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戦い。殺し、殺され、生き抜く。

貴族の少女。下民のアサシン。

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「ぐぁぁっ!?」



「どうしたっ、騎士団っ! その程度かっ」



叫んで5人目の死体を作り上げた、アサシンっ!



戦いは確実に、騎士団達の劣勢の色味が強い。



敵はアサシン一人と、ゴーレムだけだというのに、全く相手になっていないとさえ言えたっ!









「くっ、くそぉ……」



「全員引くなっ。攻撃こそ最大の防御よっ!」



ヴィエッタが、弱気な仲間に怒号するっ!



「しっ、しかしジーガにはっ、ジーガには何もっ! 全く攻撃が効きませっ……がはっ!?」



ガスっとジーガに体当たりをかまされ、剣を落とす騎士団員。



それをなんとか拾い直そうと、必死に走る……がっ!











「動線が見え見えだっ!」



落ちた剣を狙って、ナイフを投げたアサシンっ!





ドスッ!





「ぐぇ……」



見事命中っ!



彼ら騎士団の動きは、戦場を知っている者には簡単に、予想されてしかるべき動きだった。













「15。いえ、私含めて16居て、1人と残骸一匹片付けられないとはっ!」



ブラウンの髪を振って敵を睨み、ヴィエッタが唇を噛むっ!



「ふふっ。役に立てジーガっ! 騎士団の包囲を崩し続けろっ!」



「ギュガガっ!」









騎士団の苦戦の理由。



それは、完成されたジーガとアサシンの動き。



ジーガは防御とかく乱に徹して、騎士団のスキを作り出す。



そしてアサシンは、崩された陣形を上から、遠巻きに攻撃を続ける。



アサシンはほとんど地面に降り立たず、蜘蛛のように壁をつたって、敵に近づけかれないようにしていた。

















「くくっ。良いぞ良いぞっ。この為にジーガを温存したのだ。間違ってなかったな」



青い壁の上、彼女は十分な働きをするジーガにご満悦だ。



いくら破損したとはいえ、1機で60人の騎士団を殺す。



そう想定されるジーガは、十分に強かった。



「くそっ、ちょこまかと。だったら爆炎でアサシンを巻いてやれっ! 一点集中するんだよっ!」



「おっ、おうっ!」





バンっ! バンバンっ!





誰かの号令に従い、騎士団による爆裂掃射が始まるっ!



「くっ……」



確かにそれは、効果が高かった。



炎の魔法の爆発力は十分。



逃げ回る事に徹するアサシンを、苦しめるに足る威力っ!

















しかし……。



「ふふっ……」



傷ついたアサシンは、笑う。



そしてあの、〝ブルーブラッド(蒼白の生き血)″を体に振りかけ、耐え切って見せたっ!



「なっ、なぜアイツがあれをっ!?」



騎士団のみならず、執事や給仕からも驚愕の声が上がったっ!

















「レナめぇ……っ」



ヴィエッタの声が響き、騎士団が更に動揺してしまう。



「くくっ。確かに無敵だよ。これがあればなっ!」



薄ら笑って、騎士団への攻撃を続けるアサシンっ!



















「こうなれば、一気にシトメねばならないわねっ。あなた達はそのジーガを追いなさいっ。私が奴をっ!」



叫ぶと、一目散に走るヴィエッタっ!



飛び回るアサシンを追いかけ……一閃っ!



レイピアでアサシンをとらえるっ!



「くっ、なかなか良い突きをするじゃないか……っ!?」



「甘く見ないで欲しいわね。わたくしは騎士団をまとめる地位ですわよっ! 武術は得意なのっ。覚悟なさいっ!」



そのレイピア――。



刃渡り1メートルを超える刃物。



それを華麗に突き込み、剣捌きを見せつけるヴィエッタっ!



1対1になれば、彼女は十分に戦えた。

















それどころか……っ!



「ほらほらっ! どうしたのっ」





ガキンっ! ガキンっ!





真紅が舞い、優雅に放たれる銀閃。



レイピアの基本移動。



真っ直ぐ敵を前にし、相手をリーチを生かして制御、そして突き込み殺すっ!



それを美しく連続させるヴィエッタ。



「クソっ!?」



次々と、乱れ打たれる鋭い切っ先っ!



それをなんとか避ける事に必死のアサシンっ!



完全に、リーチ差に制圧されているっ!

















「懐に……、入り込めないっ! クソがっ」



せいぜい20センチか30センチのナイフと、1メートルを超えるレイピア。



2つはあまりにも、射程が違い過ぎた。



アサシンが防戦一方となるっ!



するとヴィエッタの体が光輝き……。



「ふふっ、さかめくは風の契り。腕よ放たれよ、風になれーっ! 〝ウィンディショット(風舞牙)″」





バシュッ!





「くぅっ……!?」



ヴィエッタの突きが鋭さを増し、風圧が直線的に伸びるっ!













「来たれ炎の灰よ。我は爆ぜ、狂い、そして浄化する。〝ファイアスタンプ(炎刻牙)″」





シュボォっ!





「ぐぬっ!?」



その炎は浄化。



焼き払う力は右左にと、広範囲にまき散らされるっ!



次々と、まるで七色に変化する魔法。



どの威力も一級品だっ!



アサシンはドンドンと後ろに、気圧され続けていくっ!













「すっ、すげぇ……」



騎士団員が思わず声を上げたっ!



ヴィエッタは攻撃を繰り出す間ずっと、本当にずっと、呪文の詠唱を続けているのだ。



詠唱が終わればまた、詠唱。



ゆえにどの属性がくるのか、非常に読みづらい。



突きの途中で、そのレイピアに宿る属性が変わる事さえある。













「我らは貴族っ! あなた達庶民と違って、洗練さが違いましてよっ! 幼いころから神の寵愛である魔法、その教育を最重要とされますので」





ひらり……っと舞う、真紅のドレスっ!





貴族。



神のいる地においての、人間の支配者層。



彼らは常に、神に怯えて神経をとがらせる。















その昔――。



民に愛され、民を愛し。



共に栄えた国があった。



国は名をとどろかせ、王は才王と名をはせる。



……が、一人しか子を持てなかったという。



方や一方、民から重税を取り、ゴールデンアス・ホール(金色のケツ穴野郎)と呼ばれた領主がいた。



















その者は圧政と戦争を繰り返し、ついに、老いた才王の領地へとたどり着いた。



そしてこう叫んだという。



「その領主の子は、神のマナ子にあらずっ! 神に愛されぬものに、人の統治は無用」と。



そしてその城は一夜にして〝自国の民″に滅ぼされた。



たとえ領主が、民を幸せにする才人であろうと、なかろうと、関係ない。



神の寵愛無き、善良な領主より、民を酷使する、神の寵愛深き圧政者のほうが良いのだ。



そう、まことしやかに謳う――。



そんな神の地の逸話。















「これがっ、領主となる女の……。神への信心よっ!」



「ぐぅっ!?」



魔法戦でも地上戦でも圧勝だっ!



平民出のアサシンを、全くと言って良いほど寄せ付けない、貴族ヴィエッタっ!



「おお、勝てる……。勝てるぞっ!」



「くっ。小娘がっ!」



領主は強い。



下民とは段違いに。



これはもう、間違いない事実である。













「だがそれはあくまで、魔法に限ってだけさっ!」



大きく跳び下がったアサシンは、手元の死体をヴィエッタに投げつけるっ!



「ふんっ!」



あっという間に剣の風圧だけで、それを弾き飛ばすヴィエッタっ!



ピシャっ、と跳ねた血が、白く美しいヴィエッタの顔を汚してしまう。



だが気にも止めず、彼女は勝利を目指し、前に進むっ!













「そらそらっ!」



次々と投げ込まれる、仲間の死体。



それを、魔法の剣圧だけで弾き飛ばし……っ!



「遊びは終わりよっ! はぁああっ!」



「そうだなっ!」



笑ったアサシンはなんと……。



ヴィエッタの懐に堂々と、真ん前から飛び込んだっ!













その行動に、ヴィエッタの踏ん張る足に力が入り――っ!



「ふっ、勝……っ。えっっ!」





ドタンっ!





倒れたヴィエッタっ!



顔を上げたがもう遅いっ!



彼女の肢体に馬乗りになったアサシンに……っ。





ガスっガスっ! ガっ!





パンチの乱打を浴びたっ!



「ぐふっ!?」



ヴィエッタは鼻血を垂らし、髪を掴まれ、吊るされてしまうっ!















「ヴィエッタ様っ!?」



「足元の血に気づかなかったか? お嬢様」



乱暴に掴んだ貴族の娘に、笑いかけるアサシン。



ヴィエッタの靴と足元には、血がべったりと張り付いていた。



「腹を裂いた死体だ……。た~んと出たんだぞ? 汚い液体が」



笑いながら血の付いた指を、綺麗なヴィエッタの白い肌に這わせるアサシン。



血は非常に滑りやすい。



足元がふらつけば、闘いなどできる訳もなかった。



当然、アサシンの足元は、そういう物に対応する工夫がなされている。

















「くぅ……」



唇をかみしめるヴィエッタ。



すると笑いながらアサシンは、ヴィエッタのドレスの胸元を切り裂いたっ!





ビリィィイッ!





「きゃぁ!?」



「良い肌だ。確かに領主の娘は違うな……。くくくっ」



アサシンは、ヴィエッタの柔らかい胸をもみしだく。



「やめ……なさいっ!」



控え目の胸だ……。



下着の上から揉むとすぐに、ピンクがのぞく。



だがヴィエッタのピンチに、騎士団は動けない。



当主の娘が人質である限りは。













「それで? 領主はどこに? どうやって消えた」



「……」



ヴィエッタは目を背ける。



「早く言えっ! さもなくば……っ」





ビィっ!





アサシンが次は、ヴィエッタのスカートを切り裂くっ!



「くぅう」



多数の騎士団員がいる前でヴィエッタは、どんどんと剥き剥がされていくっ!



「どうだ? ん~? 言わねばこの程度では、済まないぞ。このまま売られたいのか? 私の知り合いに。いひひっ」



ヴィエッタの下着の中に、強引に指を突っ込んだアサシンっ!



そして、下半身の奥をおもちゃにするっ!











「くぅ……」



顔を赤らめ、ヴィエッタがうめくっ!



十数人の男の前。



卑猥な音を立て、秘部をもてあそばれる。



そうやって羞恥心を与えながらアサシンは、ヴィエッタを更に攻め続けたっ!











「その男は毎夜毎夜。実験を行うのだそうな。女は薬を飲まされ、その記憶がない。そして朝になって泣き叫ぶ。なぜだと思う~? 貴族様。記憶が無いんだ。なんで泣き叫ぶんだと思うよ? ほらぁ。考えてみろよ」





ぺちっ。ぺちっ。





ナイフでヴィエッタの頬を叩いて、顔を近づけたアサシン。



「ぅっ」



眼を背けるヴィエッタ。





「ふふっ。答えはな。そこに、昨日楽しんだ〝獣″が食事となって、お目見えされるんだよっ。昨日受け入れ楽しんだ、人じゃない物の姿がっ。そこにメシになって、置いてある。食わなきゃな~。飢えて死んじまうぅ。良い匂いなんだぜ~、それ。ふふっ」





「下賤めっ」



ヴィエッタが怒りの眼で、言葉を吐き捨てるっ!



おぞましい感覚が彼女を襲った、















「あんたも毎日毎日、自分を汚した獣を食べて、暮らしてみるか? 貴族様よ~っ? ときおり人間も混じるらしいぞ~。いひひひっ。その男はいつも、泣き叫ぶ女の顔で一発、楽しむのが目的だとさっ! くくくっ。」





「……」



気が狂うまで、そこからは逃れられないのだろうか?



アサシンの笑いが響く中、そのおぞましさに、身震いするヴィエッタ。









が、しかし……っ!



「はぁはぁ……っ。ふふっ。楽しいわね、確かに。それは、あなたの飼い主は、あなたと楽しんだ実験の後、食べてしまうという意味なのかしら……ね? 犬のアサシンさん」



笑いをアサシンに、のしをつけて返してやる娘。



するとあからさまに、アサシンの顔がゆがむっ!









「このアマぁっ!」



怒りにかられアサシンは、ヴィエッタの腹部を刺したっ!





ドスッ。





「ぐぅ……」



「貴様っ! 本当に売り払うぞ。それか……。そうさな、ここにいる騎士団どもに輪姦させるのも良いか。」



アサシンは笑いながら、後ろで見守るしかない騎士団達の顔を見やる。





「なぁお前たち? どうせ無能の騎士団だ、自分が助かるためにはなんだってするよな~? さっきの戦いでも、命を惜しまず、傭兵に加勢さえしていれば勝てただろうに、このザマ。勇気が出なかったので、お嬢様と一発ヤりました~。それもなかなか笑えるだろう? んっ?」





見下した目で、騎士団に笑いかけるアサシン。



ヴィエッタを人質に取られ、動けない騎士団は耐えるしかない。



彼らは唇をかむ。













その悔しさと、怒りの入り混じった顔が、アサシンの心に満足感を与えていた。



だが――。



「ふふっ……。でも……うぅ。遊んでいる余裕ありまして? あなたはどうやらオスに、相当興味があるのね。レナの言いつけを守らず、交尾相手探しに夢中かしら?」



痛みを耐え、笑いを返してやるヴィエッタっ!



「……」



「教えてあげますわ、忠犬さん。戦えない犬に、価値は無くてよ」











――。













静寂が訪れた。











「……なかなかどうして。それが貴族の教養って奴かい? 気に食わないね……」



アサシンの眼が、今まで以上に本気だ。



ヴィエッタはただ、喧嘩を売ったのではない。



恐怖の中彼女は、殺される事が分かっている人間には、殺し文句は意味がない、と暗示し。



そして、戦士としての矜持すらも、問い返したのだ。



「ふふっ……」



ヴィエッタのほくそ笑む顔に、アサシンが苦々しく唇を噛み……。











「だったら騎士団どもに聞こうか……。お前たちの領主、シャルドネは今どこにいる?」



「……」



強情なお嬢様に嫌気がさし、次の目標。



戦場を知らない騎士団に、ターゲットを移したアサシン。
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