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またまた沈黙タイムが始まりました
しおりを挟む「さて、お姉様。その胎に仕込んだ子は誰のですか?」
カタカタと震えていますが、黙っていれば何とかなるなんて思わないでくださいな。
それで逃れられるほど貴族社会は甘くないのですよ。
「お姉様、残念すぎる話ですが、それの親はブレイドではありえませんわ」
「嘘だ! 間違いなく」
「種無しですわよね」
「…………へ?」
「あら? 当主サロンでは有名な話でしたわ。『ザイコック子爵家のブレイドには種がない』って。ほかにも『スレンダー伯爵家のヴァレッセにも子種はなく、デレイム侯爵家のケイレンにも王家のコルフ王子にも子はできぬ。子ができぬから後継者から外された♪』と歌われておりましたわ」
そう言って笑った私と対照的に、表情が白く表情筋が凍って固まったらしいフェスタ。
「残るはノイド男爵家のルドアン様、ですけどねえ……。ノイド男爵ったら、お姉様のような節操なしを屋敷に招くとほかの子息に迷惑、正確には毒牙にかけられたくないと仰られて、ねえ。ルドアン様は慰謝料の支払いのため、領地に蟄居を命じられて。長旅がお身体に障ったみたいでお亡くなりに」
避妊もせず未婚の女性を妊娠させた以上、たとえ相手が節操なしのフェスタであっても慰謝料は発生します。
その慰謝料を支払えない以上、その身で支払ってもらうのは当然のこと。
そのため、亡くなったとして貴族籍を抹消して借金奴隷として奴隷商に売られます。
ルドアンも同じ道をたどりました。
「じゃあ、私は……」
「ご安心くださいな。お母様のご実家がお母様共々お引き取りになられます」
「いやよ! 私は次期当主よ!」
「いや、私だ。私がフェスタと結婚して」
「爵位の簒奪を宣言しますの?」
爵位の簒奪は重罪。
そのことはご存知だったようで、またまた沈黙タイムが始まりました。
黙っていればタイムリミットが訪れて問題を乗り越えられる、わけがないというのに……
「では順番にお話いただきましょうか?」
「……え?」
「だって、まだわたくしブレイド様が当家にお越しになられた理由をお話しいただいておりませんわ。先触れもなくお越しになられて、一方的に責められましたのよ? それでブレイド様、婚約者でなくなったわたくしに何用でしょう?」
「…………は?」
「え⁉︎ ちょっとエーメ、それはどういうこと!」
ブレイドとフェスタの両名は私の言葉を理解していないようです。
ルベッカは気付いていました。
ええ、父の話を聞いたルベッカは実家がルベッカとフェスタを引き取ると言ったときに、ギョッとしていましたからね。
あ、ルベッカは後妻……でもありません。
実は貴族籍に名は入っていません。
ルベッカの実家の話では、離婚騒動で母の幼馴染みかつ相手より爵位が上の我が家へ逃げ込んだそうです。
伯爵家が慰謝料を代わりに支払ったものの、婚家で訴えられて貴族籍を抜かれました。
そのため貴族ではなく騙りなのです。
フェスタは平民でも入学できる学園の入学試験で弾かれて通っていません。
そして母が亡くなったにも関わらずルベッカは居座り続けた。
ええ、私に『自分が親だ』と言い続けて……父は私を人質に取られている状態だったそうです。
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