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後日談の後日談 その1

第1話 闘技場

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 工房での日常が戻って数ヶ月。

 いや、日常と称するにはあまりにもただれている。俺は月火・木金と工房に出勤し、水曜日と土曜日は例のホテルで「コンラートを囲む会」に参加させられ、日曜日はひたすら死んだように眠る日々。どうしてこうなった。

 俺を嫁に欲しいという奇特な男たちの相手を、週に二回まとめて処理出来るのはありがたい。毎日日替わりでって言われたら死ぬところだ。いろんな意味で。だけどそれにしたってハードな日々だ。いくら俺が頑健なドワーフだからって、体力には限度ってものがある。

「じゃ、俺はこれで…」

 いつもの乱戦が終わり、俺はホテルを後にする。そこでふらりと足がもつれ、視界がブラックアウトした。



 ———知らない天井だ。いや、見たことあるような、ないような。どこだ?ここ。

「目ェ覚めたかよ」

 隣から低い声が響く。ディルクだ。

「あぇ…ここ…」

「外で飲み直そうと思ったら、お前ェが倒れたんで連れて来た」

 ああそうか。ここはディルクの定宿だ。下の酒場に起き忘れたグローブを届けに来て、そのまま襲われた部屋。

「アールトやバルドゥルが平気だっつうから油断してたが、アイツらの平気は平気じゃねェ。悪かった」

「ほぇ?」

「もうちっと寝てろ。後で送ってやる」

 俺はシーツごとデカい腕に絡め取られ、そのまま大きな胸にすっぽりと収まる。ディルクは裸みたいだ。人肌の温度とトクトクと響く鼓動が心地いい。朦朧としていた俺は、そのまま再び眠りに落ちた。



 それから何がどうしたのか、よく覚えていない。気がついたら俺は自分の部屋で寝ていてた。枕元には、日持ちするパンと果実水が置かれている。随分と長い間眠っていたみたいだ。体中がバッキバキ。しかし、しっかりと睡眠を取ったおかげで、体調は随分とマシになった。さあ、ちょっと早いけど今日も仕事に出かけるか。

 ———早くなかった。俺、めっちゃ寝過ごしてた。

 工房に顔を出すと、今日は火曜日だった。土曜日に「囲む会」でフルボッコにされてから、俺は日月と二日間寝込んでいたことになる。驚いたことに、工房にはディルクから俺がしばらく休むという知らせが入っていた。どういうこと。そしてもっと驚いたのはそれじゃない。

「武闘大会?」

 そうなのだ。今、伯爵領では急遽決まった武闘大会の話題でもちきりだ。なんでも優勝者には伯爵の出来る範囲で何でも褒美を一つ与えられるのだとか。ほえー。

「あんた、何他人事みたいな顔してんだい。あんたの嫁入り先決定戦だよ?」

「うぇっ?!」

 女将おかみさん、お前は何を言っているんだ。

「ディーなんとか子爵…ええい。ディルクの旦那が、コンラートを賭けて決闘だって息巻いてたぞ」

「帝国子爵、裏社会の総帥、太公代理、王太子。お前、とんでもねェモテ具合だな」

「皇帝陛下も参戦するって話だぞ」

「来賓じゃなかったのか?!」

 ———えー…。俺を囲む会、今度はホテルじゃなくて闘技場になるのか…?
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