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ep.35
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眠れない夜を過ごした貴和子。
かたや、寝苦しい夜を過ごした桂木。
午前7時。
桂木は、断りを入れて貴和子の実家をあとにした。
真偽はわからないが、二日酔いに効くというブラックコーヒーを貴和子の母に頂き、あったかい味噌汁もご馳走になったが、頭はスッキリしなかった。その為、代行を頼み、貴和子と住むマンションに着いた。
『ピンポーン』
一応インターフォンを鳴らす。
昨夜、貴和子が何時に帰宅したのか、はたまた帰宅していないかもしれない状況が不明で、桂木は不安だった。
鍵は持っているが、心を落ち着けさせたかった。
『はい。』
ーーーよかった……帰ってる……
『ただいま』
『あ……おかえり……開けるね。』
貴和子の口調に異変を感じ、自分が帰宅したことが微妙なことという雰囲気が伝わってきた。
なんだろう……帰ってきたら不味かったのか。
いや、でも、もしかしたら、貴和子も飲みすぎて二日酔いで、まだ寝ていたのかもしれない。だから、インターフォンなど鳴らさず、勝手に帰宅して入ればいいのに…!とか、思われただけなのかもしれない。
ーーーん?
待てよ、いやいや、あってはならないのだ。
貴和子が二日酔いなどあってはならない。彼女は酔ってはいけない人間なのだから。
桂木はそう思うや否や、焦りと憤りに身を任せ駆け足で階段を上がり、玄関のドアを『バンッ』と開けた。
「おかえりなさい、桂木さん。」
帰宅一番、目に映ったのは、いかにも寝不足の貴和子の姿であった。
「寝てないの?貴和子ちゃん……」
「え?やだ、わかる?どうしよう、こんな顔で仕事行くなんて嫌だなぁ。」
「どうして?なんで寝てないの?昨日は何時に帰ったの?」
貴和子は気付いた。
桂木は何かを疑っている。
それはそうだ、桂木を泥酔させ、実家に泊まるように仕向けたのは自分なのだ。しかも自分は女子会という名の飲み会中。そしてその場にいたのは・・・
「貴和子ちゃん、何か隠してない?僕に知られたらまずいこと……」
「何にもないよ。ただちょっと久々に飲んじゃったから体が熱くなっちゃって……」
「熱い?体が?なんで?熱くてどうしたの?」
少しずつ間合いを詰めてくる桂木。
目が、尖ってきている。
「ど、どうしたのかって言われても……だから眠れなかったっていうことだけど」
「……誰が来てたの?」
「誰って……真子ちゃんと、浜井さんと、由美子さんと……」
「由美子さん?」
「ん?知ってるよね、竹中由美子さん。」
「知ってるけど、貴和子ちゃん、”竹中さん”って呼んでるよね?何でいきなり”由美子さん”になるわけ?」
「え?だって、それは、その……」
ーー同じ名字の竹中健太が現れて、紛らわしいから”由美子さん”に呼称を変えただなんて……言えるわけない。
「ゆ、由美子さんが、そう呼んでって言ったから。だからよ。」
一瞬、貴和子の目が泳いだことに、桂木は眉を顰めたが、それ以上、呼び方については追求しなかった。
(……おかしい……、絶対に何かあったはず……)
桂木は貴和子の態度に違和感を感じていたが、
「桂木さん、それより出勤しないとヤバイですよ。今日は朝から本部長が待ってますから。」
「あ、ああ、そう、だね。」
今日から始まるプロジェクトやらの為に、急いでシャワーを浴びて着替えた。
本当は一緒にシャワーを浴びて、素肌と素肌を合わせあって、隠し事があるなら吐かせてしまいたかったが、さすがにプロジェクトとやらの初日から遅刻などできない。
貴和子は内心ヒヤヒヤして、どうにかなりそうだったが、桂木がシャワーを浴びている間に気持ちを落ち着かせ、どうにか持ち堪えた。
少し前なら、健太という桂木以外の男性の存在は有り難かったかもしれない。
だが、少しずつ心が桂木を求め始めていた貴和子にとって、昨晩のことは目の上のタンコブのように取っ払ってしまいたいものだった。
かたや、寝苦しい夜を過ごした桂木。
午前7時。
桂木は、断りを入れて貴和子の実家をあとにした。
真偽はわからないが、二日酔いに効くというブラックコーヒーを貴和子の母に頂き、あったかい味噌汁もご馳走になったが、頭はスッキリしなかった。その為、代行を頼み、貴和子と住むマンションに着いた。
『ピンポーン』
一応インターフォンを鳴らす。
昨夜、貴和子が何時に帰宅したのか、はたまた帰宅していないかもしれない状況が不明で、桂木は不安だった。
鍵は持っているが、心を落ち着けさせたかった。
『はい。』
ーーーよかった……帰ってる……
『ただいま』
『あ……おかえり……開けるね。』
貴和子の口調に異変を感じ、自分が帰宅したことが微妙なことという雰囲気が伝わってきた。
なんだろう……帰ってきたら不味かったのか。
いや、でも、もしかしたら、貴和子も飲みすぎて二日酔いで、まだ寝ていたのかもしれない。だから、インターフォンなど鳴らさず、勝手に帰宅して入ればいいのに…!とか、思われただけなのかもしれない。
ーーーん?
待てよ、いやいや、あってはならないのだ。
貴和子が二日酔いなどあってはならない。彼女は酔ってはいけない人間なのだから。
桂木はそう思うや否や、焦りと憤りに身を任せ駆け足で階段を上がり、玄関のドアを『バンッ』と開けた。
「おかえりなさい、桂木さん。」
帰宅一番、目に映ったのは、いかにも寝不足の貴和子の姿であった。
「寝てないの?貴和子ちゃん……」
「え?やだ、わかる?どうしよう、こんな顔で仕事行くなんて嫌だなぁ。」
「どうして?なんで寝てないの?昨日は何時に帰ったの?」
貴和子は気付いた。
桂木は何かを疑っている。
それはそうだ、桂木を泥酔させ、実家に泊まるように仕向けたのは自分なのだ。しかも自分は女子会という名の飲み会中。そしてその場にいたのは・・・
「貴和子ちゃん、何か隠してない?僕に知られたらまずいこと……」
「何にもないよ。ただちょっと久々に飲んじゃったから体が熱くなっちゃって……」
「熱い?体が?なんで?熱くてどうしたの?」
少しずつ間合いを詰めてくる桂木。
目が、尖ってきている。
「ど、どうしたのかって言われても……だから眠れなかったっていうことだけど」
「……誰が来てたの?」
「誰って……真子ちゃんと、浜井さんと、由美子さんと……」
「由美子さん?」
「ん?知ってるよね、竹中由美子さん。」
「知ってるけど、貴和子ちゃん、”竹中さん”って呼んでるよね?何でいきなり”由美子さん”になるわけ?」
「え?だって、それは、その……」
ーー同じ名字の竹中健太が現れて、紛らわしいから”由美子さん”に呼称を変えただなんて……言えるわけない。
「ゆ、由美子さんが、そう呼んでって言ったから。だからよ。」
一瞬、貴和子の目が泳いだことに、桂木は眉を顰めたが、それ以上、呼び方については追求しなかった。
(……おかしい……、絶対に何かあったはず……)
桂木は貴和子の態度に違和感を感じていたが、
「桂木さん、それより出勤しないとヤバイですよ。今日は朝から本部長が待ってますから。」
「あ、ああ、そう、だね。」
今日から始まるプロジェクトやらの為に、急いでシャワーを浴びて着替えた。
本当は一緒にシャワーを浴びて、素肌と素肌を合わせあって、隠し事があるなら吐かせてしまいたかったが、さすがにプロジェクトとやらの初日から遅刻などできない。
貴和子は内心ヒヤヒヤして、どうにかなりそうだったが、桂木がシャワーを浴びている間に気持ちを落ち着かせ、どうにか持ち堪えた。
少し前なら、健太という桂木以外の男性の存在は有り難かったかもしれない。
だが、少しずつ心が桂木を求め始めていた貴和子にとって、昨晩のことは目の上のタンコブのように取っ払ってしまいたいものだった。
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