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どうも、謁見です
どうも、解散です
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「いや、誰も取り巻きが悪いって話はしてねーよ」
シラが素で突っ込む。
「うーん、どちらかと言えば、女性にだらしない君が悪いって話じゃないかな?」
さすがはリズの父。風帝は毒舌で核心を突く。
「僕が!?」
そこは驚くところではない。むしろ今さらである。
そして令嬢たちは庇うのに、自分が指差されれば否定するのか。では誰が悪いと思っていたのか。
確かに今回は、アゲハの発案でデカラビアをけしかけた。確信犯で、悪いのはアゲハだ。
しかし勇は勇者なのだ。勇者はそもそも魔族ホイホイであると、相場が決まっている。つまり自己責任。
「勇者、お前は光帝としても前光帝から散々注意されてんだろ? もうちょっと素直に聞いてみろ。…ってことで、もう解散でいいな? どうせ勇者はまだ出発できないんだ。指導役も、ギルマスから変えたほうがいいんじゃね? まあそれはどうでもいいけど、俺は昼飯食って昼寝したいんだよ。早く解散しろ」
全帝モードでも欲望に忠実なシラは、ワーワー文句を言い始めた白ローブを無視しながら言いたいだけ全部言って国王へ殺気を飛ばした。
光帝は勇者だから不在のはずなのに白ローブがいると思ったら、ギルマスが変装して代理出席していたようだ。「私以外の指導役など認めん!」など、言ってしまえば正体がバレるというのに。
「う、うむ……。しかしだ、サバイバルとやらにドラゴンが来たと聞いておる。そのときも魔族が来ていたのだろう?」
しかし、帝内の事情やギルマスの恋心など、国王には関係がなかった。
「えっ? そうなの?」
…勇者にも関係がなかったようだ。
愚鈍な勇者は首を傾げる。
他はもとより、知らぬ者たちだ。同じく首を傾げている。
「それに答えられるのは前光帝だよ。あとで呼び出したらどうだ? 勇者がいなけりゃ来るだろうよ。んで、俺はさっさと寝たいんだよ。わかるか?」
シラの殺気が強まる。国王の横にいた大臣が気絶して倒れた。
強者であれば、殺気や怒気などの気だけで他の生物に影響を与えることができる。たとえば、殺気を当てて心臓麻痺を起こすなど。
そう思えば、国王の心臓には毛が生えているに違いない。シラの殺気の中心にいるのに、まだ倒れていないのだから。
「あ、いや、そうじゃな。しかし勇者殿の実力は見ておかねばなるまい。だから……勇者殿だけ訓練室で騎士団と手合わせすることにして……あとは解散……ということで手を打って……くれないだろうか」
しかし怖いものは怖い国王。次は自分かと怯み、徐々に語尾が弱まり、最後は全帝に頭を下げた。
全帝の殺気を浴びていない臣下は「そんなに簡単に頭を下げないでください」とかワーワー言っているが、帝たちは「まあそうなるよな」という反応だ。
「国王様、昼寝の絡んだ全帝は止められませんぞ。頭を下げるよりもさっさと解散と言ったほうが良いですわい」
土帝が上司でもあり部下でもある全帝を庇った。さすがはクレアの祖父。味方には優しい。
「か、解散じゃ! 勇者殿だけ残るように!」
国王が叫ぶと、どこからともなくビッチ王女が現れて勇に抱きついた。感動の再会というほど離れてもいないくせに。
馬車を降りてからというもの、本当にどこにいたのか。空気よりも空気だった。
訓練室はこちらですわ、とかなんとか言っている。一応王女の最低限の務め……城内の道案内をする気はあるらしい。
「おっしゃ、帰るぞ。アゲハはこっち来い」
全帝に呼ばれて振り返る。
ポン、と頭に手を置かれ、突然転移が発動した。
「…どこだここは」
「森だろ、どう見ても」
見渡す限りの木々は、確かに森である。ただし連れてこられた意味はわからない。
全帝はローブを脱ぎ、さり気なく空間魔法で収納して、見慣れた姿になった。ローブの下はすでにヨレシャツとボサ髪だ。表情筋も死んでいる。先ほどまでの威厳はどこにもない。ただのシラだった。
「んーで、もっかい【転移】っとー」
「…どこだここは」
アゲハは同じ台詞を2度言う羽目になった。まったく見覚えのない場所だからだ。
「どこって、飯屋に決まってんだろ? 勇者には城から美味い飯出るってのに、もう1人の生徒を空腹で帰すわけにはいかねーだろ」
とても教師らしく、男気のある返答だった。
…目が死んでいなければ。
どうやらローブを人前で脱げないために、ひと気のない森にわざわざ一旦転移したようだ。
アゲハはシラに続いて店に入る。大きくもなく小さくもなく、小綺麗でも小汚くもない。言い表せないほど普通な店だ。ただ、そこそこ繁盛はしているらしい。
「さて、なんにする? ここはチェック表に書くんだ。なんでも食べたいもん言ってくれたら俺が書く。出せない料理はあんまりないから、メニュー読めなくても大丈夫だぞ」
さっさと端に席を見つけて座ったシラがペンを握りながら言った。
異世界の文字に慣れていない異世界人への対応としては100点、完璧なエスコートだった。そういうことは女にしてやれと言いたいが、彼女やらがいるようには感じない。
これでせめて、目だけでも生きていたら人気だろうに。
そしてアゲハはもちろん、勇も勇者補正で文字は一応読めている。そこは微妙に惜しい。
「ではステーキ」
「牛でいいな。ランク…特上でいいか。焼き加減は…レアの鉄板で持ってきてもらうか。焼き加減は好きに調整しろよ。サラダは?」
何やら気遣いが凄い。語尾も間延びしていないせいでイケメンスパダリオーラが出ている。誰だこいつは。
「卵のせで」
「グリーンサラダゆで卵乗せな。他には?」
「大丈夫だ」
「はいよー」
シラはさらさらと伝票のような紙にメニュー名と備考を書いていく。書き終わると文字が光り、厨房へ転写された。
魔法なのでテクノロジーではないが、無駄にハイテクな現象が起きている。
「んーでさ」
シラはだらしなく頬杖をつく。
「アゲハってぶっちゃけ何者なわけ?」
こういう質問なら目が剣呑になったりしそうなのに、シラの表情筋はやはりまったく働く気がないらしい。顔が隠せるから全帝姿だと威厳が漂うのかもしれなかった。
シラが素で突っ込む。
「うーん、どちらかと言えば、女性にだらしない君が悪いって話じゃないかな?」
さすがはリズの父。風帝は毒舌で核心を突く。
「僕が!?」
そこは驚くところではない。むしろ今さらである。
そして令嬢たちは庇うのに、自分が指差されれば否定するのか。では誰が悪いと思っていたのか。
確かに今回は、アゲハの発案でデカラビアをけしかけた。確信犯で、悪いのはアゲハだ。
しかし勇は勇者なのだ。勇者はそもそも魔族ホイホイであると、相場が決まっている。つまり自己責任。
「勇者、お前は光帝としても前光帝から散々注意されてんだろ? もうちょっと素直に聞いてみろ。…ってことで、もう解散でいいな? どうせ勇者はまだ出発できないんだ。指導役も、ギルマスから変えたほうがいいんじゃね? まあそれはどうでもいいけど、俺は昼飯食って昼寝したいんだよ。早く解散しろ」
全帝モードでも欲望に忠実なシラは、ワーワー文句を言い始めた白ローブを無視しながら言いたいだけ全部言って国王へ殺気を飛ばした。
光帝は勇者だから不在のはずなのに白ローブがいると思ったら、ギルマスが変装して代理出席していたようだ。「私以外の指導役など認めん!」など、言ってしまえば正体がバレるというのに。
「う、うむ……。しかしだ、サバイバルとやらにドラゴンが来たと聞いておる。そのときも魔族が来ていたのだろう?」
しかし、帝内の事情やギルマスの恋心など、国王には関係がなかった。
「えっ? そうなの?」
…勇者にも関係がなかったようだ。
愚鈍な勇者は首を傾げる。
他はもとより、知らぬ者たちだ。同じく首を傾げている。
「それに答えられるのは前光帝だよ。あとで呼び出したらどうだ? 勇者がいなけりゃ来るだろうよ。んで、俺はさっさと寝たいんだよ。わかるか?」
シラの殺気が強まる。国王の横にいた大臣が気絶して倒れた。
強者であれば、殺気や怒気などの気だけで他の生物に影響を与えることができる。たとえば、殺気を当てて心臓麻痺を起こすなど。
そう思えば、国王の心臓には毛が生えているに違いない。シラの殺気の中心にいるのに、まだ倒れていないのだから。
「あ、いや、そうじゃな。しかし勇者殿の実力は見ておかねばなるまい。だから……勇者殿だけ訓練室で騎士団と手合わせすることにして……あとは解散……ということで手を打って……くれないだろうか」
しかし怖いものは怖い国王。次は自分かと怯み、徐々に語尾が弱まり、最後は全帝に頭を下げた。
全帝の殺気を浴びていない臣下は「そんなに簡単に頭を下げないでください」とかワーワー言っているが、帝たちは「まあそうなるよな」という反応だ。
「国王様、昼寝の絡んだ全帝は止められませんぞ。頭を下げるよりもさっさと解散と言ったほうが良いですわい」
土帝が上司でもあり部下でもある全帝を庇った。さすがはクレアの祖父。味方には優しい。
「か、解散じゃ! 勇者殿だけ残るように!」
国王が叫ぶと、どこからともなくビッチ王女が現れて勇に抱きついた。感動の再会というほど離れてもいないくせに。
馬車を降りてからというもの、本当にどこにいたのか。空気よりも空気だった。
訓練室はこちらですわ、とかなんとか言っている。一応王女の最低限の務め……城内の道案内をする気はあるらしい。
「おっしゃ、帰るぞ。アゲハはこっち来い」
全帝に呼ばれて振り返る。
ポン、と頭に手を置かれ、突然転移が発動した。
「…どこだここは」
「森だろ、どう見ても」
見渡す限りの木々は、確かに森である。ただし連れてこられた意味はわからない。
全帝はローブを脱ぎ、さり気なく空間魔法で収納して、見慣れた姿になった。ローブの下はすでにヨレシャツとボサ髪だ。表情筋も死んでいる。先ほどまでの威厳はどこにもない。ただのシラだった。
「んーで、もっかい【転移】っとー」
「…どこだここは」
アゲハは同じ台詞を2度言う羽目になった。まったく見覚えのない場所だからだ。
「どこって、飯屋に決まってんだろ? 勇者には城から美味い飯出るってのに、もう1人の生徒を空腹で帰すわけにはいかねーだろ」
とても教師らしく、男気のある返答だった。
…目が死んでいなければ。
どうやらローブを人前で脱げないために、ひと気のない森にわざわざ一旦転移したようだ。
アゲハはシラに続いて店に入る。大きくもなく小さくもなく、小綺麗でも小汚くもない。言い表せないほど普通な店だ。ただ、そこそこ繁盛はしているらしい。
「さて、なんにする? ここはチェック表に書くんだ。なんでも食べたいもん言ってくれたら俺が書く。出せない料理はあんまりないから、メニュー読めなくても大丈夫だぞ」
さっさと端に席を見つけて座ったシラがペンを握りながら言った。
異世界の文字に慣れていない異世界人への対応としては100点、完璧なエスコートだった。そういうことは女にしてやれと言いたいが、彼女やらがいるようには感じない。
これでせめて、目だけでも生きていたら人気だろうに。
そしてアゲハはもちろん、勇も勇者補正で文字は一応読めている。そこは微妙に惜しい。
「ではステーキ」
「牛でいいな。ランク…特上でいいか。焼き加減は…レアの鉄板で持ってきてもらうか。焼き加減は好きに調整しろよ。サラダは?」
何やら気遣いが凄い。語尾も間延びしていないせいでイケメンスパダリオーラが出ている。誰だこいつは。
「卵のせで」
「グリーンサラダゆで卵乗せな。他には?」
「大丈夫だ」
「はいよー」
シラはさらさらと伝票のような紙にメニュー名と備考を書いていく。書き終わると文字が光り、厨房へ転写された。
魔法なのでテクノロジーではないが、無駄にハイテクな現象が起きている。
「んーでさ」
シラはだらしなく頬杖をつく。
「アゲハってぶっちゃけ何者なわけ?」
こういう質問なら目が剣呑になったりしそうなのに、シラの表情筋はやはりまったく働く気がないらしい。顔が隠せるから全帝姿だと威厳が漂うのかもしれなかった。
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