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六、狐火の夜
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「おい、巴ッ!! そこにいるのか!?」
そんな空気を切り裂くように、部屋の外から怒号が聞こえてきた。
紛れもない、旦那様の声だ。
お二人との甘い交わりに浸り切っていた頭に、冷や水を浴びせられたような心地がした。
返事をすることもできず、頭上にある黒曜様と白磁様の顔を見上げる。お二人は一切動じることなく、この場にそぐわない穏やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。気にするな」
「えっ……で、でも」
「黒いのの言う通りじゃ。あの男はすでに、巴とは何の関係もない赤の他人であろう」
呑気にも思えるお二人の言葉に、私は目を丸くする。
そうこうしている間に、がらりと扉が開かれた。
「な……っ!? だ、誰だおまえたちは!?」
旦那様は、お狐様の間で交わる私たちの姿を目にして叫んだ。
驚きのあまり後ずさるも、すぐに二人の男に抱かれる私の姿を見つけ、その顔を憤怒に変える。
「おまえッ……! まさか二人も間夫を連れ込んでいたとは、どうしようもない淫乱だな!!」
「ち、ちが」
「違うものか!! この阿婆擦れめ、間夫ともども叩き殺してくれるわ!!」
今にも人を殺しそうな剣幕でこちらに向かって来る旦那様に、この人を捨てる覚悟を決めたことも忘れて私は怯んだ。
しかし、旦那様の手が私に届くよりも前に、白磁様の逸物が私を貫いた。
「ひぁっ、ああ──っ!」
「なっ……!?」
硬くえらの張った剛直を一気に挿入され、びくびくと体が痙攣する。
同時に、これまで動きを止めていた黒曜様まで律動を再開し、二人の激しい責めに私はただ喘ぐことしかできなくなる。
「うるさい蝿が入ってきたな」
「ああ。しかし、所詮蠅は蝿。辺りをやかましく飛ぶことしかできぬだろうよ」
そう言ってけたけたと笑うお二人に、旦那様は顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
「貴様ら……ッ! 人の嫁に手を出して、どうなるか分かっているんだろうな!? おれはこの狐森家の当主だぞ!!」
唾を飛ばして叫ぶ旦那様を、お二人はどこまでも冷めた眼差しで見下げるだけだった。
私を責める手を止めないまま、黒曜様が小さな虫でも追い払うような仕草で手を振るう。すると、私たちを引き剥がそうと伸ばされた旦那様の手から血飛沫が上がった。
「ぐっ、うわああああっ!!」
血に塗れた腕を押さえながら、旦那様がごろごろと床に転がる。刃物で斬りつけたかのようなその傷を見て思わず息を詰めると、白磁様がそっと私の目を手のひらで覆った。
「我らは、この家を永きに渡り守り続けてきた狐であるぞ。分かったら、そこにひれ伏せていろ」
「おまえのような下衆が、二度と巴を嫁などと呼ぶな。巴は、我らのものだ」
お二人の言葉に、旦那様は血を垂れ流しながら目を剥く。そこでようやく彼らが人間ではないことを悟ったのか、あわあわと無意味に口を動かしながら部屋の隅まで後ずさっていった。
「はは、あの程度で怖気付くとは情けない。さあ巴、邪魔者は引っ込んだぞ。とびきり気持ちよくしてやろう」
「あ、ああっ、白磁、様……黒曜様」
「嫌なものを見せて悪かった。だが、もう何も気にしなくていい」
優しい二つの声に、掻き乱された心がまた落ち着きを取り戻す。
そして、前後でゆっくりと抽送が始まると、私はもう目の前にいる彼らのことしか考えられなくなる。
「あっ、んんんっ! あ、黒曜様ぁっ、きもち、いいですっ」
「そうか。ほら、巴の好きな所はここだろう」
「ひぁあああっ! んっ、はい、すきです、すきぃっ」
もうすっかり黒曜様のものに馴染んだ蜜穴は、御自身を動かされるだけで嬉し涙を流すかのように蜜をあふれさせて悦ぶ。
大きすぎる快感から思わず黒曜様の厚い胸板に縋ると、彼は嬉しそうに私の顎を掬いあげて口づけを落とした。ぬるりとした舌の感触が心地よくて、私は懸命にそれを絡めようと舌を伸ばす。
「こら、巴。我のことを忘れてもらっては困るなあ」
「いぁっ、ああああっ! はっ、白磁、さまっ……! わ、忘れてなど」
「そうかのう? では、こちらも本気で動くぞ。存分に泣き叫んでくれ」
「あっ!? あ、んん──ッ!! はく、じ、さまぁっ! 熱いっ、おしりあついぃっ」
これまでゆるゆると腰を動かすだけだった白磁様が、本領を見せるかのごとく激しく腰を打ちつけてくる。
白磁様の手によって解された後孔はしっかりと彼のものを咥え込み、えも言われぬ快感を及ぼす。蕾を硬い杭で穿たれると、火傷しそうなほどの熱を感じた。しかし、今はそれすらも気持ちがよくて幸せだった。
「気持ちがいいだろう? 巴よ」
「あああっ、は、はい……っ、きもちいいっ」
「ふふ、そうかそうか。ならば、あの男にもおまえの感じた顔を見せてやれ。何度も巴を身勝手に犯したくせに、一度たりとも好くしてやれなかったらしいからのう」
馬鹿にしたように笑うと、白磁様が後ろから私の顎を掴んで、部屋の隅で茫然としている旦那様の方へと向けさせる。
見られてはいけないという思考ももはや無くなって、私はただ言われるがまま旦那様の虚な瞳を見据えた。
「と、巴……」
「その口で我らの花嫁の名を口にするな、下郎め。もはやおまえの所有物ではない」
「巴の愛らしい姿を、よその男に見せてやるのも癪だが……なに、冥土の土産じゃ。そこで指を咥えて眺めているがよい」
ぐちゅっと音を立てて、お二人のものが同時に最奥を突いた。目玉が裏返りそうなほどの衝撃に、声にならない叫びが漏れる。
そしてお二人は、何度も何度も私の穴を突き上げた。その合間に口を吸われ、胸の先を弄られ、私の体はその一つ一つに貪欲に反応する。部屋の隅で震える旦那様は、そんな私を瞬きひとつせず凝視するだけだ。
「ああっ、も、だめぇっ、ま、またくるっ、おかしくなりますっ……!」
「おや。どちらで果てるのだ? 前の穴か、後ろの穴か」
「あぁんっ! わ、わかりま、せ……っ、も、もうだめっ、きもちいいのぉっ」
「くっ……、締まりが良いな。そろそろ出すぞ」
「ああ、我もだ……巴、そのまま我らに身を任せていろ。今、おぬしの膣内に種付けしてやるからな」
お二人の言葉に、私はこくこくと頷く。浅い絶頂を繰り返しているのか、電流が流れているかのように全身がぴくぴくと震えていた。
そして、一際深い絶頂に導かれようとしたその瞬間、それまで私たちの情交を放心状態で眺めていた旦那様がいきなり立ち上がった。
「や、やめろ! 巴ぇっ!!」
金切り声と共に、血に塗れた旦那様の腕が私に向かって伸ばされる。
旦那様が、こんなにも必死な表情で私を求めたことがあっただろうか。初めて顔を合わせた時も、祝言を上げた日だって、旦那様にとって私は「嫁」という物でしかなかった。
旦那様にいくら名を呼ばれても、遊んでいた玩具を取り上げられた子どもが癇癪を起こして泣き叫んでいるようにしか見えない。この家に嫁いで三年、旦那様は私に見向きもしなかったけれど、それはきっと私も同じだったのだ。
「喧しい男だ」
「ああ。燃やしてしまおうか」
旦那様の手は、またしても私に届くことはなかった。
白磁様と黒曜様がキッと彼を睨みつけると同時に、赤々と燃える炎が辺りを包む。部屋一面があっという間に燃え上がり、めらめらと熱気が押し寄せてきた。
「ちと早いが、嫁入りの狐火を灯すとしようか」
「嫁、入り……?」
「ああ。巴を我らの嫁として迎え入れる儀式だ。安心しろ、この火はおまえを傷付けることはない」
「うむ。巴の体を燃やすことはないが、余計な虫は一掃できる。一石二鳥じゃなあ」
お二人の間で、私は目を見開いて燃え盛る炎を見つめた。
いつの間にやら、旦那様の声は聞こえなくなっている。代わりに、どこか遠くの方で人々の叫び声が聞こえてきた。屋敷の者たちだろうか。
「はは、当主殿はすぐに燃え尽きたようじゃのう。最後までつまらぬ男よ」
「しかし、この家の者を屠る時が来ようとは……我らを救ったあの男には申し訳が立たんな」
「なに、我らとて充分務めは果たしただろう。それに、きちんと末代まで見届けたのじゃ。文句はあるまい」
燃え続ける火の海の中で、二匹の妖狐の耳がはたはたと揺れている。少し離れた先の床に、黒焦げになった人間の形がうっすらと見て取れた。
黒と白の美しい狐に囲まれながら、私はぼんやりとその光景を眺める。すると、胎内に納められたままの二つの熱杭がずくんと脈打った。
「はあっ、ああっ……!」
「営みの途中で悪かったのう、巴。だが、これでもう我らを邪魔する者はおらぬ」
「ああ。この家の者らは燃やしたから、おまえの家族が憂き目に遭うこともない」
黒と白の狐──いや、私の旦那様がたが、そっと頬を撫でてくださる。
その優しい感触に思わず目を細めると、前と後ろを塞ぐ滾りが一際動きを早めた。
「あっ、ああぁっ! 黒曜様、白磁様っ……! ありがとう、ございます……っ、巴は、おふたりに嫁入りできて、しあわせです」
「これはこれは、健気な嫁御じゃ。尚のこと可愛がりたくなるのう」
「巴……っ、愛している」
前後から身体を抱きしめられると、まるで三人で一つの存在になったかのような錯覚に陥った。
そして、前後で行われる抽送に耐えきれず私が絶頂を極めたその後、お二人もまた限界に達したようだった。
「はぁっ、巴……!」
「我らの子種、その身でしかと受け止めてくれ……っ!」
お二人が息を詰めたかと思うと、熱い迸りが勢いよく私のなかに吐き出される。
二つの穴に埋め込まれたままの御自身が、どくどくと静かに脈打つ。その動きに合わせて、吐精は止まることなく続いた。
「あっ、んうぅ──っ! っひ、も、抜いてぇっ、抜いてくださいっ」
「それは、できぬな……っ、ああ、巴の体が、我らで満ちていく。たまらんのう」
「すまん、巴……もうしばらく、耐えてくれ」
ぶびゅ、と生々しい音を立てて、入りきらず溢れ出たお二人の精液が交わり垂れていく。私の内腿は大量の白濁で濡れ、脚を伝って床まで落ちていった。それでもまだ、白磁様と黒曜様の一物は私の胎内に精を吐き出し続けている。
「ぅあ、ああああっ……! もうやぁ、はいらないっ、これ以上はむりです、黒曜様、白磁様ぁっ!」
「ふむ、おかしいのう……栓をしているはずだが、ほとんど漏れ出てしまうなあ」
「当たり前だ。巴は人間なのだから、我らの精を全て飲み込めるわけがないだろう」
「おお、そうか。すっかり失念しておった」
ぼろぼろと泣きながら「抜いてください」と訴える私を、お二人は幼子をあやすように優しい眼差しで見下ろしている。よしよし、と頭を撫でてくださるけれど、下半身は容赦なく私の胎内を犯したままだ。
「すまぬな、巴。人間の男より、我らは少しばかり子種の量が多いらしい」
「少しばかり、ではないがな」
「はは、そうじゃのう。少々辛いかもしれぬが、受け止めてくれ」
「あ、ああっ……、は、い」
際限なく続く吐精に、段々と意識が薄らいでくる。
両の穴にたっぷりと注ぎ込まれた子種が、腹の内に溜まっていくのが分かる。重く苦しいはずなのに、不快感はなくただただ満ち足りた思いがした。
次は我が前に挿れたいのう、と呟く白磁様と、ため息をつきつつも否定をしない黒曜様の顔を交互に見上げる。二人の優しい旦那様に恵まれた自分が、この世で一番幸せな花嫁なのだと確信した。
「もう、他の人間たちの好きにはさせん。人の子の手の届かぬところへ、連れて行ってやる」
「愛しい巴。永久に、我らと共にあろう」
己に向かって伸ばされた二つの手を取り、静かに頷く。美しく燃える狐火の中、私は彼らの花嫁となった。
大地主である狐森の家が全焼したという話は、すぐに近隣の村中に広まった。
他の家とは離れた広い土地にある家であったから、火事と気付かれるのが遅れ、屋敷にいた殆どの者が焼け死んだという。運良く逃れ切った使用人の話によれば、「お狐様の間から火が出て、一瞬のうちに屋敷中に燃え広がった」と話していたらしい。
後日、原因究明のために調査が行われたものの、よほど強い炎であったためか男女の区別もつかぬ遺体しか発見されなかった。狐森家の奥方は元より、大切にされてきた二体の狐像も、終ぞ見つからなかったという。
そんな空気を切り裂くように、部屋の外から怒号が聞こえてきた。
紛れもない、旦那様の声だ。
お二人との甘い交わりに浸り切っていた頭に、冷や水を浴びせられたような心地がした。
返事をすることもできず、頭上にある黒曜様と白磁様の顔を見上げる。お二人は一切動じることなく、この場にそぐわない穏やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。気にするな」
「えっ……で、でも」
「黒いのの言う通りじゃ。あの男はすでに、巴とは何の関係もない赤の他人であろう」
呑気にも思えるお二人の言葉に、私は目を丸くする。
そうこうしている間に、がらりと扉が開かれた。
「な……っ!? だ、誰だおまえたちは!?」
旦那様は、お狐様の間で交わる私たちの姿を目にして叫んだ。
驚きのあまり後ずさるも、すぐに二人の男に抱かれる私の姿を見つけ、その顔を憤怒に変える。
「おまえッ……! まさか二人も間夫を連れ込んでいたとは、どうしようもない淫乱だな!!」
「ち、ちが」
「違うものか!! この阿婆擦れめ、間夫ともども叩き殺してくれるわ!!」
今にも人を殺しそうな剣幕でこちらに向かって来る旦那様に、この人を捨てる覚悟を決めたことも忘れて私は怯んだ。
しかし、旦那様の手が私に届くよりも前に、白磁様の逸物が私を貫いた。
「ひぁっ、ああ──っ!」
「なっ……!?」
硬くえらの張った剛直を一気に挿入され、びくびくと体が痙攣する。
同時に、これまで動きを止めていた黒曜様まで律動を再開し、二人の激しい責めに私はただ喘ぐことしかできなくなる。
「うるさい蝿が入ってきたな」
「ああ。しかし、所詮蠅は蝿。辺りをやかましく飛ぶことしかできぬだろうよ」
そう言ってけたけたと笑うお二人に、旦那様は顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
「貴様ら……ッ! 人の嫁に手を出して、どうなるか分かっているんだろうな!? おれはこの狐森家の当主だぞ!!」
唾を飛ばして叫ぶ旦那様を、お二人はどこまでも冷めた眼差しで見下げるだけだった。
私を責める手を止めないまま、黒曜様が小さな虫でも追い払うような仕草で手を振るう。すると、私たちを引き剥がそうと伸ばされた旦那様の手から血飛沫が上がった。
「ぐっ、うわああああっ!!」
血に塗れた腕を押さえながら、旦那様がごろごろと床に転がる。刃物で斬りつけたかのようなその傷を見て思わず息を詰めると、白磁様がそっと私の目を手のひらで覆った。
「我らは、この家を永きに渡り守り続けてきた狐であるぞ。分かったら、そこにひれ伏せていろ」
「おまえのような下衆が、二度と巴を嫁などと呼ぶな。巴は、我らのものだ」
お二人の言葉に、旦那様は血を垂れ流しながら目を剥く。そこでようやく彼らが人間ではないことを悟ったのか、あわあわと無意味に口を動かしながら部屋の隅まで後ずさっていった。
「はは、あの程度で怖気付くとは情けない。さあ巴、邪魔者は引っ込んだぞ。とびきり気持ちよくしてやろう」
「あ、ああっ、白磁、様……黒曜様」
「嫌なものを見せて悪かった。だが、もう何も気にしなくていい」
優しい二つの声に、掻き乱された心がまた落ち着きを取り戻す。
そして、前後でゆっくりと抽送が始まると、私はもう目の前にいる彼らのことしか考えられなくなる。
「あっ、んんんっ! あ、黒曜様ぁっ、きもち、いいですっ」
「そうか。ほら、巴の好きな所はここだろう」
「ひぁあああっ! んっ、はい、すきです、すきぃっ」
もうすっかり黒曜様のものに馴染んだ蜜穴は、御自身を動かされるだけで嬉し涙を流すかのように蜜をあふれさせて悦ぶ。
大きすぎる快感から思わず黒曜様の厚い胸板に縋ると、彼は嬉しそうに私の顎を掬いあげて口づけを落とした。ぬるりとした舌の感触が心地よくて、私は懸命にそれを絡めようと舌を伸ばす。
「こら、巴。我のことを忘れてもらっては困るなあ」
「いぁっ、ああああっ! はっ、白磁、さまっ……! わ、忘れてなど」
「そうかのう? では、こちらも本気で動くぞ。存分に泣き叫んでくれ」
「あっ!? あ、んん──ッ!! はく、じ、さまぁっ! 熱いっ、おしりあついぃっ」
これまでゆるゆると腰を動かすだけだった白磁様が、本領を見せるかのごとく激しく腰を打ちつけてくる。
白磁様の手によって解された後孔はしっかりと彼のものを咥え込み、えも言われぬ快感を及ぼす。蕾を硬い杭で穿たれると、火傷しそうなほどの熱を感じた。しかし、今はそれすらも気持ちがよくて幸せだった。
「気持ちがいいだろう? 巴よ」
「あああっ、は、はい……っ、きもちいいっ」
「ふふ、そうかそうか。ならば、あの男にもおまえの感じた顔を見せてやれ。何度も巴を身勝手に犯したくせに、一度たりとも好くしてやれなかったらしいからのう」
馬鹿にしたように笑うと、白磁様が後ろから私の顎を掴んで、部屋の隅で茫然としている旦那様の方へと向けさせる。
見られてはいけないという思考ももはや無くなって、私はただ言われるがまま旦那様の虚な瞳を見据えた。
「と、巴……」
「その口で我らの花嫁の名を口にするな、下郎め。もはやおまえの所有物ではない」
「巴の愛らしい姿を、よその男に見せてやるのも癪だが……なに、冥土の土産じゃ。そこで指を咥えて眺めているがよい」
ぐちゅっと音を立てて、お二人のものが同時に最奥を突いた。目玉が裏返りそうなほどの衝撃に、声にならない叫びが漏れる。
そしてお二人は、何度も何度も私の穴を突き上げた。その合間に口を吸われ、胸の先を弄られ、私の体はその一つ一つに貪欲に反応する。部屋の隅で震える旦那様は、そんな私を瞬きひとつせず凝視するだけだ。
「ああっ、も、だめぇっ、ま、またくるっ、おかしくなりますっ……!」
「おや。どちらで果てるのだ? 前の穴か、後ろの穴か」
「あぁんっ! わ、わかりま、せ……っ、も、もうだめっ、きもちいいのぉっ」
「くっ……、締まりが良いな。そろそろ出すぞ」
「ああ、我もだ……巴、そのまま我らに身を任せていろ。今、おぬしの膣内に種付けしてやるからな」
お二人の言葉に、私はこくこくと頷く。浅い絶頂を繰り返しているのか、電流が流れているかのように全身がぴくぴくと震えていた。
そして、一際深い絶頂に導かれようとしたその瞬間、それまで私たちの情交を放心状態で眺めていた旦那様がいきなり立ち上がった。
「や、やめろ! 巴ぇっ!!」
金切り声と共に、血に塗れた旦那様の腕が私に向かって伸ばされる。
旦那様が、こんなにも必死な表情で私を求めたことがあっただろうか。初めて顔を合わせた時も、祝言を上げた日だって、旦那様にとって私は「嫁」という物でしかなかった。
旦那様にいくら名を呼ばれても、遊んでいた玩具を取り上げられた子どもが癇癪を起こして泣き叫んでいるようにしか見えない。この家に嫁いで三年、旦那様は私に見向きもしなかったけれど、それはきっと私も同じだったのだ。
「喧しい男だ」
「ああ。燃やしてしまおうか」
旦那様の手は、またしても私に届くことはなかった。
白磁様と黒曜様がキッと彼を睨みつけると同時に、赤々と燃える炎が辺りを包む。部屋一面があっという間に燃え上がり、めらめらと熱気が押し寄せてきた。
「ちと早いが、嫁入りの狐火を灯すとしようか」
「嫁、入り……?」
「ああ。巴を我らの嫁として迎え入れる儀式だ。安心しろ、この火はおまえを傷付けることはない」
「うむ。巴の体を燃やすことはないが、余計な虫は一掃できる。一石二鳥じゃなあ」
お二人の間で、私は目を見開いて燃え盛る炎を見つめた。
いつの間にやら、旦那様の声は聞こえなくなっている。代わりに、どこか遠くの方で人々の叫び声が聞こえてきた。屋敷の者たちだろうか。
「はは、当主殿はすぐに燃え尽きたようじゃのう。最後までつまらぬ男よ」
「しかし、この家の者を屠る時が来ようとは……我らを救ったあの男には申し訳が立たんな」
「なに、我らとて充分務めは果たしただろう。それに、きちんと末代まで見届けたのじゃ。文句はあるまい」
燃え続ける火の海の中で、二匹の妖狐の耳がはたはたと揺れている。少し離れた先の床に、黒焦げになった人間の形がうっすらと見て取れた。
黒と白の美しい狐に囲まれながら、私はぼんやりとその光景を眺める。すると、胎内に納められたままの二つの熱杭がずくんと脈打った。
「はあっ、ああっ……!」
「営みの途中で悪かったのう、巴。だが、これでもう我らを邪魔する者はおらぬ」
「ああ。この家の者らは燃やしたから、おまえの家族が憂き目に遭うこともない」
黒と白の狐──いや、私の旦那様がたが、そっと頬を撫でてくださる。
その優しい感触に思わず目を細めると、前と後ろを塞ぐ滾りが一際動きを早めた。
「あっ、ああぁっ! 黒曜様、白磁様っ……! ありがとう、ございます……っ、巴は、おふたりに嫁入りできて、しあわせです」
「これはこれは、健気な嫁御じゃ。尚のこと可愛がりたくなるのう」
「巴……っ、愛している」
前後から身体を抱きしめられると、まるで三人で一つの存在になったかのような錯覚に陥った。
そして、前後で行われる抽送に耐えきれず私が絶頂を極めたその後、お二人もまた限界に達したようだった。
「はぁっ、巴……!」
「我らの子種、その身でしかと受け止めてくれ……っ!」
お二人が息を詰めたかと思うと、熱い迸りが勢いよく私のなかに吐き出される。
二つの穴に埋め込まれたままの御自身が、どくどくと静かに脈打つ。その動きに合わせて、吐精は止まることなく続いた。
「あっ、んうぅ──っ! っひ、も、抜いてぇっ、抜いてくださいっ」
「それは、できぬな……っ、ああ、巴の体が、我らで満ちていく。たまらんのう」
「すまん、巴……もうしばらく、耐えてくれ」
ぶびゅ、と生々しい音を立てて、入りきらず溢れ出たお二人の精液が交わり垂れていく。私の内腿は大量の白濁で濡れ、脚を伝って床まで落ちていった。それでもまだ、白磁様と黒曜様の一物は私の胎内に精を吐き出し続けている。
「ぅあ、ああああっ……! もうやぁ、はいらないっ、これ以上はむりです、黒曜様、白磁様ぁっ!」
「ふむ、おかしいのう……栓をしているはずだが、ほとんど漏れ出てしまうなあ」
「当たり前だ。巴は人間なのだから、我らの精を全て飲み込めるわけがないだろう」
「おお、そうか。すっかり失念しておった」
ぼろぼろと泣きながら「抜いてください」と訴える私を、お二人は幼子をあやすように優しい眼差しで見下ろしている。よしよし、と頭を撫でてくださるけれど、下半身は容赦なく私の胎内を犯したままだ。
「すまぬな、巴。人間の男より、我らは少しばかり子種の量が多いらしい」
「少しばかり、ではないがな」
「はは、そうじゃのう。少々辛いかもしれぬが、受け止めてくれ」
「あ、ああっ……、は、い」
際限なく続く吐精に、段々と意識が薄らいでくる。
両の穴にたっぷりと注ぎ込まれた子種が、腹の内に溜まっていくのが分かる。重く苦しいはずなのに、不快感はなくただただ満ち足りた思いがした。
次は我が前に挿れたいのう、と呟く白磁様と、ため息をつきつつも否定をしない黒曜様の顔を交互に見上げる。二人の優しい旦那様に恵まれた自分が、この世で一番幸せな花嫁なのだと確信した。
「もう、他の人間たちの好きにはさせん。人の子の手の届かぬところへ、連れて行ってやる」
「愛しい巴。永久に、我らと共にあろう」
己に向かって伸ばされた二つの手を取り、静かに頷く。美しく燃える狐火の中、私は彼らの花嫁となった。
大地主である狐森の家が全焼したという話は、すぐに近隣の村中に広まった。
他の家とは離れた広い土地にある家であったから、火事と気付かれるのが遅れ、屋敷にいた殆どの者が焼け死んだという。運良く逃れ切った使用人の話によれば、「お狐様の間から火が出て、一瞬のうちに屋敷中に燃え広がった」と話していたらしい。
後日、原因究明のために調査が行われたものの、よほど強い炎であったためか男女の区別もつかぬ遺体しか発見されなかった。狐森家の奥方は元より、大切にされてきた二体の狐像も、終ぞ見つからなかったという。
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