14 / 59
第14話 流れるような連続イベント
しおりを挟む
翌日。俺はナイジェルの新古品の礼服を着せられ、二人して馬車に揺られていた。とはいえ、次席侯爵家のタウンハウスは王宮に近く、すぐに到着してしまう。
お父上のノースロップ侯爵はご機嫌だった。俺たち二人から、お互いの匂いがするらしい。そりゃまあ、あれだけベロチューすれば仕方ないかなと思う。獣人の鼻、恐るべし。
それより様子がおかしいのはナイジェルだ。朝食の席まで、恋人繋ぎでベッタリとくっついてくる。お前、そういうキャラとちゃうやん。もっと上から目線で偉そうに、嫌そうに、虫ケラでも見るように…ああ、上から目線で偉そうにっていうのはそのままか。しかし顔はそっぽを向けて、手だけは馴れ馴れしくにぎにぎと。ツンデレか。ツンデレなのか。
そんな彼に夜這いされた結果、今の俺のステータスはこうだ。
名前 メイナード
種族 淫魔
称号 マガリッジ伯爵家長子
レベル 322
HP 3,220
MP 16,100
POW 322
INT 1,610
AGI 322
DEX 966
属性 闇・水
スキル
魔眼 LvMax
ヒール LvMax
キュアー Lv9
ウォーターボール Lv9
転移 LvMax
偽装 Lv—
薬学
E 礼服
スキルポイント 残り 20
問題の角だけど、四対目が生えてくるかと思ったらだんだんと一本に統合されて、額から後ろに向けて一対の長いヤツに変化した。ガゼルっぽくて、ちょっと格好いい。だけどこの角で堂々と出歩くわけにはいかないから、やっぱり一対十センチに偽装したまま。
水属性のスキルもだいぶん育った。育てたのが隣のナイジェルなのがちょっと納得いかないが、力こそパワーだ。無駄にはなるまい。しかし治癒師を装って人間界に行く予定だったのに、そもそも無事人間界に辿り着くことが出来るのか、非常に雲行きが怪しくなってきた。
いやしかし、弱音を吐いている場合ではない。俺はこれから、何とかして謁見をやり過ごし———いや、騎士団に就職した方がいいのかどうかはさておき、婚約だけは回避しなければならない。せっかくエロでレベルアップする淫魔に生まれた俺だ。どうせならハーレムでも作ってウハウハ致したい。魅了でメロメロにするなら、嫌味な男の娘もどきじゃなくて、ぱふぱふお姉さんがいいに決まってる。
モテるんだ。今度こそ。それしかない!
俺たちが降ろされたのは、最深部にほど近い検問所。門番は「メイナード・マガリッジ様ですね。お待ちしておりました」と、俺たちを通してくれた。ナイジェルは、俺を振り返りもせず、すたすたと歩いて行ってしまった。オロオロしていると、等間隔に配置された騎士たちに睨まれる。仕方なく、ナイジェルの後を追った。彼はどんどん王宮の中、かなりヤバそうな所を進んで行く。いかにも偉い連中しか入れなさそうな、その辺に無造作に置いてある壺を割ったら、一生借金地獄から出られなさそうな。
やがて彼は、ひときわ立派な扉の前で足を止めた。そして良く通る声で、「ナイジェル・ノースロップ、参りました」と。すると、扉は独りでに開いた。正確には、内側に控えた騎士が扉を開いた。
彼が敬語を使う相手など、この国にそういない。彼の家は次席侯爵家だから、筆頭侯爵家、公爵家、そして、王家。この広い部屋の正面、つまり謁見室の赤いカーペットの一番奥には、王太子殿下がおわした。
———騎士団の面接のお相手って、王太子殿下だったんですか。そういえば「謁見」って言ってたな。うん。
ナイジェルに続き、彼の背後で臣下の礼を取り、跪く。ナイジェルが、殿下と二言、三言言葉を交わすと、殿下は人払いを命じた。ナイジェルもだ。ちょ、俺が暗殺者とかだったら、殿下ヤバくね?
「ところで、君がメイナードだね」
「は…」
「ああ、堅苦しいことは抜きで。メイナード・マガリッジ。マガリッジ伯爵家長子。メレディスんとこの。お父上は元気?」
「は、お陰様で…」
俺は一体、何に付き合わされているんだ。
「今年学園卒、ナイジェルと同級生。成績は…そこそこ」
殿下が言葉を濁す。殿下の半分は優しさで出来ているのか。
「で、ノースロップが君を推してるんだけど、そっか。婿入りするんだ?」
「いえそのっ」
「ふふ、いいよ。これで彼の魅了の訳も分かった。上手くやったね?」
「!!」
しまった。魅了がバレた。てか、王太子殿下は鑑定スキル持ち、なのか…?
「さてメイナード。君、いつから働く?来週からでいいかな?」
「は?」
思わず顔を上げてしまった。この状況で俺に出来る返事は、「はい」か「イエス」だけ。こうして、俺は王太子殿下のもとで仕官することが決まった。俺は真っ白になって、再びノースロップ邸まで馬車で送られた。
お父上のノースロップ侯爵はご機嫌だった。俺たち二人から、お互いの匂いがするらしい。そりゃまあ、あれだけベロチューすれば仕方ないかなと思う。獣人の鼻、恐るべし。
それより様子がおかしいのはナイジェルだ。朝食の席まで、恋人繋ぎでベッタリとくっついてくる。お前、そういうキャラとちゃうやん。もっと上から目線で偉そうに、嫌そうに、虫ケラでも見るように…ああ、上から目線で偉そうにっていうのはそのままか。しかし顔はそっぽを向けて、手だけは馴れ馴れしくにぎにぎと。ツンデレか。ツンデレなのか。
そんな彼に夜這いされた結果、今の俺のステータスはこうだ。
名前 メイナード
種族 淫魔
称号 マガリッジ伯爵家長子
レベル 322
HP 3,220
MP 16,100
POW 322
INT 1,610
AGI 322
DEX 966
属性 闇・水
スキル
魔眼 LvMax
ヒール LvMax
キュアー Lv9
ウォーターボール Lv9
転移 LvMax
偽装 Lv—
薬学
E 礼服
スキルポイント 残り 20
問題の角だけど、四対目が生えてくるかと思ったらだんだんと一本に統合されて、額から後ろに向けて一対の長いヤツに変化した。ガゼルっぽくて、ちょっと格好いい。だけどこの角で堂々と出歩くわけにはいかないから、やっぱり一対十センチに偽装したまま。
水属性のスキルもだいぶん育った。育てたのが隣のナイジェルなのがちょっと納得いかないが、力こそパワーだ。無駄にはなるまい。しかし治癒師を装って人間界に行く予定だったのに、そもそも無事人間界に辿り着くことが出来るのか、非常に雲行きが怪しくなってきた。
いやしかし、弱音を吐いている場合ではない。俺はこれから、何とかして謁見をやり過ごし———いや、騎士団に就職した方がいいのかどうかはさておき、婚約だけは回避しなければならない。せっかくエロでレベルアップする淫魔に生まれた俺だ。どうせならハーレムでも作ってウハウハ致したい。魅了でメロメロにするなら、嫌味な男の娘もどきじゃなくて、ぱふぱふお姉さんがいいに決まってる。
モテるんだ。今度こそ。それしかない!
俺たちが降ろされたのは、最深部にほど近い検問所。門番は「メイナード・マガリッジ様ですね。お待ちしておりました」と、俺たちを通してくれた。ナイジェルは、俺を振り返りもせず、すたすたと歩いて行ってしまった。オロオロしていると、等間隔に配置された騎士たちに睨まれる。仕方なく、ナイジェルの後を追った。彼はどんどん王宮の中、かなりヤバそうな所を進んで行く。いかにも偉い連中しか入れなさそうな、その辺に無造作に置いてある壺を割ったら、一生借金地獄から出られなさそうな。
やがて彼は、ひときわ立派な扉の前で足を止めた。そして良く通る声で、「ナイジェル・ノースロップ、参りました」と。すると、扉は独りでに開いた。正確には、内側に控えた騎士が扉を開いた。
彼が敬語を使う相手など、この国にそういない。彼の家は次席侯爵家だから、筆頭侯爵家、公爵家、そして、王家。この広い部屋の正面、つまり謁見室の赤いカーペットの一番奥には、王太子殿下がおわした。
———騎士団の面接のお相手って、王太子殿下だったんですか。そういえば「謁見」って言ってたな。うん。
ナイジェルに続き、彼の背後で臣下の礼を取り、跪く。ナイジェルが、殿下と二言、三言言葉を交わすと、殿下は人払いを命じた。ナイジェルもだ。ちょ、俺が暗殺者とかだったら、殿下ヤバくね?
「ところで、君がメイナードだね」
「は…」
「ああ、堅苦しいことは抜きで。メイナード・マガリッジ。マガリッジ伯爵家長子。メレディスんとこの。お父上は元気?」
「は、お陰様で…」
俺は一体、何に付き合わされているんだ。
「今年学園卒、ナイジェルと同級生。成績は…そこそこ」
殿下が言葉を濁す。殿下の半分は優しさで出来ているのか。
「で、ノースロップが君を推してるんだけど、そっか。婿入りするんだ?」
「いえそのっ」
「ふふ、いいよ。これで彼の魅了の訳も分かった。上手くやったね?」
「!!」
しまった。魅了がバレた。てか、王太子殿下は鑑定スキル持ち、なのか…?
「さてメイナード。君、いつから働く?来週からでいいかな?」
「は?」
思わず顔を上げてしまった。この状況で俺に出来る返事は、「はい」か「イエス」だけ。こうして、俺は王太子殿下のもとで仕官することが決まった。俺は真っ白になって、再びノースロップ邸まで馬車で送られた。
10
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる