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ジャスパーの就活

就職活動が始まりました

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 僕はジャスパー・ジュール。辺境の貧乏子爵家の三男坊で、貴族学園三年生。

 高等部二年生の10月、ダンジョン実習で偶然スライムを従魔テイムモンスターにし、ロームと名付けた。ロームは何でも食べたが、特に魔力を好むようで、毎晩手から魔力を分け与えて飼育していた。

 ロームは人化を覚え、僕に擬態するようになった。最初は弟が出来たようで嬉しかったんだけど、僕から効率的に魔力を得るため、彼の食餌行動はどんどんあらぬ方向にエスカレートして行った。まずは乳首をいじられるようになり、性器をいじられるようになり、やがて直接性器から搾り取られ、無数の触手を使って身体中をもてあそばれ。

 11月のある朝、ロームは二体にえた。成り行きで、侯爵令息のキース・ケラハー様に一体お譲りすることとなったんだけど、あろうことかロームはキース様に擬態することを覚え、給餌行動はほとんどキース様とのセックスのようになってしまった。



 一方キース様とは、ロームを介して友人関係が深まって行った。

 12月、僕のロームを彼の姿に、彼のロームを僕の姿に変えて、リアルタイムでコミュニケーションを取る「通信実験」を開始。実験は成功。以後、毎晩消灯時間後の5分間、他愛ない会話をするのが習慣となった。

 通信実験の後は、それぞれロームにして就寝することになっているのだが、果たしてどんなに及んでいるかは、お互いに関知しないというのが暗黙のルール。だけど、日に日に甘くなっていくキース様のセックス、もといロームの。本当に通信実験の後、キース様とロームとの通信は切れているのだろうか。それとも、単にロームの擬態が進化しているだけなのだろうか。そもそも、僕がロームとエッチなをしているのが、バレていないだろうか。

 キース様は、いつも気さくで爽やかだ。まさかそんな彼に、ロームとエッチなことしてますか、なんて聞けない。僕は悶々と過ごすのだった。



 3月、再びロームが殖えて、三体になった。三体目のロームを、魔法大臣の令息ローレンス・リドゲート様に求められたが、キース様が仲立ちして下さり、その話は無かったことに。ローレンス様の従魔とロームとの相性が良くなかったようだ。

 間もなく、従魔が立派な龍神へと進化したローレンス様は、幻獣の国ニルヴァーナ皇国へと旅立って行かれた。卒業パーティーで、見目麗しい龍神の皇子とローレンス様が、仲睦まじくダンスする姿が、とても眩しかった。

 一方キース様の肩には、ヴェズルフェルニルと呼ばれる立派な鷲の従魔があった。皇国から友好の証にと贈られた個体。キース様は相変わらず、二体目と三体目のロームを手元で可愛がって下さるが、こうして仲良くして頂けるのは学生の間だけ。キース様と僕とでは、生きる世界が違うのだ。そろそろ僕も現実を見なければ。



 そして4月。貴族学園の三年生となった。

 僕は三男坊。学園を出たら、一人で食い扶持くらい稼がなきゃいけない。どこかのお家の入婿にでもならなければ平民となるのだが、残念ながら凡庸な容姿と奥手な性格で、女性とお付き合いしたことなど一度もない。実家は辺境の子爵家、縁を繋いでも何の旨みもないから、縁談もない。勉強くらいしか取り柄のない僕には、文官を目指すのが現実的だろう。

 第一志望は、王宮。これはとても狭き門で、夏に試験がある。幸い、宰相府や財務部の子弟からもお誘いのお声が掛かって、有り難いことだ。無事一次試験を突破できたら、ご一緒できるかもしれない。ローレンス様には魔法省にお誘いいただいたけど、ご本人が皇国に輿入れされてしまったし、お誘いいただいた理由が「ロームが珍しいスライムだから」なので、もし魔法省に入省したら、ロームのことを調べ上げられ、その、エッチながバレてしまうかも知れない。それは困る。魔法省、ちょっと憧れてたけど、パスかな…。いや、そもそも受かるかどうか分からないんだけど。

 第二志望は、地方の領主に仕官すること。でもこれって、ポストが少なくて、更に狭き門なんだよね。大体は、領内から優秀な人が選ばれるし。だけど、採用枠が無いわけではない。幸い、ケネス第二王子がクリスティン・ケインズ公爵令嬢と婚約中で、来春には婚姻の上ケインズ公爵を継がれることとなっているので、僕にも仕官のお声が掛かっている。こちらの方が王宮より難関そうだけど、頑張って挑戦してみたい。

 その他、実家の寄り親の辺境伯家、他の仕官先は調べてあるが、今年は文官の募集は少ないようだ。文官が駄目ならば、水属性のスキルを活かして、教会の治療院で働けないかな、なんて思っている。ロームに給餌を続けているお陰で、魔力量だけは増えてるから、少しは役に立てるだろう。



 卒業に必要な単位は、二年で取ってしまった。三年生は、就職活動の年。気合を入れて頑張って行こう。

 そんな決意も新たにしていた時。

「ジャスパー。君、騎士団を受験する気はないかな?」

 キース様から、そんなご提案があった。
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