婚約破棄は、まだですか?

緋田鞠

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 王宮の広間には既に、大勢の貴族が集まっている。
 その中で、特に目立っているのが、トマス・ラングリード男爵。
 東域騎士団を、代々預かっているイエスタ領の領主だ。
 人並み外れて体躯が大きい事もあるが、滅多に夜会に出ない男が出席している事で、人々の注目度が高い。
 ましてや、彼と共にいるのは、西域騎士団長ユーキタス公爵、北域騎士団長ディンゲン侯爵、南域騎士団長バクナン侯爵なのだ。
 五つの騎士団のうち、四つの騎士団長が一堂に会している時点で、今日の夜会の重要性が判ろうと言うもの。
「おぉ、揃っているな」
 ただ談笑しているだけなのに、見えない壁のような圧を感じて近づけない人々をよそに、にこやかに声を掛けたのは、禿頭に豊かな髭を持つ男性だった。
「メンフィス候」
 王都騎士団長メンフィス侯爵まで揃った事で、いよいよ、夜会と言うよりも模擬演習の様相を呈している。
「ユーキタス公、ご子息の婚約が決まったと聞いた。おめでとう」
「いや、婚約ではないのだ」
「ん?伝達が間違っていたか?」
「ジェレマイアは、どうしてもお相手と早く一緒になりたいらしくてね。陛下には、今日の夜会で婚姻のお許しを願う事になる」
「ほぉ?あれだけ、結婚したくない、とごねていたジェレマイアがなぁ」
 驚いた顔をするのは、ディンゲン侯爵。
 齢六十に手が届こうとしているディンゲン侯爵にとって、ジェレマイアは、生まれた頃より知っている利かん気の強い若造だ。
「で、お相手に選ばれた幸運なご令嬢は?」
 興味津々に問うのは、騎士と言うよりも文官の風情のバクナン侯爵。
 各騎士団の所在地は離れているとは言え、互いに行き来があるから、知らぬ仲ではない。
「まぁまぁ、心配しねぇでも、直ぐに判るさ。幸運なのは、ジェレマイアの方だってな」
 ニヤニヤと笑いながら、トマスが答える。
「ま、そりゃそうだな」
 メンフィス侯爵が答えると、彼等は即座に切り替え、互いの騎士団で討伐した魔獣の情報交換を始めた。
「先日、うちの騎士団はバシリスクと相対したらしい」
 ティボルトの言葉に、真剣な顔を返す他の騎士団長達。
 それだけ、バシリスクは危険度の高い魔獣だ。
「私は留守にしていた上に、ジェレマイアにバシリスク討伐の経験はない。ベテラン勢はおらず、まさに危機に陥ったのだがな…」
「それで、どうなったのだ?」
 バクナン侯爵の問いに答えたのは、トマス。
「うちのを、貸し出してたんだ」
「あぁ!東域では、蛇系はそこそこ出るものな」
「西域に限らず、これまで、経験のねぇ魔獣が出る頻度が上がってる。気を引き締めた方がいいぜ」
 トマスの言葉に、真剣な顔で頷き合う。
 その時だった。
 ざわり、と、大広間の空気が揺れ、五人はさり気なく入口へと視線を滑らせた。
 騎士と言う職業柄、常に周囲の動きを確認する習慣があるが、それにしても、大袈裟な反応だ。
「ジェレマイア様…?!」
 上がる悲鳴は、若い女性のものばかりではない。
 相変わらずのジェレマイアの人気に、苦笑したのはトマス。
 ティボルトは、息子がいつになく柔らかな笑みを浮かべて広間に足を踏み入れた事を微笑ましい顔で見ている。
 残りの三人の団長達は、首を傾げた。
「婚姻の報告と言う事は、エスコートしている女人が婚約者か」
「それにしても、随分と立派な…ん?黒髪?」
「そして緋色の瞳…おい!ラングリード!」
「あぁ?」
 ニヤニヤと笑うトマスの背を、バシバシと三人の団長が叩く。
「何だ、そう言う事かい!」
「そりゃあ、こんな珍しい場にも顔を出すよな」
「はっは!確かにこりゃあ、幸運なのはジェレマイアの方だ」
 エディスと直接会った事はなくとも、国王ナイジェルの許可を得て、魔獣討伐をしている奇特な娘だと言う事は、皆が知っている。
 いい年をした男達が、ふざけ合っている姿――一般人からすると、今にも喧嘩が始まりそうな勢いに見えていたのだが――と、女性をエスコートするジェレマイアの姿が、広間の視線を二分する。
 その空気に、このまま、平和な夜会としては終わらないだろうな、と、彼等五人は気を引き締めた。



 大広間に足を踏み入れる直前、エディスは緊張の余り、大きく深く息を吸い込んだ。
「大丈夫か…?」
 ジェレマイアの気遣うような視線に、小さく頷く。
 大丈夫。
 大丈夫。
 …いや、本当に大丈夫だろうか?
 ドレスで参加する夜会は、十年振り。
 今回は大丈夫!と、どれだけ言い聞かせようと、心の奥底で、「何故、ジェレマイアはあのような女装男を同伴しているのか」と言われるのでは、と、怯えている。
 自分の目には、いつもの二百パーセント増しで女性らしく見えるけれど、一般的な評価がどうなのか判らない。
 口を開くと、勝手に「回れ右!」と言ってしまいそうで、キュッと口元を引き締めた。
 背中を見せるだなんて、騎士の名折れになる。
 違う、これは戦略的撤退だ。
 ――…率直に言うと、逃げたい。
「東域以外の夜会には、出た事がなかったな?」
「はい…東域でも、その、ちょっと、特殊な環境でしたので」
 ぼやかしてはみたものの、エディスが男装して夜会に出席していた事を、ジェレマイアはトマスから聞いている。
「基本的に、俺に任せてくれればいい。東域と王都では、違う所もあるだろう」
「お願いします」
 ジェレマイアの言葉に、必要以上に入っていた肩の力が抜ける。
 そうだ、一人じゃない。
 隣には、ジェレマイアがいるのだ。
「まず、王族の皆様が大広間にいらっしゃるまでは、歓談の時間だ。軽食や飲み物もある」
「その辺りは、地方と同じですね。主催が陛下と言う辺りが大違いですが」
「今日の夜会は、高位貴族が婚約、婚姻を公表する場として設けられた、年二回のうちの一つだ」
 爵位の高い者程、婚姻関係による影響が大きいとして、貴族院による婚約申請審査は厳しくなる。
 ラングリード家は男爵家の為、これまで、わざわざ王都の夜会で婚約発表した事はない。
 だが、ユーキタス家は筆頭公爵家だ。
 全貴族家の注目を浴びる縁談だと言っていい。
 魔獣がいるせいで、情報伝達網が貧弱な国だからこそ、この夜会の意義は大きい。
 社交界全体に、婚約、婚姻を広く知らしめる為、各地域の顔役である貴族が一堂に集められる今回の夜会に間に合わせたくて、婚姻の許可を急いだのだ、と、ジェレマイアは気まずそうな顔で言った。
 今回を逃すと、次に公にする機会は、半年後になってしまう。
「なるほど…」 
「地竜の影響は、完全に収まったとは言えない。だから、ラングリード団長は次回でいいと言うお考えだったみたいなんだが…俺が、待てなかった」
「なる、ほど…?」
「エディス、貴方の事だからな?早く、貴方を俺のものだと公言したい、と言ってるんだ」
「ぇ、はい、すみません」
 余りにも自分に縁がなかったから、他人事のような顔をして聞いていた事に気づかれた。
 真っ直ぐなジェレマイアの言葉に、頬が熱くなる。
「全ての報告を終えた後に、ダンスの時間がある。ファーストダンスは、婚姻を公表した者達だ。今回、何組が参加しているのかは把握していないが」
「ダンス」
 エディスの顔が、青褪めた。
「あの。ジェレマイアは女性パートを、踊れますか?」
「…女性パートは、自信がないな…」
 しまった、盲点だった。
 夜会、と聞いた時点で、ダンスの可能性を何故、思い出さなかったのだろう。
「二人とも男性パートを踊ったら、どうなります?」
「どう…なるんだろうな…?同じ動きになるわけだから…足を踏む、か?」
「私達の反射神経なら、直前で躱せそうですけど」
「…取り敢えず、エディス。リードは任せてくれるか?」
 ジェレマイアに言われて、エディスはきょとんと目を丸くした。
「ダンスだからな?俺が、リードだ。エディスは、女性パートを踊ろうと考えずに、ただ、ついて来てくれればいい。そうすれば、何とか様になるだろう」
「…そうでした」
 そうか。
 今日のエディスは、ドレス姿だ。
 つい、いつもの習慣で、どうすれば、女性パートを踊れないジェレマイアをリード出来るか、考えてしまった。
 しかも、女性パートを忘れている事までバレている。
「…段々と、貴方の顔色を読むのが上手くなって来たぞ。割と常に、力技で解決しようとしてるな?」
「まぁ…私も、ラングリードなので…」
 気まずくなって目を逸らすと、ジェレマイアは目元を和らげた。
「ファーストダンスさえ済めば、後は歓談に徹していても構わない。恐らく、挨拶を希望する貴族が後を絶たないだろうからな。初めに言っておくが、好意的な者ばかりではない。自分の手駒を送り込みたいと考えていた者、自身が縁づきたいと思っていた者。彼等には、相当、敵意を向けられると覚悟して欲しい。ユーキタスの名には、それだけの力がある」
「…はい」
「だが、俺が、そして、ユーキタス家当主である父が望んだのは、他の誰でもない、貴方だ」
 ハッとして、エディスは顔を上げた。
「応対は俺がする。貴方は、俺の隣で、凜として顔を上げていて欲しい。それが、俺の力になるから」
 ジェレマイアは、次期ユーキタス公爵で、西域騎士団史上最年少の副団長。
 数多くの縁談を持ちかけられた、超優良物件だ。
 確実に、ご令嬢方の視線はエディスに突き刺さるだろう。
 けれど、彼と共に生きると、彼の帰る場所になると誓ったのであれば、微笑んで受け流さなくては。
 彼の信頼に、応えたい。
 エディスは力強く頷くと、遠い昔に教わった『令嬢らしい笑み』を頬に浮かべた。
 その横顔を確認して、ジェレマイアが足を踏み出した瞬間。
「ジェレマイア様…?!」
 小さく上がる悲鳴、そして、広間を満たすざわめき。
 楽団の音楽が明るく流れる中、ふざけ合っている父達の姿を見て、エディスの肩から力が抜けた。
「…父上達は、何をなさってるんだ」
「騎士団長の皆様は、仲がよろしいのですね」
「交流は、それなりにしている筈だからな」
 小声で言葉を交わしながら進む二人を、様々な色の視線が追ってくる。
 中でも、若い女性達の食い入るような視線に、ジェレマイアの腕に添えたエディスの指が、震えた。
「…エディス」
「大丈夫です。少し…思い出しただけなので」
 大丈夫。
 あの日とは、視線の意味合いが違う。
 エディスは一瞬、強く目を閉じると、記憶を振り払うようにして前を見据えた。
 彼女達の視線は、もう何年も女性をエスコートしていないジェレマイアが、エディスを同伴している事への嫉妬。
 エディスと言う存在に、驚いているだけだ。
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 彼女は、自分がジェレマイアの妻になると、疑った事はなかったのだろう。
 エレオノーラは、扇子で口元を隠すと、周囲のご令嬢にこう言って、溜息を吐いた。
「あの方がユーキタス家の求める妻の姿なら、わたくしでは相応しくないわね…」
 しおらしい姿に、取り巻きのご令嬢達が慰めの言葉を掛ける。
「あの方、随分とご立派な体格ですものね。わたくし、遠目では殿方がいらしたのかと勘違いしてしまいました。お恥ずかしいわ」
「王宮の夜会では、お見掛けしない色合いのドレスをお召しですのね。わたくしなどは、少しでも夜会に華を添えようと、華やかな色ばかり選んでしまって…」
「あちらは真珠ですかしら?実物を目にするのは初めてですが、控えめな輝きは、身に着ける方を選びそうですわ」
「あの方が次期ユーキタス公爵夫人となられるのでしたら、サンクリアーニの令嬢の条件も、『嫋やかで儚げ』から変わるかもしれませんわね」
 こちらに聞かせる事を意図した、しかし、面と向かって発されたのではない言葉。
 反論されたとしても、「そのようなつもりでは…」と言い逃れられるような言葉。
 騎士と違い剣を取らないご令嬢方には、言葉と言う武器がある。
 微笑と溜息で、周囲の人間の感情を、上手に操って見せる。
 そして、儚げな風情で相手の足を引っ張り、貶め合うのだ。
 彼女達は、自分達の手に出来る武器で、敵であるエディスを蹴落とそうとしている。
 そんな事すら知らなかった、十年前のあの日の事を、思い出す。
 記憶をすっかり失った、社交界デビューの夜会。
 エディスの似合わない白ドレスを見て、バタバタと倒れる令嬢達。
 あれは、今思うと、本当に昏倒した者ばかりではなかった筈だ。
 『嫋やかで儚げ』な令嬢らしく、倒れてみせたのだ。
 そして、彼女達を驚倒させたエディスに、憤怒の表情で詰め寄って来た保護者やパートナー達。
 容赦のない言葉のナイフで、エディスの心をグサグサと突き刺した。
 彼等もまた、自らの庇護者であるご令嬢に対して、『男らしく守ったぞ』と言うポーズを取っていたのだろう。
 エディスのエスコートだったアーサーが、どのように対処していたのかは、記憶にない。
 ただ、エディスが泣き疲れて眠るまで、誰かが頭を撫でてくれていたのは、覚えている。
 エディスだって。
 普段、ドレスを着ないからと言って、可愛いもの、綺麗なものが嫌いなわけではない。
 寧ろ、可愛いものや綺麗なものは、大好きだ。
 似合わない、と言われる事を十二分に理解させられたから、興味のない振りをしているだけで。
 あの時だって、滅多に着られないドレスだからこそ、期待値も高かった。
 可愛いドレスを着て、綺麗だと言って欲しかった。
 社交界デビューの夜会で、誰かと運命的な恋に落ちてみたかった。
 父や兄弟達が、エディスは母そっくりだと言ってくれる褒め言葉を、鵜呑みにしていたのだろう。
 心の片隅に、期待が全くなかったわけでは、なかった。
 ――…けれど、夜会に出ていた者達は、エディスに何を言ってもいい、何をしてもいい、と判断した。
 見た目が、嫋やかで儚げな令嬢らしくないから。
 その辺りの男性よりも、ずっと体格がよく健康的なエディスを、やっかむ者もいたのだろうか。
 彼等は、言葉を尽くしてエディスを傷つけ、魔獣を見るような目で嘲った。
 一人の傷つきやすい年頃の令嬢ではなく、見世物小屋で人々を脅かす出し物として、見た。
 他の白ドレスの令嬢と同じ、十八の乙女だったのに。
 令嬢達は自分の儚さをアピールする材料として、男性陣は自分の強さをアピールする材料として、エディスを使ったのだ。
 そんな背景を知らず、生まれて初めて女性としての尊厳を傷つけられたエディスは、あの日以来、ずっと、彼女達と同じ土俵に立とうとしなかった。
 自ら背を向け、逃げて来た。
 それは、エディスの弱さ。
 十年経って、『男装の騎士様』の姿は、エディスの柔い心を守る鎧だった、と、初めて気が付いた。
 剣を取る人であるエディスにとって、彼女達の戦場は、余りにも勝手が違っていた。
 そして、今回も。
 十年の月日が経って、これが彼女達なりの戦法である事は理解した。
 同時に、そのような戦法しか取れない彼女達に、どう対抗すればいいのか、判らずにいる。
 エディスにとって女性は、庇護の対象なのだから。
「…聞くに堪えない」
 エレオノーラ達のあてこするような会話に、今にも文句を言いたそうなジェレマイアの腕を、軽く引いて留める。
「所謂、女の戦いと言うものかと」
「男が口を挟むのは不調法なんだろう?だったら、男のやり方で対抗する」
 そう言うと、迷いのない足取りで、遠巻きにされている団長五人へと近づいていく。
「ご無沙汰しております」
「おぉ、ジェレマイア!いい知らせを聞いて嬉しいぞ」
 ディンゲン侯爵が、微笑んで片手を上げて出迎えた。
「いやぁ、しかし、迫力ある美人だな。黒ドレスとは珍しいが、よく似合ってる」
「おや、王宮で黒は不謹慎でしょうか?それは困りました。彼女に似合うものを、としか考えておりませんでしたので」
「珍しいってだけで、いけないなんて事はないさ。ただ、着る人間を選ぶってだけだ。何だ?ジェレマイアが見立てたのか?」
「えぇ。彼女を飾るのは、楽しかったですよ」
 騎士は、皆、声がよく通る。
 ディンゲン侯爵とジェレマイアの会話に、それとなく耳を聳てていた人々は、ジェレマイアが贈ったドレスと聞いて、ちら、とエレオノーラ達を見た。
「これはまた、立派な真珠だね。品がいい。あぁ、ジェレマイアと揃えたのかい?」
 バクナン侯爵が、興味深げにジェレマイアの服の袖に目を遣ると、
「えぇ」
と、彼は袖口を軽く掲げた。
「彼女が、私の髪を真珠になぞらえてくれたもので、アコーダ産のものを取り寄せました」
 サンクリアーニで入手出来る最上級の真珠の産地に、ジェレマイアの本気を感じた人々が、哀れむようにエレオノーラ達を眺める。
 これは、虎の尾を踏んでしまったようだ。
 エレオノーラは、何も聞こえていない素振りをしながらも、その手が怒りの余り震えている事を、隠せていない。
 直接、エレオノーラ達に異議を申し立てるのではなく、普通の会話に織り込んで相手の主張をへし折るやり方に、場の空気が、ジェレマイアとエディスに傾いて来た事を感じて、エディスはホッと息を吐いた。
 自分で思っていたよりも、彼女達の言葉は、心の奥深い所に刺さっていたらしい。
「有難うございます」
 エディスの礼に、ジェレマイアは口の端を上げる。
「何の事だ?俺はただ、歓談しているだけだ」
「…私には、社交界で戦う為の準備が、出来ていません。助けて、貰えますか?」
 隣に立つジェレマイアにだけ聞こえるよう、エディスが囁くと、ジェレマイアは即座に頷いた。
「勿論だ。貴方にはこれまで、たくさん助けて貰った。互いに出来る事をする。それが、夫婦だろう?」
 腕に添えられたエディスの手の甲を、優しく撫でる。
「社交界での貴方の背中は、俺が守る」
 こくり、と、小さくエディスが頷くと、ジェレマイアは満足そうに笑った。
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