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「僕のオススメです。味も好きですが、見た目が宝石のようで気に入っているんですよ」
「キレイな色だ。ノアの瞳と同じだな」

 目を丸くしてから、ノアがふっと笑った。
 そして、俺の目を見ながらゆっくりと顔を近づける。ち、近い。

「僕の瞳は、こんな色ですか?」
「そ、そうだよ。アメジストみたいでキレイじゃないか。自分でも見たことあるだろ」
「あまり自分の顔をじっくり見ることなどありませんから」

 もったいない!
 俺がノアなら朝から晩まで鏡の前で過ごすぞ!
 
 それよりも、ノアが俺を見つめ続けているのが気になる。
 耐えられずに、顔をそむけてカクテルを飲んだ。クラッとくる。結構強いらしい。
 
「……そんなじっと見るなよ」
「どうしてです?」
「俺の顔なんて見ても仕方ないだろ。ノアと違って美形じゃないんだから」
「そんなことはありません。僕にはとても、魅力的に見えます」

 お世辞なんだろうが、絶世の美男子に言われるのは変な気分だ。

「お前と違って、俺はどこにでもいるような平々凡々な男だぞ」
「平凡は悪いことではありません。とても安心感がある。それでいて手を離せば人込みに紛れてしまうような、そんな儚さを持ち合わせている」

 めちゃくちゃ耳心地の良い言い回しをしてくれたが、つまりは平凡ということだ。
 
 俺を見つめる紫の瞳が、とろんと熱っぽくなった。
 ノアの手が、俺の手に重ねられる!

「フレデリックさん……フレディ、とお呼びしても?」
「え、あ、ああ、いいけど」

 フレディと俺を呼ぶのはリュシアン兄さんだけだ。
 いつまでも子供扱いされているようで恥ずかしかったが、ノアに呼ばれると特別な響きに感じる。

 それはいいのだが……頭がクラクラしてきた。
 普段酒なんて飲まない身体だ。酒のまわりが早いらしい。
 潰れるのは格好悪い。なんとか堪えようとしたが、恐ろしいほどの睡魔に襲われる。

「フレディ。今夜はあなたを、帰したくない」

 その言葉を最後に、俺の意識は途切れた。

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