愛しい人は誰のもの?

koyumi

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第3話

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 研修1日目は、自己紹介やら目的やらガイダンス的な内容で終わった。
 それでもみっちり2時間かけて行われ、終わる頃はどっと疲れた。

「町島相変わらず体力ないね。」

 隣に座る逢沢にトンと肩を叩かれた。

「やめろ、お前は相変わらず力加減しない。」

 逢沢は痩せの大食いで、指先とかに肉付きがあまりないのか、ちょっと叩かれるだけで痛い。男目線で申し訳ないが、その割に胸があるから脱いだらいい線いってると思う。

「こらっ、どこ見てんのよ。」

 さっと手のひらで両目を覆われ、

「ーーもったいねえなって。」

と、つい本音が出てしまった。
 まぁ、これも腐れ縁故言えることで、飲みに行けば日常茶飯事のやりとりだ。

「ーっあ、今、見られた……。」

 だが、ここは不覚にも川嶋さんが同席する研修の場で。ついいつものように逢沢とやりあってしまった。そしてそれをガッチリ川嶋さんに見られていたらしい。

「誤解されたらマジ凹む。明日は隣に座るのやめてくれ。」

 川嶋さんがどんな顔して見てたのか、俺は逢沢に目隠しされていてわからなかったが、逢沢曰く、「心配せんでもたまたま目線が合っただけっぽかった」らしい。
(まあ、そうだよな……。俺なんか、わざわざ見る価値もないよな……。)

 結局、次の日も、その次の日も、俺は川嶋さんに何のアプローチもできないでいた。




「町島ー、この書類、A商事に届けてくれないか?ついでに来月からのキャンペーンの打ち合わせもしておけ。」
「はい。行ってきます。」

 俺が所属する広報部は、事務員はいない。だから、自分が関わる仕事の資料コピーや届けは全て自分がすることになっている。
 これがまたハードで。
 広報というだけあって、他社に赴く機会も多く、基本的にはほぼ立ち仕事だ。
 研修で2時間座れるのは有難いが、慣れない机上作業はストレスにもなる。

 エレベーターを降りてエントランスを通り過ぎると、向こうから川嶋さんが現れた。
 突然の出会いに俺の心臓はバクバクだ。
 というのも、明らかに川嶋さんは俺を見て、俺に微笑みを浮かべながら歩いている。
 ちなみに、万が一のことがある為確認したが、俺の後ろには誰もいない。
 そして、
「こんにちわ、町島さん。外回りですか?」
と、名指しで声をかけられた。
「あ、う、うん。A商事に……。あ、あの、川嶋さんは?」
ーーあぁ、なんて余裕のない返事……。
「私はC社に所用で。外は暑いですよ。喉渇いちゃった。」
 川嶋さんはそう言うと、ブラウスを胸元で浮かせてパタパタさせた。
 白い透き通るようなデコルテが眩しく映る。
ーーっ、嘘だろっ?無防備すぎっ!
 俺はこのサービスショットに目のやり場をなくし、
「そ、そうなんだ。ありがと。じゃ、急ぐから。」
と、逃げるように立ち去ってしまった。

ーーバカ!俺の大バカ者~!!

 随分後でわかることだが、川嶋さんのこの行動にはきちんとした意味があったようだ。
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