5 / 16
恋愛なんかじゃない、ただの束縛
しおりを挟む
翌朝、俺は龍也が朔也さんから何か聞き出してないか、朔也さんがポロリと俺がやってた事を溢してないかとか、ありえないだろう事が気になり、学校に行く気にもなれず掃除洗濯と家事に勤しんでいた。
そして、今は買い物をして久々に料理をする為にキッチンに立っている。
朝食はシリアルで簡単に済ませてしまったからか、かなり空腹を感じている。
限られた出来る料理の中から、やはり一番簡単なパスタに思考は落ち着き、いざ始めようとした時、リビングのテーブルに置きっぱなしになっていたマナーモードにしたままの携帯が賑やかに踊っていた。
電話の相手は、夜の街で知り合ったジムで働く、高科邦明だった。
「ヒロか?」
「ああ・・・」
「今日もサボりか?」
「あなたには関係ない!」
「そうだな・・・。今日、俺、休みなんだが出てこないか?」
「解った・・・家に行けばいいか?」
「ああ!外で食事でもどうだ?もうすぐ昼だし」
「すぐ出るよ」
「待ってるよ」
俺は、何も言わず電話を切り、キッチンに広げた材料を冷蔵庫に戻し、財布と携帯をGパンのポケットに突っ込み家をでた。
高科の家は、俺のマンションから自転車で10分ぐらいと割と近いところにあった。一戸建てのなかなか洒落た家だ。
ドアホンに、着いた事を告げると、中から足音がしてドアが開いた。
「いらっしゃい!上着を取ってくるから、先に車に乗っていてくれ」
と言って、俺にカギだけを渡し、部屋の奥に消えていった。
俺は、ガレージに自転車を止めて、車の助手席でぼんやりと空腹感に作って食べる筈だったパスタの事を考えていた。
ドアの開く音に横を向くと、高科が乗り込んできていた。
「パスタでも食べに行こうと思うんだが、それでいいか?」
「ああ・・・」
食べる筈だったパスタが食べれる事に少し気分が良くなったが、いつも通りの返事ですませる。
俺の短い返事に慣れっこの高科は、気にする事なく車を発進させ目的地に向かった。
車に乗ってる間も、話しかけるのは高科だけで、俺はそれに短く返事を返すだけだった。
連れて行かれた店は、昼時で空いているわけでもなさそうなのに、予約でもしていたのか個室感のある奥のテーブルに通された。
お互いランチコースを頼み、無言のまま食事は終わっていた。
ポツリポツリと高科が食後のコーヒーを飲みながら話しをしているが、窓の外をボーと眺めているだけの俺には、一人で話をしている高科が他の者がいればさぞや滑稽に見えただろうと思う。
だから、高科のコーヒーを飲み干したのを確認して、話しかけた。
「高科さん、悪いんだが今日から俺、バイトが入ってるんだよ。この後、するんだったら・・・」
「ああ、そうだな、出ようか」
俺達は、無言のまま彼の家に向かった。
最近は、道で声をかけられついて行ったり、クラブで知り合った常連達より、この高科に呼び出されることが多くなっていたかもしれない。
だからと言って、この男にしても俺だから抱くんじゃない。心なんて必要ではなくただ、自分と変わらない体格の男を組み敷いて、自由にできる優越感を感じたいだけなんだ。
俺は、行き場のない燻る不快な気持ちを履き捨てるために利用するだけでお互い様の関係、ただそれだけの関係でしかない。
さっきまで余裕の表情だった男が、玄関のドアを閉めた途端、待ちきれない様子で俺を押さえつけ、唇を深く求めてきた。
あまりの苦しさに肩を強めに押すと、高科はハッとしたように、腕の力を緩め、
「すまない」
と俯き加減に謝った。
だが、俺には高科が何を誤ったのか解らなかった。
服を脱がされ、肌に触れる手の感触に、俺は昂ぶって行く自分を感じた。
「ヒロ・・・」
高科は俺の顔を上向かせ口づけながら、感じるままに動く筋肉を背筋を撫で上げる手で楽しんでいる。
そしていつもより早急な高科の求めに、俺は絶え間なく艶かしい吐息をついてしまい、益々高科を興奮させてしまったようだ。
二人して、今はただ、身体の中で荒れ狂う熱を追うことに夢中だ。
互いの呼吸がシンクロし、体温も鼓動も溶け合うような錯覚に襲われる。
速くなる高科の動きに翻弄されるように、俺の身体は揺さぶられる。
何も考えず、ただ与えられる快楽だけを求め、貪りシーツの波に新たな波を作る。
熱が静まってしまえば、気だるさと空しさだけが残るとしてもだ。
そんな俺の耳に少しずつ覚醒するように部屋の奥から聞こえる水音が現実の世界に俺を引き戻す。
「おい、シャワー使うだろ?」
腰にタオルを巻き、濡れた髪をタオルで拭きながら、高科はベットに横たわる俺に話しかける。
「ああ」
短く返事を返したが動く気配のない俺に
「な~、俺の物になれよ。俺だけ見ることは出来ないのか?俺では、お前を」
高科の言葉を遮る。
「やめてくれないか、中坊相手に何マジになってんだよ。冗談じゃないぜ。」
睨みあげた俺の視線にあたふたとしり込みする大人。腹立たしく舌打ちし、勢いよく身体を起こしバスルームに向かう。
肌の上を流れる熱い湯は、どんどんと凍えていく心までは温めてはくれない。
服を着て部屋に戻ると、タバコを燻らせるバスローブを羽織った高科が俺に背を向けたまま、「どうしても駄目なのか?」と問う。
「マジで言ってんだったら、今日で終わりだな。あんたの代わりならいくらでもいる。俺にはあんたの心なんていらないんだよ。」
じゃ~なと後ろ向きのまま手を振って部屋を出る。
俺を呼ぶ彼の声も、辛そうな表情も俺には必要なかった。
エレベーターの壁にもたれしゃがみ込む俺は闇に沈みゆく自分の悲鳴に耳を塞ぐ。
そして、今は買い物をして久々に料理をする為にキッチンに立っている。
朝食はシリアルで簡単に済ませてしまったからか、かなり空腹を感じている。
限られた出来る料理の中から、やはり一番簡単なパスタに思考は落ち着き、いざ始めようとした時、リビングのテーブルに置きっぱなしになっていたマナーモードにしたままの携帯が賑やかに踊っていた。
電話の相手は、夜の街で知り合ったジムで働く、高科邦明だった。
「ヒロか?」
「ああ・・・」
「今日もサボりか?」
「あなたには関係ない!」
「そうだな・・・。今日、俺、休みなんだが出てこないか?」
「解った・・・家に行けばいいか?」
「ああ!外で食事でもどうだ?もうすぐ昼だし」
「すぐ出るよ」
「待ってるよ」
俺は、何も言わず電話を切り、キッチンに広げた材料を冷蔵庫に戻し、財布と携帯をGパンのポケットに突っ込み家をでた。
高科の家は、俺のマンションから自転車で10分ぐらいと割と近いところにあった。一戸建てのなかなか洒落た家だ。
ドアホンに、着いた事を告げると、中から足音がしてドアが開いた。
「いらっしゃい!上着を取ってくるから、先に車に乗っていてくれ」
と言って、俺にカギだけを渡し、部屋の奥に消えていった。
俺は、ガレージに自転車を止めて、車の助手席でぼんやりと空腹感に作って食べる筈だったパスタの事を考えていた。
ドアの開く音に横を向くと、高科が乗り込んできていた。
「パスタでも食べに行こうと思うんだが、それでいいか?」
「ああ・・・」
食べる筈だったパスタが食べれる事に少し気分が良くなったが、いつも通りの返事ですませる。
俺の短い返事に慣れっこの高科は、気にする事なく車を発進させ目的地に向かった。
車に乗ってる間も、話しかけるのは高科だけで、俺はそれに短く返事を返すだけだった。
連れて行かれた店は、昼時で空いているわけでもなさそうなのに、予約でもしていたのか個室感のある奥のテーブルに通された。
お互いランチコースを頼み、無言のまま食事は終わっていた。
ポツリポツリと高科が食後のコーヒーを飲みながら話しをしているが、窓の外をボーと眺めているだけの俺には、一人で話をしている高科が他の者がいればさぞや滑稽に見えただろうと思う。
だから、高科のコーヒーを飲み干したのを確認して、話しかけた。
「高科さん、悪いんだが今日から俺、バイトが入ってるんだよ。この後、するんだったら・・・」
「ああ、そうだな、出ようか」
俺達は、無言のまま彼の家に向かった。
最近は、道で声をかけられついて行ったり、クラブで知り合った常連達より、この高科に呼び出されることが多くなっていたかもしれない。
だからと言って、この男にしても俺だから抱くんじゃない。心なんて必要ではなくただ、自分と変わらない体格の男を組み敷いて、自由にできる優越感を感じたいだけなんだ。
俺は、行き場のない燻る不快な気持ちを履き捨てるために利用するだけでお互い様の関係、ただそれだけの関係でしかない。
さっきまで余裕の表情だった男が、玄関のドアを閉めた途端、待ちきれない様子で俺を押さえつけ、唇を深く求めてきた。
あまりの苦しさに肩を強めに押すと、高科はハッとしたように、腕の力を緩め、
「すまない」
と俯き加減に謝った。
だが、俺には高科が何を誤ったのか解らなかった。
服を脱がされ、肌に触れる手の感触に、俺は昂ぶって行く自分を感じた。
「ヒロ・・・」
高科は俺の顔を上向かせ口づけながら、感じるままに動く筋肉を背筋を撫で上げる手で楽しんでいる。
そしていつもより早急な高科の求めに、俺は絶え間なく艶かしい吐息をついてしまい、益々高科を興奮させてしまったようだ。
二人して、今はただ、身体の中で荒れ狂う熱を追うことに夢中だ。
互いの呼吸がシンクロし、体温も鼓動も溶け合うような錯覚に襲われる。
速くなる高科の動きに翻弄されるように、俺の身体は揺さぶられる。
何も考えず、ただ与えられる快楽だけを求め、貪りシーツの波に新たな波を作る。
熱が静まってしまえば、気だるさと空しさだけが残るとしてもだ。
そんな俺の耳に少しずつ覚醒するように部屋の奥から聞こえる水音が現実の世界に俺を引き戻す。
「おい、シャワー使うだろ?」
腰にタオルを巻き、濡れた髪をタオルで拭きながら、高科はベットに横たわる俺に話しかける。
「ああ」
短く返事を返したが動く気配のない俺に
「な~、俺の物になれよ。俺だけ見ることは出来ないのか?俺では、お前を」
高科の言葉を遮る。
「やめてくれないか、中坊相手に何マジになってんだよ。冗談じゃないぜ。」
睨みあげた俺の視線にあたふたとしり込みする大人。腹立たしく舌打ちし、勢いよく身体を起こしバスルームに向かう。
肌の上を流れる熱い湯は、どんどんと凍えていく心までは温めてはくれない。
服を着て部屋に戻ると、タバコを燻らせるバスローブを羽織った高科が俺に背を向けたまま、「どうしても駄目なのか?」と問う。
「マジで言ってんだったら、今日で終わりだな。あんたの代わりならいくらでもいる。俺にはあんたの心なんていらないんだよ。」
じゃ~なと後ろ向きのまま手を振って部屋を出る。
俺を呼ぶ彼の声も、辛そうな表情も俺には必要なかった。
エレベーターの壁にもたれしゃがみ込む俺は闇に沈みゆく自分の悲鳴に耳を塞ぐ。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
平凡な僕らの、いつもの放課後。
たんさん
BL
赤点常習の春川には、幼なじみの秀才(秋瀬)と、クラスメイトの関西弁の頼れる兄貴分(夏木)、趣味の友達(冬月)、そして優秀でいい子な弟(土筆)がいます。どこにでも居そうな学生だけど、それぞれに複雑な家庭事情と過去のトラウマがあります。彼らがそれに対峙し、自分の在り方について考える、青春?ヒューマンストーリーです。
(※落書きコーナーを1番上にあげました。きまぐれ更新予定。文章力しょぼすぎてイメージつかないところもあると思います。文章で伝えられないニュアンスを絵で補完していただけたら嬉しいです。)Twitterにリンクしました。雑多垢ですが、裏話とか設定とか呟いてるので、気になる方は覗いて見てやって下さい。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる