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再会1
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飲み会の一件があって以来、弥生子の行動は逐一宗一郎にチェックされていた。もちろん弥生子からしたら理不尽な扱いだったし、自分が酩酊した理由は宗一郎に苛立っていたからなので、その原因となる人間が何を言おうが、聞き入れるつもりはなかった。
「今日、ポストにこんなものが届いていたが。」
一日中家にいた弥生子に帰宅した宗一郎がポイッとテーブルに投げたものは、弥生子の同窓会の案内だった。
それは、既に参加すると返信した人にだけ届くもので、ハガキには場所の詳細や参加人数が掲載され、更に幹事と思われる人の直筆メッセージが書かれてあった。
弥生子はあれから展覧会が終わるまでの僅かな日数だけは、ギャラリーに行くことを許してもらえていたが、それ以降はやはり継続させてはもらえなかった。
何もせずにダラダラと家の中にいるより、絵を見て、お客様と話している方が月とスッポンくらい自分の人生の見てくれが違うと思っていた。だから、宗一郎の束縛ぶりにはより一層の嫌悪感を抱いていた。もしかしたら、社長夫人である義母から自分の働きぶりを評価してくれて、次の展覧会もスタッフ参加を依頼してくれるかもという期待もあったが、音沙汰なかった。
もちろん、宗一郎が強くブロックをかけていた。
宗一郎としては、弥生子が家から出られない日が増えれば増えるほど、ご機嫌レベルは上がるばかりで、この環境を素晴らしく良いものと捉えていた。
それなのに、自分の手元にそのご機嫌レベルを一気に最低ラインまで下げる一枚のハガキが届いてしまったのである。
「許可した覚えはないが。」
「許可が必要なこととは知りませんでした。」
「おいっ!確信犯だろっ!!」
「あら?なんて言ったのかしら?あまりにも1人でいる時間が長過ぎて、何喋ってるかわかりませんわっ。耳鼻科にでもいこうかしら?あら、まさか病院に行くにも許可が必要なのかしら?」
2人ともが一歩も譲らず、最後は宗一郎がハガキをビリビリに破いて出て行くということで、ひとまずその日の口喧嘩は終了した。
だが、宗一郎のその行為が、あらぬ方向へ話が行き、よりピリピリした時間を呼ぶことになるなど、誰も予想できなかったことだろう。
弥生子は同窓会の数日前に、同じゼミにいた町田あゆみに連絡を取り、ハガキが破損してしまったから詳細を教えて欲しいと電話をした。
あゆみは今回の同窓会の幹事メンバーで、最初に案内が来たハガキにあゆみの連絡先が掲載されてあり、それを弥生子は携帯電話に記録していたのだ。
あゆみとはゼミが一緒だったが、それほど話す間柄ではなかった。
だが、久々の声は、懐かしさと人恋しさから弥生子の心を躍動させた。ただの連絡事項だけで終わるはずの電話が、かれこれ1時間半を越すものにもなっていた。
あゆみは既に1児の母であり、夫はなんと、大学の講師だった人だという。みんながわかりやすいように、旧姓でハガキに記載したが、実際この話がわかっていたら、馴れ初め知りたさに参加者が増えたんじゃないかとさえ思えた。
夫の束縛があまりないあゆみの話はとても魅力的で、ついつい自分の結婚についても口にしてしまった弥生子。
あゆみは話を聞くなり、
「え?それって……大丈夫なの?人権侵害なんじゃない?」
と、衝撃を受けていた。そしてそれが、意外な人物に知れ、同窓会前日、弥生子の家の前に嵐を巻き起こす男が現れたのである。
その男、弥生子の元彼こと“圭くん”は、いささか緊張の面持ちでインターフォンを押した。
「今日、ポストにこんなものが届いていたが。」
一日中家にいた弥生子に帰宅した宗一郎がポイッとテーブルに投げたものは、弥生子の同窓会の案内だった。
それは、既に参加すると返信した人にだけ届くもので、ハガキには場所の詳細や参加人数が掲載され、更に幹事と思われる人の直筆メッセージが書かれてあった。
弥生子はあれから展覧会が終わるまでの僅かな日数だけは、ギャラリーに行くことを許してもらえていたが、それ以降はやはり継続させてはもらえなかった。
何もせずにダラダラと家の中にいるより、絵を見て、お客様と話している方が月とスッポンくらい自分の人生の見てくれが違うと思っていた。だから、宗一郎の束縛ぶりにはより一層の嫌悪感を抱いていた。もしかしたら、社長夫人である義母から自分の働きぶりを評価してくれて、次の展覧会もスタッフ参加を依頼してくれるかもという期待もあったが、音沙汰なかった。
もちろん、宗一郎が強くブロックをかけていた。
宗一郎としては、弥生子が家から出られない日が増えれば増えるほど、ご機嫌レベルは上がるばかりで、この環境を素晴らしく良いものと捉えていた。
それなのに、自分の手元にそのご機嫌レベルを一気に最低ラインまで下げる一枚のハガキが届いてしまったのである。
「許可した覚えはないが。」
「許可が必要なこととは知りませんでした。」
「おいっ!確信犯だろっ!!」
「あら?なんて言ったのかしら?あまりにも1人でいる時間が長過ぎて、何喋ってるかわかりませんわっ。耳鼻科にでもいこうかしら?あら、まさか病院に行くにも許可が必要なのかしら?」
2人ともが一歩も譲らず、最後は宗一郎がハガキをビリビリに破いて出て行くということで、ひとまずその日の口喧嘩は終了した。
だが、宗一郎のその行為が、あらぬ方向へ話が行き、よりピリピリした時間を呼ぶことになるなど、誰も予想できなかったことだろう。
弥生子は同窓会の数日前に、同じゼミにいた町田あゆみに連絡を取り、ハガキが破損してしまったから詳細を教えて欲しいと電話をした。
あゆみは今回の同窓会の幹事メンバーで、最初に案内が来たハガキにあゆみの連絡先が掲載されてあり、それを弥生子は携帯電話に記録していたのだ。
あゆみとはゼミが一緒だったが、それほど話す間柄ではなかった。
だが、久々の声は、懐かしさと人恋しさから弥生子の心を躍動させた。ただの連絡事項だけで終わるはずの電話が、かれこれ1時間半を越すものにもなっていた。
あゆみは既に1児の母であり、夫はなんと、大学の講師だった人だという。みんながわかりやすいように、旧姓でハガキに記載したが、実際この話がわかっていたら、馴れ初め知りたさに参加者が増えたんじゃないかとさえ思えた。
夫の束縛があまりないあゆみの話はとても魅力的で、ついつい自分の結婚についても口にしてしまった弥生子。
あゆみは話を聞くなり、
「え?それって……大丈夫なの?人権侵害なんじゃない?」
と、衝撃を受けていた。そしてそれが、意外な人物に知れ、同窓会前日、弥生子の家の前に嵐を巻き起こす男が現れたのである。
その男、弥生子の元彼こと“圭くん”は、いささか緊張の面持ちでインターフォンを押した。
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