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第12部
第六章 吠える猫②
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そんな意気込むメルティアをよそに、
「とはいえ、どうするつもりじゃ?」
早速、リノが水を差した。
「コウタとロリ神の行方はようとして知れず。当てもなかろう」
「……むむっ」
メルティアは唸った。
それから、アンジェリカの方に目をやり、
「アンジュ!」
「は、はいっ!」
アンジェリカは、背筋を伸ばして声を上げた。
「あの角娘の家はどこですか!」
「ア、アヤメの家?」
「シキモリさんの家を当たる気かい?」
アルフレッドが呟く。
「けれど、ここまで大掛かりなことをしたんだ。流石に何か手掛かりになるようなものを残しているとは思えないけど……」
「それでもです!」
メルティアは叫ぶ。
「何か見落としがあるかも知れません!」
「確かにそうですわね」
リーゼも頷く。
「全く手掛かりがない以上、それに賭けるしかいないでしょう」
「……まあ、そうじゃな」
リノも嘆息しつつも首肯する。
「ギンネコ娘の言う通り、存外、何か見落としがあるかも知れんしな」
もはや可能性はそれぐらいしかない。
全員が、アンジェリカに注目した。
アンジェリカは「え? え?」と動揺する。
「アヤメの家って、主家のダラーズ男爵家ってこと? それなら生徒にいるけど……」
言って、アンジェリカは隣に立つフランに視線を向けた。
フランは「う~ん」と唸り、
「えっと、確かジーン=ダラーズ君よね? アヤメの主家の生徒って認識だけど」
と、自分の記憶を探る。
ジーン=ダラーズ二回生。
アヤメの主家の人間とは聞いていたが、あまりアヤメと一緒にいた憶えのない少年だ。
それどころか、ほとんど印象にも残っていない。
「凄く地味な子よね。今なら学園にいると思うけど……」
「彼女の主家の人間ですか」
リーゼがフランに目をやった。
「関係者かどうかは分かりませんが、まずはそこから当たりますか」
「まあ、そうだな」
ボリボリ、と頭を掻いてジェイクも言う。
「とにかく、手掛かりが少ねえからな。ここは手当たり次第に当たってみるしかねえだろう。ソルバさん」
「ひゃ、ひゃいっ!」
ジェイクに声を掛けられて、フランが直立不動に背を伸ばした。
ジェイクは少し驚いて瞬きするが、
「いや、そこまで緊張しないでくれ」
と、前置きして、
「そのジーンって野郎は、ソルバさんとコースウッドさんで紹介してもらえるか?」
「しょ、紹介、ですか?」
フランがまだ緊張しつつも眉根を寄せた。
正直、紹介するほど面識がある訳ではない。
すると、アンジェリカが、「ええ。構わないわ」と答えた。
「アヤメは、私の友達であると同時に我が校の生徒よ。生徒会長として今回の事態は見過ごせないわ」
厳しい表情で告げる。
「アヤメには問い出さないと。今回の捜索には全面的に協力するわ」
「……そうだね」
その時、アルフレッドも口を開いた。
「それを言うのならば、これはハウル邸内で起きた事件だ。僕も協力するよ」
と、ハウル縁戚の幼馴染コンビが言う。
「ありがとうございます」
リーゼが頭を下げる。
それから、メルティアの方へと目をやり、
「ここは二手に分かれましょう。ジーンという方へ当たるメンバーと、ダラーズ家の方に向かうメンバーで――」
「……いえ。リーゼ」
リーゼの声を遮り、メルティアはかぶりを振った。
「別れるのなら三手です。私は、コウタたちと一緒に飛ばされた三十三号の居場所を逆探してみます」
「――逆探か!」
ポン、とリノが手を打つ。
「その手があったのう」
すべてのゴーレムには、転移機能がある。
いつでもどこでも、メルティアが望めば喚で出すことが出来るのだ。
その機能を逆探すれば、三十三号こと、サザンⅩの居場所が分かるはずだ。
しかし、メルティアの表情は暗い。
「ですが、距離があり過ぎると逆探は難しいです。時間も半日はかかります。最悪、三十三号を召喚すれば、向こうの場所は分かりますが……」
唇をグッと噛む。
「そもそも、そこが三十三号の知らない場所ならば意味がありません。召喚は、本当に最後の賭けになります」
「……そっか」
ジェイクが言う。
「出来れば、逆探か、ダラーズ家から情報を入手してえところだな」
そう結論付けて、皆に告げる。
「そんじゃあ、三手に分かれるか。コースウッドさん、ソルバさんと、オレっちはジーンって野郎の所に。アルフとお嬢、リノ嬢ちゃんはダラーズ家へ。そんでメル嬢と、零号はここで逆探を――」
そう言ったところで、不意に「……イヤ。マテ」と言葉が響く。
それは、今まで沈黙してた零号の声だった。
「……ソノ必要ハ、ナイ」
そして、はっきりと言う。
「……ダイタイダガ、コウタタチノ、居場所ナラ、ワカル」
「……え?」
メルティアが目を剥いた。
メルティア以外も驚いた顔をしている。
「……アノ娘ノ、匂イハ、オボエテイル」
「え? 匂い?」
メルティアが目を瞬かせる。
「いえ。あなたに嗅覚の機能はないはずですが?」
またしても知らない機能に、創造主たるメルティアは頬を引きつらせた。
一方、零号は「……気二スルナ」と告げて、
「……鼻ニハ、自信ガアル。三界マデハ、嗅ギトレル」
「え? 三界って何ですか?」
メルティアがそう尋ねるが、零号は「……気二スルナ」としか答えない。
「……トモアレ、コウタタチノ、場所ニハ、案内デキル」
「本当ですか!」
メルティアは瞳を輝かせた。
思わず、零号をギュッと抱きしめる。
「どこにコウタたちはいるのですか!」
その問いに他のメンバーも注目する。と、
「……ココカラ、カナリ遠イ。二日ハ、カカル場所ダ」
零号は東の方向を指差した。
全員が指差した方に視線を向ける。
「……遠出ニナル。ダガ!」
そして零号は、拳を固めてこう言った。
「……コンナ、オモシロイコト、参加シナイ、イワレガ、ナイ!」
――と。
「とはいえ、どうするつもりじゃ?」
早速、リノが水を差した。
「コウタとロリ神の行方はようとして知れず。当てもなかろう」
「……むむっ」
メルティアは唸った。
それから、アンジェリカの方に目をやり、
「アンジュ!」
「は、はいっ!」
アンジェリカは、背筋を伸ばして声を上げた。
「あの角娘の家はどこですか!」
「ア、アヤメの家?」
「シキモリさんの家を当たる気かい?」
アルフレッドが呟く。
「けれど、ここまで大掛かりなことをしたんだ。流石に何か手掛かりになるようなものを残しているとは思えないけど……」
「それでもです!」
メルティアは叫ぶ。
「何か見落としがあるかも知れません!」
「確かにそうですわね」
リーゼも頷く。
「全く手掛かりがない以上、それに賭けるしかいないでしょう」
「……まあ、そうじゃな」
リノも嘆息しつつも首肯する。
「ギンネコ娘の言う通り、存外、何か見落としがあるかも知れんしな」
もはや可能性はそれぐらいしかない。
全員が、アンジェリカに注目した。
アンジェリカは「え? え?」と動揺する。
「アヤメの家って、主家のダラーズ男爵家ってこと? それなら生徒にいるけど……」
言って、アンジェリカは隣に立つフランに視線を向けた。
フランは「う~ん」と唸り、
「えっと、確かジーン=ダラーズ君よね? アヤメの主家の生徒って認識だけど」
と、自分の記憶を探る。
ジーン=ダラーズ二回生。
アヤメの主家の人間とは聞いていたが、あまりアヤメと一緒にいた憶えのない少年だ。
それどころか、ほとんど印象にも残っていない。
「凄く地味な子よね。今なら学園にいると思うけど……」
「彼女の主家の人間ですか」
リーゼがフランに目をやった。
「関係者かどうかは分かりませんが、まずはそこから当たりますか」
「まあ、そうだな」
ボリボリ、と頭を掻いてジェイクも言う。
「とにかく、手掛かりが少ねえからな。ここは手当たり次第に当たってみるしかねえだろう。ソルバさん」
「ひゃ、ひゃいっ!」
ジェイクに声を掛けられて、フランが直立不動に背を伸ばした。
ジェイクは少し驚いて瞬きするが、
「いや、そこまで緊張しないでくれ」
と、前置きして、
「そのジーンって野郎は、ソルバさんとコースウッドさんで紹介してもらえるか?」
「しょ、紹介、ですか?」
フランがまだ緊張しつつも眉根を寄せた。
正直、紹介するほど面識がある訳ではない。
すると、アンジェリカが、「ええ。構わないわ」と答えた。
「アヤメは、私の友達であると同時に我が校の生徒よ。生徒会長として今回の事態は見過ごせないわ」
厳しい表情で告げる。
「アヤメには問い出さないと。今回の捜索には全面的に協力するわ」
「……そうだね」
その時、アルフレッドも口を開いた。
「それを言うのならば、これはハウル邸内で起きた事件だ。僕も協力するよ」
と、ハウル縁戚の幼馴染コンビが言う。
「ありがとうございます」
リーゼが頭を下げる。
それから、メルティアの方へと目をやり、
「ここは二手に分かれましょう。ジーンという方へ当たるメンバーと、ダラーズ家の方に向かうメンバーで――」
「……いえ。リーゼ」
リーゼの声を遮り、メルティアはかぶりを振った。
「別れるのなら三手です。私は、コウタたちと一緒に飛ばされた三十三号の居場所を逆探してみます」
「――逆探か!」
ポン、とリノが手を打つ。
「その手があったのう」
すべてのゴーレムには、転移機能がある。
いつでもどこでも、メルティアが望めば喚で出すことが出来るのだ。
その機能を逆探すれば、三十三号こと、サザンⅩの居場所が分かるはずだ。
しかし、メルティアの表情は暗い。
「ですが、距離があり過ぎると逆探は難しいです。時間も半日はかかります。最悪、三十三号を召喚すれば、向こうの場所は分かりますが……」
唇をグッと噛む。
「そもそも、そこが三十三号の知らない場所ならば意味がありません。召喚は、本当に最後の賭けになります」
「……そっか」
ジェイクが言う。
「出来れば、逆探か、ダラーズ家から情報を入手してえところだな」
そう結論付けて、皆に告げる。
「そんじゃあ、三手に分かれるか。コースウッドさん、ソルバさんと、オレっちはジーンって野郎の所に。アルフとお嬢、リノ嬢ちゃんはダラーズ家へ。そんでメル嬢と、零号はここで逆探を――」
そう言ったところで、不意に「……イヤ。マテ」と言葉が響く。
それは、今まで沈黙してた零号の声だった。
「……ソノ必要ハ、ナイ」
そして、はっきりと言う。
「……ダイタイダガ、コウタタチノ、居場所ナラ、ワカル」
「……え?」
メルティアが目を剥いた。
メルティア以外も驚いた顔をしている。
「……アノ娘ノ、匂イハ、オボエテイル」
「え? 匂い?」
メルティアが目を瞬かせる。
「いえ。あなたに嗅覚の機能はないはずですが?」
またしても知らない機能に、創造主たるメルティアは頬を引きつらせた。
一方、零号は「……気二スルナ」と告げて、
「……鼻ニハ、自信ガアル。三界マデハ、嗅ギトレル」
「え? 三界って何ですか?」
メルティアがそう尋ねるが、零号は「……気二スルナ」としか答えない。
「……トモアレ、コウタタチノ、場所ニハ、案内デキル」
「本当ですか!」
メルティアは瞳を輝かせた。
思わず、零号をギュッと抱きしめる。
「どこにコウタたちはいるのですか!」
その問いに他のメンバーも注目する。と、
「……ココカラ、カナリ遠イ。二日ハ、カカル場所ダ」
零号は東の方向を指差した。
全員が指差した方に視線を向ける。
「……遠出ニナル。ダガ!」
そして零号は、拳を固めてこう言った。
「……コンナ、オモシロイコト、参加シナイ、イワレガ、ナイ!」
――と。
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