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挨拶してたら知らない間に改心していた話
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お店からベルさんが先に出て、並んでいるお客さんにこれから挨拶やイベントが始まる旨を伝えると、一気に騒がしくなった。
そしてテールム家の面々が姿を現すと、拍手が沸き起こる。
静かになったところで、父上から挨拶が始まった。
そわそわしていた僕は、ちょうど親分と子分1、2が視界に入り、来てくれた嬉しさにニッコリと微笑んだ。
親分視点。
「お…おい……あいつ、この前のじゃねぇか……?」
「な、なんで、ここに…」
「や、やべぇっす…」
商業ギルドで話題になっている「アンジュノラン」のクッキーセットやチョコレートアソートは、朝早くから…いや、深夜から並んででも食べないと損をするとまで言われるほど美味らしい。
そんな噂を聞いた時、真っ先に子分に買いに行かせた親分。
何度目かのチャレンジでようやく手に入れたクッキーセットは、人生の中で食べたことの無い味だった。
あまりにも美味しすぎて即完売し、未だにその一度きりしか手に入らないほど。
そんな中、テールムの領地内に「アンジュノラン」の独立店が出来ると風の噂で知った。
その噂を頼りに子分に偵察に行かせると、建築中の建物を見つけ、どうやらこの建物が「アンジュノラン」の店ではないか?と当たりをつける。
徐々に出来上がってくる建物は、そのうち「アンジュノラン」の看板が付けられ、親分と子分は喝采した。
しかし、いつ開店するのかは全く情報が入ってこない。これは見張りが必要だな。と、親分は子分に言う。
そして子分の努力と忍耐のお陰で、まさかの開店初日に行きあたるなんて神は我を見捨てなかった!!と歓喜した…………が。
目の前に現れたのは自分達がリンチ(未遂)しようとした下級生。
そしてあの下級生がおれたちを見て微笑んだと思ったら、「ランス・テールムと申します。本日は僕の店【アンジュノラン】にようこそおいで下さいました」なんて挨拶をするものだから3人は震え上がった。
そんな!?あいつの店!?あの美味なお菓子をあいつがギルドに卸していたのか!?
「お、おれたち…買わせて貰えないんじゃ…」
「くっ……なんてことをしてしまったんだ……」
「や、やべぇっす……」
自分達の行いを悔いて絶望している間にも挨拶は終わり、次はテープカットが始まっていた。
テールム家の面々、学園長、ギルドマスターという会おうとしても会えないメンバーがこの店に関わっているという事実に、またしても親分達は絶望する。
そして、とどめの学園長が施した防御魔法。
悪意のある人物は一切入場出来ないという文言に、親分達は崩れ落ちた。
周囲の人達は学園長の魔法の美しさに歓声と拍手を贈るが、3人にとっては死刑宣告。
おれたち…入れない……(´;ω;`)
放心している間にイベントは全て終わり、お客が店内に流れていた。親分達も流れに流れて気がつけばお店の目の前。
あっ!?
と、我に返った時には店の中に入っていた。
あれ???
おれたち……店に入れた!?
3人は泣きながら、おひとり様ご購入一点限りのケーキを買い、何事も無く外に出られた。
この時、3人は決意した。
もう2度と悪いことはしません…!!!…神様、ランス様ありがとうございます…!!!…と。
そんなことは露知らず。
ランスは来てくれたお客に挨拶とお礼をしていた。
店内へは1度に20名まで、出てきたら次の20名を入れるという列の整理をしないといけないほど続々と人が集まってくる。
ざっくりとだが1000人くらい集まってそうで、ランスも慌て始めた。
初日ということで、5種類のケーキに絞っておひとり様1個だけ購入してもらう方式にして、来てくれた人全員が買えるようにしたかったのだが、どんどん人が増える。
「父上、僕お菓子補充してきます!」
「ああ、そうしなさい。用意しておいた分だと足りなさそうだ」
「はい!行ってきます!」
ランスは裏口から店内に入り、ギルドの販売員が必死に売っている後ろから足りなくなりそうなケーキを確認し、じゃんじゃん魔法で出していく。
結局その日は予想を上回る人数が来た「アンジュノラン」は、閉店間際ですら人が溢れていた。
大成功は大成功だが、あまりの忙しさにランスのお目目はぐるぐると回り、グランにお姫様抱っこされて帰宅したのはちょっと思い出したくない思い出となった。
********
親分と子分がお気に入り(笑)
ランスくん何も被害にあってないのに親分達が勝手に自滅??した。
そして改心。良い子だね!
そしてテールム家の面々が姿を現すと、拍手が沸き起こる。
静かになったところで、父上から挨拶が始まった。
そわそわしていた僕は、ちょうど親分と子分1、2が視界に入り、来てくれた嬉しさにニッコリと微笑んだ。
親分視点。
「お…おい……あいつ、この前のじゃねぇか……?」
「な、なんで、ここに…」
「や、やべぇっす…」
商業ギルドで話題になっている「アンジュノラン」のクッキーセットやチョコレートアソートは、朝早くから…いや、深夜から並んででも食べないと損をするとまで言われるほど美味らしい。
そんな噂を聞いた時、真っ先に子分に買いに行かせた親分。
何度目かのチャレンジでようやく手に入れたクッキーセットは、人生の中で食べたことの無い味だった。
あまりにも美味しすぎて即完売し、未だにその一度きりしか手に入らないほど。
そんな中、テールムの領地内に「アンジュノラン」の独立店が出来ると風の噂で知った。
その噂を頼りに子分に偵察に行かせると、建築中の建物を見つけ、どうやらこの建物が「アンジュノラン」の店ではないか?と当たりをつける。
徐々に出来上がってくる建物は、そのうち「アンジュノラン」の看板が付けられ、親分と子分は喝采した。
しかし、いつ開店するのかは全く情報が入ってこない。これは見張りが必要だな。と、親分は子分に言う。
そして子分の努力と忍耐のお陰で、まさかの開店初日に行きあたるなんて神は我を見捨てなかった!!と歓喜した…………が。
目の前に現れたのは自分達がリンチ(未遂)しようとした下級生。
そしてあの下級生がおれたちを見て微笑んだと思ったら、「ランス・テールムと申します。本日は僕の店【アンジュノラン】にようこそおいで下さいました」なんて挨拶をするものだから3人は震え上がった。
そんな!?あいつの店!?あの美味なお菓子をあいつがギルドに卸していたのか!?
「お、おれたち…買わせて貰えないんじゃ…」
「くっ……なんてことをしてしまったんだ……」
「や、やべぇっす……」
自分達の行いを悔いて絶望している間にも挨拶は終わり、次はテープカットが始まっていた。
テールム家の面々、学園長、ギルドマスターという会おうとしても会えないメンバーがこの店に関わっているという事実に、またしても親分達は絶望する。
そして、とどめの学園長が施した防御魔法。
悪意のある人物は一切入場出来ないという文言に、親分達は崩れ落ちた。
周囲の人達は学園長の魔法の美しさに歓声と拍手を贈るが、3人にとっては死刑宣告。
おれたち…入れない……(´;ω;`)
放心している間にイベントは全て終わり、お客が店内に流れていた。親分達も流れに流れて気がつけばお店の目の前。
あっ!?
と、我に返った時には店の中に入っていた。
あれ???
おれたち……店に入れた!?
3人は泣きながら、おひとり様ご購入一点限りのケーキを買い、何事も無く外に出られた。
この時、3人は決意した。
もう2度と悪いことはしません…!!!…神様、ランス様ありがとうございます…!!!…と。
そんなことは露知らず。
ランスは来てくれたお客に挨拶とお礼をしていた。
店内へは1度に20名まで、出てきたら次の20名を入れるという列の整理をしないといけないほど続々と人が集まってくる。
ざっくりとだが1000人くらい集まってそうで、ランスも慌て始めた。
初日ということで、5種類のケーキに絞っておひとり様1個だけ購入してもらう方式にして、来てくれた人全員が買えるようにしたかったのだが、どんどん人が増える。
「父上、僕お菓子補充してきます!」
「ああ、そうしなさい。用意しておいた分だと足りなさそうだ」
「はい!行ってきます!」
ランスは裏口から店内に入り、ギルドの販売員が必死に売っている後ろから足りなくなりそうなケーキを確認し、じゃんじゃん魔法で出していく。
結局その日は予想を上回る人数が来た「アンジュノラン」は、閉店間際ですら人が溢れていた。
大成功は大成功だが、あまりの忙しさにランスのお目目はぐるぐると回り、グランにお姫様抱っこされて帰宅したのはちょっと思い出したくない思い出となった。
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親分と子分がお気に入り(笑)
ランスくん何も被害にあってないのに親分達が勝手に自滅??した。
そして改心。良い子だね!
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