42 / 51
第42話 怪人だって恋をする
しおりを挟む理央の話によると、理央は黄河家の五男だそうだ。
黄河家は紅家と違って男兄弟ばかりで、どちらかというと女性が少ないのだとか。
中性的な顔立ち……というか、どこからどう見ても女子にしか見えない容姿のせいでよく間違われてきたらしい。
体もイチモツだけは立派なのだけど、細いし、男にしては小さめだ。
服装もどちらとも取れるような格好だし……
髪の長さも、どちらとも取れる長さだ。
もちろん、声も。
俺と同じく高校1年生なのだが、声変わりをしても大して変わらなかったそうだ。
「ボクは純血だし、紅家にとってもいい話だとは思うんだ。それに、ボクは紅萌子を愛しているから……」
頬をぽっと赤らめて、少し恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに理央は紅会長に対する思いを俺に打ち明けた。
「愛してるって……お前、今俺に紹介してくれって言わなかったか? 知り合いってわけじゃないのか?」
「うーん、知り合いではないね。ボクは紅萌子と話をしたことはないよ。一目惚れなんだ」
どうやら理央はずっと紅会長に密かに思いを寄せていたようだ。
「でも向こうはボクのことなんて知らないだろうし、ただ見つめているだけでよかったんだけど……紅家の女王だって知ってね。ボクは種族や家柄なんて気にはしないけど、紅家としては純血を狙ってる。君や君の父上だって、誘惑されただろう?」
「あぁ、それは……確かに」
母さんがブチギレて、紅会長と父さんが……なんてことはなくなったけど、紅家としては純血の子供ができるなら、仲の悪い青野家でもいいと本気で思っていたのかも……
「他の男に取られるくらいなら、ボクが……って思ったんだ。一目惚れしたくらいで、そんな……って、思うかも知れないけど」
「いや、わかるよ。その気持ち」
そう。
俺だって、守夜美月にずっと片思いしていた。
彼女が魔法少女だってことを知ってからも、俺が怪人族だって知ってからも、俺が彼女を好きだと思う気持ちには、変わりない。
彼女には幸せになってもらいたいし、ずっと笑顔でいて欲しい。
辛いことや悲しいことが起きないで欲しい。
理央の気持ちは俺には痛いほどわかった。
「ありがとう、メースケ!」
理央は嬉しそうに俺に抱きつく。
犬みたいなやつだなー……
俺は昔近所で飼っていたゴールデンレトリバーを思い出した。
「ところで、どうして協力を俺に頼むんだ? 黄河家は中立なら、親に行ってお見合いするとか、そういうことにはならなかったのか?」
「あー……それは、その…………色々あって……」
「色々?」
なんだろう?
何か言いづらいことなのだろうか……?
「とにかく、協力してくれたら、ボクも君と魔法少女が結ばれるようにするからさ!! そうだ……!! ダブルデートとかどうかな?」
「ダブルデート!?」
「だってほら、今日も君たち紅家の怪人族のせいでうまくいかなかったんだろう? ちょうどここに、遊園地のチケットが4枚ある!!」
理央はポケットからチケットを取り出すと、自慢げに見せてきた。
遊園地……
ダブルデート……
「特にここのお化け屋敷は二人ペアで入らないといけないんだ! 絶好のチャンスでしょ!? 君たち二人の距離もさらに縮まると思うし、ボクもこれで紅萌子に近づける!」
「おぉ……お化け屋敷か!」
「それに、近くにあるリゾートホテルは黄河家が経営してるんだ!! 君たちがそういう雰囲気になった時には、存分に利用してくれて構わない」
「な、なんだって!?」
「あんなことや、こんなことし放題だよ?」
俺は理央の手をガシッと握った。
「その話、のった!!!」
こうして俺たちは、協力し合うことになった。
ついさっき知り合ったばかりなのに、理央とはまるで長年の親友のような……そんな気になった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる