覚醒呪伝-カクセイジュデン-

星来香文子

文字の大きさ
上 下
26 / 92
第三章 新月の夜

第26話 生生流転

しおりを挟む


「死んだ?」
「我が主様が?」
「飛鳥様が?」
「なぜだ?」
「最後にお見えになったのはいつだ?」

 5匹……と言っていいのだろうか、蕪妖怪たちは円陣を組みながら相談を始めた。

(こいつら、胴上げとか、円陣とか…………小さいのに体育会系だな)

 蕪のサイズとしては、一般的なスーパーで見るより大きいサイズではあるが、人間の俺からみたら小さい。
 しかし、その体から生えている腕はボディービルダー並みのムッキムッキだった。
 そのアンバランスな体と、一つ目というのが妖怪らしく気持ち悪いがこの際それはどうでもいい。
 長い話し合いの結果が出たのか、蕪妖怪たちは話し合いが終わるのを待っていた俺たちの方を一斉に見た。

「おい、そこの白髪の男!!」
「な、なんだ!!」
「お前が飛鳥様の孫だというのなら、我らはお前を通すことはできぬ」
「は? なんでだよ!! 早くしないと、玉藻が…………」

「その玉藻のせいだ」

 蕪妖怪の1匹が、代表して甲高い声で話した話は、その声とは裏腹に恐ろしい話だった。


「この先の殺生石は、男の声がするとその強い妖力によって、結界を破ろうと話しかけてくるのだ。男は近づいてはいけないのだ。骨抜きにされて、死んでしまうぞ。封印を強めたいなら、女に生まれることだ」

「は!? そんなことできるわけないだろう!?」

「じゃあ、帰るのだ」

 そう言って、蕪妖怪たちは俺たちの行く手を塞ごうと一列に並んで肩を組み壁を作る。


(ここまで来て、なんて理不尽な!!)

 確かに、神社で狛六も言っていた。
 男は殺生石に近づいてはいけないと。
 だけど、俺が行かなきゃ、封印を強めることができない。
 もたもたしていたら、あの玉藻の一部が封印を解きにきてしまう。

「颯真、いいことを思いついたよ!!」

 俺がどうするか困っていると、ユウヤは突然ぽんっと手を打って、とんでもないことを言い出した。

「女の子になろう!!」
「は!?」
「刹那と入れ替わるんだ」
「は!?」

 俺はついにユウヤがおかしくなったと思ったが、どうやら刹那はその意図がわかったようで…………

「ユウヤ……あんたまさか、私の体に颯真を入れるつもり?」
「さすが刹那! その通りだよ!」
 ユウヤはさすが刹那だと、オーバーリアクションで褒め称えているが、俺は全然理解ができない。

「え、待って。話が見えないんだが……」

 俺の話なんて聞いちゃいない刹那は、ガシッと俺の両肩を掴んで、目を見つめて言った。
「仕方がないわね……颯真、私の体に変なことしたら許さないからね?」

「いや、待て!! 意味がわからない!!」



 だんだんと、刹那の顔が近づいてくる。



 刹那の白檀の香りが、俺を包み込んだ————————










しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな

ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】 少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。 次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。 姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。 笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。 なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中

ときはの代 陰陽師守護紀

naccchi
ファンタジー
記憶をなくした少女が出会ったのは、両親を妖に殺され復讐を誓った陰陽師の少年だった。 なぜ記憶がないのか、自分はいったい何者なのか。 自分を知るために、陰陽師たちと行動を共にするうち、人と妖のココロに触れていく。 ・・・人と妖のはざまで、少女の物語は途方もない長い時間、紡がれてきたことを知る。 ◆◆◆ 第零章は人物紹介、イラスト、設定等、本編開始前のプロローグです。 ちょこちょこ編集予定の倉庫のようなものだと思っていただければ。 ざっくり概要ですが、若干のネタバレあり、自前イラストを載せていますので、苦手な方はご注意ください。 本編自体は第一章から開始です。

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

裏公務の神様事件簿 ─神様のバディはじめました─

只深
ファンタジー
20xx年、日本は謎の天変地異に悩まされていた。 相次ぐ河川の氾濫、季節を無視した気温の変化、突然大地が隆起し、建物は倒壊。 全ての基礎が壊れ、人々の生活は自給自足の時代──まるで、時代が巻き戻ってしまったかのような貧困生活を余儀なくされていた。 クビにならないと言われていた公務員をクビになり、謎の力に目覚めた主人公はある日突然神様に出会う。 「そなたといたら、何か面白いことがあるのか?」 自分への問いかけと思わず適当に答えたが、それよって依代に選ばれ、見たことも聞いたこともない陰陽師…現代の陰陽寮、秘匿された存在の【裏公務員】として仕事をする事になった。 「恋してちゅーすると言ったのは嘘か」 「勘弁してくれ」 そんな二人のバディが織りなす和風ファンタジー、陰陽師の世直し事件簿が始まる。 優しさと悲しさと、切なさと暖かさ…そして心の中に大切な何かが生まれる物語。 ※BLに見える表現がありますがBLではありません。 ※現在一話から改稿中。毎日近況ノートにご報告しておりますので是非また一話からご覧ください♪

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

私が猫又な旦那様の花嫁?~前世の夫婦といわれても記憶がないので、あやかしの血族向け家政婦はじめます~

千早 朔
キャラ文芸
「必ず、必ず見つけ出す。なあに、"契り"を結んだこの小指が、必ず巡り合わせてくれるさ。だから、だから次こそは――」 夢の中で出会った美しい男の人は、前世の夫で、猫又でした。 *** 平凡な会社員だった白菊茉優は、ある日「前世の夫」と名乗る男性マオに窮地を救われた。 白い髪に赤い目を持つ、美しい男性。 彼は猫又で、北鎌倉にある「つづみ商店」の跡取りだという。 だが茉優には彼と夫婦だった前世の記憶がない。 ほとぼとりが冷めるまで彼の住むお屋敷で、あやかしの血族向け家政婦派遣サービスを担うことに。 「一日でも早く夫にしてもいいって思ってもらえるように、俺、頑張るからな!」 マオと共に、あやかしの血を持ちながら"人"として暮らす者たちの苦悩を紐解いていく茉優。 屋敷の離れでの共同生活も相まって、茉優との結婚を諦めていないマオの支えと無償の優しさに、次第に心惹かれていく。 が、想いを募らせるほどに、マオが求めているのは"前世の自分"であって茉優ではないのだと苦悩し――。 前世で悲運の死を遂げた二人が、あやかしと人間として新たな恋を育んでいく物語。 ※他の投稿サイトにも掲載中です。

裏吉原あやかし語り

石田空
キャラ文芸
「堀の向こうには裏吉原があり、そこでは苦界の苦しみはないよ」 吉原に売られ、顔の火傷が原因で年季が明けるまで下働きとしてこき使われている音羽は、火事の日、遊女たちの噂になっている裏吉原に行けると信じて、堀に飛び込んだ。 そこで待っていたのは、人間のいない裏吉原。ここを出るためにはどのみち徳を積まないと出られないというあやかしだけの街だった。 「極楽浄土にそんな簡単に行けたら苦労はしないさね。あたしたちができるのは、ひとの苦しみを分かつことだけさ」 自称魔女の柊野に拾われた音羽は、裏吉原のひとびとの悩みを分かつ手伝いをはじめることになる。 *カクヨム、エブリスタ、pixivにも掲載しております。

処理中です...