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俺――ルシアン・エバーレストは、シャルイナ王国の第二王子として生まれた。
父は、国王ブラッド。
母は、側妃コーデリア。
六歳上に、異母兄クリフォードがいる。
兄上の生母である正妃アラーナ様は、隣国ラーメルの第三王女だった。
シャルイナ王家で側妃を娶った王は、少ない。
正妃との間に子を授からなかったであるとか、政治上の必要に迫られて、という理由がない限り、後継者争いの大きな火種となるからだ。
そのため、隣国の王女が正妃でシャルイナの公爵令嬢が側妃と聞くと、何も知らない人々は、アラーナ様とは政略結婚、母とは恋愛結婚と思うらしい。
国と国の関係で拒めぬ縁談だったのだろう、愛する人を手離せず側妃としたのだろう、と。
実際には、父とアラーナ様が恋愛結婚で、母が強引に婚姻に持ち込んだ政略結婚だ。
父は、王位継承権第二位の第二王子だったアカデミー在学時代、留学していたアラーナ様と出会い、恋に落ちた。
二人は婚約を結び、王位継承権第一位の第一王子アーロン殿下に男児が生まれたら、臣籍降下する予定だった。
ところが。
アーロン殿下――俺にとっての伯父上が事故に遭った事で、状況が変わる。
伯父上は一命を取り留めたものの、右足を失ったうえに、下半身の運動機能が麻痺してしまった。
王宮の治癒魔法師達が総員で治療に当たったが、元の機能を取り戻す事は叶わなかった。
治癒魔法は万能ではない。
人の体の回復機能を高めるだけで、失われた肉体を復元する事はできないのだ。
また、伯父上は神経を損傷した事で不定期に訪れる頭痛に苦しめられるようになり、王位の重責を担えない、何よりも、後継者を授かるかわからない、として、王位継承権の返上を決断された。
結果として父の継承順位が繰り上がり、父が王太子に、アラーナ様が王太子妃になると決定したのだが、それをよしとしない者達がいた。
――そのうちの一人が、俺の母コーデリアだ。
母は元々、アーロン伯父上の婚約者だった。
母と第一王子の婚約を結んだ祖父リーストーム公爵と彼を支持するいわば貴族派は、アーロン伯父上がリーストーム公爵家にも議会にも相談せず、自主的に王位継承権を返上された事に難癖をつけ、
「未来の王妃になるべく励んで来たコーデリアの努力を無になさるおつもりか」
と、母を妃として迎え入れるよう王家に迫った。
父に婚約者がいなければ、それもまた、一つの方法だったとは思う。
母が王妃教育に決して少なくはない時間を費やして来たのは事実なのだから、これまでの努力の見返りを、と求める気持ちもわからなくもない。
けれど、父には既にアラーナ様という婚約者がいた。
アラーナ様は、小国とはいえラーメルの王女。
母は、公爵令嬢とはいえ、一介の貴族に過ぎない。
『アラーナが、正妃だ。名ばかりの側妃としてならば、娶ってやってもよい』
政略目的の婚約者ではあったものの、伯父上と仲睦まじい恋人に見えていた母。
事故後、回復が見込めないとわかるや否や、ぱたりと病床を訪れなくなった母。
別れの言葉すら伯父上に直接告げる事なく、書面で一方的に婚約を破棄した母。
残酷な言い方になるけれど、もしも、伯父上が事故で儚くなられていたのならば、次の婚約者探しに即座に動いた母の行動も致し方ないと思えたのかもしれない。
しかし、一生後遺症に苦しむアーロン伯父上を即座に見捨てた母とリーストーム公爵家を、伯父上を慕っていた父が許す筈もなく、母のプライドを傷つけるために突きつけた言葉。
だが、父の予想に反して、母は頷いた。
アカデミーの卒業と同時に、父とアラーナ様は結婚。
その一年後、第一王子であるクリフォード兄上が生まれる。
さらに二年後、臣籍降下しレスティアン公爵となったアーロン伯父上が、事故後、献身的に伯父上を支え続けた子爵令嬢と結婚。
伯父上が幸福な家庭を築いた事を確認してから、ようやく、父は母を側妃に召し上げた。
側妃といっても、王子妃としての公務はすべてアラーナ様が行い、母はただ、離宮に住まっているというだけ。
父の訪れもなく、社交界に出る事もなく、望んだ「王族」の名だけが与えられた。
……それなのに、本来なら生まれる筈もなかった俺がここにいるのは、アラーナ様が第二子の妊娠時に大病を患い、子を失ったばかりか、新たな子を望めない体になってしまったからだ。
「お子がクリフォード殿下お一人では、心許ありません」
「さよう。幼子は、思ってもみない事で命を落としますからなぁ」
「こんな時のための側妃制度でしょう」
「おぉ、それならば、ブレッド殿下にはすでに側妃がおられるではありませんか!」
こんな調子で貴族派の者達は、クリフォード兄上の命を盾に、母に子を授ける事を求めた。
そして、兄上の安全を危ぶんだ父は、アラーナ様と相談のうえ、母との間に俺を儲けたのだ。
もちろん、後継となる男児が二人、それも母親が違えば、後継者争いが過熱する事は明らかだ。
けれど、目の前の危険を回避するためには、二分の一の確率で女児が産まれる可能性に賭けるしかなかったらしい。
ここからは、俺が生まれた後の話だ。
父の子と偽って、貴族派の誰ぞの血を引く子供を孕んだのではないかと疑われていた母は、王族特有の金瞳を持つ俺を産んだ。
しかし、母は、生まれた俺に興味を持たなかった。
なぜなら、明らかに父の血を引く魔力の高い子を産んでも、父が母を顧みる事も、俺を後継者に指名する事もなかったからだ。
脅迫されたからとはいえ、我が子を産んだ妃に対して随分と冷たいと思うかもしれないが、それほどに、父と母の間には深く広い溝があるという事に他ならない。
我が母ながら浅慮だと思うのは、正妃の座を奪えないなら役に立たない、と俺の育児を放棄した事だ。
そもそも、我が事しか考えられない人なので、血の繋がった子とはいえ、他人の面倒を見るのに向いていないのだろう。
生母から見捨てられた俺を育ててくれたのは、アラーナ様だった。
クリフォード兄上も、俺の事を弟として可愛がってくれた。
父もまた、母を憎む気持ちと俺とは切り離し、息子として接してくれている。
正妃の子である兄上との差は当然あるだろうけれど、それは、嫡男とスペアに対する差とたいして変わるものではない。
少しばかり歪で、しかし、幸福な幼少期。
そんな生活は、俺が十二歳の時に変わってしまった。
それまでも水面下で争っていた二つの派閥の軋轢が、目に見えるほどに大きくなったのは、アラーナ様の死と、父の王位継承が重なった事がきっかけだった。
「クリフォードがアカデミーを卒業したら、立太子式を執り行う」
「お待ちください! 王太子となる資格は、ルシアン殿下にもございます! クリフォード殿下とルシアン殿下はお年が離れていらっしゃいます。どちらの殿下が王太子の座に相応しいか、今、この時に決定なさるのは、早計に過ぎましょう。どうか、ルシアン殿下がアカデミーを卒業されるまで、王太子の座は保留になさってください!」
隣国の王族の血を引くとはいえ、最大の後ろ盾であるアラーナ様を喪った兄上と、国内最大派閥を率いるリーストーム公爵家の血筋である俺。
魔力量をさほど重視しないラーメル王国王女の子ゆえか、アラーナ様譲りの鮮やかな緑の髪だけれど魔力量としては上の下の兄上と、歴代王族の中でも類を見ない高い魔力、それも建国王と同じく水属性を持つ俺。
条件だけを見れば、他国王族出身の正妃の子であり第一王子である兄上と、国内最大派閥を率いるリーストーム公爵家が背後にいる俺は、支持が拮抗していた。
それまでは、俺を養育していたのが正妃アラーナ様だったために、俺を支持する者達は大きな声をあげる事ができなかったのだが、アラーナ様の薨去に伴い、彼らが世論の幅を利かせるようになってきたのだ。
父の一存で王太子を決定できるほどには、継いだばかりの王権が強くない。
しかし、俺自身に、敬愛する兄上と競うつもりはない。
魔力量こそ兄上を上回っているとしても、兄上ほど、統治者に向いている方はいない。
俺は、今後も兄上を支えていきたいのだ。
「クリフォード殿下と争わないよう、幼い頃から洗脳していたのだ!」
と、母方の祖父であるリーストーム公爵に言われた事があるが、第二王子という立場だけを良いように使おうとする者達に何を言われても、心に響くものではない。
洗脳だろうが、誘導だろうが、俺自身が満足しているのだから、何も問題はないのだ。
だが、どれだけ言葉を尽くそうと、俺を王太子にと支持する者達は聞く耳など持たなかった。
彼らは本気で俺が王太子に相応しいと思っているのではなく、王権とより間近に繋がる事で、己の利益を得たいと考えているだけなのだから。
だから。
幼い子どもなりに考えた。
俺は自分自身の手で、俺が王太子に、ひいては王に相応しくないのだと、王位に欲を見せていないのだと、示さなくてはならない。
王の隣には、その座に相応しい妃が必要だ。
魔力量が多く、家格が高く、淑女と呼ばれるに相応しい妃が。
ならば、俺はその条件を満たさない令嬢を婚約者に据えよう。
誰の目にも、俺が王位に相応しくないのだとわかるように。
俺が、兄上を支持しているのだと伝わるように。
しかし、あまりにも条件を満たしていなければ、そもそも婚約が認められないし、婚約者より上位の条件を持つ家門から横槍を入れられる。
悩んでいる俺に声を掛けたのが、祖父と敵対するゆえに兄上を支持しているフレマイア侯爵だった。
『不憫な娘なのです』
『白の者として生まれた娘です。侯爵家の爵位を持ってしても、より高い魔力を持つ娘を娶りたい高位貴族の家に嫁ぐ事は不可能でございましょう。下位貴族すら、諸手を挙げて歓迎する事はあり得ない。それでも、私には娘の命を奪う事など、できなかったのです。嫡男であるアシュトンも月が満ちずに生まれ、当初は魔導器官が不完全な状態でした。娘が生まれた頃は、明日をも危ぶまれる状態だったのですよ。懸命の看護の結果、ようやく、落ち着いて人並みの生活を送れるようになったのは、ここ最近の事です。妻は難産の末に、子供をこれ以上望めない体となりましたから、私の子供が新たに生まれる事もございません』
『おそらく、娘は人並みの幸せを得る事はできないでしょう。それでも、殿下にご婚約して頂けたら、ひと時の夢を見る事ができます。殿下のお望みが叶い、婚約を破棄するとしても、王子の婚約者であった娘であれば、他家から請われる可能性が微々たるものとはいえ、ないとも限りません。ルシアン殿下。どうか、ご自身のお望みと、娘の未来のために、ご決断いただけませんか』
侯爵家の令嬢であれば、家格は十分だ。
侯爵位より上位の公爵家は五つあるが、いずれも、俺と年の近い令嬢はいない。
また、同年代の令嬢がいる家で、問答無用でフレマイア家を押し退けられるだけの力のある家門はない。
厳密には異なるが、侯爵令嬢に相応しい淑女教育を受けていれば、王子妃教育を受けている、と誤魔化す事も可能だろう。
それでいて、魔力がない事が目に見えて明らかなのだから、俺が玉座を望んでいない事もわかる。
そして、いずれ、兄上が立太子すれば、仮初の婚約を破棄し、改めて自身の人生を歩めばいい。
フレマイア侯爵の提案を受け入れた俺は父に、将来的に破棄する心積もりである事を隠して自分の考えを伝え、婚約の許可を貰った。
自らの結婚問題に振り回された父が、破棄前提の婚約など認める筈がない、とのフレマイア侯爵の言を入れての事だった。
簡素な婚約式で初めて会ったフレマイア侯爵の娘の記憶は、その眩いほどに白い髪だけ。
おそらくは、彼女がずっと、顔を伏せていたからだ。
貴族の結婚は家長に決定権があるものだから、俺はその時、リタが何を考えていたのか、知らない。
考えようともしなかった。
仮初の婚約なのだと、いつかの未来、破棄する前提のものなのだという事実を伝えないようにフレマイア侯爵の口止めをしただけで、自分の事を優しいとすら考えていた。
今思えば、無意識に心のどこかで、
「白の令嬢が王子と婚約を結べるのだから、それだけで感謝すべきだ」
と、傲慢な事を思っていたのだ。
単なる白の娘ならば、きっと誰にも相手にされない。
けれど、王族と一時でも婚約を結んでいれば、彼女の名を知る者は増える。
そうすれば、彼女にだって、新たな婚約者が現れるかもしれないではないか。
これは、相互利益の婚約関係、一方的な搾取ではない。
フレマイア侯爵の言葉を信じ、そんな独り善がりな理由をつけて、彼女の被るであろう不利益から目を逸らした。
そのうえ、婚約者がいる、と伝えても纏わりついて来る令嬢達にうんざりしていた俺は、リタもまた同様に鬱陶しい存在であると決めつけ、彼女がなんの交流も求めて来ないのをいい事に、ずっと放置してきた。
下手に友好的な態度を見せた結果、婚約者である事を盾に迫られでもしたら、わずらわしいからだ。
だから、婚約から六年が経つ今になっても、彼女の事を何も知らない。
本当に、何一つ……そう、顔すらも知らないのだ。
「君が一切、人前に出て来ない事から、私の婚約を知らない人間が増えて来た。公の場で、君の存在を改めて強調しておきたい」
「なるほど……クリフォード殿下の立太子を、いまだに認めていない方々がいらっしゃるのですね?」
(……! このわずかなやりとりで、なぜ、俺の目的に気づいた……?)
アカデミーの卒業パーティに参加させるため、彼女に王子の婚約者としての振る舞いができるか確認しておこうと思い立って、王城に招いた。
嫡男に対してすら甘く、仮初の婚約と知っているフレマイア侯爵が、侯爵令嬢としてどれほど厳しくリタを教育しているか、まったく不明だったからだ。
他の令嬢達を牽制するためには整った顔立ちであると効果的だが、どうせ、破棄される婚約なのだから、そこまで厳しい事は言わない。
彼女の白い髪が目立ちさえすればいい。
王子の婚約者なのだと驕り高ぶり、鼻持ちならない態度ならば、考えを改めさせて、当日はただ黙って俺の隣に立つ事を覚えて貰わなければならない。
高位貴族の令嬢としての立ち居振る舞いさえできれば、後はどうとでも言い抜けられる。
ただそれだけのつもりだったのに、彼女は王族としても完璧な振る舞いを見せたばかりか、俺達の婚約の目的までをも正確に把握していた。
同志としてならば、これほどに心強い存在は他にいないだろう。
問題は、彼女は同志ではなく、婚約者だという事だ。
「そこまで理解しているのならば、話が早い。私の都合で参加してもらうのだから、ぜひ、ドレスを贈らせて欲しい。採寸表を、後で王城宛に送ってくれ」
「ありがたいお申し出なのですが、フレマイア家にわたくしの採寸表はございません」
「……採寸表が、ない? なぜだ?」
「わたくしは、ドレスを仕立てた事がございませんので」
なんでもない口調で言うけれど、年頃の娘が、ドレスの一着も仕立てた事がない……?
フレマイア侯爵家は、貧窮した家門ではない。
それこそ、毎月、新しいドレスを仕立てても問題がないくらいなのに。
改めて見てみると、リタが今日着ているドレスは、彼女に合っていなかった。
色も型も流行のスタイルではあるのだが、彼女に似合うかどうかという視点で考えると、どうにも野暮ったい。
このドレスの若草色はリタの真っ白な肌をくすませて見せるし、華奢な体格に対して襞の幅が大き過ぎる。
誰か他人のために仕立てられたドレスなのか、それとも下位貴族の令嬢が購入するという既製品のドレスなのか。
体に合わせて直してはあるのだろうけれど、最初から己のサイズで仕立てられたドレスと手直ししたドレスでは、まったくラインが異なってしまう。
彼女の立ち姿で感じた違和感の正体が、わかった。
……一体、どういう事だ?
フレマイア侯爵は、白の者として生まれた子供であっても我が子として受け入れる親ではなかったのか?
日頃、顔を合わせる事がなく、年頃の娘にドレスの一枚も仕立てない。
事実だとすれば、典型的なネグレクトではないのか。
これらがすべて、リタが俺の同情を買うための作戦なのだとしたら、実家の名を貶める事になるのだから、貴族として随分捨て身だ。
けれど、お粗末な作戦だと笑い飛ばす事もできないのは、リタに俺の関心を引こうとする素振りが一切見られないからだ。
ならば……まさか、事実、という事なのか?
いや、だが、彼女は明らかに、侯爵令嬢としての教育を受けている。
どうにも、身なりと所作がちぐはぐだ。
「では、今度、仕立て屋を訪問させよう。そうだな、来週で都合のいい日はあるか?」
「わたくしは、アカデミーに通っているわけではございませんので、いつでも在宅しております」
「わかった。ならば、一週間以内に訪問させる」
「承知いたしました」
「それとは別に、次に王城に来る日も約束しておきたい」
「また、ご招待いただけるのですか」
「あぁ。今日は、頼みだけのつもりだったからな。次は、ダンスを合わせよう」
「……かしこまりました」
リタが、少しだけ不思議そうな顔をしているのは、気のせいではないだろう。
ダンスの技術、会食のマナー、社交術。
最低限の水準さえ満たしていれば良いと思っていたが、リタの振る舞いが想像以上に洗練されていたせいで、欲が出た。
彼女が侯爵令嬢として身につけてきた淑女教育を確認し、不足があれば、卒業パーティまでに完璧にしてもらう。
それでこそ、誰に疑われる事もなく、俺達の婚約関係を信じさせる事ができるだろう。
俺がアカデミーを卒業したら、成人王族と認められ、クリフォード兄上と条件は同じになる。
そうしたら、反対意見が出ようとも押さえ込んで、兄上に立太子して頂く。
それまでは、リタに婚約者でいて貰わねばならないのだから。
父は、国王ブラッド。
母は、側妃コーデリア。
六歳上に、異母兄クリフォードがいる。
兄上の生母である正妃アラーナ様は、隣国ラーメルの第三王女だった。
シャルイナ王家で側妃を娶った王は、少ない。
正妃との間に子を授からなかったであるとか、政治上の必要に迫られて、という理由がない限り、後継者争いの大きな火種となるからだ。
そのため、隣国の王女が正妃でシャルイナの公爵令嬢が側妃と聞くと、何も知らない人々は、アラーナ様とは政略結婚、母とは恋愛結婚と思うらしい。
国と国の関係で拒めぬ縁談だったのだろう、愛する人を手離せず側妃としたのだろう、と。
実際には、父とアラーナ様が恋愛結婚で、母が強引に婚姻に持ち込んだ政略結婚だ。
父は、王位継承権第二位の第二王子だったアカデミー在学時代、留学していたアラーナ様と出会い、恋に落ちた。
二人は婚約を結び、王位継承権第一位の第一王子アーロン殿下に男児が生まれたら、臣籍降下する予定だった。
ところが。
アーロン殿下――俺にとっての伯父上が事故に遭った事で、状況が変わる。
伯父上は一命を取り留めたものの、右足を失ったうえに、下半身の運動機能が麻痺してしまった。
王宮の治癒魔法師達が総員で治療に当たったが、元の機能を取り戻す事は叶わなかった。
治癒魔法は万能ではない。
人の体の回復機能を高めるだけで、失われた肉体を復元する事はできないのだ。
また、伯父上は神経を損傷した事で不定期に訪れる頭痛に苦しめられるようになり、王位の重責を担えない、何よりも、後継者を授かるかわからない、として、王位継承権の返上を決断された。
結果として父の継承順位が繰り上がり、父が王太子に、アラーナ様が王太子妃になると決定したのだが、それをよしとしない者達がいた。
――そのうちの一人が、俺の母コーデリアだ。
母は元々、アーロン伯父上の婚約者だった。
母と第一王子の婚約を結んだ祖父リーストーム公爵と彼を支持するいわば貴族派は、アーロン伯父上がリーストーム公爵家にも議会にも相談せず、自主的に王位継承権を返上された事に難癖をつけ、
「未来の王妃になるべく励んで来たコーデリアの努力を無になさるおつもりか」
と、母を妃として迎え入れるよう王家に迫った。
父に婚約者がいなければ、それもまた、一つの方法だったとは思う。
母が王妃教育に決して少なくはない時間を費やして来たのは事実なのだから、これまでの努力の見返りを、と求める気持ちもわからなくもない。
けれど、父には既にアラーナ様という婚約者がいた。
アラーナ様は、小国とはいえラーメルの王女。
母は、公爵令嬢とはいえ、一介の貴族に過ぎない。
『アラーナが、正妃だ。名ばかりの側妃としてならば、娶ってやってもよい』
政略目的の婚約者ではあったものの、伯父上と仲睦まじい恋人に見えていた母。
事故後、回復が見込めないとわかるや否や、ぱたりと病床を訪れなくなった母。
別れの言葉すら伯父上に直接告げる事なく、書面で一方的に婚約を破棄した母。
残酷な言い方になるけれど、もしも、伯父上が事故で儚くなられていたのならば、次の婚約者探しに即座に動いた母の行動も致し方ないと思えたのかもしれない。
しかし、一生後遺症に苦しむアーロン伯父上を即座に見捨てた母とリーストーム公爵家を、伯父上を慕っていた父が許す筈もなく、母のプライドを傷つけるために突きつけた言葉。
だが、父の予想に反して、母は頷いた。
アカデミーの卒業と同時に、父とアラーナ様は結婚。
その一年後、第一王子であるクリフォード兄上が生まれる。
さらに二年後、臣籍降下しレスティアン公爵となったアーロン伯父上が、事故後、献身的に伯父上を支え続けた子爵令嬢と結婚。
伯父上が幸福な家庭を築いた事を確認してから、ようやく、父は母を側妃に召し上げた。
側妃といっても、王子妃としての公務はすべてアラーナ様が行い、母はただ、離宮に住まっているというだけ。
父の訪れもなく、社交界に出る事もなく、望んだ「王族」の名だけが与えられた。
……それなのに、本来なら生まれる筈もなかった俺がここにいるのは、アラーナ様が第二子の妊娠時に大病を患い、子を失ったばかりか、新たな子を望めない体になってしまったからだ。
「お子がクリフォード殿下お一人では、心許ありません」
「さよう。幼子は、思ってもみない事で命を落としますからなぁ」
「こんな時のための側妃制度でしょう」
「おぉ、それならば、ブレッド殿下にはすでに側妃がおられるではありませんか!」
こんな調子で貴族派の者達は、クリフォード兄上の命を盾に、母に子を授ける事を求めた。
そして、兄上の安全を危ぶんだ父は、アラーナ様と相談のうえ、母との間に俺を儲けたのだ。
もちろん、後継となる男児が二人、それも母親が違えば、後継者争いが過熱する事は明らかだ。
けれど、目の前の危険を回避するためには、二分の一の確率で女児が産まれる可能性に賭けるしかなかったらしい。
ここからは、俺が生まれた後の話だ。
父の子と偽って、貴族派の誰ぞの血を引く子供を孕んだのではないかと疑われていた母は、王族特有の金瞳を持つ俺を産んだ。
しかし、母は、生まれた俺に興味を持たなかった。
なぜなら、明らかに父の血を引く魔力の高い子を産んでも、父が母を顧みる事も、俺を後継者に指名する事もなかったからだ。
脅迫されたからとはいえ、我が子を産んだ妃に対して随分と冷たいと思うかもしれないが、それほどに、父と母の間には深く広い溝があるという事に他ならない。
我が母ながら浅慮だと思うのは、正妃の座を奪えないなら役に立たない、と俺の育児を放棄した事だ。
そもそも、我が事しか考えられない人なので、血の繋がった子とはいえ、他人の面倒を見るのに向いていないのだろう。
生母から見捨てられた俺を育ててくれたのは、アラーナ様だった。
クリフォード兄上も、俺の事を弟として可愛がってくれた。
父もまた、母を憎む気持ちと俺とは切り離し、息子として接してくれている。
正妃の子である兄上との差は当然あるだろうけれど、それは、嫡男とスペアに対する差とたいして変わるものではない。
少しばかり歪で、しかし、幸福な幼少期。
そんな生活は、俺が十二歳の時に変わってしまった。
それまでも水面下で争っていた二つの派閥の軋轢が、目に見えるほどに大きくなったのは、アラーナ様の死と、父の王位継承が重なった事がきっかけだった。
「クリフォードがアカデミーを卒業したら、立太子式を執り行う」
「お待ちください! 王太子となる資格は、ルシアン殿下にもございます! クリフォード殿下とルシアン殿下はお年が離れていらっしゃいます。どちらの殿下が王太子の座に相応しいか、今、この時に決定なさるのは、早計に過ぎましょう。どうか、ルシアン殿下がアカデミーを卒業されるまで、王太子の座は保留になさってください!」
隣国の王族の血を引くとはいえ、最大の後ろ盾であるアラーナ様を喪った兄上と、国内最大派閥を率いるリーストーム公爵家の血筋である俺。
魔力量をさほど重視しないラーメル王国王女の子ゆえか、アラーナ様譲りの鮮やかな緑の髪だけれど魔力量としては上の下の兄上と、歴代王族の中でも類を見ない高い魔力、それも建国王と同じく水属性を持つ俺。
条件だけを見れば、他国王族出身の正妃の子であり第一王子である兄上と、国内最大派閥を率いるリーストーム公爵家が背後にいる俺は、支持が拮抗していた。
それまでは、俺を養育していたのが正妃アラーナ様だったために、俺を支持する者達は大きな声をあげる事ができなかったのだが、アラーナ様の薨去に伴い、彼らが世論の幅を利かせるようになってきたのだ。
父の一存で王太子を決定できるほどには、継いだばかりの王権が強くない。
しかし、俺自身に、敬愛する兄上と競うつもりはない。
魔力量こそ兄上を上回っているとしても、兄上ほど、統治者に向いている方はいない。
俺は、今後も兄上を支えていきたいのだ。
「クリフォード殿下と争わないよう、幼い頃から洗脳していたのだ!」
と、母方の祖父であるリーストーム公爵に言われた事があるが、第二王子という立場だけを良いように使おうとする者達に何を言われても、心に響くものではない。
洗脳だろうが、誘導だろうが、俺自身が満足しているのだから、何も問題はないのだ。
だが、どれだけ言葉を尽くそうと、俺を王太子にと支持する者達は聞く耳など持たなかった。
彼らは本気で俺が王太子に相応しいと思っているのではなく、王権とより間近に繋がる事で、己の利益を得たいと考えているだけなのだから。
だから。
幼い子どもなりに考えた。
俺は自分自身の手で、俺が王太子に、ひいては王に相応しくないのだと、王位に欲を見せていないのだと、示さなくてはならない。
王の隣には、その座に相応しい妃が必要だ。
魔力量が多く、家格が高く、淑女と呼ばれるに相応しい妃が。
ならば、俺はその条件を満たさない令嬢を婚約者に据えよう。
誰の目にも、俺が王位に相応しくないのだとわかるように。
俺が、兄上を支持しているのだと伝わるように。
しかし、あまりにも条件を満たしていなければ、そもそも婚約が認められないし、婚約者より上位の条件を持つ家門から横槍を入れられる。
悩んでいる俺に声を掛けたのが、祖父と敵対するゆえに兄上を支持しているフレマイア侯爵だった。
『不憫な娘なのです』
『白の者として生まれた娘です。侯爵家の爵位を持ってしても、より高い魔力を持つ娘を娶りたい高位貴族の家に嫁ぐ事は不可能でございましょう。下位貴族すら、諸手を挙げて歓迎する事はあり得ない。それでも、私には娘の命を奪う事など、できなかったのです。嫡男であるアシュトンも月が満ちずに生まれ、当初は魔導器官が不完全な状態でした。娘が生まれた頃は、明日をも危ぶまれる状態だったのですよ。懸命の看護の結果、ようやく、落ち着いて人並みの生活を送れるようになったのは、ここ最近の事です。妻は難産の末に、子供をこれ以上望めない体となりましたから、私の子供が新たに生まれる事もございません』
『おそらく、娘は人並みの幸せを得る事はできないでしょう。それでも、殿下にご婚約して頂けたら、ひと時の夢を見る事ができます。殿下のお望みが叶い、婚約を破棄するとしても、王子の婚約者であった娘であれば、他家から請われる可能性が微々たるものとはいえ、ないとも限りません。ルシアン殿下。どうか、ご自身のお望みと、娘の未来のために、ご決断いただけませんか』
侯爵家の令嬢であれば、家格は十分だ。
侯爵位より上位の公爵家は五つあるが、いずれも、俺と年の近い令嬢はいない。
また、同年代の令嬢がいる家で、問答無用でフレマイア家を押し退けられるだけの力のある家門はない。
厳密には異なるが、侯爵令嬢に相応しい淑女教育を受けていれば、王子妃教育を受けている、と誤魔化す事も可能だろう。
それでいて、魔力がない事が目に見えて明らかなのだから、俺が玉座を望んでいない事もわかる。
そして、いずれ、兄上が立太子すれば、仮初の婚約を破棄し、改めて自身の人生を歩めばいい。
フレマイア侯爵の提案を受け入れた俺は父に、将来的に破棄する心積もりである事を隠して自分の考えを伝え、婚約の許可を貰った。
自らの結婚問題に振り回された父が、破棄前提の婚約など認める筈がない、とのフレマイア侯爵の言を入れての事だった。
簡素な婚約式で初めて会ったフレマイア侯爵の娘の記憶は、その眩いほどに白い髪だけ。
おそらくは、彼女がずっと、顔を伏せていたからだ。
貴族の結婚は家長に決定権があるものだから、俺はその時、リタが何を考えていたのか、知らない。
考えようともしなかった。
仮初の婚約なのだと、いつかの未来、破棄する前提のものなのだという事実を伝えないようにフレマイア侯爵の口止めをしただけで、自分の事を優しいとすら考えていた。
今思えば、無意識に心のどこかで、
「白の令嬢が王子と婚約を結べるのだから、それだけで感謝すべきだ」
と、傲慢な事を思っていたのだ。
単なる白の娘ならば、きっと誰にも相手にされない。
けれど、王族と一時でも婚約を結んでいれば、彼女の名を知る者は増える。
そうすれば、彼女にだって、新たな婚約者が現れるかもしれないではないか。
これは、相互利益の婚約関係、一方的な搾取ではない。
フレマイア侯爵の言葉を信じ、そんな独り善がりな理由をつけて、彼女の被るであろう不利益から目を逸らした。
そのうえ、婚約者がいる、と伝えても纏わりついて来る令嬢達にうんざりしていた俺は、リタもまた同様に鬱陶しい存在であると決めつけ、彼女がなんの交流も求めて来ないのをいい事に、ずっと放置してきた。
下手に友好的な態度を見せた結果、婚約者である事を盾に迫られでもしたら、わずらわしいからだ。
だから、婚約から六年が経つ今になっても、彼女の事を何も知らない。
本当に、何一つ……そう、顔すらも知らないのだ。
「君が一切、人前に出て来ない事から、私の婚約を知らない人間が増えて来た。公の場で、君の存在を改めて強調しておきたい」
「なるほど……クリフォード殿下の立太子を、いまだに認めていない方々がいらっしゃるのですね?」
(……! このわずかなやりとりで、なぜ、俺の目的に気づいた……?)
アカデミーの卒業パーティに参加させるため、彼女に王子の婚約者としての振る舞いができるか確認しておこうと思い立って、王城に招いた。
嫡男に対してすら甘く、仮初の婚約と知っているフレマイア侯爵が、侯爵令嬢としてどれほど厳しくリタを教育しているか、まったく不明だったからだ。
他の令嬢達を牽制するためには整った顔立ちであると効果的だが、どうせ、破棄される婚約なのだから、そこまで厳しい事は言わない。
彼女の白い髪が目立ちさえすればいい。
王子の婚約者なのだと驕り高ぶり、鼻持ちならない態度ならば、考えを改めさせて、当日はただ黙って俺の隣に立つ事を覚えて貰わなければならない。
高位貴族の令嬢としての立ち居振る舞いさえできれば、後はどうとでも言い抜けられる。
ただそれだけのつもりだったのに、彼女は王族としても完璧な振る舞いを見せたばかりか、俺達の婚約の目的までをも正確に把握していた。
同志としてならば、これほどに心強い存在は他にいないだろう。
問題は、彼女は同志ではなく、婚約者だという事だ。
「そこまで理解しているのならば、話が早い。私の都合で参加してもらうのだから、ぜひ、ドレスを贈らせて欲しい。採寸表を、後で王城宛に送ってくれ」
「ありがたいお申し出なのですが、フレマイア家にわたくしの採寸表はございません」
「……採寸表が、ない? なぜだ?」
「わたくしは、ドレスを仕立てた事がございませんので」
なんでもない口調で言うけれど、年頃の娘が、ドレスの一着も仕立てた事がない……?
フレマイア侯爵家は、貧窮した家門ではない。
それこそ、毎月、新しいドレスを仕立てても問題がないくらいなのに。
改めて見てみると、リタが今日着ているドレスは、彼女に合っていなかった。
色も型も流行のスタイルではあるのだが、彼女に似合うかどうかという視点で考えると、どうにも野暮ったい。
このドレスの若草色はリタの真っ白な肌をくすませて見せるし、華奢な体格に対して襞の幅が大き過ぎる。
誰か他人のために仕立てられたドレスなのか、それとも下位貴族の令嬢が購入するという既製品のドレスなのか。
体に合わせて直してはあるのだろうけれど、最初から己のサイズで仕立てられたドレスと手直ししたドレスでは、まったくラインが異なってしまう。
彼女の立ち姿で感じた違和感の正体が、わかった。
……一体、どういう事だ?
フレマイア侯爵は、白の者として生まれた子供であっても我が子として受け入れる親ではなかったのか?
日頃、顔を合わせる事がなく、年頃の娘にドレスの一枚も仕立てない。
事実だとすれば、典型的なネグレクトではないのか。
これらがすべて、リタが俺の同情を買うための作戦なのだとしたら、実家の名を貶める事になるのだから、貴族として随分捨て身だ。
けれど、お粗末な作戦だと笑い飛ばす事もできないのは、リタに俺の関心を引こうとする素振りが一切見られないからだ。
ならば……まさか、事実、という事なのか?
いや、だが、彼女は明らかに、侯爵令嬢としての教育を受けている。
どうにも、身なりと所作がちぐはぐだ。
「では、今度、仕立て屋を訪問させよう。そうだな、来週で都合のいい日はあるか?」
「わたくしは、アカデミーに通っているわけではございませんので、いつでも在宅しております」
「わかった。ならば、一週間以内に訪問させる」
「承知いたしました」
「それとは別に、次に王城に来る日も約束しておきたい」
「また、ご招待いただけるのですか」
「あぁ。今日は、頼みだけのつもりだったからな。次は、ダンスを合わせよう」
「……かしこまりました」
リタが、少しだけ不思議そうな顔をしているのは、気のせいではないだろう。
ダンスの技術、会食のマナー、社交術。
最低限の水準さえ満たしていれば良いと思っていたが、リタの振る舞いが想像以上に洗練されていたせいで、欲が出た。
彼女が侯爵令嬢として身につけてきた淑女教育を確認し、不足があれば、卒業パーティまでに完璧にしてもらう。
それでこそ、誰に疑われる事もなく、俺達の婚約関係を信じさせる事ができるだろう。
俺がアカデミーを卒業したら、成人王族と認められ、クリフォード兄上と条件は同じになる。
そうしたら、反対意見が出ようとも押さえ込んで、兄上に立太子して頂く。
それまでは、リタに婚約者でいて貰わねばならないのだから。
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