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第一話 転校生
7 これから、あるいはラーメン
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汗を拭くためのデオドラントシートが、幸いジョウの荷物の中にあった。全身をきれいに拭うと、メントールがすうすうと体を冷やす。寒いぐらいだ。ジョウは不気味なほど静かに紋様を解除し、着衣を正す。
射精後の倦怠感で、中止を言い出すのも面倒だった二人は、律儀にラーメン屋に向かった。ロウヤはシャツの斬撃の痕跡を安全ピンで止めて隠す。近くのラーメン屋は丁度空いていた。
赤いテーブルのラーメン屋で、水を飲みながらラーメンを待つ。ふと思い出してロウヤは唇を開いた。
「あー……そういや、お前んとこの狐は?」
「自宅に戻っているはずだ。依代はそこにある」
「そっか」
ジョウがそっけなく返す。会話は続かなかった。
醤油ラーメンがテーブルに運ばれると、ようやく会話が蘇る。ジョウはきょろきょろと周囲を伺いながら、割り箸を手に取る。一膳をロウヤに渡した。
「学生服のまま買い食いか……人に見られたら大事だな」
「俺に無理やり誘われたってことにしとけ」
「そうさせてもらう」
「大事でもないと思うけどな」
真面目に学生生活を送っているジョウにとっては大事なのかもしれないが。ロウヤは箸を割り、手を合わせる。ジョウも自然な流れで、手を合わせていた。
「いただきます」
「いただきます」
意外そうな顔をしたジョウが、ロウヤを見ていた。
醤油ラーメンが旨い。黄色い細麺はもちもちしていて、強めの出汁が効いたスープにあう。ネギがいいアクセントになっていた。中でも半熟煮玉子だ。味が染みているのに中央の黄身はとろりとしていて、口の中で麺と合わさりコクのある旨味になる。ずぞずぞと勢いよく食べ終わり、ロウヤはジョウを見た。
猫舌なのか、ジョウはゆっくりと麺を食べている。上品なすすり方だ。前髪がうっとうしいのか、頻繁に耳にかけている。ロウヤは頬杖をついて、食べ終わるまで眺め続けた。
頬を赤くして水を飲む、ジョウにロウヤは声をかける。
「なんか言う事はねえの?」
「我々は利用関係だ。私から言うことはない」
「じゃ、俺からもないってことで」
「ああ」
頷きあう。また水を飲んだ。財布から硬貨を取り出し、あとはお会計と声をかければいい。同時に店を出るのか、それも探り合って奇妙な間が生まれる。
あ。とロウヤは短い声をあげた。聞き忘れたことがある。
「なあ。アッチのも、利用関係継続ってことでいいのか?」
コップを掴んだままのジョウの目線が、冷たくロウヤを射抜いていた。
射精後の倦怠感で、中止を言い出すのも面倒だった二人は、律儀にラーメン屋に向かった。ロウヤはシャツの斬撃の痕跡を安全ピンで止めて隠す。近くのラーメン屋は丁度空いていた。
赤いテーブルのラーメン屋で、水を飲みながらラーメンを待つ。ふと思い出してロウヤは唇を開いた。
「あー……そういや、お前んとこの狐は?」
「自宅に戻っているはずだ。依代はそこにある」
「そっか」
ジョウがそっけなく返す。会話は続かなかった。
醤油ラーメンがテーブルに運ばれると、ようやく会話が蘇る。ジョウはきょろきょろと周囲を伺いながら、割り箸を手に取る。一膳をロウヤに渡した。
「学生服のまま買い食いか……人に見られたら大事だな」
「俺に無理やり誘われたってことにしとけ」
「そうさせてもらう」
「大事でもないと思うけどな」
真面目に学生生活を送っているジョウにとっては大事なのかもしれないが。ロウヤは箸を割り、手を合わせる。ジョウも自然な流れで、手を合わせていた。
「いただきます」
「いただきます」
意外そうな顔をしたジョウが、ロウヤを見ていた。
醤油ラーメンが旨い。黄色い細麺はもちもちしていて、強めの出汁が効いたスープにあう。ネギがいいアクセントになっていた。中でも半熟煮玉子だ。味が染みているのに中央の黄身はとろりとしていて、口の中で麺と合わさりコクのある旨味になる。ずぞずぞと勢いよく食べ終わり、ロウヤはジョウを見た。
猫舌なのか、ジョウはゆっくりと麺を食べている。上品なすすり方だ。前髪がうっとうしいのか、頻繁に耳にかけている。ロウヤは頬杖をついて、食べ終わるまで眺め続けた。
頬を赤くして水を飲む、ジョウにロウヤは声をかける。
「なんか言う事はねえの?」
「我々は利用関係だ。私から言うことはない」
「じゃ、俺からもないってことで」
「ああ」
頷きあう。また水を飲んだ。財布から硬貨を取り出し、あとはお会計と声をかければいい。同時に店を出るのか、それも探り合って奇妙な間が生まれる。
あ。とロウヤは短い声をあげた。聞き忘れたことがある。
「なあ。アッチのも、利用関係継続ってことでいいのか?」
コップを掴んだままのジョウの目線が、冷たくロウヤを射抜いていた。
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