイスが放っていた4つのライトボールが、助かったと胸を撫で下ろした4人を時間差で弾き飛ばす。
4人はぐはあとかぐえっだとかの、カエルが潰れるときでも出さないような低い呻き声を出しながら、魔力球と見えない壁に挟まれて吐血した。リングごとに魔力壁が展開されていたらしい。
…だからシラ、そういうことも事前に言え。
「おーっとぉ! 第1リング、もう終決だあ! 勝者は我らが生徒会長、ルイス・アルフォードと、勇者の巻き込まれ、アゲハ・クロバ! 防死結界を最大限活用した無慈悲な攻撃で勝敗を決しましたぁ!」
「しまった。表ではここまでしなかったのに…」
「裏の依頼を受け過ぎたんだろう」
テンション高く勝利宣言する司会をバックに、手加減すれば良かったと悔いるルイスとフォローするアゲハ。
殲滅や破棄依頼ばかりを受けていたのだから、気絶させる手加減を忘れていたのも頷ける。
「会長は魔法一撃! アゲハ・クロバに至っては魔法を何も使っていないにも関わらず! 勝利が決定しました! アゲハ・クロバは実力なのか運なのか!」
「運も実力のうちじゃ」
司会と理事長に実力を疑う会話をされているアゲハ。
理事長はアゲハが黒帝なのを知っているため、あえて司会の話に合わせているのだろうが、ムカつく話である。
ここまでとはいかずとも毎年瞬殺してきたルイスは、力を疑われたアゲハの苛立ちを横でひしひしと感じていた。
「まあ、早く終わったってことは皆の戦いを見られるってことだよね」
アゲハを怒らせたくない一心で、ルイスは話題を逸らすために、これから戦いを迎えようとしている他のリングへ目を向ける。
それは生徒会メンバーも同じようで、各リングに1人の役員がいた。アゲハのリングにはルイスがいる。
「まずは会長だ! 会長を狙うぞ!」
誰かが言ったのを皮切りに、ほぼ全員がルイスを狙う目になった。ルイスを倒すまでは共闘するつもりのようだ。
数人はそんなルイス狙いたちを狙っている。ルイスに勝つのは諦め、枠に入り込むことを狙っているようだ。こちらのほうが賢い戦略といえる。
「魔王様は…まだ巻き込まれの凡人だと思われてるんですかね?」
ザガンが小声で言って首を傾げた。平静時には黒目黒髪のアゲハは、こちらの世界では珍しい容貌だ。闇の属性貴族でもニコライのような紫の髪と瞳であり、黒を持つ者は滅多にいない。
なのになぜ放置できるのか。
「1年生との認識だからだろう」
サバイバルの撃破数1位という成績を残してはいるが、召喚されてからまだ数ヶ月なためルイスほど意識されていないようだ。
勇者本人ならともかく、巻き込まれについては他クラスや上級生からの認知度も低い。
「あれ、ザクさん?」
予選がもうすぐ始まるというのにまだアゲハの隣にいたザガンに、ルイスが気づいた。
他にも気づいていた者はいるが、当然のようにリング上に居座る村人風の男に話しかける勇気はなかった。
「ルイス! サバイバル以来だなー!」
こんなときでもザガンに気づいてくれたルイス。サバイバルでもザガンのことを忘れないでいてくれたことといい、ザガンは嬉しくて目をうるうるさせた。
「巻き込まれる前に帰れ」
そこへ下される主君からの冷酷な命令。
「そうだね、混戦だし間違えて攻撃しちゃうかも」
ルイスは爽やかに、主君と同じ冷酷な台詞を吐いた。
ザガンとルイスが本気で戦えば、かなりいい勝負になるだろう。しかしそれは本気を出せばの話だ。人化したままのザガンがルイスに勝てるとは思えない。
アゲハの命令はザガンをルイスから引き離す冷酷なものだが、今回に限ってはザガンへの思いやりが含まれていた。
「ういー…。オレっち帰るー…」
その優しさを、いつも! もっと! 違うときに! とは言えず、ザガンは数歩とぼとぼと歩き、ちょっぴり振り返ってから、名残惜しそうに泣きそうな顔をして転移した。安っぽい別れのドラマでも見せられた気分である。
そんなザガンをアゲハは冷めた目で、ルイスは手を振りながら笑って見送った。ふたりともなんの未練もない顔である。
「手加減はしないよ」
ルイスはアゲハに向き直り、握手を求める。
スルーされた他の生徒、特に3年生はアゲハに対抗心を、ルイスに敵対心を燃やした。
「本気を出すほどとは思えないが」
アゲハはルイスの手を握り返す。
「他に対してはね」
ルイスは予選からアゲハの排除を狙っているようだ。
排除…というよりは単に堂々とアゲハの実力を試す機会があって嬉しいのだろうが、本気を出せないアゲハとしては傍迷惑でもある。アゲハには闇魔法のみという縛りがある。
ただし、2人して周囲を煽っているのは同じだ。
「試合、開始ぃぃいい!」
ようやくシラにマイクを返してもらえた司会が高らかに宣言すると同時に、様々な属性の矢やボールがリング中央のルイスとアゲハ目掛けて飛来した。
喧嘩を売りすぎたため、全員がルイスとアゲハ狙いの作戦に切り替えたようだ。
「この程度かな?」
「ぬるいな」
身体強化するまでもなく瞬足ですべての攻撃を掻い潜り躱したルイスとアゲハは、それぞれ隅で眺めていた。
中央にいたアゲハたちを狙った魔法を屈んで躱したため、魔法は解除されることなく対角にいた生徒たちをなぎ倒してゆく。
状況がわからず倒れる生徒たちに、アゲハたちはいないとわかってもあえて魔法を解除しない生徒たち。混戦だから一人でも多く倒したいのは皆同じなのだ。
そうして必然、飛来した魔法を避けられた者だけが生き残った。
「あと4人か…」
「一気に減ったね」
「でも無意味っていう」
振り向きざまにルイスが放っていた4つのライトボールが、助かったと胸を撫で下ろした4人を時間差で弾き飛ばす。
4人はぐはあとかぐえっだとかの、カエルが潰れるときでも出さないような低い呻き声を出しながら、魔力球と見えない壁に挟まれて吐血した。リングごとに魔力壁が展開されていたらしい。
…だからシラ、そういうことも事前に言え。
「おーっとぉ! 第1リング、もう終決だあ! 勝者は我らが生徒会長、ルイス・アルフォードと、勇者の巻き込まれ、アゲハ・クロバ! 防死結界を最大限活用した無慈悲な攻撃で勝敗を決しましたぁ!」
「しまった。表ではここまでしなかったのに…」
「裏の依頼を受け過ぎたんだろう」
テンション高く勝利宣言する司会をバックに、手加減すれば良かったと悔いるルイスとフォローするアゲハ。
殲滅や破棄依頼ばかりを受けていたのだから、気絶させる手加減を忘れていたのも頷ける。
「会長は魔法一撃! アゲハ・クロバに至っては魔法を何も使っていないにも関わらず! 勝利が決定しました! アゲハ・クロバは実力なのか運なのか!」
「運も実力のうちじゃ」
司会と理事長に実力を疑う会話をされているアゲハ。
理事長はアゲハが黒帝なのを知っているため、あえて司会の話に合わせているのだろうが、ムカつく話である。
ここまでとはいかずとも毎年瞬殺してきたルイスは、力を疑われたアゲハの苛立ちを横でひしひしと感じていた。
「まあ、早く終わったってことは皆の戦いを見られるってことだよね」
アゲハを怒らせたくない一心で、ルイスは話題を逸らすために、これから戦いを迎えようとしている他のリングへ目を向ける。
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