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第9部
第八章 黄金の魔王③
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――ギィンッッ!
処刑刀と、断頭台の刃が交差する。
一瞬の均衡。
吹き飛ばされたのは処刑刀の方だった。
しかし、それも仕方がない。
《ディノス》は未だノーマルモードのままだ。出力が違いすぎる。
《ディノス》は吹き飛ばされつつも難なく着地。再び処刑刀を身構える。
『……どうした、少年』
ラゴウが問う。
『あの時の姿はどうした? その姿は全力ではあるまい』
かつてラゴウと対峙した炎の魔竜。
あの雄々しき姿こそが、魔竜の真骨頂のはずだ。
『よもや全力も出さずに吾輩を屠れるとでも思っているのか?』
『……それは流石に思っていないよ』
コウタが答える。
『ただ、まず確かめてみたいんだ。お前と出会ったあの日から、ボクがどれぐらい強くなれたのかを』
言って、《ディノス》が地を蹴った。
瞬く間に間合いを詰めると、横薙ぎの斬撃を繰り出す!
対し、《金妖星》は断頭台の柄で刃を受け止めた。
火花が散る。と、
――ギィンッッ!
一秒の間も空けずに、次の斬撃が繰り出された。
それも柄にもよって防がれる。
しかし――。
(……速いな)
斬撃は止まらない。確かに膂力では大きく劣る《ディノス》だが、その斬撃は流水のごとく留まることをしらない。
(大きく劣る機体。ゆえに際立つな。その技量の高さが)
ラゴウは感嘆した。
――あの日よりも。
少年は間違いなく強くなっている。
その時、凄まじく鋭い刺突が放たれた。
だが、
『――ぬうん!』
刺突を打ち払い、《金妖星》は断頭台を振り上げた。
そして――。
――ズウゥンッ!
大地を打ち砕く。
縦横無尽に走る亀裂。揺れ動く地表。
圧倒的なまでの威力だ。
《ディノス》は後方への跳躍を余儀なくされた。
『少年よ。確かめると言ったな?』
ラゴウは皮肉気に笑う。
『ならば答えてやろう。ヌシは確かに強くなった。ゆえに分かるぞ』
――ガコンッ、と。
黄金の鎧機兵が断頭台を大地から引き抜き、肩に担ぐ。
『成長したヌシの技量に機体がまるで見合っておらん。そのままでは、さぞかしもどかしく感じているのであろう。もう賢しいことなど考えるな』
《金妖星》は、左手をクイッと動かした。
『全力で来い。あの姿となれ。吾輩もまた全力で応えてやろう』
『………』
コウタは無言だった。
――が、ややあって。
『……そうだね』
深々と嘆息する。
『お前の言う通りか。全力を出せない戦いに意味なんてないか』
コウタは、そっと自分の腰に腕を回している少女の手に触れた。
「……リノ」
彼女の名を呼ぶ。
「……うむ」
リノは頷いた。彼女の額には金色のティアラが輝いている。
「やっぱり君の力を借りるよ」
「何を言っているのじゃ」
リノは、ニカっと笑った。
「すでにわらわはお主のモノじゃ。お主の女なのじゃ。ゆえに、わらわの力はお主の力。好きに使うがよい」
言って、力一杯、コウタの背中に抱き着いてくる。
メルティアにも劣らない豊かな胸の感触に一瞬コウタの顔が赤くなるが、
「……うん。ありがとう。リノ」
優しく彼女の腕に触れた。
「それじゃあ、行くよ。リノ」
コウタは真剣な顔つきで《金妖星》を見据えた。
「うむ! 任せよ!」
リノは、力強く頷いた。
その直後だった。
二人の乗る《ディノ=バロウス》が大きく振動したのは。
『……来るか』
ラゴウは双眸を細めた――が、
『……なに!?』
数秒後には大きく目を瞠った。
変貌し始める魔竜。
恒力値もまた、あの日と同じく跳ね上がっていく。
しかし、その姿はかつて見たモノとは大きく違っていた。
全身を覆うのは真紅の炎ではない。
その色は『蒼』。
とても深い蒼色だった。
そして魔竜が纏うのは、大きく波打つ大海を思わす炎。
その先端部は白く泡立っている。
『……貴様。それは』
思わず問い質す。
それは、まるで深海から生まれ出たかのような姿だった。
『……なるほど。これが』
すると、深海の魔竜は自分の左腕にまじまじと目を落として呟いた。
『水の《ディノ=バロウス》。これがリノの「特性」なのか』
ラゴウは眉根を寄せる。
『姫の特性だと?』
『こっちの話だよ。気にしなくていい』
魔竜の返答は素っ気ない。
どうやら答える気もないようだ。
『……ふん。まあ、いいだろう』
ラゴウは《万天図》を一瞥して鼻を鳴らした。
――恒力値・七万二千ジン。
あの日と変わらない圧倒的な出力。
魔竜が全力の姿になったことには変わりないのだろう。
(ならば、その姿の真価は戦いの中で見極めればよい)
ラゴウは不敵な笑みを見せた。
『いずれにせよ準備は出来たようだな。そろそろ始めるぞ』
『うん。行くよ。ラゴウ=ホオヅキ』
コウタが宣言する。
同時に、雄々しく吠える水の《ディノ=バロウス》。
『――来い』
ただ一言だけで、ラゴウは返す。
振り上げられる断頭台の刃。《金妖星》の両眼が鋭く輝く。
そして――。
魔獣がごとき二機は、同時に地を駆けるのであった。
処刑刀と、断頭台の刃が交差する。
一瞬の均衡。
吹き飛ばされたのは処刑刀の方だった。
しかし、それも仕方がない。
《ディノス》は未だノーマルモードのままだ。出力が違いすぎる。
《ディノス》は吹き飛ばされつつも難なく着地。再び処刑刀を身構える。
『……どうした、少年』
ラゴウが問う。
『あの時の姿はどうした? その姿は全力ではあるまい』
かつてラゴウと対峙した炎の魔竜。
あの雄々しき姿こそが、魔竜の真骨頂のはずだ。
『よもや全力も出さずに吾輩を屠れるとでも思っているのか?』
『……それは流石に思っていないよ』
コウタが答える。
『ただ、まず確かめてみたいんだ。お前と出会ったあの日から、ボクがどれぐらい強くなれたのかを』
言って、《ディノス》が地を蹴った。
瞬く間に間合いを詰めると、横薙ぎの斬撃を繰り出す!
対し、《金妖星》は断頭台の柄で刃を受け止めた。
火花が散る。と、
――ギィンッッ!
一秒の間も空けずに、次の斬撃が繰り出された。
それも柄にもよって防がれる。
しかし――。
(……速いな)
斬撃は止まらない。確かに膂力では大きく劣る《ディノス》だが、その斬撃は流水のごとく留まることをしらない。
(大きく劣る機体。ゆえに際立つな。その技量の高さが)
ラゴウは感嘆した。
――あの日よりも。
少年は間違いなく強くなっている。
その時、凄まじく鋭い刺突が放たれた。
だが、
『――ぬうん!』
刺突を打ち払い、《金妖星》は断頭台を振り上げた。
そして――。
――ズウゥンッ!
大地を打ち砕く。
縦横無尽に走る亀裂。揺れ動く地表。
圧倒的なまでの威力だ。
《ディノス》は後方への跳躍を余儀なくされた。
『少年よ。確かめると言ったな?』
ラゴウは皮肉気に笑う。
『ならば答えてやろう。ヌシは確かに強くなった。ゆえに分かるぞ』
――ガコンッ、と。
黄金の鎧機兵が断頭台を大地から引き抜き、肩に担ぐ。
『成長したヌシの技量に機体がまるで見合っておらん。そのままでは、さぞかしもどかしく感じているのであろう。もう賢しいことなど考えるな』
《金妖星》は、左手をクイッと動かした。
『全力で来い。あの姿となれ。吾輩もまた全力で応えてやろう』
『………』
コウタは無言だった。
――が、ややあって。
『……そうだね』
深々と嘆息する。
『お前の言う通りか。全力を出せない戦いに意味なんてないか』
コウタは、そっと自分の腰に腕を回している少女の手に触れた。
「……リノ」
彼女の名を呼ぶ。
「……うむ」
リノは頷いた。彼女の額には金色のティアラが輝いている。
「やっぱり君の力を借りるよ」
「何を言っているのじゃ」
リノは、ニカっと笑った。
「すでにわらわはお主のモノじゃ。お主の女なのじゃ。ゆえに、わらわの力はお主の力。好きに使うがよい」
言って、力一杯、コウタの背中に抱き着いてくる。
メルティアにも劣らない豊かな胸の感触に一瞬コウタの顔が赤くなるが、
「……うん。ありがとう。リノ」
優しく彼女の腕に触れた。
「それじゃあ、行くよ。リノ」
コウタは真剣な顔つきで《金妖星》を見据えた。
「うむ! 任せよ!」
リノは、力強く頷いた。
その直後だった。
二人の乗る《ディノ=バロウス》が大きく振動したのは。
『……来るか』
ラゴウは双眸を細めた――が、
『……なに!?』
数秒後には大きく目を瞠った。
変貌し始める魔竜。
恒力値もまた、あの日と同じく跳ね上がっていく。
しかし、その姿はかつて見たモノとは大きく違っていた。
全身を覆うのは真紅の炎ではない。
その色は『蒼』。
とても深い蒼色だった。
そして魔竜が纏うのは、大きく波打つ大海を思わす炎。
その先端部は白く泡立っている。
『……貴様。それは』
思わず問い質す。
それは、まるで深海から生まれ出たかのような姿だった。
『……なるほど。これが』
すると、深海の魔竜は自分の左腕にまじまじと目を落として呟いた。
『水の《ディノ=バロウス》。これがリノの「特性」なのか』
ラゴウは眉根を寄せる。
『姫の特性だと?』
『こっちの話だよ。気にしなくていい』
魔竜の返答は素っ気ない。
どうやら答える気もないようだ。
『……ふん。まあ、いいだろう』
ラゴウは《万天図》を一瞥して鼻を鳴らした。
――恒力値・七万二千ジン。
あの日と変わらない圧倒的な出力。
魔竜が全力の姿になったことには変わりないのだろう。
(ならば、その姿の真価は戦いの中で見極めればよい)
ラゴウは不敵な笑みを見せた。
『いずれにせよ準備は出来たようだな。そろそろ始めるぞ』
『うん。行くよ。ラゴウ=ホオヅキ』
コウタが宣言する。
同時に、雄々しく吠える水の《ディノ=バロウス》。
『――来い』
ただ一言だけで、ラゴウは返す。
振り上げられる断頭台の刃。《金妖星》の両眼が鋭く輝く。
そして――。
魔獣がごとき二機は、同時に地を駆けるのであった。
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