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翌日、広場で歌い終わったノアに誕生日のことを切り出した。
花壇に並んで座ったノアは一瞬不思議そうな顔をして、でもすぐさま複雑惣な表情に切り替わる。
やっぱり気が進まないんだろうか。
「悪い、貴族の誕生日会なんて嫌だよな。断ってくれて全然いいから」
「いえ、そういうわけではありません。ただ、本当に僕が伺ってもよろしいのですか? お兄様は僕のことをご存じで?」
おずおずと訝しむようにノアが問いかける。
吟遊詩人の印象はだいぶ良くなっていると思うが、貴族となると話は別だ。普通の庶民すら見下して差別する奴らも多いのだから、吟遊詩人なんて好意的に思われるはずがない。
でも、リュシアン兄さんは違う気がする。
「はっきりとは伝えてないけど、結構鋭いからわかってると思う。それで連れてこいって言ってるんだから問題ない」
ノアは少し考えてから、小さく頷いた。
「フレディの誕生日に呼んでいただけるなんて光栄なことですね。喜んで伺いましょう」
「ありがとう! ギャラは弾むからな」
「それには及びません。お友達としてお伺いするのですから」
「友達……でいいのか?」
「お兄様は、友達を呼ぶように言われたのでしょう?」
さすがにパトロンをしてるとは言いづらいからな。
なんて考えていると、突然ノアが俺の肩に手を乗せてグッと顔を近づけた。
「それとも、本当のことをお伝えくださるのですか? 自分の恋人だと」
「な、ななななに言ってるんだよ! 俺とお前は……ああっ!」
花壇に並んで座ったノアは一瞬不思議そうな顔をして、でもすぐさま複雑惣な表情に切り替わる。
やっぱり気が進まないんだろうか。
「悪い、貴族の誕生日会なんて嫌だよな。断ってくれて全然いいから」
「いえ、そういうわけではありません。ただ、本当に僕が伺ってもよろしいのですか? お兄様は僕のことをご存じで?」
おずおずと訝しむようにノアが問いかける。
吟遊詩人の印象はだいぶ良くなっていると思うが、貴族となると話は別だ。普通の庶民すら見下して差別する奴らも多いのだから、吟遊詩人なんて好意的に思われるはずがない。
でも、リュシアン兄さんは違う気がする。
「はっきりとは伝えてないけど、結構鋭いからわかってると思う。それで連れてこいって言ってるんだから問題ない」
ノアは少し考えてから、小さく頷いた。
「フレディの誕生日に呼んでいただけるなんて光栄なことですね。喜んで伺いましょう」
「ありがとう! ギャラは弾むからな」
「それには及びません。お友達としてお伺いするのですから」
「友達……でいいのか?」
「お兄様は、友達を呼ぶように言われたのでしょう?」
さすがにパトロンをしてるとは言いづらいからな。
なんて考えていると、突然ノアが俺の肩に手を乗せてグッと顔を近づけた。
「それとも、本当のことをお伝えくださるのですか? 自分の恋人だと」
「な、ななななに言ってるんだよ! 俺とお前は……ああっ!」
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