上 下
10 / 31

10 スタジオのアフロディーテですわ〜!

しおりを挟む
食。

食とは須らく生きとし生けるものに必要なもの。

贅沢に慣れきってしまった私の(前世)舌では、この世界の食事のなんとも味気ないものか。

だがしかし、私だってそんなに料理が得意という訳ではない。会社と自宅の往復の人生だった私におしゃれな料理教室に通うなんて選択肢などもなく、単に家庭料理~基礎から応用編~の間くらいの実力しかないのも自覚している。

料理を作るのは好きだけど、片付けるのが面倒くさくてあまり作ってこなかった……が………しょうがない。これは私にしか出来ないことだから。

美味しいを知っている私しか……!!




とまあ、長々と失礼しました。

シリアスぶってみたけどシリアスは難しいわ。


でも気合いを入れないとやってられないことってあるよね。

「………お母さん、わたしね、美味しいお料理知ってるの」
「セラ?」
「レミィさんのカフェの新メニュー、作れるだけわたしも作っていい?」

唐突にこんな事を言われたって普通のご家庭では「何言ってるのよ?」と取り合ってはくれないだろう。

「もちろんよ!わあ~セラのお料理楽しみ!」

ママン…ありがとう…でももう少し人を疑うことを覚えた方がいいぜ…。
これが初めてのお手伝いだと言うことをママンは忘れているのだろうか…?

「じゃあポテーのお料理からね」

マヨネーズはクリアしたからポテトサラダを作ろう。コロッケもパンに挟めるし、油を使うならポテチやフライドポテトも鉄板だよね。

そうしてポテーを使った料理を披露した。料理の過程は省くのです。めんどい。あ、さすがに火と油を使うのはママンがやってくれました。






「うわっ何これ?どうしたの母さん?」

スー兄が帰宅した時には、テーブルの上に乗せきれないほどのポテー料理やサンドウィッチが並べられていて、その光景に目を真ん丸くして驚いていた。

「セラちゃんの考えたメニューよ。凄く美味しいんだから!」

セラが作っては味見を繰り返していた母親はルイスに嬉々として説明をしているが、余程お腹がすいているのか、ルイスの視線はテーブルの上から動かない。

「セラが作った…?」

ようやく動いたと思ったら、こちらをガン見してきた。
そりゃそうだ。

「何でセラが作れるの?」

ごもっともです。スー兄の方が常識あったよ、ママン。

「えーと、天啓かな(笑)」
「へえー」
「テンケイさんに教えてもらったの?」

ルイスは感心したようにうなずき、ウィルーシャはどちら様かしら?と首を傾げている。


あうっ。セラちゃんジョークを真剣にとらないで。ボケ殺しぃ。

「ただいま~って今日は豪華だなぁ!」
「セラ、粗方種の方は改良出来たよ……って何だいこれ?」

サンドとカールが畑から帰ってきて、テーブルの上の料理を見て驚いたので、とりあえず同じ説明をしておいた。

パパンの方はニッコニコで凄いなぁー!と予想通り。ルー兄の方は目を見開いた後、こちらをじーっと穴が空くんじゃないかと思うくらい見つめてきた。いやん。





いや、めっちゃ見てくる。



「セラ」
「ふぁい!?」

ルー兄怖いよ!

「言いたいことは、たっっっくさんあるけど、怪我だけはしないように気を付けるんだよ」
「あ、はい」

つい真顔で返事しちゃったよ。だって茶化したらめちゃくちゃ怒られそうだったんだ…。


さて、皆揃ってテーブルに着き、いただきますをしてからが戦争だった。
ルー兄とママンは全ての料理を手早く自分の皿に盛り、スー兄とパパンは気になった物を一品取り分けて口に含むと、ピシリと固まったと思ったら猛烈に食べ始めた。

ちなみに、食事の出し方は大皿に盛って各自食べたい物を取り分けていくスタイルだ。全てを小分けしていたら皿が足りなくなるので。

「何だこれ!すげぇ美味い!」
「うおお!ポテーが!ポテーがこんなにも旨くなるのか!!」
「これは驚いた…セラと一緒に作ったポテーだからこその味だね」
「セラちゃん天才でしょ!」
「サンドウィッチも美味しいからお父さんもスー兄も食べてね」
「「さんどうぃっち?」」
「うふふ、私のパンとあなたの野菜で作ったからサンドウィッチって名前をセラが付けてくれたのよ。素敵でしょ」
「なんだか照れるな…」
「私たちの愛のサンドウィッチよ~」
「愛のサンドウィッチ…いい名前だ」

わあ。イチャコラし始めたぁ。

「セラ!こんなにも料理が上手だったんだな!今すぐオレの嫁になってくれ!」
「ルイス…?」
「あはは~スー兄ってば冗談上手いんだから~」

やめて。ルー兄の瞳孔開いてるから。

「冗談じゃねーって。なあセラ、オレじゃあダメか…?」

ひえっ無駄に色気出し始めた!

普段は乱暴な言葉遣いだから意識しないけど、スー兄は線の細い美人さんだ。流し目で見られると9歳とは思えない色気がぁ!!

ってほんとなんでこの言葉遣いで美人さんなんだよ!?外見詐欺だよ!これで脳筋とか間違ってるよ!!儚げな美人さんは腹黒で参謀タイプじゃないのか!?

黙っていると眼福なのに…喋ると視界の暴力って言葉がピッタリです。

はあ~。どうやら私の両脇で兄弟喧嘩勃発みたいです。

目の前では夫婦のイチャコラがまだまだ続いていて、食卓の空気はカオスになっています。




え~、以上現場のセラがお送り致しました。



スタジオにお返し致しまーす。


********



ママンの「セラ」「セラちゃん」呼びはママンの気分でコロコロ変わります。意味は無いです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~

芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。 案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが 思うのはただ一つ 「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」 そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。 エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず 攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。 そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。 自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する これは異世界におけるスローライフが出来る? 希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。 だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証? もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ! ※場所が正道院で女性中心のお話です ※小説家になろう! カクヨムにも掲載中

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...