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そして

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話し合いの結果、王城の前のお店はチョコレート専門店に決定。
個数は50個ずつの10種類。
王城の前だから来る人も限られているし、最悪王様が食べる分あればいいなんて言われた。
王様の身内分は?とも思ったけど、僕は提供する側だからそこは考えないでおこう。


3ヶ月後。王城の前に「ショコラ・アンジュノラン」が完成した。

この頃になると前日に自分で出したお菓子を朝食後のデザートに食べ、魔力最大値を増やしてから魔法を使うというある意味チートで魔力量を増やしていた。
あんなに皆が騒いでた意味がようやく分かったよー。
しかも魔力量を意識してお菓子を出せば大量の魔力を込められるみたいで、1日100ずつ増やした結果、バラバラの種類でもセットで出すことにも成功した。

僕の魔力にょきにょき成長中。

この秘密も家族、グラン、学園長と知り合いの鑑定士さんだけの秘密。
鑑定してもらわないとわかんないからちょっと不便。
でもそのうち1店舗分のお菓子が1回で出せそうな予感に、僕も張り切ってじゃんじゃんお菓子を出しちゃう!
練度が上がればレベアップだもんね。

そんなこんなで短期間に4店舗のお菓子屋さんを運営することになり、ベルさんにも負担をかけてるなーって心配してたら……まさかの裏切り。

ベルさんは、「チーズケーキ専門店・アンジュノラン」というお店を作ろうと画策していた事が発覚。
どうやって僕を説得しようかを考えていたらしい。

ベルさんの心配をして損したわー。
全然元気じゃん、って。

冗談で「3年後くらいなら出してもいいですよ」って言ってみたら、それでも全然良かったみたいで狂喜乱舞してた。

マジか~…と後悔したけど、早速書類作ってて本気度が怖すぎた。僕は大人しくサインをしたよ。
だって怖すぎた。

5店舗目も確定して、順風満帆に店舗が増えていく~。

将来は田舎の片隅にでもお店作って静かに暮らそう。
ここに居たらどんどん店舗数が増えていく未来しか見えないし。

こうして僕の将来の夢は、お菓子屋さんになることから田舎の片隅でお菓子屋さんを開くことにシフトチェンジしたのだ。




















数年後。

1人の女の子が素朴な木の扉を開けると、チリンチリンと綺麗な音と共に店内から元気な声と棒読みの美声が聞こえてきた。

「いらっしゃいませ~」
「らっしゃい」

店内は秘境と呼ばれる田舎にもかかわらず、10人程のお客がいた。
女の子はキョロキョロと忙しなく辺りを見回し、ハッとした後、興奮したような面持ちで色とりどりのケーキが並んでいるショーウィンドウに駆け寄る。
しばらく魅入った後、またしてもハッとして顔を上げた。

「あっあの!」
「はい、何でしょうか?」

ぎゅうっと握りしめた拳をグイッと頭上に掲げて、店員に向かって手を広げた。

「こっこれで、かえるおかしはありますか!?」

手のひらには数枚のコイン。

彼女にとっての大金は、残念ながら店内のお菓子を買うには少し足りなかった。

「……今日はどうしたの?お母さんは?」

店員に優しく声をかけられ、女の子は興奮したように、

「きょう、きょうね!わたし、おねえちゃんになったの!だからおいわいをするのよ!わたしにおとうとができたのよ!」

キラキラとした瞳で嬉しそうに笑う。

「ふふ、おめでとう。お姉ちゃんは弟の誕生日ケーキを買いに来たんだね?」
「ちがうわ!みんなのおいわいよ!おとうさんもおかあさんも、わたしもおとうとも、みんなおめでとうなの!」
「そっかぁ。じゃあとっておきのお菓子を買いに来たんだね!」
「うん!だから、これでかえるものくださいな!」

にぱっと笑う女の子。

店内にいたお客はそのやり取りを静かに見守っていた。

「かしこまりました、小さなレディ。あなたにぴったりのお菓子を出してみせましょう!」

スっと手のひらのお金をものすごい美青年が回収していく。

女の子は少しビクッと驚いたが、優しく声をかけてくれた店員さんが目の前に来てくれてすぐに気がそれる。

「お兄さんが今から魔法を唱えるとね、素敵なお菓子が目の前に現れるんだ。よーく見ていてね」
「うん!」

女の子の目線にまでしゃがみ、小さなおててを手に取る。

「この手のひらに」

女の子はドキドキしながら手のひらを見る。

「幸せのお菓子がでる呪文──アクシオドルチェ──」

ふわりと重みのかかる小さな手のひら。

それはお皿に乗った小さな生クリームのホールケーキ。
彼女の手にはあまるが、大人の片手サイズ。
いちごは艶々と真っ赤に輝き、周りを生クリームで縁取られ、真ん中には4つの砂糖菓子。

おとうさん、おかあさん、女の子、おとうと。

女の子はすぐにわかった。

「うわあっすごい!これわたし!?おとうさんも、おかあさんも、おとうともいるわ!」
「箱に入れてあげるからね。落としても大丈夫なように魔法もかけてあげる」
「ありがとう!とってもすてき!ほんとにありがとう!」

女の子は頬を真っ赤にして、何度もお礼を言う。

「気をつけて帰るんだよ?」
「だいじょうぶよ!わたしおねえちゃんだから!」

そう言って女の子は店から飛び出して行った。

「グラン」
「ああ。送ってくる」
「ん、よろしく」

すれ違いざまに、唇にちゅっとキスを落として店内から出て行った。

残されたランスは顔を真っ赤にして固まるが、店内のお客さんの存在を思い出して恐る恐る振り返った。

「「「「ご馳走様でした」」」」

生暖かい視線が突き刺さる。



「グッ、グランのっ、バカぁーーーー!!!!!」


ランスはいなくなったグランに向かって叫ぶしか無かった。
















終わり










********



これにておしまいでございます。

長々とお付き合いいただきありがとうございます(^▽^)o

とりあえず一旦区切りとして終わらせていただきました~。

でもこのあと番外編?てきなものを何話か書く予定です。学園長の正体はまだ謎のままだし(笑)


……終われてよかった……(;´∀`)
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