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35、父さんと親友と俺

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 (息子からしたら、複雑ですよねぇ。すみません。)


⬛︎司サイド

ある日突然、陽斗から衝撃なことを言われた。父さんが好きだと。最初冗談かと笑おうとしたけど、真剣そのもので本気なのだとすぐにわかった。

陽斗は、初めて会ったあの日から父さんに惚れていたらしく、将来は結婚したいとまで言ってきた。考えて欲しいと言って、部屋から出て行った。

突然のことに頭が混乱している。陽斗が、父さんを?

全然気が付かなかったけど、今思い返すと心当たりは色々とあった。初めて父さんに会った時、顔を真っ赤に染めて、見蕩れましたとか言ってたんだよな。いつもクールなアイツが珍しく挙動不審で笑ったのを今でも覚えている。

確かアレからだったよな。家に泊まりに来るようになったの。しかも俺がゲームしているといつの間にか消えてて、陽斗が作ったというお菓子を一緒によく食べてた。俺は甘いものが得意じゃなかったから、気にしていなかったけど、あれ餌付けだったんじゃん。

うわぁ、せこっ、お前確実に落としにかかってるじゃん!ご飯の時とか、ずっと食べていたいとかなんとか言ってたの結婚意識してたってことか?

親友のあからさまなアプローチを今更知るとか、どんだけ俺、鈍かったんだ。はぁあ、どうしよう。陽斗どんな思いで、俺に打ち明けたんだ?あー!わかんねぇ、俺どうしたらいいんだよ!

自分1人で考えられなくなって、父さんの弟である晃さんにメールした。すると、今ちょうどこっちに帰ってきてるって。すかさず明日暇か聞くと、大丈夫って言ってくれて、相談することにした。俺一人じゃ、どうにも判断つきかねた。

夕飯は、父さんと2人で食べる。今日は、陽斗が帰っているから。つか、今思えば他人なのに週6家に泊まりに来るって普通有り得ないよな?!
今更ながら、愕然とする。親父さんたちが、仕事で帰ってこないとか聞いてたから、ご飯とか大変だろうと誘っていたけど、料理やお菓子家政婦さんにも習ってるって言ってた。つまり、ご飯作ってくれる人いるじゃん!

百面相していたら、父さんから心配されてしまった。
父さんを見つめると、なんか違うなとふと思った。なんでだろう。でもいくら考えてもよく分からなくて、首を傾げてしまう。

日曜日、昼前にじぃちゃん家に行って、昼ごはんをご馳走してもらった。2人ともすごく可愛がってくれて、大好きだ。晃さんの部屋に行き、相談しようとしてはたと気がつく。どうやって相談すれば?!
うわっ、全然考えてなかった!ど、どうしよう。焦ってしまう。

不思議がる晃さんに、咄嗟に将来について相談した。どうして海外に行くことにしたのか。すると、原因は親父の事故だった。親父たち兄弟は結構仲良くて、死んだことがショックすぎて、思い出が残るココにはいたくなかったらしい。それで、思い切って海外に飛んだと聞いて驚いてしまう。

そんな理由で行くもんなの?って聞くと、根性とやる気さえあればなんでも出来ると言われた。それは、晃さんだけだよって突っ込んだけど、写真を見せてくれながら色々苦労話や楽しかった話とか色々聞くと、ちょっと興味を持ってしまった。

あ、いけない。相談することこれじゃなかった!

「あ、晃さん、お、俺、この前三者面談あって、将来のこと考えてみたんだ。いつもなら、そんなに考えたことなかったんだけど、思うことがあって・・・。

それで、大人になったら、家を出るんだろうなと思ったら、父さんを1人にしてしまうことに気がついたんだ。

だから、言ったんだ。好きな人いないのかって。そうしたら、すごい動揺したんだよね。その時は全然気が付かなったけど、好きな人がいるんだと思う。

でもいざ、再婚するのかとか考えたら、ちょっと悩んでしまって。」

段々と声が小さくなって俯いてしまう。俺の方から、再婚どうだと振っときながら、やっぱりいやとか言えない。父さんの人生なんだから。

「ふ~ん。飛鳥さんがねぇ。ま、どっちでもいいんじゃないか?司の思う方で。
ちゃんと司が心から祝福しないと、飛鳥さんは幸せになれないと思うぞ。だから、司がどうしたいかで判断したらいいと思う。」
その言葉に、俯いていた顔をあげる。

「え?それでいいの?」
「俺はそう思うぞ。だけど、ちゃんと考えることだ。受け入れても、拒否しても司の行動は、責任が生じる。だから、真剣に考えて出した答えは、俺は尊重する。

ただ安易に答えを出すなよ。しっかりと納得してからだからな。」

「う、うん。わかった・・・。」

晃さんの言葉は、理解できない部分が多かったけど、俺の心にズシッと重くのしかかった。

それから、おばあちゃんに昔の写真を見せてもらう。親父と父さんの若い時の写真、俺を抱っこしている親父、家族写真、色々。父さんの部屋が、今もあるから覗いてみる。何度も入ったことのある部屋は、綺麗に整理整頓されていて、本棚から卒業アルバムを取り出した。

いつも父さんの隣には親父がいて、どれも笑顔だ。あれ?この笑顔・・・。さっき見せてもらった写真を見てみる。おなじ笑顔だった。

そして、親父が亡くなって以降の写真も探せば、見つかった。毎年この家で家族写真を撮っていたから、見比べると、やっぱりそうだった。

「全く・・・こんなんじゃ、反対なんて出来やしないだろう。」

帰る時、晃さんも見送りに来てくれた。スッキリした顔をしている俺に、
「もう大丈夫だな。何かあったら、また相談に乗ってやるから、連絡しろよ。」
そう言ってくれる。
「うん、今日はありがとう!じぃちゃん、ばあちゃん、いつもありがとう。いつまでも元気にいてよ。じゃ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日の月曜日、陽斗の顔が強ばっている。いつもみんなから可愛いやら、綺麗と騒がれているアイツの顔にクマがあるとか、笑える。ギュッと引き締めて笑うのを堪えた。帰り道のことを考えたら、適度な距離感を取っておきたい。

そして帰り道、いつもは会話が弾むのに無言だ。そして目的地に着いて、公園に誘った。久しぶりにブランコに腰掛ける。キィキィと音をたてて、少し遊ぶと、切り出した。

ここで遊んだこと、親父と父さんの思い出、幸せだったこと、そして交通事故のこと。

父さんの顔から笑顔が消えた。最初のころは、その作り笑顔が嫌だった。俺がいるのに、なんでそんな顔をするの!?って悩んだこともあった。その度に周りの人が助けてくれて、いつの間にか父さんも笑えるようになっていたんだ。

でもそれは、本来の笑顔じゃなかった。いつも一緒にいたからか、俺はその異変に気が付かないといけなかったのに、気がついていなかった。

それが分かったのは、アルバムをみたから。

最近の笑顔と同じ笑顔を父さんは浮かべていた。これだったんだ。昨日の父さんの違和感は。

この笑顔は、愛する人がいる喜び。

全然気が付かなかった。本当どんだけ鈍感なんだよ、俺。
大切にしないといけない人のことを、分かっていなかった。

ふぅと小さくため息を吐く。

父さんと陽斗が既に付き合っていると考えると辻褄があう。案の定、2人は既に付き合っていた。全然気が付かなかったことにショックを受ける。昨日今日とどれだけため息吐いているんだ?俺。

親友が、俺の父親になるなんてな。そう言うと、

「司、僕は飛鳥さんを愛しているし、幸せにしたいと思っている。でも、お前の父親はただ1人だし、再婚したからと言って僕が父親になるつもりはない。
今まで通り司は、僕の親友だ。」

真剣な顔をしてそう言った。その言葉は、ストンと俺の胸に落ちた。

嬉しかった。俺の父親は親父だけ。俺と陽斗の関係は何一つ変わらない。やっと俺の心が、落ち着いていく。安心したら、笑いが込み上げてきた。

ふぅ、降参だ、降参。まったく・・・。
俺の大切な父さん、絶対幸せにしろよ。

しっかし父さんのことになると、全然顔違うな。なんだこの恋する乙女状態。つか、孕み腹の父さんを愛しているってことは、コイツこんな顔をして攻めってこと?!

うわぁ、こんな顔してなかなかむっつりだな。
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