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どうも、サバイバルです

どうも、先輩です

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 訪れたサバイバル当日。何名かシラの不憫な犠牲者――もとい、欠員が出た結果、1Sクラスは計4チームで臨んでいた。
 それでもS、A、B、C、D、E、Fと1学年につき7クラス、それが3学年あるのを考えれば、十分な大所帯だろう。

「人がゴミのようだ…」

「略して人ゴミ」

 お約束とばかりに言い放ったザガンへ、アゲハは真顔でツッコんだ。ザガンは地球の常識を身につけるため、日々地球のアニメを観て学んでいる。

 それはそうと、今日はザガンは喚ばれていない。アゲハの晴れ舞台だからと勝手に出てきた。それも、魔界の皆に頼まれて、密かに観測水晶まで持参している。気分は授業参観に来る父兄である。

 そんなことは露知らず、アゲハはザガンの尻を蹴った。いつか誓った八つ当たりを実行したのである。

 魔界では観測水晶を眺めていた魔族たちが、使い魔役が自分でなくて良かったとほっと息をついていた。

「おーい1年は動くなー。3年、さっさとしろー。担当のチームまでダッシュだぞー」

 しゃきっとしないシラが急かしたとて説得力は皆無だが、なんとかシラが出席簿を酷使する前に3年生が到着した。

「さて、勇者と巻き込まれに属性貴族…と王女様ってことは、俺の担当チームはここかな」

「生徒会長!」

 爽やか笑顔で白い歯をきらめかせたルイスに、目を輝かせるフレイたち。

「生徒会長?」

 地球の高等学校で聞いて以来の単語をアゲハは繰り返す。もちろん言葉の意味はわかるが、こちらの世界にもあったのか、という意味だ。人間界の、ましてや学園の事情など魔王が知るわけもないし、知る価値もない。

 ともかく、フレイたちはルイスを知っているようだ。なんならルイスの後ろにいるピンク髪の女生徒と、特に特徴のない男子生徒のことも知っているらしい。

「アゲハ、こちらは生徒会長のルイス・アルフォード先輩と、副会長のティティス・レオニス先輩。あと…補佐だったかな、のミケル・ミケア先輩だ」

 特に特徴のない男子生徒は、テンション以外馬鹿ではないフレイの頭でも印象が薄いらしい。

「明日には忘れていそうだな…。勇者の巻き込まれの黒羽在華覇です。よろしくお願いします、先輩」

 アゲハは小さく呟いてから、ルイスへ手を差し出す。握手に応えるルイスが目配せして、秘密の腹黒同盟が結成された。

「僕は勇者の――」

「はいはい勇者な。話は聞いてるよ」

 ルイスは勇に名乗らせなかった。

「私は王女の――」

「王女様を知らない国民はいませんよ」

 クレアも王女に名乗らせなかった。
 策士なところが似ている2人だ。

「このあと、先生の指示でランダムに転移させられるわ」

「合流するとこから開始や。みんな、勇者を目印にして集まれるか?」

 小川のせせらぎのような涼やかな声の美人副会長ティティスと、口調だけは特徴的な会長補佐のミケル。2人は名乗らせてもらえなかった勇たちを気にも留めずに、大雑把な作戦会議を始めた。

「ええ、僕が目印なんて――」

「この魔力目指して走れってことだな」

「わかりました」

「ボク、頑張る…」

「変態目指して…いえ、言葉にするのはやめましょう」

 なぜか謙遜を始める勇と、それぞれの反応を見せるフレイたち。何気にリズが毒舌だ。

「制御できてない魔力が目印ってだけで、褒めてないから。さて、もうそろそろだね」

 笑顔ながらバッサリと勇を切り捨てたルイスに王女が食ってかかる。それをルイスが華麗にスルーしている間に、大規模転移が始まった。転移陣がいくつも浮き上がり、順番にチームが姿を消してゆく。

「じゃあ皆、生きて会おう」

 ルイスの爽やかながら不吉な宣言の直後、転移陣が虹色に強く発光し、アゲハたちも無人島へ転移された。
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