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ポンコツ美少女探偵が行く! 解決編③
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事件は二つ、犯人も二人。もしかしたら黒幕はひとりなのかもしれないが、その可能性はとりあえず置いておこう。
探偵団は二人から三人になった。泣き腫らした目からコンタクトを取り外し、眼鏡にチェンジした柏木は、いつもよりも知性を感じられる顔立ちをしている。そして相変わらず呉井さんは、ホームズ気取りのコスプレだ。
「『美少女探偵 ミラクル☆ホームズ』……」
ああっ、俺が思っていても言わなかったことを!
案の定、呉井さんが「なんですか、それは?」と食いついているじゃないか。話が脱線して戻ってこられなくなるから、言わなかったのに。
ちなみに『美少女探偵 ミラクル☆ホームズ』は、シャーロック・ホームズを始め超有名な探偵たちが全員美少女化した萌えアニメだ。俺は断然、ロリババアのマープル推しだけど。
柏木が早口で説明しかけたのを見て、「ところでさ、これからどうする?」と不自然なほど大きな声で遮った。オタク、自分の領域の話、とても長い。
「そうですわね……」
呉井さんは唇に人差し指をあてて考える。柏木が俺の肩をバンバン叩く。仙川による攻撃と同じくらい痛いのはなぜだ。彼女が言いたいことはわかる。「本当に、アニメのホームズちゃんみたいじゃない!」と、声にならない萌えを感じたのだろう。わかってしまう自分が悲しい。
「柏木さんを脅迫した人間については、うちのセキュリティ担当者に調べてもらうよう、恵美に頼みましたから、わたくしたちは手帳の件に集中すべきなのでしょうが」
何から手をつけましょうか、と呉井さんは俺を見た。名探偵の格好は見せかけだ。勉強はできる。普段の生活へ知識を発展、応用する力だってある。けれど肝心な、アイディアはなかなか出てこない。そういうややポンコツなところも、こうやって深く付き合わないと見えてこなかったことだ。
迷探偵のフォローは、助手の役目だろう。俺は思案する。ちなみに柏木、聞く態勢を作ったまま俺と呉井さんを交互に見つめて待機。考えることを放棄している。
ここで何かいい案を出さなければ、また聞き込みだ。場所が音楽室近辺から、俺たちの教室に変わるだけの違いに過ぎず、解決する気がしない。
外に聞き込みに行くのだけは避けなければならない。それなら、内に求めてみればいいんじゃないか?
内、すなわち。
「呉井さんさ、何か変わったことなかった? 誰かにその、恨まれるようなこと、しちゃったとか」
Who、ではなくてWhyを追及することで、新たに見えてくるものがあるかもしれない。
ちょっと言い方が悪かった自覚はあるので、一応フォローしておく。
「勿論呉井さんが、そんな意地の悪いことをするとは思ってない。でも、相手の受け取り方次第だから、逆恨みされることは十分考えられるだろ」
山本みたいに、と付け足したくなった。あれこそ逆恨みの極みだろう。あいつが努力しているのはわかる。でも、絶対的な力が違うとしか言えない。普通なら、諦めるべきだろう。だが、あいつは折れない。それだけならすごいと感心するところだが、山本の悪いところは、呉井さんを始めとして外部に攻撃的になるところだ。
呉井さんは、俺の言葉を受けて考え込んでいる。柏木と二人並んで、待機。思考の邪魔をしないために、黙り込んで彼女を見守るのみだ。
「特に何も、思い当たることはないのですが」
はあぁ、と大きく溜息交じりに呉井さんは言った。その表情から、特に事件解決のヒントになるようなことが思い浮かばず、申し訳ないと思っていることが見てとれる。気にしないで、と俺は笑って、「残念」と茶化した。
「申し訳ありません……」
「別に……」
「呉井さんは悪くないよ!」
別に謝ることはないよ、と言おうとした俺に被せて、柏木が大声でフォローした。呉井さんの麗しい微笑みと「ありがとうございます」の言葉は、俺ではなくて柏木に向けられることになる。……なんか、ムカつくな。なんかドヤ顔でこっち見てるし。後から出てきておいて、なんだそれ。
柏木が男だったら、間違いなく足を踏みつけてじゃれ合い以上喧嘩未満の事態に発展しているところだった。よかったな、柏木。可愛い女の子で。
そんな胸の内などおくびにも出さない。
「呉井さん側に思い当たる節がないってことは、打つ手なしか……」
防犯カメラとか設置していてくれればいいのに。
思わずそう漏らすと、呉井さんがうんうん頷いて、「次のPTA総会で、父に議題として提案するように言っておきますわ」と、初耳なことを言い出した。
「へ? PTA?」
「ええ。わたくしの父は、PTA会長なのです」
高校生になると、PTAとかあんまり意識しないけれど、この学校にもあるのか。謎の組織、PTA。会長とか、卒業式に長い話をしに来る知らないおじさん(誰かのお父さんなんだけど)でしかなかったもんな。
「心ばかりですが、寄付もさせていただいておりますので、そのお金で防犯カメラの設置をお願いしておきます。プライバシーの問題等は、父と先生方とで話し合って、生徒会に下ろしてもらうのでいかがでしょうか?」
「あ~……うん」
寄付金とか、リアルでは某有名大学の付属高校くらいしか受け付けていないと思っていた。漫画だと、金持ちばかり通う学園が、寄付金を積んだ家の人間に牛耳られているのはよく見る話だが、こんな普通の高校生しかいない学校で。
「呉井さんちからの寄付金、ちゃんと正しく使われてんのかな?」
ふと浮かんだ疑問を口にする。呉井家がいくら学校に使ったのか知らないけど、前に通っていた学校よりも学食が美味いとか、廊下にもエアコンがついているとか、そういうことはない。普通の学校である。
「安心してください。きちんと監査はしておりますので」
使用報告をしましょうか、と微笑む呉井さん。あれ、俺たちは学校生活の改善をテーマに話をしていたんだっけか。
「ねえ、ものすごく脱線してんだけどさ……結局手帳の犯人、どうやって見つけんの?」
柏木による軌道修正を受けなければ、学校の経営状況について呉井さんに尋ねてしまうところだった。危ない危ない。子供が深入りするところじゃないぞ。
とりあえず、一つの場所に留まっていても、いいアイディアは出ないだろう。そう判断して、俺たちは廊下を歩く。音楽室の前を通るとき、柏木は沈んだ表情で後ろからついてきた。
「終わったことは、気にしすぎんなよ」
柏木の頭をぽんぽん、と叩く。普段の態度の大きさから勘違いしてしまうが、柏木は小柄な少女だった。決して下心があったわけじゃない。自然に手が出てしまった。年下のいとこみたいな感覚で。
「あ、ごめん」
柏木は真っ赤になっている。同級生に妹扱いされるのは、やはり恥ずかしいものなのだろう。俯いて、何事かをぶつぶつと呟いている。
「頭ぽんぽん……桃様……違う……」
そ、そんなに嫌だったか?
「もう。お二人ともじゃれてらっしゃらないで。きちんと考えてくださいね?」
「別にじゃれてなんか!」
呉井さんにたしなめられて、柏木は顔を上げ、思い切り反発した。いやそこまで否定することじゃなくね?
「あの、呉井先輩!」
ぎゃあぎゃあ喋る俺と柏木を、「あらあらうふふ」とばかりに見守っている呉井さん、という構図が出来上がったところで、真正面から見知らぬ男子生徒がやってきた。一年生か。まだ中学生のようなあどけない表情で、呉井さんを見上げている。おそらく本人としては不本意なんだろう。頑張って背伸びをして、彼女と目線を合わせようとしているのが微笑ましい。
「ああ、あなたは……」
そこで呉井さんは黙った。忘れてるな、これ。
「もう! 森河です! 覚えててくださいよ!」
甘えた声を出す森河少年は、俺たち二人のことは眼中にない。麗しい呉井さんに夢中である。俺と柏木は顔を見合わせて、お互いに考えていることが同じだということを確認する。
森河は、呉井さんに惚れている。
黙っていれば清楚な美少女。少し会話をするなら、上品で優雅なお嬢様だ。だが、付き合いの時間が長くなるにつれ、彼女の頭のねじが何本か外れていることに気がつく。普通の男は、そこで呉井さんから離れていく。
俺くらい付き合いが深くなると、クレイジーだとかマッドだとか言われる部分も含めて、それが彼女だという風に受け止められるようになるが、森河はまだ、呉井さんの中身を知らずに好きになっている様子だ。
その森河が、初めて俺と柏木に視線を向けた。ちらちらと窺うような様子に、おそらく二人きりで話したいことがあるんだろうな、と推測する。
二人になんてしないけどな。仙川に「監督不行き届き」との罪状を突きつけられ、半殺しにされるのは俺だ。
何か言いたげな森河に、俺たちは気づかなかったフリをする。
「呉井さん、とりあえず部屋戻ろうよ」
「あ、ええ。そうですわね。それではまた、森河くん?」
ひらひらと手を振る呉井さんに、森河はぼーっと見惚れている。ハッとして頭を下げたときには、呉井さんはすでに彼のことを見ていなかった。
被服室に戻るまでの間、柏木が興味津々に、「あの森河って子、呉井さんと何か関係あるの?」と尋ねている。こういうのは女子に任せるに限る。
呉井さんは事もなげに言った。
「先日、告白されましたの」
あまりにもあっさりとしていたので、「へ~」と聞き流しそうになった。
「……告白!?」
あの少年、呉井さんに恋心を抱くだけではなく、すでに伝えていたのか。仙川のお嬢様センサーにも引っかからないなんて、どんな術を使ったんだ。俺にも教えてくれないかな、それ。
「ええ。まだお返事はしていないのですが……それどころではなくて」
呉井さんによれば、森河に告白された後、今回のペンケース事件と手帳事件が起きたものだという。
「あのさあ……」
呆れたように言ったのは柏木で、俺もその点は完全に同意だった。
「あんじゃん、変わったこと!」
俺たちの指摘に、呉井さんは首を傾げて、何のことだかまるでわからないという風だった。
探偵団は二人から三人になった。泣き腫らした目からコンタクトを取り外し、眼鏡にチェンジした柏木は、いつもよりも知性を感じられる顔立ちをしている。そして相変わらず呉井さんは、ホームズ気取りのコスプレだ。
「『美少女探偵 ミラクル☆ホームズ』……」
ああっ、俺が思っていても言わなかったことを!
案の定、呉井さんが「なんですか、それは?」と食いついているじゃないか。話が脱線して戻ってこられなくなるから、言わなかったのに。
ちなみに『美少女探偵 ミラクル☆ホームズ』は、シャーロック・ホームズを始め超有名な探偵たちが全員美少女化した萌えアニメだ。俺は断然、ロリババアのマープル推しだけど。
柏木が早口で説明しかけたのを見て、「ところでさ、これからどうする?」と不自然なほど大きな声で遮った。オタク、自分の領域の話、とても長い。
「そうですわね……」
呉井さんは唇に人差し指をあてて考える。柏木が俺の肩をバンバン叩く。仙川による攻撃と同じくらい痛いのはなぜだ。彼女が言いたいことはわかる。「本当に、アニメのホームズちゃんみたいじゃない!」と、声にならない萌えを感じたのだろう。わかってしまう自分が悲しい。
「柏木さんを脅迫した人間については、うちのセキュリティ担当者に調べてもらうよう、恵美に頼みましたから、わたくしたちは手帳の件に集中すべきなのでしょうが」
何から手をつけましょうか、と呉井さんは俺を見た。名探偵の格好は見せかけだ。勉強はできる。普段の生活へ知識を発展、応用する力だってある。けれど肝心な、アイディアはなかなか出てこない。そういうややポンコツなところも、こうやって深く付き合わないと見えてこなかったことだ。
迷探偵のフォローは、助手の役目だろう。俺は思案する。ちなみに柏木、聞く態勢を作ったまま俺と呉井さんを交互に見つめて待機。考えることを放棄している。
ここで何かいい案を出さなければ、また聞き込みだ。場所が音楽室近辺から、俺たちの教室に変わるだけの違いに過ぎず、解決する気がしない。
外に聞き込みに行くのだけは避けなければならない。それなら、内に求めてみればいいんじゃないか?
内、すなわち。
「呉井さんさ、何か変わったことなかった? 誰かにその、恨まれるようなこと、しちゃったとか」
Who、ではなくてWhyを追及することで、新たに見えてくるものがあるかもしれない。
ちょっと言い方が悪かった自覚はあるので、一応フォローしておく。
「勿論呉井さんが、そんな意地の悪いことをするとは思ってない。でも、相手の受け取り方次第だから、逆恨みされることは十分考えられるだろ」
山本みたいに、と付け足したくなった。あれこそ逆恨みの極みだろう。あいつが努力しているのはわかる。でも、絶対的な力が違うとしか言えない。普通なら、諦めるべきだろう。だが、あいつは折れない。それだけならすごいと感心するところだが、山本の悪いところは、呉井さんを始めとして外部に攻撃的になるところだ。
呉井さんは、俺の言葉を受けて考え込んでいる。柏木と二人並んで、待機。思考の邪魔をしないために、黙り込んで彼女を見守るのみだ。
「特に何も、思い当たることはないのですが」
はあぁ、と大きく溜息交じりに呉井さんは言った。その表情から、特に事件解決のヒントになるようなことが思い浮かばず、申し訳ないと思っていることが見てとれる。気にしないで、と俺は笑って、「残念」と茶化した。
「申し訳ありません……」
「別に……」
「呉井さんは悪くないよ!」
別に謝ることはないよ、と言おうとした俺に被せて、柏木が大声でフォローした。呉井さんの麗しい微笑みと「ありがとうございます」の言葉は、俺ではなくて柏木に向けられることになる。……なんか、ムカつくな。なんかドヤ顔でこっち見てるし。後から出てきておいて、なんだそれ。
柏木が男だったら、間違いなく足を踏みつけてじゃれ合い以上喧嘩未満の事態に発展しているところだった。よかったな、柏木。可愛い女の子で。
そんな胸の内などおくびにも出さない。
「呉井さん側に思い当たる節がないってことは、打つ手なしか……」
防犯カメラとか設置していてくれればいいのに。
思わずそう漏らすと、呉井さんがうんうん頷いて、「次のPTA総会で、父に議題として提案するように言っておきますわ」と、初耳なことを言い出した。
「へ? PTA?」
「ええ。わたくしの父は、PTA会長なのです」
高校生になると、PTAとかあんまり意識しないけれど、この学校にもあるのか。謎の組織、PTA。会長とか、卒業式に長い話をしに来る知らないおじさん(誰かのお父さんなんだけど)でしかなかったもんな。
「心ばかりですが、寄付もさせていただいておりますので、そのお金で防犯カメラの設置をお願いしておきます。プライバシーの問題等は、父と先生方とで話し合って、生徒会に下ろしてもらうのでいかがでしょうか?」
「あ~……うん」
寄付金とか、リアルでは某有名大学の付属高校くらいしか受け付けていないと思っていた。漫画だと、金持ちばかり通う学園が、寄付金を積んだ家の人間に牛耳られているのはよく見る話だが、こんな普通の高校生しかいない学校で。
「呉井さんちからの寄付金、ちゃんと正しく使われてんのかな?」
ふと浮かんだ疑問を口にする。呉井家がいくら学校に使ったのか知らないけど、前に通っていた学校よりも学食が美味いとか、廊下にもエアコンがついているとか、そういうことはない。普通の学校である。
「安心してください。きちんと監査はしておりますので」
使用報告をしましょうか、と微笑む呉井さん。あれ、俺たちは学校生活の改善をテーマに話をしていたんだっけか。
「ねえ、ものすごく脱線してんだけどさ……結局手帳の犯人、どうやって見つけんの?」
柏木による軌道修正を受けなければ、学校の経営状況について呉井さんに尋ねてしまうところだった。危ない危ない。子供が深入りするところじゃないぞ。
とりあえず、一つの場所に留まっていても、いいアイディアは出ないだろう。そう判断して、俺たちは廊下を歩く。音楽室の前を通るとき、柏木は沈んだ表情で後ろからついてきた。
「終わったことは、気にしすぎんなよ」
柏木の頭をぽんぽん、と叩く。普段の態度の大きさから勘違いしてしまうが、柏木は小柄な少女だった。決して下心があったわけじゃない。自然に手が出てしまった。年下のいとこみたいな感覚で。
「あ、ごめん」
柏木は真っ赤になっている。同級生に妹扱いされるのは、やはり恥ずかしいものなのだろう。俯いて、何事かをぶつぶつと呟いている。
「頭ぽんぽん……桃様……違う……」
そ、そんなに嫌だったか?
「もう。お二人ともじゃれてらっしゃらないで。きちんと考えてくださいね?」
「別にじゃれてなんか!」
呉井さんにたしなめられて、柏木は顔を上げ、思い切り反発した。いやそこまで否定することじゃなくね?
「あの、呉井先輩!」
ぎゃあぎゃあ喋る俺と柏木を、「あらあらうふふ」とばかりに見守っている呉井さん、という構図が出来上がったところで、真正面から見知らぬ男子生徒がやってきた。一年生か。まだ中学生のようなあどけない表情で、呉井さんを見上げている。おそらく本人としては不本意なんだろう。頑張って背伸びをして、彼女と目線を合わせようとしているのが微笑ましい。
「ああ、あなたは……」
そこで呉井さんは黙った。忘れてるな、これ。
「もう! 森河です! 覚えててくださいよ!」
甘えた声を出す森河少年は、俺たち二人のことは眼中にない。麗しい呉井さんに夢中である。俺と柏木は顔を見合わせて、お互いに考えていることが同じだということを確認する。
森河は、呉井さんに惚れている。
黙っていれば清楚な美少女。少し会話をするなら、上品で優雅なお嬢様だ。だが、付き合いの時間が長くなるにつれ、彼女の頭のねじが何本か外れていることに気がつく。普通の男は、そこで呉井さんから離れていく。
俺くらい付き合いが深くなると、クレイジーだとかマッドだとか言われる部分も含めて、それが彼女だという風に受け止められるようになるが、森河はまだ、呉井さんの中身を知らずに好きになっている様子だ。
その森河が、初めて俺と柏木に視線を向けた。ちらちらと窺うような様子に、おそらく二人きりで話したいことがあるんだろうな、と推測する。
二人になんてしないけどな。仙川に「監督不行き届き」との罪状を突きつけられ、半殺しにされるのは俺だ。
何か言いたげな森河に、俺たちは気づかなかったフリをする。
「呉井さん、とりあえず部屋戻ろうよ」
「あ、ええ。そうですわね。それではまた、森河くん?」
ひらひらと手を振る呉井さんに、森河はぼーっと見惚れている。ハッとして頭を下げたときには、呉井さんはすでに彼のことを見ていなかった。
被服室に戻るまでの間、柏木が興味津々に、「あの森河って子、呉井さんと何か関係あるの?」と尋ねている。こういうのは女子に任せるに限る。
呉井さんは事もなげに言った。
「先日、告白されましたの」
あまりにもあっさりとしていたので、「へ~」と聞き流しそうになった。
「……告白!?」
あの少年、呉井さんに恋心を抱くだけではなく、すでに伝えていたのか。仙川のお嬢様センサーにも引っかからないなんて、どんな術を使ったんだ。俺にも教えてくれないかな、それ。
「ええ。まだお返事はしていないのですが……それどころではなくて」
呉井さんによれば、森河に告白された後、今回のペンケース事件と手帳事件が起きたものだという。
「あのさあ……」
呆れたように言ったのは柏木で、俺もその点は完全に同意だった。
「あんじゃん、変わったこと!」
俺たちの指摘に、呉井さんは首を傾げて、何のことだかまるでわからないという風だった。
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