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裁判官と陪審員達の話し合いのため、一時間の休廷が宣言された。
リタと二人、傍聴席の人々の好奇の視線から逃れようと、証人達しか入れない控室へと移動する。
今回、証言のために招いた証人は十人。
初め、フレマイア家の関係者だから、とリタを色眼鏡で見ていた人々の目には今、同情の色が濃く浮かんでいる。
「少し、お話をしてもよろしいでしょうか」
声を掛けて来たのは、ヒューゴ・ガルトンだった。
「はい」
リタが返事をすると、ヒューゴは目を潤ませて微笑んだ。
「あぁ……髪色が変わるだけで、こんなにも印象が変わるのですね。黒髪ですと、目元と唇の形が姉にそっくりなのがわかります」
「……そう、なのですか?」
アリシア・ガルトンがリタの生みの母だという証拠は、結局、見つける事ができなかった。
アリシアが騎士団を退団した時期。
ずっと慕っていた人に求婚されたという手紙。
フレマイア邸の敷地から見つかった遺骨。
それだけでは、リタとの血縁関係の証にはならない。
リタを取り上げたであろう産婆もまた、遺骨となって見つかっている。
フレマイア夫妻にもアシュトンにも似ていない、と何も知らなかった頃に思った事があるのは事実だが、生前のアリシアを知らない俺には、なんとも言えない。
しかし、ヒューゴは、リタとアリシアの顔立ちが似ている、という。
姪だと、確信を持っているのか。
「我が家は地方の男爵家で、なんの力もありません。しかし、今後、リタ嬢を全面的に支持する事を誓わせてください。……姉は、人様のものを欲した罰が当たったのだと思い切れますが、貴女には、なんの罪もないのですから」
「……」
リタは、返事に戸惑っている。
生みの母と思われる人の、弟。
おそらく、過去も含めて初めて、親族という存在に会ったのだろう。
距離感を測りかねているリタに代わって、ヒューゴに返答する。
「ありがとう、ガルトン殿。知っての通り、リタは救いを求める人々に、手を差し伸べ続けている。貴殿も、己の手の届く範囲で構わないから、目を配ってくれると嬉しい」
「かしこまりました」
一時間の予定が伸びて、二時間の休廷後。
改めて議場に入場すると、フレマイア侯爵は後ろ手に手枷を嵌められた状態で、さらに椅子に拘束されていた。
よほど、暴れたのか、素肌の見える部分に赤い筋がいくつも残され、白目が赤く血走っている。
フレマイア夫人の姿はなく、アシュトンは拘束こそされていないものの、蒼白な顔で父親の背後に立っていた。
「判決を下す」
ウェルシュ公爵が、厳しい顔つきでフレマイア侯爵に告げる。
「ハドリー・フレマイア、シェリル・フレマイアは、貴族籍剥奪のうえで死刑」
フレマイア侯爵は、三十八人の殺害を指示した罪で。
フレマイア夫人は、夫の罪に気づいていながら、息子と己を守るために沈黙を選び、多数の人々を死に至らしめた罪で。
「アシュトン・フレマイアは、当時まだ幼く、自らの意思で罪に関与したわけではない事から、情状酌量して減罪する。フレマイア侯爵家は爵位を剥奪し、領地を没収。また、騎士団からは除名。己の才覚のみでやり直すように」
死刑は免れたものの、今後、アシュトンが社交界に戻れる日は来ない。
高位貴族に生まれ、身の回りのすべてを使用人に頼って来たアシュトンが、平民として生きていくには、大きな困難が伴うだろう。
彼を真に友と思う者がいれば、生きる術を身につけるために、手を差し伸べるかもしれない。
交流のあった大勢の令嬢達の中で、平民となったアシュトンであっても、支えたいと思う者がいれば、家族も増えるかもしれない。
……彼の父親の威光を借りたいとの下心なく、純粋にアシュトンに親愛を抱いていた者が、いればいいのだが。
力が抜けたアシュトンが、ぺたん、と床に座り込んだ。
両親の死罪にか、己の行く末にか、大きな衝撃を受けて茫然としている。
額に血管が浮かび上がるほどの形相でリタを睨みつけていたフレマイア侯爵が、ぎりぎりと歯を噛み締めながら、吐き捨てた。
「これは、正当防衛だったのです。愛する妻と子を守るための、当然の権利を行使したまで。誰しも、私の立場に立ったならば、同じ事をした筈だ。それなのに、寄ってたかって、私のした事を間違いだと声高に責め立てるとは!」
「正当防衛、なぁ」
ずっと黙って裁判を傍聴していた父が、低い声で言う。
「我が子を守りたい、という気持ちは私にもよくわかる。だが、それは他人の人生を踏みにじってよいという事ではない」
「他人? えぇ、そうです、他人なのですよ。私にとって大切なのは、己の家族のみ。家族を守るためならば、何を踏みにじろうが関係ない。私は、私の望む道筋に家族の未来が添うよう、選択しただけだ!」
――かつての、俺を思い出す。
周囲の人間を『人』と捉えず、『駒』とだけ見ていた俺を。
フレマイア侯爵もまた、家族のために、駒を動かしていただけのつもりなのだ。
「家族。家族か。リタ嬢は、そなたの血を分けた娘であろう。それなのに、家族ではないと申すか」
「あれは、愛する我が子のために魔力が多いだけの女に産ませた、ただの『材料』。家族にはなりえません。私の家族は、シェリルとアシュトンだけなのですから」
平気でリタと彼女の生母を貶めるフレマイア侯爵に、冷たい怒りが込み上げる。
ぐっと握り締めた拳は、リタの小さな手に包み込まれた。
「リタ……?」
「よいのです、ルシアン様。そういう人である事は、とうにわかっておりましたから」
繰り返しの人生の中で、父親に傷つけられ続けたリタ。
彼女はとうに、父親を切り捨てていた。
「とはいえ、戸籍上はあれもフレマイアを名乗る娘。連座でシェリルやアシュトンにも罪を償えというならば、あの娘はどうなるのですか。ルシアン殿下の婚約者だから、と見逃してよいものではないでしょう」
「ご安心を」
ロブが、にこやかに告げる。
「リタは、私の妹です。フレマイア家とは、なんの関係もありません」
「何⁉ そんな事ができる筈が……!」
「貴方はリタを、家族と思っていないのでしょう? ならば、何が問題だというのです? リタは、デイヴィス家の娘になって、すでに一年以上。……ご存知ない時点で、貴方方とリタの縁は、とうに切れているのですよ」
「……っ!」
フレマイア侯爵は、真っ赤な顔でぷるぷると震えながら、なおも言い募った。
「私は、クリフォード殿下の最大の支持者。フレマイア家が斃れたとなれば、クリフォード殿下もともに斃れるぞ……!」
「それもまた、無用な心配です。貴方の支持などなくとも、クリフォード殿下は王太子として立派に責務を果たしていらっしゃる。何よりも、」
ロブが、俺の方を見上げて微笑む。
「ルシアン殿下が、大きな支えとなるでしょうから」
(あぁ、支えるさ)
俺にとって、王子に生まれた事は負担でしかなかった。
望まれたけれど愛されずに生まれた、と卑屈な思いで、兄を引き立てるためだけに生きて来た俺の意識を、自らの選択でよりよい未来を掴むために生きようと、変えてくれたのは、リタだ。
彼女は、誰よりも苛酷な状況の中、誰かに復讐する事や、誰かを踏みにじって自分だけ生き延びようとするのではなく、誰も傷つけない選択をしてきた。
そんなリタが、笑って過ごせる国を作るために必要な力。
今回、様々な活動を通して、王子だからこそ、事が早く進むのだと身を持って理解した事で、俺は、王族に生まれた自分を初めて誇りに思えるようになった。
「……ハドリー」
父が、重々しくフレマイア侯爵の名を呼ぶ。
年齢から見て、彼は父の学友の一人だったのだろう。
リタとの婚約が簡単に認められたのも、父とフレマイア侯爵に親交があったからなのかもしれない。
「国を預かる者として、我が国のこれまでの魔力偏重主義を、謝罪する。そなたも苦しんだのだな」
頭は下げていないが、明確な謝罪の言葉に、議場は、しん、と静まり返った。
王である父は、謝罪すらも容易にしてはならない立場だ。
それは、これまでの国の、王の在り方を否定する事になるのだから。
こくり、と誰かが唾を飲み込む音が、やけに鮮明に議場に響く。
「だが、一人の親として言おう。真にそなたが家族を思っていたのならば、すべき事は、事実を隠蔽し、息子に重い罪を背負わせる事ではなかった。社会に我が子の存在を伝え、魔力が少なくとも立派に育っていると、幸せに暮らしていると、愛されていると、人々の意識を変えるために働きかけるべきだった。……今、リタ嬢がしているのは、そういう活動だ。そして、少しずつではあるが、確かに人々の意識は変わりつつある。変えられるのだよ、存在価値というものは」
フレマイア侯爵が、父から目を逸らす。
その視線の先にいたリタの黒髪が、根本からじょじょに白へと変わっていった。
審議が長引いたせいで、復元魔法の効果が切れたのだ。
フレマイア侯爵が、リタに一体、何をしたのか。
議場の人々は、否が応でも理解する。
「そなたが妻子を愛するように、そなたが手に掛けた人々にもまた、愛する家族がいた。『人』が『人』である事を見失ってしまえば、己もまた、『人』ではなくなる。そして、『人』ではないそなたを、処罰しないわけにはいかない。……刑の執行まで、己の罪と、向き合って欲しい」
最後に、友に送る言葉。
フレマイア侯爵の肩が、揺れる。
「あぁぁぁぁぁ……っ‼」
慟哭とともに引き立てられる背中を、リタは静かに見ていた。
リタと二人、傍聴席の人々の好奇の視線から逃れようと、証人達しか入れない控室へと移動する。
今回、証言のために招いた証人は十人。
初め、フレマイア家の関係者だから、とリタを色眼鏡で見ていた人々の目には今、同情の色が濃く浮かんでいる。
「少し、お話をしてもよろしいでしょうか」
声を掛けて来たのは、ヒューゴ・ガルトンだった。
「はい」
リタが返事をすると、ヒューゴは目を潤ませて微笑んだ。
「あぁ……髪色が変わるだけで、こんなにも印象が変わるのですね。黒髪ですと、目元と唇の形が姉にそっくりなのがわかります」
「……そう、なのですか?」
アリシア・ガルトンがリタの生みの母だという証拠は、結局、見つける事ができなかった。
アリシアが騎士団を退団した時期。
ずっと慕っていた人に求婚されたという手紙。
フレマイア邸の敷地から見つかった遺骨。
それだけでは、リタとの血縁関係の証にはならない。
リタを取り上げたであろう産婆もまた、遺骨となって見つかっている。
フレマイア夫妻にもアシュトンにも似ていない、と何も知らなかった頃に思った事があるのは事実だが、生前のアリシアを知らない俺には、なんとも言えない。
しかし、ヒューゴは、リタとアリシアの顔立ちが似ている、という。
姪だと、確信を持っているのか。
「我が家は地方の男爵家で、なんの力もありません。しかし、今後、リタ嬢を全面的に支持する事を誓わせてください。……姉は、人様のものを欲した罰が当たったのだと思い切れますが、貴女には、なんの罪もないのですから」
「……」
リタは、返事に戸惑っている。
生みの母と思われる人の、弟。
おそらく、過去も含めて初めて、親族という存在に会ったのだろう。
距離感を測りかねているリタに代わって、ヒューゴに返答する。
「ありがとう、ガルトン殿。知っての通り、リタは救いを求める人々に、手を差し伸べ続けている。貴殿も、己の手の届く範囲で構わないから、目を配ってくれると嬉しい」
「かしこまりました」
一時間の予定が伸びて、二時間の休廷後。
改めて議場に入場すると、フレマイア侯爵は後ろ手に手枷を嵌められた状態で、さらに椅子に拘束されていた。
よほど、暴れたのか、素肌の見える部分に赤い筋がいくつも残され、白目が赤く血走っている。
フレマイア夫人の姿はなく、アシュトンは拘束こそされていないものの、蒼白な顔で父親の背後に立っていた。
「判決を下す」
ウェルシュ公爵が、厳しい顔つきでフレマイア侯爵に告げる。
「ハドリー・フレマイア、シェリル・フレマイアは、貴族籍剥奪のうえで死刑」
フレマイア侯爵は、三十八人の殺害を指示した罪で。
フレマイア夫人は、夫の罪に気づいていながら、息子と己を守るために沈黙を選び、多数の人々を死に至らしめた罪で。
「アシュトン・フレマイアは、当時まだ幼く、自らの意思で罪に関与したわけではない事から、情状酌量して減罪する。フレマイア侯爵家は爵位を剥奪し、領地を没収。また、騎士団からは除名。己の才覚のみでやり直すように」
死刑は免れたものの、今後、アシュトンが社交界に戻れる日は来ない。
高位貴族に生まれ、身の回りのすべてを使用人に頼って来たアシュトンが、平民として生きていくには、大きな困難が伴うだろう。
彼を真に友と思う者がいれば、生きる術を身につけるために、手を差し伸べるかもしれない。
交流のあった大勢の令嬢達の中で、平民となったアシュトンであっても、支えたいと思う者がいれば、家族も増えるかもしれない。
……彼の父親の威光を借りたいとの下心なく、純粋にアシュトンに親愛を抱いていた者が、いればいいのだが。
力が抜けたアシュトンが、ぺたん、と床に座り込んだ。
両親の死罪にか、己の行く末にか、大きな衝撃を受けて茫然としている。
額に血管が浮かび上がるほどの形相でリタを睨みつけていたフレマイア侯爵が、ぎりぎりと歯を噛み締めながら、吐き捨てた。
「これは、正当防衛だったのです。愛する妻と子を守るための、当然の権利を行使したまで。誰しも、私の立場に立ったならば、同じ事をした筈だ。それなのに、寄ってたかって、私のした事を間違いだと声高に責め立てるとは!」
「正当防衛、なぁ」
ずっと黙って裁判を傍聴していた父が、低い声で言う。
「我が子を守りたい、という気持ちは私にもよくわかる。だが、それは他人の人生を踏みにじってよいという事ではない」
「他人? えぇ、そうです、他人なのですよ。私にとって大切なのは、己の家族のみ。家族を守るためならば、何を踏みにじろうが関係ない。私は、私の望む道筋に家族の未来が添うよう、選択しただけだ!」
――かつての、俺を思い出す。
周囲の人間を『人』と捉えず、『駒』とだけ見ていた俺を。
フレマイア侯爵もまた、家族のために、駒を動かしていただけのつもりなのだ。
「家族。家族か。リタ嬢は、そなたの血を分けた娘であろう。それなのに、家族ではないと申すか」
「あれは、愛する我が子のために魔力が多いだけの女に産ませた、ただの『材料』。家族にはなりえません。私の家族は、シェリルとアシュトンだけなのですから」
平気でリタと彼女の生母を貶めるフレマイア侯爵に、冷たい怒りが込み上げる。
ぐっと握り締めた拳は、リタの小さな手に包み込まれた。
「リタ……?」
「よいのです、ルシアン様。そういう人である事は、とうにわかっておりましたから」
繰り返しの人生の中で、父親に傷つけられ続けたリタ。
彼女はとうに、父親を切り捨てていた。
「とはいえ、戸籍上はあれもフレマイアを名乗る娘。連座でシェリルやアシュトンにも罪を償えというならば、あの娘はどうなるのですか。ルシアン殿下の婚約者だから、と見逃してよいものではないでしょう」
「ご安心を」
ロブが、にこやかに告げる。
「リタは、私の妹です。フレマイア家とは、なんの関係もありません」
「何⁉ そんな事ができる筈が……!」
「貴方はリタを、家族と思っていないのでしょう? ならば、何が問題だというのです? リタは、デイヴィス家の娘になって、すでに一年以上。……ご存知ない時点で、貴方方とリタの縁は、とうに切れているのですよ」
「……っ!」
フレマイア侯爵は、真っ赤な顔でぷるぷると震えながら、なおも言い募った。
「私は、クリフォード殿下の最大の支持者。フレマイア家が斃れたとなれば、クリフォード殿下もともに斃れるぞ……!」
「それもまた、無用な心配です。貴方の支持などなくとも、クリフォード殿下は王太子として立派に責務を果たしていらっしゃる。何よりも、」
ロブが、俺の方を見上げて微笑む。
「ルシアン殿下が、大きな支えとなるでしょうから」
(あぁ、支えるさ)
俺にとって、王子に生まれた事は負担でしかなかった。
望まれたけれど愛されずに生まれた、と卑屈な思いで、兄を引き立てるためだけに生きて来た俺の意識を、自らの選択でよりよい未来を掴むために生きようと、変えてくれたのは、リタだ。
彼女は、誰よりも苛酷な状況の中、誰かに復讐する事や、誰かを踏みにじって自分だけ生き延びようとするのではなく、誰も傷つけない選択をしてきた。
そんなリタが、笑って過ごせる国を作るために必要な力。
今回、様々な活動を通して、王子だからこそ、事が早く進むのだと身を持って理解した事で、俺は、王族に生まれた自分を初めて誇りに思えるようになった。
「……ハドリー」
父が、重々しくフレマイア侯爵の名を呼ぶ。
年齢から見て、彼は父の学友の一人だったのだろう。
リタとの婚約が簡単に認められたのも、父とフレマイア侯爵に親交があったからなのかもしれない。
「国を預かる者として、我が国のこれまでの魔力偏重主義を、謝罪する。そなたも苦しんだのだな」
頭は下げていないが、明確な謝罪の言葉に、議場は、しん、と静まり返った。
王である父は、謝罪すらも容易にしてはならない立場だ。
それは、これまでの国の、王の在り方を否定する事になるのだから。
こくり、と誰かが唾を飲み込む音が、やけに鮮明に議場に響く。
「だが、一人の親として言おう。真にそなたが家族を思っていたのならば、すべき事は、事実を隠蔽し、息子に重い罪を背負わせる事ではなかった。社会に我が子の存在を伝え、魔力が少なくとも立派に育っていると、幸せに暮らしていると、愛されていると、人々の意識を変えるために働きかけるべきだった。……今、リタ嬢がしているのは、そういう活動だ。そして、少しずつではあるが、確かに人々の意識は変わりつつある。変えられるのだよ、存在価値というものは」
フレマイア侯爵が、父から目を逸らす。
その視線の先にいたリタの黒髪が、根本からじょじょに白へと変わっていった。
審議が長引いたせいで、復元魔法の効果が切れたのだ。
フレマイア侯爵が、リタに一体、何をしたのか。
議場の人々は、否が応でも理解する。
「そなたが妻子を愛するように、そなたが手に掛けた人々にもまた、愛する家族がいた。『人』が『人』である事を見失ってしまえば、己もまた、『人』ではなくなる。そして、『人』ではないそなたを、処罰しないわけにはいかない。……刑の執行まで、己の罪と、向き合って欲しい」
最後に、友に送る言葉。
フレマイア侯爵の肩が、揺れる。
「あぁぁぁぁぁ……っ‼」
慟哭とともに引き立てられる背中を、リタは静かに見ていた。
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